堕天使達の主を探し出し、アジトらしき場所へと突入すると、そこに待ち受けていたのは俺を襲っていた4人と、その真ん中にはコートを着た男がいた。
「お前が、俺を襲った奴らの張本人か?」
「正解だ。
まぁ自己紹介はしなくても、これを持っている奴ら同士、目的は分かるよな」
そう言い取り出したのは、俺の持っている契約書とは色は違うが、確かに契約書だった。
「お前の所の下僕はなかなかに質が良いからな。
まぁ下僕を奪えるルールは分かるよな」
「下僕自身が屈服するか、契約書を奪うか?」
「正解だ。
幾ら、その二人が強くても、数の暴力に勝てるかな?」
そう言い、自慢げに言っているが、ここに行く道中である程度調べがついているので、今回は戦闘ではなく、別の事に集中させて貰おうか。
「まぁ確かに不利だし、俺は戦う力はないがな」
「ほぅ、ならばどうする?
大人しく、俺の下僕になるか?」
「あぁそれなんだけど、その前に幾つか聞きたい」
俺はそう言うと、契約書に手を伸ばし、手に取ったのは弾丸だ。
弾丸を見て、奴らは警戒しているようだが、俺はそれを無視して、弾丸を手の中で遊びながら、ターゲットを絞り込む。
「姫島さんよ。
お前がそいつを主にしたのは、母親を殺した奴の復讐をしてくれたからだったけ?」
「それがどうしたのですか?
その人のおかげで今の私はあるのですから」
「まぁそうだよな。
だって今のあなたを形成した全てはそいつのおかげだから」
「えぇ、その通りですわ」
「あぁ本当に、敵を取ったのも、間接的に母親を殺したのはそいつだからな。
ある意味、そいつがあなたの全てを作り出したのは本当だな」
「なっ」
「何を言い出すんだ、貴様っ!!」
奴は俺に対して文句を言おうとした瞬間、レキが銃弾を撃ち込み、こちらに近づけさせるのを阻止させた。
「何をそんなに慌てる?
まぁ本当の事がバレるのは怖いからな」
そう言い、俺は契約書を読んでいく。
「卯尾 宗。
年齢30歳、20歳の時に契約書を手に入れ、下級悪魔と契約。
契約書で得られた能力は誤嚥、間違った情報を相手に飲ませる事ができる
契約書を得て以降は自身の戦闘能力の低さを補うように様々な種族の下僕を集める。
中でも将来は大きく強くなる可能性のある人物の洗脳に力を入れている」
「なっ何を言っているんだ」
動揺している様子なのか、奴は冷や汗をかいているが、これに関してはある事への布石だ。
「堕天使三人には、絶対的な地位を約束させて利益を分ける。
それ以外の奴は洗脳、中でも姫島は依存させるのには成功させた」
「んぐぅ!!」
「そっそんなはずはないです!!
卯尾様は、私を救って」
「悪いが、俺の情報は正確なんでね」
「情報ですって?」
俺はそう言い、手に取った弾丸を見せる。
「俺の能力は言弾。
真実を相手に打ち込み、伝える。
そして、この能力を使うには本当の情報しかできないという欠点があるが、俺の元に集まってくれた人達のおかげでこの能力をサポートする能力もできた」
「騙されるな、あんな嘘つきの言う事を信じるのか」
「そっそれは」
「別に信じなくても良いぜ。
心地よい嘘に浸かるのも、だけどな、本当の真実を知りたいのだったら、俺の攻撃を受ける事だな」
そう言い、俺は弾丸を手の中に収めると同時に指を銃のように構えて、姫島に向ける。
「俺はお前を救った命の恩人だぞ!!」
「それは違うよ!!!」
その言葉と同時に弾丸は姫島の胸を打ち抜くと、彼女は膝から崩れ落ちた。
胸からは血は一切流れなかったが、代わりに目からは溢れるばかりの涙が出てくる。
「そんな、あの日、私は」
「きっ貴様、一体何をしやがった!!」
「別に真実を伝えただけだが?」
言霊は相手がこちらに対して疑っている事を晴らす他に、相手が感じている違和感を削ぐ力がある。
今回は、姫島の中にある長年の違和感を消し去った。
「くっそ、ここまでするのに、苦労したのに!
貴様のせいで」
「お前には興味はない。
聞きたいが、姫島、俺の下僕になるか?」
既に戦いは終えて、俺はここでやっと今回の目的を果たす事にした。
「なっ何を言っているんだ?
そんなの受けいる訳が「分かりました」なっ姫島!!」
姫島はその言葉を受けると同時に立ち上がり、卯尾に対して睨み付けた。
「契約しますわ。
私は古き主から反逆し、新たな主へと移り変わる事を」
「何を馬鹿な事を!!
そんなに簡単に移り変わる事などっ!?」
そう言い、奴は契約書を見ると、先程までの余裕の表情は消えていた。
「姫島のページが消えて、疑問に思ったんだろう?
まぁこっちの下僕になったからな」
俺はそう言い、契約書のページを一枚見せると、卯尾は驚いた様子だった。
「にしても、その恰好はちょっと。
個人的にはこっちの方が趣味だな」
そう言い、姫島のページに触れて、イメージすると、姫島が身に纏っていた黒いボンテージは変わり、白い巫女へと変わった。
「服が変わっただとっ!?」
「ふふっ、なんていうか皮肉ですわね。
あの時の母様と同じ格好だなんて」
「くっお前達、姫島を拘束しろ。
こうなれば、無理矢理俺の下僕にっ!?」
奴が命令を下そうとした瞬間、姫島を中心に巨大な雷が辺り一面に降り注ぎ、レイレーナ達を一瞬で黒墨に変えた。
「ひっひぃ!!」
「嘘ぉ、ここまで力があるとはな」
「主は少し自覚するべきだ。
主から注ぎ込まれた魔力は群を抜いて高い」
「一人だけ戦闘すれば、配分されていた魔力も一つに集まるので、本来の力以上に発揮されます」
俺が驚いている間に沖田ちゃんとレキは俺に教えてくれた。
「おっおい、本当に信じるのか!
俺は今まで、お前を可愛がっていた大事な主だぞ!!」
「えぇ、今でも信じられませんが、真実を受け入れました。
それに、今まで感じていた違和感も、あの方のおかげで納得もできました」
「くそ、信じろよ、俺を、今までの俺との時間は嘘だったのかよぉ」
「嘘から始まった時間は確かに心地よかったですわ。
快楽に溺れていて、でも、母様との暖かな時を奪ったあなたは絶対に許しません!!」
その言葉に答えるように、姫島の手には大きな魔力が集まりだした。
「さよなら、元我が主」
その言葉と共に卯尾は声も出す事なく、消滅した。
消滅を確認した姫島は涙を出しながらも、俺の元へと来た。
「ありがとうございます、主。
私に本当の敵を討たせてもらえ」
「別に、俺の命を狙っていた奴だからな。
それで、どうする?」
「どうするとは?」
「お前のこれからだ。
俺の下僕を続けるのか、しないのか。
別にどちらを選んでも、お前が暮らせるようにリアスとは相談つもりだから、お前がやりたい方を選べ」
「えっ、何を言っているのですか?」
「俺はな、相手が納得して、俺の元に来たら良いが、お前が納得しなかったら別に良い」
「あなたは、私が欲しかったのでは」
「確かに欲しくないと言ったら嘘になる。
けど、お前の意思を無視したら、納得いかないからな」
そう言い、俺は言うと、笑みを浮かべた姫島はそのまま俺に抱き着いてきた。
「ならば、私をあなたの下僕にしてください」
「良いのか?」
「えぇ、私自身も、あなたの元にいれば、何か変わると思えたので」
「そうか、だったら頼むぜ、姫島」
「えぇ、我が主」
そう言い、俺と姫島は握手を交わすと、ふと姫島が疑問に思ったのか一つ聞いてきた。
「そういえば、聞きそびれたのですが、あなたの名前は?」
「俺の名前?
卯尾の奴から聞いていなかったのですか?」
「いえ、ただ特徴だけを」
「そうか、それじゃあ、一応言うか」
「まぁグレモリーの契約書に選ばれただけのただの高校生だ」
「いえ、契約書に選ばれた時点で、既に普通ではないと思いますが」
「そうだったか?」