※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

78 / 147
生還

ユウヤと尚人の下に来たのは、ラトロワ中佐率いるジャール大隊だった。ジャール大隊は卓越した連携により、次々とBETA群を撃滅していく。

そうして、一先ずの安全を確保すると

 

『あの数を相手に、よく生き残ったな。坊や』

 

とユウヤに告げた。

 

『中佐……なんでここに』

 

『何故とはな。先に救援信号を打ち上げたのは、そちらだろ?』

 

ユウヤの問い掛けに、ラトロワ中佐は軽く返答した。実は脱出を始める前に、救援信号弾を打ち上げていたのだ。期待していなかったために、救援が来たのが意外だった。しかも、ジャール大隊というのは完全に予想していなかった。

 

『しかし、ラトロワ中佐。こちらの通信が聞こえていたのですか? ジャミングは……』

 

『ああ。それならば、通信塔諸ともへし折って黙らせた。何処ぞのバカが、離脱する際に間違えてジャミングを発したのか……まあ分からんが、面倒だったからな。少し前に砲撃してやった。いや、耳障りだったノイズが無くなって、セイセイしたさ』

 

尚人の問い掛けに、ラトロワ中佐はそう告げた。それを聞いた尚人は、改めて気付いた。相当距離が離れた筈の唯依と先程まで通信出来ていたことに。

 

『さて、そちらはどうやら弾薬が残っていないようだな……第3中隊、この二機の離脱を支援。他は、全周警戒だ』

 

『了解!』

 

ラトロワ中佐の指示を受けて、9機が尚人機とユウヤ機の周りに集まった。だが、ユウヤが

 

『待ってくれ、中佐! 俺はまだ!』

 

と抗議しようとした。恐らく、まだ接近戦をしたいのだろう。しかし

 

『ダメです、ブリッジス少尉。機体の損傷度が危険域です……それに、推進材ももう……』

 

と尚人が止めた。どうやら、戦術データリンクでユウヤ機のコンディションを確認したらしい。実際問題、ユウヤ機のコンディションは真っ赤に染まっており、機体からは即時脱出が促されている。

 

『くっ……』

 

『それに、震動計が新たに接近するBETA群を捕捉しました……種類は不明ですが、軽く数千は接近してきてます……自分達を護衛しながらジャール大隊が戦うと、犠牲が出る可能性が高過ぎます……』

 

『つっ……』

 

幾らユウヤでも、友軍に犠牲を強いるのは不本意だ。尚人の言葉に押し黙り、動きを止めた。そこに、ジャール大隊の内の二機がユウヤ機の肩を掴んだ。

ユウヤ機は跳躍ユニットの片方が既に機能停止しており、最早まともな機動すら出来なくなっている。

そんなユウヤ機を素早く安全域まで動かすとなれば、二機で運んだ方が速いのである。

 

『いいか、大人しくしろよ?』

 

『俺達だって、死にたかないからな』

 

ユウヤ機を掴んだ二機の衛士は口々に、ユウヤにそう言った。確かに、下手にユウヤ機が動けば、二機もバランスを失って、最悪は墜落してしまう。尚人機は飛べるが、推進材が保つかどうか不安なので、念の為に運ばれることになった。

その護衛に、二個小隊が就いた。

そうして、中隊の護衛が就いた二機は戦域を離脱した。

そして

 

「篁中尉……」

 

「この……バカ者!」

 

機体から降りた尚人を、唯依が叩いた。

 

「軽々しく、命を捨てるな……!」

 

「は……申し訳ありません……」

 

「特にお前は、試験機の衛士であり、更には私と同じ次期当主……お前が死ねば、神田家は後継ぎ不在になり、最悪はお家断絶だ……そんなこと、お前も望まないだろう」

 

「その通りです……」

 

唯依の言葉に、尚人は頷くことしか出来なかった。確かに、尚人としてもそれは望んでいない。だが、出発前に会った、さる御仁から言われた言葉。

 

『この計画は、この日本を照らす光明になりましょう。そなたの力に期待します』

 

それを聞いた尚人は、全身全霊で挑むことにした。当初の心情は、何故アメリカの企業の協力を得なければならないのか、と憤りもした。だが、その御仁からの言葉を聞いた時に尚人は、歓喜に奮えた。

自分のような白の家でも、日本の、この御方の役に立てる。ならば、自分の心情など二の次。全身全霊を尽くし、粉骨砕身の気構えでこの計画を成就させよう。そう誓った。

それが、日本の為になると信じて。

それから、約二週間後。アラスカの地にて、新型機が発表された。

その名前は、不知火・弐型。白・黒・赤に塗装された鉄の巨人が、威風堂々と立っている。それを見たユウヤは

 

「……中佐……俺は必ず、この弐型の試験を成功させて、世界に貢献してみせる」

 

と呟いた。アラスカに帰ってきた際に、ソ連軍軍人のサンダーク中尉が、あのBETAの大規模侵攻に関して、報告したことのひとつに、ジャール大隊、全機未帰還というのがあった。

つまり、ジャール大隊は全滅したということになる。

あれほどの精鋭部隊が、全滅。それが、最前線なのだと、ユウヤに認識させた。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

少し前。ある場所

 

「……こんなことをして、お前達に何の得がある?」

 

「なに。俺達は、依頼で動いただけでね。仕事ならやるだけって話だよ。んじゃな。新しい地で、頑張ってくれや。氷の魔女さん」

 

約二十数名の部隊が、ある場所に運ばれていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。