※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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メッセージで、スピリッツはどうしているのか、という質問を貰いまして
久しぶりに、五千字越えた


閑話 支援作戦

アラスカの地にて、新型機。不知火弐型が発表されていた時。日本帝国佐渡島。そこでは、帝国軍による間引き作戦が行われていた。間引き作戦というのは、無制限に増殖するBETAを減らすための作戦だ。

BETAの巣たるハイヴは、BETAの総個体数により、成長していく。つまりは、BETAの総個体数が増えていくにつれて、ハイヴの攻略も難しくなってしまうのだ。今まで幾多の衛士達が、攻略を胸に抱いて突入し、果ててしまった墓標たるハイヴ。

今までで唯一攻略した横浜ハイヴは、フェイズ2だった。しかし、佐渡島ハイヴは既にフェイズ4にまで成長してしまっている。

それを、これ以上成長させないためにBETAの総個体数を減らす必要があるのだ。

手順としては、至って単純。離れた沖合いから延々と砲撃を撃ち込むだけだ。

戦力の損耗を抑えるために、光線級の照射範囲外から戦艦や重巡洋艦の砲撃やミサイルを次々と叩き込むのだ。

しかし、今回の間引き作戦は、今までで初めて、戦力を投入する。

これは、試験という意味が強い。なにせ今回投入される戦力というのは、試験機たる隼膺だ。

運用するのは、僅かに一個大隊。試験運用部隊は、技術研究厰に属する戦術機部隊。

今回、初めて尽くしのことが多い。なにせ、投入される艦艇の内には、帝国初の戦術機空母が投入されるのだ。

帝国初の戦術機空母、天照(アマテラス)。

スピリッツから得られた数多の技術を投入し建造された、世界でもきっての戦術機空母。運用できる戦力は、一個大隊。トラマリン構造を採用し、戦術機用のカタパルトも三基使うことで戦術機の迅速な展開を可能としており、更に艦内部には高度な工作機器を内蔵することで、素早い修理と整備を可能としている、正に移動拠点となっているのだ。

そして、運用するための人員も、スピリッツで高度な技術を修得した技師を中心にしたチームを編成し、整備士、発艦要員、オペレーター陣。その何れもが高度な技術を有している者達だ。

その艦橋に立つのは、帝国初の戦術機空母の艦長に選ばれた帝国海軍きっての提督。小澤提督である。

小澤提督は甲板に次々と姿を見せる戦術機を見て

 

(まさか私が、戦術機空母の艦長に選ばれるとはな……)

 

と考えていた。小澤提督は、本来ならば紀伊型戦艦、紀伊の艦長も兼ねていた人物だ。

だが、無理からぬことだろう。今の帝国には、戦術機空母の運用ノウハウを持つ艦長は居ないのだ。

帝国だけでなく、アメリカを除いた最前線を担う国々は、メガタンカーを改修した戦術機母艦を運用しているのだ。当然、そんな艦となればただ戦術機を運ぶだけと言っても過言ではない。

整備機能は殆ど無く、推進材の補給が精一杯。そして戦術機の運搬も、立たせている戦術機を簡易的なアームで固定するだけだ。

そんな艦となれば、大規模作戦になれば殆どが使い捨て前提になる。まともな耐光線対策はされておらず、通常の光線級の照射を受けただけで沈んでしまう。

だが、今回建造された天照は違う。

光線対策としては、まず最新の耐熱複合装甲が採用され、戦術データリンクも完備。それに伴い、スピリッツから得られた耐ビームコーティングを模倣した最新の耐光線蒸散塗膜。同じく、スピリッツから得られたアンチビーム爆雷の技術を模倣した対光線爆雷。

それらにより、今までに無い高い耐光線対策が取られていて、正に移動拠点と呼べる堅牢さを獲得した。

そして、世界に先駆けて艦艇で初めて採用したのは、リニアカタパルトである。今世界で採用されているのは、アメリカが開発した基地固定用の物がある。

しかし、その技術はアメリカが独占しており、基地に設置する度に非常に高い金額を要求される。

解析しようにも、下手に手出しすると自爆するように、ブラックボックスに細工が施されていて、解析出来なかった。

故に、スピリッツからリニアカタパルトの技術を得られたのは、まさに幸運だった。

しかも、基地固定用ではなく、艦艇用。流石にスピリッツの物に比べたら、まだ粗雑な面が目立つ。しかし、有ると無しでは大違いである。蒸気式に比べて倍近い速度で戦術機が展開できる。その恩恵は、今目の前で実証されている。

 

「スケアクロウ大隊、展開完了しました! 第1戦隊、砲撃開始!」

 

「展開開始してから、約4分……早いな」

 

小澤提督は、腕時計を見て呟いた。今までは一個大隊を展開するには、最低でも10分近く掛かっていた。それに比べて、半分以下の時間で一個大隊を展開出来た。

 

「凄まじい物だ……この技術は……」

 

小澤提督は小さく呟き、帽子の位置を直し

 

(だからといって、この技術に傲ってはいけない……そうなれば、アメリカのようになってしまう……決して立ち止まらず……傲らずに……自らを律し続けなければな)

 

と心に近い、後ろに意識を向けた。実はこの艦には、今一人の重要人物が乗艦している。

現政威大将軍、煌武院悠陽その人である。

最初小澤は、悠陽を止めた。間引き作戦とはいえ、この天照は限界ギリギリまで近づく。下手したら、悠陽に命の危機が訪れると。

しかし悠陽は、毅然とした態度で

 

『私には、この国を背負う責務があります。ならば、最前線を知る責任があります』

 

と告げ、小澤は止められないと悟った。ならば、自分に出来るのは、悠陽を死なせないように最善の指揮を執るだけ。

 

「艦の右舷に初期照射検知! 照射源特定!」

 

「対光線爆雷投射! 照射源に対し、速射砲撃てぇ!!」

 

小澤提督の指示を受けて、まず最初に新兵装の対光線爆雷の発射を指示。それによる光線防御を済ませると、次に艦側面に装備されている速射砲の発射を命じた。

天照は、攻撃方法も充実しており、艦側面に速射砲をそれぞれ6門装備しており、空母にしては高い直接打撃力を有している。そこに、戦術データリンクによる艦隊と同期させた砲撃を加えれば、面制圧も可能になる。

 

「これが、新しい耐光線対策……素晴らしいですね」

 

「は……私も直接見るのは初めてですが、あの忌々しい光線が拡散しておりました……理論的には、光線級だけでなく重光線級も拡散できると聞いております……今はまだ量産態勢が整っておりませんから、艦隊の防御用だけですが……ゆくゆくは、対光線弾の代わりになりましょう」

 

対光線弾。通称、AL弾。これは、光線種に迎撃されるのが前提の砲弾で、重金属で製造された砲弾だ。これを光線種に迎撃させることで重金属雲を形成し、光線の威力を減衰させるのが目的である。

しかし、非常にコストが高く、通常砲弾の三倍近くの金額と重金属を消費する。

更に言えば、自然への影響も高い。分かっているのは、漁業への影響と農作物への影響が高いことが分かっている。

しかし、BETA殲滅という大義名分のために黙殺されてきた。だが、この耐光線爆雷は、自然への影響が非常に低い。

新たに作られた液体は、あっという間に気化し、短時間だが光線を拡散させる効果を持つ。しかもその液体は、光線を拡散させると即座に蒸発し、滞留しないのだ。

調べたところ、漁業と農作物への影響は確認されなかった。そこから総務省と話し合い、量産態勢を整える手筈になっている。

 

「それに、スピリッツから得た技術によって作られた新型戦術機……私は海の……それも船乗りですから、よく分かりませんが、非常に高い性能を有していながらも、コストが低い機体と聞いています……ならば、私に出来るのは、例え不慣れな空母の運用だろうが、あの新型戦術機の一刻も早い採用を目指すこと……」

 

小澤提督がそう言った時、オペレーターの一人が

 

「提督! スケアクロウ大隊より支援砲撃要請です! ポイント、SEー13ー17ー02! 突撃級の集団が接近中とのことです!」

 

「第1戦隊に至急報せよ。それに伴い、こちらも砲撃用意! 弾種、徹甲榴弾!」

 

「了解!」

 

「徹甲榴弾、速射砲装填! 何時でも砲撃可能です!」

 

(装填速度も段違いだ……第1戦隊も、同じくか)

 

小澤は戦術データリンクで第1戦隊の状況を見て、前より早くなった砲弾の装填に舌を巻いた。スピリッツからもたらされた様々な技術の恩恵。それは確実に、帝国全軍を強くしていた。

 

「第1戦隊、砲撃開始!」

 

「こちらも砲撃開始! 第1戦隊に合わせろ!」

 

小澤の指示の直後、速射砲が咆哮を上げた。吐き出される155mm砲弾が、指定される戦域に飛んでいく。

 

「スケアクロウ大隊、試験項目の半分をクリアしました」

 

「ふむ……そろそろ、か」

 

小澤がそう言った時、オペレーターが

 

「スピリッツ、佐渡島に上陸! ハイヴに対して進撃開始しました!」

 

(頼むぞ、スピリッツ……)

 

今までにない試みとして、ハイヴに直接突入し間引きする。その役割を、スピリッツが担うことになった。

場所は変わり、佐渡島。

その一角から強襲上陸を果たしたスピリッツは、一路ハイヴを目指した。勿論、道中に居るBETAを撃破しながらになり、その撃破数は既に数千を越えている。

 

『フェニックス1より、全隊へ! 陣形、アローヘッド! BETA群を突破し、ハイヴに突入する!』

 

『了解!!』

 

スピリッツのMS隊は、戦術機を優に超す進撃速度でハイヴに迫っていく。勿論だが、BETA群もタダで通す訳ではなく、付近に居るあらゆるBETAがスピリッツに突撃してくる。その総数は、優に数万を越える。

だが、その程度で止まるスピリッツではない。

 

『来たぞ、殲滅開始!』

 

『了解!』

 

マークの指示を受けて、スピリッツはその牙を開放した。突撃級を両断し、要撃級を吹き飛ばし、戦車級をミンチにする。そうして作られるBETAの残骸による道。その道を、スピリッツは止まることなく駆け抜けていく。

 

『光線級確認!』

 

『撃ち抜く!!』

 

光線級を視認した和泉と上総により、光線級は容易く撃滅される。元衛士なだけあり、光線級の危険さはよく理解している。故に、最優先で撃滅する。

 

『つっ、要塞級を確認しました!』

 

『400mm無反動砲を叩き込む!』

 

地中から現れた要塞級に対し、祐輔機と結華機が400mmバズーカを撃ち込み、撃破する。

現在グランド隊は、彼等専用機の準備中だが、その腕前は最初期に比べてかなり上がっている。

要塞級を倒したグランド隊は、横から接近してきた突撃級にビームの弾幕を叩き込み、孔だらけにして撃滅する。

そうして見えたのは、地面にポッカリと空いた大きな穴。通称、門(ゲート)である。

この門は、一定間隔で開いており、ハイヴの根本にある門から数字が割り振られている。

そして、ハイヴの根本の1番門は一番大きく、吐き出されるBETAの数も半端ではない。

だから、今までの突入作戦では遠い門から突入してきていた。確かに遠いかもしれない。だが、それが一番被害が少なくハイヴに突入できる方法だった。

だが今回、スピリッツはそのシングルナンバー門から突入する。

何故ならば、出てくるBETAの数が多いということは、それらを撃破すれば間引き作戦としては成功になるのだ。しかもスピリッツは、そのシングルナンバー門からある場所を目指す。そこは、ハイヴの中心を貫通する大きい穴。

時々だが、その穴を使い、何かが打ち上げられるのを確認しており、スピリッツも一度だけだが確認した。

その際に、強力な電磁波を観測している。そこからスピリッツは、このハイヴはマスドライバーだと結論付けた。

ならば、その下にあるのは、給電機構を果たす機関。

通称、あ号標的たるコアに他ならない。

流石に、完全破壊は出来ないだろうが、攻撃すれば何らかの損傷を与えることに繋がる筈である。

門から現れたBETAを突破したスピリッツは、そのまま中心を目指した。その間も出てくるBETA群を強行突破し、中心を目指す。

 

『隊長、あの壁の向こうです!』

 

『破砕突破する! 一点集中砲撃!!』

 

『了解!!』

 

マークの指示を受けて、ある一ヶ所に砲撃が撃ち込まれた。それにより、その壁は崩落。マークが見てみれば、深さは数百mは有ろう穴が見えた。

上に視線を向けると、遥か高くに重金属雲が形成された曇天が見える。間違いなく、穴だ。

 

『よし、真下にコレを落とすぞ』

 

そう言ってマークが取り出したのは、一つのコンテナ。それは、Sー11の技術を転用して開発した爆弾で、その威力はSー11の約二倍に達する。

 

『信管は、衝撃に設定……投下』

 

設定を終えると、マーク機はそのコンテナを落とした。ドンドンと落ちていくコンテナ、少しすると完全に見えなくなり、数十秒後。

 

『来るぞ、衝撃に備えろ!』

 

マークの指示に従い、スピリッツは穴から離れて構えた。その直後、凄まじい爆発が下から聞こえ、爆炎が上がった。それを確認したマークは

 

『よし、離脱する!』

 

と指示を下し、素早く離脱を開始した。そしてその爆発は、天照でも確認していた。

 

「ハイヴにて、爆発を確認!」

 

「おお……本当に……」

 

「全軍に通達! スピリッツは作戦を成功させた!

彼等の撤退を支援する! 所定通りのポイントに、砲撃開始!!」

 

小澤の指示の直後、天照を含めた艦隊から砲撃が放たれ、面制圧を開始した。それから数分後、スピリッツは無事に帰還を果たし、試験機部隊も全機帰還を果たした。これは、事実上の大成功になる。

撃破出来た数も多く、暫くの間は佐渡島ハイヴから本土に上陸してくるBETAは居ないだろうと判断されたのである。

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