「クリスカアアアァァァァァ!!」
ユウヤはクリスカの名前を叫びながら、突撃砲を撃った。狙いは勿論、脚である。脚を破壊すれば、戦術機はまともに戦えなくなるからだ。間違っても、胴体を狙うのは無しだ。ユウヤは射撃には自信があるが、先ほどから見るチェルミナートルの回避機動は予想を上回るもので、下手に撃てばコクピットに命中してしまう恐れがあった。
しかし、ユウヤが撃った36mm弾は虚しくも空を切るだけに終わった。まるですり抜けたとしか見えない回避機動で、チェルミナートルは36mm弾を全て回避。気付けば、ユウヤ機に迫っていた。
「クソッ! 予想以上に速えぇ!?」
ユウヤは悪態を吐きながらも、チェルミナートルが繰り出した右手のモーターブレードを長刀で受け止め、今度は至近距離で頭を狙って36mmを撃った。
しかし、その至近距離の砲撃すらもチェルミナートルは頭を斜めにしただけで回避。そして、左手のモーターブレードでユウヤ機のコクピット目掛けて突き出そうとしたが
『ブリッジス少尉!!』
そこに、尚人機が援護に入った。尚人機は120mm徹甲榴弾を、チェルミナートルの脚を狙って一発だけ撃った。その瞬間には、チェルミナートルは素早く後退してユウヤ機から距離を離した。
一分にも満たないあっという間の攻防戦に、ユウヤは荒く呼吸を繰り返していた。
決して侮っていた訳ではないが、予想以上にチェルミナートルの動きが人間とは思えないものだった。
『ブリッジス少尉、無茶はしないでください!』
「予想以上過ぎる動きだったぜ……こりゃ、楽には終わらないな……」
最初から分かっていたことだったが、ユウヤは改めて呟いた。クリスカの動きはユウヤもある程度予測しているが、完全にその予測を上回っている。
更には、此方の動きを予知しているとしか言い様が無い動きに、攻撃を全て避けられた。
対人戦に慣れてるユウヤだったが、クリスカのような動きをする相手に出会ったことは無かった。
「だったら……更に早くいけばいいだけだ!!」
『援護します!』
『つっ!』
遅れて合流した唯依も続き、三機はチェルミナートルに突撃した。共に戦った経験こそ少ないが、唯依と尚人の腕は把握している。二人を信頼し、ユウヤは跳躍ユニットを全開で噴かす。そして、原型の不知火よりも更に強化された空力特性も活かし、複雑な三次元機動でチェルミナートルに迫った。
そんなユウヤ機を支援するために、後方から唯依機と尚人機が砲撃を放つ。二機からの砲撃を、チェルミナートルは最低限の動きで回避。それを見つつも、ユウヤはチェルミナートルの動きの先を予測し、先回りし
「オオォォォォォ!!」
烈帛の気合いと共に、チェルミナートルの頭を狙って長刀を振るう。だがその一撃を、チェルミナートルはしゃがんで回避した。しかし、それは予測済み。だからユウヤは、脚を狙って突撃砲から120mm
「今のもかよ!?」
ユウヤは驚きながらも、チェルミナートルの動きを見逃さないと視線を向けた。その時
『はあああぁぁぁぁ!!』
と唯依機が、モーターブレードを展開したチェルミナートルと切り結んでいた。その長刀の攻撃は、ユウヤから見たら見事なタイミングと速度で繰り出されていたが、その一撃にもチェルミナートルは素早く反応してモーターブレードで防いだ。
しかし、モーターブレードが配置されているのは両手手首だけではない。
チェルミナートルは両脚のモーターブレードも展開し、唯依機に蹴りを繰り出そうとした。だがそこに、尚人機が切り込んで阻止。その隙を突いて、ユウヤが突撃砲を向けた瞬間、チェルミナートルは素早く身を翻して後退。そして、間髪入れずにユウヤ機に向かってモーターブレードを突き出した。
(マズい! 回避が、間に合わない!?)
ユウヤは直感で、回避が間に合わないことを察した。そして、モーターブレードが当たると思われた時
(クリスカ、ダメぇ!!)
と頭の中に、イーニァの声が響き渡った。その直後、ユウヤ機を激しい衝撃が襲い
「ぐううううっ!?」
歯を喰い縛って耐え、気付けばチェルミナートルがユウヤ機の斜め後方に仰向けに倒れていた。
「な……何が、起こったんだ……?」
ユウヤは呆然としながらも、ゆっくりとチェルミナートルに近づいた。起き上がって攻撃してくるのを、警戒したのだ。しかし、間近に近づいても動く様子が無い。ユウヤはそれを確認しつつ
「篁中尉、神田少尉。俺はこれから機体を降りて、チェルミナートルのコクピットブロックを開ける」
『了解した。気を付けろ、ブリッジス』
『念のために待機します』
二人の返答を聞いてから、ユウヤは自機の膝を突かせて機体を降りた。そして、チェルミナートルの胸部に登って、コクピットブロックの緊急解放用の国際共通パスコードを入力した。すると、蒸気を吹き出してからコクピットブロックが出てきた。すると
「イーニァ! 返事をして! イーニァ!!」
とクリスカの憔悴した声が聞こえ、ユウヤは慌てて中を見た。すると、額から血を流すイーニァをクリスカが揺すっていた。
その時、ユウヤは後ろを向いていた為に気付かなかったが、頭上を一筋の閃光が走った。
それを見ていた尚人と唯依は
『篁中尉……今のは……』
『間違いない……スピリッツだ……来ているのか……』
と閃光が来た方向を見てから、閃光の先を見た。その先では、何かが燃えていた。