ユウヤ機とクリスカ・イーニァ機の戦闘が終わり、直哉達が地下のBETAと残っていたRLFの戦術機を撃破した時、ユウヤ達の現場から少し離れた高台に、一機のFー22EMDがステルス機能を全開にして、突撃砲を構えていた。
「あれが、ソ連の人形か……確かに、先ほどまでの戦闘能力は凄かったが……」
そう評価したのは、アメリカ陸軍第65戦闘教導団所属であり、ユーコン基地に配備された小隊の隊長を勤めるキース・ブレイザー中尉だ。
癖の強い部隊を纏められる冷静さと任務遂行の為ならどんな犠牲や手段も取る冷酷さを持っていて、今キースは隙あらばガンダムを鹵確する為にパイロットを殺す準備をしていた。
だが、研究者が予想したガンダムの予想装甲強度は高く、36mmではどうにも成らない。ならば狙うのは、パイロットがコクピットから身を晒した時になる。
だが、それは賭けだ。そもそも、パイロットがコクピットから出てくるタイミングが分からない。
その時だった、黒い装甲のガンダム。デルタカイ・フレスベルグの胸部が動き、コクピットからパイロットが姿を出した。黒い宇宙服のような物を着て、ヘルメットを被っているが、間違いないだろう。
(チャンスが来た!!)
キース・ブレイザーは突撃砲を狙撃モードに切り替え、精密照準を開始した。生身の人間に36mmを撃ったら、それこそ悲惨な姿になるが、キースには知った事ではない。任務の完遂の為なら、例え部下だろうが民間人だろうが犠牲にするのも厭わない。
そして、精密照準が終わって引き金を引くために指を掛けた時、パイロットが頭を向けた。
(まさか、気付かれた!? いや、有り得ない! 優に1kmは離れているんだぞ!?)
動揺しながらも、キースは引き金を引こうとした。その瞬間、警報が鳴り響いてそれにキースが意識を向ける間もなく
『それを、お姉さんが許すとでも?』
と声が聞こえて、突撃砲が両断された。キースは素早く突撃砲を放し、警戒しようとした。だが、気付けば両腕が切り飛ばされ、さらには背中の武装パイロンも破壊された。
(何が起きた!?)
混乱していると、次には強い衝撃が与えられて転倒。何とか立て直そうとするが、中々起きれない。すると、何もなかった筈の空間から揺らめくように一機の流線型の黒い装甲のガンダムが現れた。
「なっ……まさか、光学迷彩だとでも言うのか!?」
まさに、至近距離に近付かれるまで気付かなかったこともだが、まるで空想科学のような技術にキースは驚愕した。そして、盾とライフルが一体化された武装を突き付けられ、キースは動きを止めて
「こうなったら……証拠を残す訳には……!」
と自爆装置を起動させた。インフィニティーズの機体には、Sー11に匹敵する高性能爆薬が機体全体に仕込まれていた。これは、
起爆すれば、パイロットは勿論だが機体も跡形も残らない程に吹き飛ぶ。
だが、証拠を残す訳にはいかないと考えたキースは自爆も厭わない覚悟だった。そして、確かに自爆装置は起動したのだが
「なっ……自爆装置が……!?」
なんと、自爆装置が解除されたのだ。実はキースは気付いていなかったのだが、AGF天ミナ改の右手人差し指の付け根辺りから細いワイヤーがFー22EMDの表面にくっついていた。
接触回線を介し、楯無は簪と一緒に自爆装置を解除し、更には暫くの間起動出来ないようにしたのだ。
そして、楯無は
『これ以上動けば、鹵確して連行するわよ?』
とビームサーベルを出力させた。鹵確されるのだけは、なんとしても免れなければならない。そう考えたキースは、動きを止めた。
だが、キースは知らなかった。すでに、楯無によって作戦情報が抜かれていることに。
その後キースは、楯無機が居なくなっても暫くの間は動けなかった。まだ近くに居るような気がして、仕方なかったからだ。