それが起きたのは、ブルーフラッグが終盤に差し掛かった頃だった。ブルーフラッグの戦績で言うと、アルゴス小隊と途中参戦したインフィニティーズが全戦全勝。それに追随するのが、一敗の暴風小隊とイーダル小隊だ。
なおインフィニティーズだが、その部隊にはユウヤの知り合いが居た。
名前は、レオン・クゼとシャロン・エイム。二人共に少尉で、かつてユウヤが所属していた部隊の同僚だった。
そしてレオンは、ユウヤと同じ日系アメリカ人で、そのことに誇りを抱いている軍人だ。なにせ彼の家は、代々アメリカ軍に多大な貢献をしてきた家系だ。
そしてシャロンは、以前はユウヤの恋人だった。
しかし、シャロンとは自然解消。レオンは、かつて起きた上官を死なせた事故が原因で嫌悪な仲になっていた。
その二人がインフィニティーズに所属していたことも驚きだが、ユウヤはある懸念があった。
それは、レオンが前々から言っていたある口癖。
『
という言葉。それは、レオンの家に代々伝わる言葉だという。
それを気にしながら、タリサやイーフェイと歓楽街から基地の方に向かっていたのだが、ユウヤの耳は轟音を聞いた。
「おい、今の轟音はなんだ」
「轟音だ?」
「……この音、跳躍ユニット? けど、戦術機のより出力が低い……強化外骨格?」
ユウヤの言葉に、タリサは首を傾げ、イーフェイは耳を澄ませて聞こえた音に首を傾げた。その直後、三人が乗っていた車の後ろから、一台の配送車が猛スピードが走ってきた。
「何かに捕まれ!」
「うおおぉ!?」
それに間一髪気付いたユウヤは、ハンドルを一気に回して回避したが、三人が乗った車は壁にぶつかって停止。その横を、配送車が通り過ぎた。
「ユウヤ、何してんだよ!?」
「違うわよ、タリサ……あの配送車……見てみなさい」
通り過ぎた配送車はそのまま、警備兵が立つ場所に突撃すると押し潰した。
「なんなんだ……あの配送車は確か、歓楽街でよく見る配送車じゃねぇか」
「……おい、誰か出てきたぞ」
ユウヤが言うと、配送車の後ろのドアが開き、中から数人のツナギ姿の男女が出てきたのだが、タリサはその中の一人に見覚えがあった。
「な、ナタリー……!?」
それは、歓楽街でバーテンをやっている知り合いだった。
時は少し戻り、基地の司令部
「なんだ……何やら、警備兵の動きが慌ただしいな……」
「……中尉、ここから離れましょう」
「なに? しかし、巌谷中佐に定期連絡を……」
「繋がらないかと思われます……周りを見てください……国家間通信機を使っていた人達が、混乱し始めました」
尚人の言葉に、唯依は周囲を見回し異変に気付いた。国家間通信機の前に立っている利用者が、何やら混乱した様子で周囲を見回している。その時、重い音を立てながら隔壁が降り始めた。
「中尉!」
「くっ! 間に合え!」
「おい、待て!!」
二人が走り始めた直後、数人の警備兵が二人に向けて発砲した。二人はその銃撃を何とか回避し、間一髪で隔壁の隙間にスライディングし、司令部の外に出た。
「何が起きている……!?」
「今は分かりませんが……とりあえず、ハンガーに向かいます。あの車を使いましょう」
尚人は車が使えるのを確認してから、エンジンを掛けると、唯依を乗せてから走り出した。そして、車のダッシュボードに入っていた通信機を耳に着けたが
「……ダメですね……ジャミングされています……恐らくですが、司令部は完全に掌握されたと見るべきでしょう」
「バカな……こうも容易く……!」
「相手は、相当根回しをしていたのでしょう……恐らくは、RLF……」
「難民解放戦線……キリスト教恭順派か!?」
難民解放戦線
世界的大宗教のキリスト教の中の恭順派と呼ばれる一派が中心となっており、世界中で問題になっている難民のために戦っていると宣言しており、実質その戦力は全てが難民キャンプから抽出されているのが分かっており、そういった人員が、どこかで軍事訓練を受けて参加している。
そして、彼らの活動の一番の命題。それは、BETAは神の使いで、人類は滅びの時が来た。として、動いているのだ。
「今は、一刻も早くハンガーに向かって試験機の保護と戦闘態勢を取らないと……」
「そうだな……弐型を破壊させる訳にはいかん」
唯依の言葉を聞いた尚人は、一度頷き
「捕まっていてください……少し、荒く行きます!」
そう言って、一気にハンドルを回した。その直後、横で爆発が起きた。
「くっ!?」
「強化外骨格です! 中尉、後部座席に小銃があります! 牽制でも構いません、撃ってください!」
尚人の言葉を聞いた唯依は、後部座席に一挺の小銃があることに気付いた。だから唯依は、素早くシートを倒し、小銃を掴んでから見つけた強化外骨格に撃ち始めた。
強化外骨格の装甲は実は脆く、当たりどころによっては小銃でも十分に撃破が可能である。
しかし、今唯依は車に乗っていて、車は全速で走っている。照準など録に定まらないが、それでも効果はあった。強化外骨格は回避しようと高度を上げたが、その高さには送電線があった。軍事規格の、高圧送電線が。
その送電線に触れた直後、バヂヂヂヂという音が鳴り響き、更には凄まじい放電が発生。強化外骨格は、全体から煙を吹き上げながら墜落した。
あれでは、中の兵士は無事では済まないだろう。
「今のうちに、ハンガーに向かいます!」
「頼む!」
唯依が弾が切れた小銃を放り捨てると、尚人は車をハンガーに向かわせた。
アラスカ基地で、争乱が始まった。