『それで、ブリッジス。報告しろ』
「あ、ああ ……」
唯依に促される形で、ユウヤは唯依に道中のことを報告した。それを聞き、唯依は
『ということは、後方からのBETAは減るな……後は、私達も削るが……』
「中尉、あれは何が起きてるんだ!?」
ユウヤが聞いたのは、尋常ではない気配でBETAを殺し続けているチェルミナートルだ。ユウヤには、同じ人間が操縦しているとは思えなかった。
『詳細なことは、私にもわからない……だが、ああなる前にビャーチェノワ少尉が警告してきたんだ。私達に離れろとな……機密で話せないが、秘匿機能を解放すると……その際に、私達を巻き込む可能性があるから離れてくれ、と……』
「どんな機能だよっ!?」
唯依からの説明を聞き、ユウヤは思わず吐くように言ってしまった。見ている限り、BETA群の攻撃を紙一重で回避し、無駄なくBETAを殺していた。そんなの、人間技とは思えなかった。
「それに……BETA群が全て、チェルミナートルに集中しているのはどうしてだ!?」
『そんなこと、私が知りたい位だ! 秘匿機能を解放する前までは、確かにBETA群は私達を無視してハイヴに向かっていた!』
ユウヤの言葉を聞いて、唯依も困惑した声音で返答してきた。やはり、今の状況は唯依にも理解不能な状況なようだ。
「それで、タリサはどうしてああなった!?」
『マナンダル少尉は、援護すべきだと言って、私が静止する前に突撃し、チェルミナートルに攻撃されたんだ。その後は、岩壁に叩き付けられ、動けなくなってしまった……少し前に聞こえたが、どうやら怪我はしてないようだが、脱出は出来ないらしい』
一先ず、タリサは無事だと分かったユウヤは、安堵した。しかし、問題はここからだった。タリサ機の回収もだが、クリスカ達を止められるのか、わからなかった。
「まずは、BETAを減らす!」
『ああ……これ以上、見ているだけという訳にはいかん! バオフェン各機の指揮は、バオフェン1に任せる! 無理の無い範囲でBETAを攻撃するんだ!』
『了解! 行くぞ、続け!』
『了解!』
唯依の指示を受けて、暴風小隊はBETA群に突撃。そして、唯依機の隣に尚人機が着地し
『中尉、何時でも行けます……御下命を』
と指示を仰いだ。それを聞き、唯依は長刀を掲げ
『行くぞ、ホワイトファング2……我々の武勇を、この地に刻みつけるぞ!!』
『了解!!』
「俺も行くぜ!!」
唯依を先頭に、尚人機とユウヤ機が続く。突撃した三機は、訓練の賜物なのか見事な連携で次々とBETA群を残骸に変えていく。しかし、不安要素があった。接近したタリサが攻撃されたということは、BETAが居なくなったら、チェルミナートルはこちらに攻撃してくるのではなかろうか。
ユウヤは、そう思った。そして、その懸念は当たってしまった。
ユウヤ達が周囲のBETAを殲滅し、後方からの流入も止まった時、ロックオン警報が鳴り響いた。そして、そのロックオンレーダーを照射してきたのは勿論、チェルミナートルに他ならない。
「やっぱり、そうなるよな……」
チェルミナートルからロックオンレーダーが照射されてると気付いたユウヤは、右手に突撃砲を保持し、左手に長刀を保持して構えた。どうやら、正面から迎え撃つつもりのようだ。確かに、今居るメンバーの中では、一番対人戦に慣れてるのはユウヤ以外に居ない。
しかし
『ブリッジス……お前だけに任せる訳がないだろう』
『微力ですが、こちらも出来るだけ援護します』
そこに、唯依と尚人も参戦の意を示した。元より、仲間を見捨てるという選択肢など有るわけが無いのだ。とはいえ、双方共に弾薬は最早マトモに残っていないのは確実だ。チェルミナートルは、BETA群との戦闘中に突撃砲を投棄しており、残っているのはモーターブレードのみ。ユウヤ達も、残弾は突撃砲に装填している弾倉が最後だ。
『互いの位置は、常に確認しろ……相手は、一筋縄には往かないぞ……!』
『了解!』
「もとよりその積もりだ!」
その言葉を合図に、三機は一斉に突撃開始した。そこからの三機の連撃は見事としか言い様がなく、普通の衛士やRLFクラスだったら、中隊規模は確実に撃滅していただろう。
だがチェルミナートルは、それらの攻撃を必要最低限の動きのみで全て回避しきった。まるで、
「なんだ、今の動きは!?」
『こちらの攻撃が、全て避けられただと!?』
『来ます!!』
尚人の忠告の直後、チェルミナートルが動いた。何時の間にかユウヤ機の前に滑り込み、両手のモーターブレードを繰り出した。
「くあっ!?」
それをユウヤは、長刀で間一髪で防いだ。火花が激しく散り、チェルミナートルとユウヤ機を照らす。
『ブリッジス!』
『ブリッジス少尉!』
そこを、尚人と唯依が長刀を突き出すが、チェルミナートルは超高速で反応し後退し、離脱していた。明らかに、人間の反応速度を超えている。
『……生かしたまま、というのは難しそうだな……』
『同意します、中尉』
「待ってくれ! それは……!」
ユウヤは唯依達を止めようとした。だが
『手加減する余裕などない! 逆に、此方が撃破されかねない!!』
と強い語気で諭された。しかし
「だからって、味方を見捨てる気にはならない! クリスカ達は、俺が助ける!!」
ユウヤはそう言って、機体を進ませた。
『ブリッジス!』
『支援します!!』
尚人が機体を進ませてから僅かに遅れて、唯依も機体を進ませた。
「クリスカァァァァァ!!」
機械に囚われた少女達の解放の戦いが始まる。