『君達は逃げろ! 僕は置いていけ!!』
「大尉を置いてはいけません!!」
上官たる年若い中隊長
その祐輔が乗る赤い瑞鶴は、片足が無く、周囲には夥しい数のBETAに囲まれていた
彼は
その部下の居るコクピットブロックを、
その甲斐あり、その部下は別の部下が保持
先に離脱させた
しかしその直後、
しかも倒れた直後に、戦車級に取り付かれてしまった
その戦車級は残った数少ない部下の一人
結華によって排除されたが、要撃級と戦車級の攻撃により強制脱出装置が作動しなくなってしまったのだ
だから祐輔は、二番機たる結華に離脱するように言ったのだ
しかし、結華は拒否
残弾僅かな複合突撃砲で、近づいてくるBETAの迎撃を始めた
だが、結果は火を見るより明らかだった
一機の白い瑞鶴が、残弾の無くなった突撃砲を投棄
長刀を装備し、要撃級に斬りかかった
連続で振るった長刀により、二体の要撃級が斬られて倒れた
だがその直後、横合いから
『ガァァァァァァ!?』
『藤田ぁ!? アギュ!?』
僚機の披撃墜に気を取られた別の白い瑞鶴が、コクピット部分に要撃級の装甲腕に殴られて、潰れた
『藤田少尉! 原田少尉!!』
これで残ったのは、山吹色の瑞鶴の結華のみ
だからだろう、祐輔は
『今からでも遅くない! 結華だけでも!!』
「嫌だ!!」
結華はそう叫びながら、弾切れの複合突撃砲を投棄
長刀を構えた
実はこの二人、幼馴染みなのだ
二人の家は、近衛の中では数少ない五摂家を主家としてない家系で、家が近かったから家族での付き合いが強い家だった
そこで、祐輔が度々結華と遊んでいた
結華は、他の子供達とは違っていた
それは、色素欠落によるアルビノ
結華の髪と肌は白く、それが他の子供達には異様に見えたのだ
しかし祐輔は、そんなこと気にしないと結華と遊んだ
結華には少し年の離れた兄が居たが、むしろ祐輔のほうが兄という感覚
否、ある感覚が非常に強かった
「ああぁぁぁぁぁ!!」
結華は雄叫びを上げながら、長刀を次々と振るった
それにより、要撃級や戦車級が次々と肉片に変わり果てる
「邪魔ぁぁぁ!!」
そして、割って現れた突撃級を回避し、その背中に長刀を突き刺した
その瞬間、機体を衝撃が襲った
「しまっ!?」
結華が原因を把握した時、既に遅かった
数体の戦車級が、機体の背中に飛び付いていたのだ
どうやら、近くの木を使って飛び付いたようだ
それにより、結華機は転倒
その結華機に、続々と戦車級が群がってくる
「くそっ! 退けぇ!!」
結華はそう言いながら操縦捍を動かすが、最早どうにもならない
後は、喰われるだけ
だが、その時
『そこの二機、動くな』
と声が聞こえて、閃光が走った
「なっ!?」
『なんだ?』
走った数条の閃光は、正確無比に二機にくっついた戦車級のみを撃破
するとBETA群は、一斉に方向転換した
だが
『遅いっ!』
『はあぁぁぁ!!』
三機の同型機が、弾幕を形成しBETA群を迎撃
更に
『しっ!』
『消えなさい! 化け物共!』
二機が光刃を振るい、次々と両断
驚いたのは、硬い装甲に覆われた突撃級すらも両断していたことだった
「突撃級の装甲角を、まるで紙みたいに……」
突撃級の装甲角、戦車級の歯、要撃級の装甲腕はモース硬度15度以上の物質により出来ていて、戦術機の120mm砲でも簡単には撃ち抜けない
それが、光刃によってまるで紙みたいに斬られている
それが、信じられなかった
その間に、倒れている二機の周りに次々と機体が着地
円形陣に布陣した
『そこの二機、パイロットは無事だな?』
と問い掛けたのは、祐輔と差は無いだろう青年
直哉だった
『こちらは無事ですが……貴方方は……?』
『まあ、日本の危機に馳せ参じた傭兵……という処かな?』
祐輔の問い掛けに、直哉はそう言った
しかも直哉は、話しながらもライフルを連射
要撃級や突撃級を次々と撃級している
そして、周囲に居たBETA群
約3000は、数分と経たずに全滅した
『サンド1。この二機は?』
『同じ嵐山基地の別部隊です!』
直哉が問い掛けると、唯依はそう答えた
その声を聞いて、祐輔が
『その声……篁少尉?』
と驚いいていた
すると、唯依は
『榊原大尉、間に合って良かったです! 常村中尉も!』
と言った
その時、こちらに接近してくる大量の反応があった
時速約180kmという速さで、300を超える突撃級集団が接近してきていた
「ヤバイ!」
いくら戦術機とは言え、今の二機はまともな戦闘は不可能
そうなれば、ただの足手まといにしかならない
『僕達を置いて、貴方方は逃げてください! 僕達は、脱出すら出来ません!!』
今の二機は、BETAの攻撃で強制脱出やパワーアウト(強化外骨格を使った脱出)も出来なくなっている
そんな二機を助けるには、保持して脱出するしかない
だが、下手に高度を取れば光線級に照射される
『全機構えろ……あの暴走馬鹿に、砲弾を撃ち込んでやれ!!』
『了解!』
直哉の指示に従い、全機は射撃兵装を構えた
足を止めての射撃など、突撃級相手には自殺行為にしかならない
『距離6000で、砲撃開始!』
『了解!』
距離6000
それは、一般的な複合突撃砲の倍近い射程距離だ
普通だったら、有効打にはならない
『……撃てぇ!!』
直哉の指示に従い、トライアド中隊とサンド小隊は一斉に砲撃した
恐るべきは、その威力だった
光の弾は容易く突撃級を貫通し、大口径砲弾は突撃級を簡単に吹き飛ばした
『なっ……』
「なんて威力……」
その光景に、祐輔と結華は絶句した
一分程で、300居た突撃級はたった50に減った
すると、直哉は
『
『了解!』
『任せな!!』
直哉の指示を受けて、一機が前に出た
そして
『吹き飛べ……化け物がぁ!!』
と言った直後、一度の砲撃で残存突撃級は全て吹き飛んだ
そして、他に生き残りが居ないのを確認すると
『彼等を、母艦に運ぶぞ。サンド2と3が、山吹色を。05と06が赤いのを保持。他は全周警戒だ』
と指示を出した
その指示に従い、四機で二機を母艦に運んだ
そして、レーザーカッターでコクピットハッチを切断し中から二人を運び出した
それを確認した直哉は
「艦長に、後退するように伝えてくれ。現域を放棄し、後退しよう」
と言った
その直後、結華に支えられた祐輔が
「ダメだ! これ以上は、後退出来ないっ!」
と声を張り上げた
「大尉、無理しないでください! 大尉は怪我を!」
「僕はいい! それより、これより下がってはいけないんだ!」
結華を振り払い、受話器を掴んでいた直哉に祐輔は掴みかかった
「どういうことだ?」
直哉が問い掛けると、祐輔は
「BETA群が八幡を突破したら……アメリカ軍がこの地に、核を落とすんだ!!」
と衝撃的事実を告げた
それを聞いた唯依達サンド隊は固まり、直哉は
「なん……だと……?」
と驚いていた
「今琵琶湖には、アメリカ海軍第七機動艦隊旗艦、フィッツ・ジェラルドが我が帝国海軍、紀伊、尾張と共に展開しています……八幡をBETA群に占拠された場合、その艦隊が危機に陥ります……アメリカ軍はその空母を守るために、京都諸ともBETAを吹き飛ばす心算なんです!!」
「京都に……」
「核を……?」
祐輔の言葉を聞いて、唯依達は顔色が蒼白になった
未だにBETAは、数万規模残っている
それらはもうすぐ、京都に到達する
そうなれば、いくら士気旺盛な帝国軍と言っても突破される
「その話……本当なんですか、大尉……?」
結華が問い掛けると、祐輔は
「五摂家が一つ……斑鳩少佐から聞いた話……嘘な訳がない……」
と悔しそうに言った
それを聞いた直哉は、受話器を耳に当てて
「艦長、アークエンジェルに至急通達! 京都に全隊を集結させ、絶対防衛線を敷き、BETA群を殲滅させると!!」
と声を張り上げた
そして、受話器を戻すと
「今のを聞いたな! 大至急補給を!」
と近くに居た虚に告げた
「分かりました! 直ぐに!」
「各員、機体の状況を再確認! 必要ならば、整備を!」
虚が動き出すと、直ぐにそう言った
それを聞いて、各員は走り出した
すると、祐輔は
「お願いします! 自分に機体を貸してください! 見ている訳にはいきません!」
と言ってきた
それに続くように、結華も
「私にも貸してください!」
と言った
それを聞いた直哉は、少しすると
「……分かった。少し待て」
と言って、端末の操作を始めた
そして、二人に視線を向けて
「トルネードは一機だけだ……もう一機は、操作性がかなり過敏だ。それでもいいか?」
と問い掛けた
それを聞いた祐輔は
「構いません! 貸していただけるならば、なんでも!!」
と言った
それを聞いた直哉は
「分かった……薫子さん、トルネードと……フェニックスゼロ・改を!!」
と言ったのだった