アルゴス試験小隊ハンガー
「どうだ……?」
「……ダメです。基地司令部だけでなく、あらゆる施設と無線は一切通じません」
ヴィンセントの問い掛けに、一人の整備士が答えた。すると、別の整備士が
「あちこちから、黒煙が確認出来ました! 襲撃を受けているようです!」
と言いながら、首を振った。それを聞いたヴィンセントは、少し唸ってから
「何時でも出撃出来るように、機体に推進材を補給! それと、電源を入れる準備! ただ事じゃねぇぞ!」
と指示を下した。
「しかし、弾はどうするんですか? 実弾があるのは、国連かソ連の警備部隊だけですよ?」
一人の整備士の言葉に、ヴィンセントは腕組みしてから
「そうだ! 確か、近衛のハンガーに長刀とあの高周波短刀があったろ!? 何とか借りれないか、交渉してくる! お前らは、推進材を補給しとけ! それと、誰か来ても相手が誰か確認出来るまで、決して入れるな!?」
『はい!』
ヴィンセントの指示を受けて、整備士達は行動開始。そしてヴィンセントは、近衛のハンガーに向かった。
場所は変わり、司令部棟
『状況はどうだい、ヴァレンタイン?』
「は、
司令室メインモニターには、赤い髪が特徴のスーツ姿の男性が映っており、その男性。指導者に問われ、黒人の女性。ヴァレンタインは淡々と答えた。
この指導者が、RLFの最高責任者で、ヴァレンタインは今回の作戦の現場指揮官となっている。
指導者はヴァレンタインの報告に、頷くと
『素晴らしい手際だ、ヴァレンタイン……神の剣と炎の方は、どうなっているかな?』
「そちらに関しましては、予想外にセキュリティーが固く、今現在も手こずっています……ですが、研究員の一人の捕縛に成功しており、その研究員を尋問しているところです」
指導者の問い掛けに、ヴァレンタインは申し訳なさそうにしながら答えた。すると、指導者は
『いや、焦ると失敗してしまうからね……確実に進めたまえ……我らの行動の全てを、主は視ていてくださるからね』
「はっ」
指導者の言葉に、ヴァレンタインは頷いた。すると、少し広い場所に一纏めに拘束されていた将官の一人が
「待て! 神の剣と炎というのは、何のことだ!?」
と声を荒げた。それを聞いたRLFの歩兵の一人が小銃を向けるが
『いや、構わないよ……お忘れかな? 我々が、何を神の御遣いとしているのか』
「……まさか……!?」
指導者の言葉に、別の将官が顔を青ざめた。実はこのユーコン基地には、公表されていないが捕獲したBETAの実験施設があるのだ。その数は、実に数千体。そして、もしそのBETAが解放されたら、このユーコン基地は大変なことになるのだ。
『さあ……我々の戦いを始めよう』
『主の御加護があらんことを!!』
指導者の言葉の後に、その場に居たRLFのメンバーは一斉に言葉を合わせた。
再び場所は変わり、ある場所では
『時間だ、指令書を開封する』
『……これは』
『隊長……つまり上層部は、今回のテロを最初から知っていたということですか?』
『そのようだな。そして今回のテロを、ラプターのお披露目に選んだということだろう』
『だからって、歓楽街の民間人まで見殺しにするんですか!?』
『よせ、シャロン……俺達は、裏の部隊でもあるんだ。この部隊に配属された時から、覚悟はあった筈だ』
『そうだけど……!』
『なんにしろ、我々は任務に従うまでだ……我々の任務は、テログループの撃滅。そして……今回のテロに出てくる筈のスピリッツという傭兵部隊……その機体の鹵獲とパイロットの抹殺だ』
『了解!』
隠密部隊が動き出していた。しかし
『まさか間近に居て、通信が傍受されてるなんて、予想だにしていなかったみたいね』
『どちらにせよ、俺達の任務は変わらん……そちらは、手筈通りに』
『はいはーい。そっちも、気を付けてね? 機体に乗ってないんだから』
『乗ってなくとも、素人に毛が生えた程度の連中に負ける気は一切無いですが……さあ、
『了解!!』
傭兵達も、動き始めた。後にユーコン事件と呼ばれる事件が始まった。
傭兵と試験部隊の、アラスカに住む人達の為の戦いが幕を開ける。
「ナタリー……!」
「今は走れ、タリサ!」
「けど、彼女のおかげで情報がある程度入手出来たわ……司令部棟は、完全に奴らの制圧下って考えていいわね……それに、警備部隊も」
タリサ、ユウヤ、イーフェイの三人は一番近くの試験部隊ハンガーたるアルゴス試験小隊のハンガーに向かって走っていた。三人が使っていた高機動車はテログループの銃撃により、破壊されていたので走るしかなかった。
そしてナタリーだが、三人に対して色々と話していたのだが、どうやら相手にとっては予想外だったらしく、射殺された。
しかし、そのナタリーのおかげで三人は現状を知れた。後は、なんとしてもハンガーに到着するだけだ。
そこに、一台の装甲車が走ってきて
「乗れ! 早く!」
と運転席から、一人の国連軍歩兵らしい男が言ってきた。すると、その装甲車の上部ハッチと後部ハッチが開き中から二人の女性兵士が顔を出して銃を構えた。
「アルゴス試験小隊のタリサ・マナンダル少尉にユウヤ・ブリッジス少尉。暴風試験小隊のツイ・イーフェイ中尉ですね!?」
「私達は、国連軍警備部隊の者です! 恐らく、無事なのは私達だけです!」
女性兵士達はそう言って、近づいてきていた敵に銃撃を開始した。その様子から味方と判断した三人は、急いで装甲車に乗り込んだ。それを確認した男兵士は
「何かに掴まってください! 一気に回します!」
と言うと、装甲車を急発進させた。そして、少しすると
「ご無事で何よりです。私達は、国連軍警備部隊。あちらはシン・カーバイド准尉。私はアルトリア・コーハース軍曹」
「同じく、エレイシア・ヘイズ曹長です」
長い銀髪が特徴の女性兵士が、運転席の黒髪の男兵士の名前を言った後に自己紹介し、最後に短い金髪の女性兵士が名乗った。
すると、イーフェイが
「アルゴス試験小隊のハンガーに向かえ! 恐らく敵には、戦術機と強化外骨格が抑えられてる! 今のままでは、どうすることも出来ない!」
「了解、向かいます!」
イーフェイの指示に従い、装甲車は方向変換し速度を上げた。
その時、上部ハッチから顔を出していたアルトリアが
「2時の方向に、強化外骨格を確認!」
と報告してきた。それを聞いたエレイシアが、後部ハッチを開けて
「対戦術機榴弾を撃ちます! 耳を塞ぎ、口を開いてください!」
そう言って、発射機を構えた。その忠告に従い、三人は耳を塞いで口を開いた。その数秒後、重い音と共にロケット弾が発射された。十数秒後、爆発音が聞こえて
「敵強化外骨格の一機を撃破! しかし、後三機確認! 対戦術機榴弾は、今のが最後です!」
とエレイシアが報告してきた。
「確認! 機銃掃射で迎撃します!」
アルトリアはそう言って、装甲車上部に設置されている重機関銃を撃ち始めた。
「准尉、行けるか!?」
「なんとしても、送ります!!」
ユウヤの問いかけに、シンはそう答えながらハンドルを回した。
甲高い音を立てながら、装甲車は強化外骨格が撃ってきた機銃を回避。そして、放たれた12.7mm弾は強化外骨格に命中し、撃墜した。
「一機撃墜! 残存強化外骨格は離脱していきます!」
「今のうちに、アルゴス試験小隊のハンガーに向かう!」
そして、装甲車はアルゴス試験小隊のハンガーに向かっていった。