補給を始めてから、十数分後。
「ではこれより、戦力配置を教える。ジアコーザ少尉とブレーメル少尉は、二機で一番近くのアメリカ軍基地に向かって、応援要請を」
「了解だ!」
「了解したわ」
唯依は、対RLF作戦として人員配置を発表していた。それに先立ち、まずイーフェイ中尉は殲8型に乗り換え、更に暴風小隊を率いることになり、クリスカは強化装備を本来の物に着替えてから、イーニァが乗ってきたチェルミナートルに搭乗した。
サンダーク中尉は独自で行動するつもりのようで、既に離れた。
一応戦力的には多少増えたが、それでも数的劣勢は明らかで、僅かな油断が衰勢を決してしまうのは変わらない。
だから、取れる手は全て取ることにした。
VGとステラの二人を、近くのアメリカ軍基地に向かわせて、援軍要請。残りのメンバーは、生き残りの試験部隊を探しながら、RLFを撃破していき、もしかしたら居るかもしれないBETAの殲滅。
レッドシフトがどの程度のBETA個体数で発動するのか分からないために、殲滅する必要がある。
それに対する戦力は、武御雷が1、隼鷹が1、不知火弐型が2、殲8型が4、チェルミナートルが1という、余りにも心許ない戦力。
だが、逃げるという選択肢は無い。
自分では、人類の剣士であり盾の軍人なのだから。
「では、これより行動を開始する! 相手は、国際的テログループのRLF! 戦力としては、まず戦術機が最低でも約2個大隊は居るだろう。もしかしたら、BETAも出てくることが予想される。なるべく離れず、通信は密に。戦術データリンクは近接のみで、切れないように留意せよ! 我々の戦いに、このアラスカの地に住む人々の命運が掛かっている!」
唯依のその言葉に、その場に居た全兵士は真剣な表情を浮かべた。自分達の戦い次第で、アラスカの地が消えるかもしれないのだ。
「だが、我々ならば出来る筈だ! 油断なく、敵を撃破する! いいな!?」
『了解!!』
そして、一同は動き始めた。シン達はソ連側の歩兵装備を出来るだけ装甲車に積み込むと
「自分達は、出来る限り地上から支援します。出来ることは限られますが、対歩兵はお任せを」
と敬礼した。恐らくだが、彼らが生き残る確率はかなり低いだろう。RLFとて、対戦術機榴弾位は保有している筈だ。更には、BETAが出てきたらただの歩兵には荷が重く、たった三人ではどうなるかは明白だ。
「貴官らも……無事を祈る」
『はっ!!』
そして一同は、行動を開始した。シン達は装甲車に乗り込み、唯依達は戦術機に搭乗。先に、VGとステラがアメリカ軍基地の方向に向かって行った。広域データリンクは相手に奪われているために、もしかしたら追手が向けられるかもしれんが、アクティブの機動性は折り紙付き。簡単には、追い付けないだろう。
それを見送ると、唯依達も行動を開始した。ソ連ハンガーから発進し、敢えて歓楽街の方に向かった。RLFの言い分通りならば、民間人には手出しせずに避難させていると思ったからだ。
そして、歓楽街は何時もの人々の姿は一切無く、閑散としていた。更には、所々に血溜まりがあった。
おそらくは、抵抗した警備兵や衛士達のものだろう。
そう考えると、憤りを覚えた。
自分達の行動が、人類の大きなマイナスになっていると考えていないのだろうか。
その時
『ホワイトファング1! 1時の方向を!!』
尚人の言葉を聞いて、唯依は該当の方角を見て驚いた。そこには、幾多の戦車が見えた。
『戦車だと!? そんなモンまで配備してたのか!?』
『もしかしたら、RLFが極秘裏に搬入していた可能性もあるわね……火力は怖いけど、機動性は此方が上よ!!』
イーフェイはそう言って、突撃しようとした。だが、レーダーが高速接近する複数の小さな反応を捉えた。
『UAV!? 翼下には……不味い、対戦術機兵器だ!?』
『全機、
唯依の指示に従い、戦術機部隊は回避機動しつつ反撃を開始した。幾ら旧式兵器とは言っても、相手の方が数は圧倒的に多い。徐々に追い詰められていく。しかも、そこに接近してきたのは大隊規模の戦術機部隊。
『不味いぞ! ファイティングファルコンとラーストチカだ!』
『これは……!?』
唯依が歯噛みした時、一台の戦車が吹き飛んだ。
『つっ! 准尉達か!?』
ユウヤが見つけたのは、蛇行運転しながら走る装甲車で、その上部ハッチから身を出したアルトリアが機銃でUAVを牽制し、後部から出てきたエレイシアが対戦術機榴弾で次々と戦車を攻撃している。
そしてシンは、時々片腕で小銃を撃っている。ユウヤが確認したが、RLFの歩兵が展開を開始していた。
『クソッ! 波状攻撃かよ!!』
『MLRS、発射しまするネ!』
暴風2の肩に装備されていたMLRSから、次々とミサイルが発射されて、戦車部隊に殺到していく。
MLRSはその威力を発揮し、戦車を鉄屑に変えていく。暴風2はMLRSユニットを排除し、複合突撃砲で対空砲撃を始めた。
本当に少しずつだが、相手の戦力を削っていた。
ユウヤも、UAVの撃破を行い、UAVが全滅した。その時
『准尉!?』
『なに!?』
装甲車が、戦車の砲撃を受けて爆発した。
あれでは、生存は絶望的だろう。
『クソがあぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ユウヤは怒りの雄叫びを挙げながら、戦車部隊に36mmと120mmを次々と撃ち込んだ。短い間だったが、共に戦った仲間の仇を討つために。ユウヤの砲撃で、戦車部隊は壊滅。残ったのは、戦術機部隊と歩兵のみ。
『数ばっかり居たってよぉぉぉぉぉ!!』
ユウヤは素早く反転し、ナイフを持って接近してきていたファイティングファルコンの腰を長刀で両断し、一歩踏み込みながら切り返した長刀で二機目のファイティングファルコンの胸部を斬った。その横を、隼鷹が通り過ぎ
『ふっ!!』
短い呼気と共に、右手の長刀でラーストチカのモーターブレードを受け止めて、左手の突撃砲を至近距離で撃った。順調に、数を減らしていくRLFの戦力だが、唯依には嫌な予感がしていた。
その時、司令部
「指導者様……神の剣の準備が整いました。何時でも可能です」
「うん、ありがとう。ヴァレンタイン……さあ、計画もいよいよ最終段階に入る……」
赤い髪の男、RLFの総指導者は立ち上がり、大仰に両手を広げて
「虐げられし者達のために、傲慢なる者達に神に代わって制裁を下そう! 神の剣を、解き放て!!」
その号令を、下した。