その夜。
「はぁ…はぁ…」
ベッドで仰向けになるリナリー。
布団を取っ払い、シーツの上で蹲る彼女は、なぜか息苦しそうだった。
眠れない。
まるで真夏のような暑さなのだ。
いや、周りが暑いのではない。
リナリーの身体が熱くなっているのだ。
とめどなく汗が噴き出て、シーツを濡らす。
「はぁ…はぁ…」
どうしたんだろう?
自分でも不思議だった。
(風邪でも…ひいたかな…)
確かに熱はあるかもしれない。
だが、身体は至って健康だ。
だるくもないし、食欲もある、身体のどこかが痛い訳ではない、だが…
どく…どく…
か細い身体を打ち鳴らすようなハートビート。
心臓が身体の中で跳ね上がっているのではないかと思うくらいに高鳴っている鼓動。
(どうしたんだろ…本当に)
体中がじんわりと熱くなって、動悸が止まらない。
いわば興奮状態だ。
当然眠る事などできない。
「んん…っ」
寝る時に身に着ける黒のチューブトップのようなインナーとショートスパッツ、そしてニーソックス。
汗で濡れて、ぐじゅぐじゅになっていた。
(このまま寝たら冷えちゃいそう…)
暗い部屋の中で思案するリナリー。
どうしよう、今からシャワーにでも入って体を流そうか。
いや、そもそもこの状態で眠りにつけるのか。
ガチャリ…
「…誰?」
ふいに、部屋のドアが空けられる音にベッドから起き上がるリナリー。
入ってきたのは支部長だった。
「いや…もう遅いのに音が聞こえてきたからね…。眠れないのかい?」
「あ…はい、そうなんです」
隣の支部長の部屋までベッドの軋む音が聞こえていたのか、と思うと少し恥ずかしい気持ちになってしまう。
時計が指すのは11時半。
いつもならリナリーはもう寝ている。
パチッと部屋の明かりをつける支部長。
「大丈夫かい?顔がちょっと赤いけど」
「風邪とかではないと思うんですけど…体が熱くて…」
喋るだけで息が詰まるような気がする。
どっくんどっくんと心臓が脈打つ音が体の中から聞こえてきていた。
リナリーの額に手を当てる支部長。
「これは熱いな。熱があるんじゃないのか?」
「熱はあるかもしれないんですけど…別にだるいとかそういう事はなくて…」
はぁ、はぁ…と生温かい吐息が漏れてしまう。
まるで50mを全力で走った後のようだ。
体が疲弊している訳ではないが、心臓の高鳴りが収まらない。
「眠れないかもしれないけど、それでも寝た方が良い。ちょっと待っててね、ホットミルクを作ってくるから」
そう言って、自分の部屋に戻る支部長。
何故か、明かりを消していく。
カチャカチャ…バサッ…
暗闇から聞こえてくる衣擦れの音。
リナリーのものではない。
支部長はホットミルクを作りに行ったはず。
疑問に思うも暗くて周りが見えないせいで何の音なのか分からない。
暗闇の中で聞こえる息遣い。
誰かすぐそこにいるのだろうか。
不安になってベッドから起き上がるリナリー。
その瞬間、なにかとても重たいものにのし掛かられた。
「っきゃ…!」
ベッドに抑え付けられるリナリー。
一体何が起こったのか全く把握できない。
不気味なほど温かくぶよぶよしたそれ。
物ではない、人である事はすぐに分かった。
「だ、誰っ!?何なの!?」
「ぐふふっ」
リナリーの問いかけに答えるように、不気味な薄ら笑いが聞こえてくる。
どこか聞いた事のあるような声。
暗くて顔は見えないが、相手が相当な肥満体型である事は分かっていた。
(もしかして…)
声に体格にこの状況。
顔が見えずとも、これができるのはあの人物しかいない。
そんな事はリナリーにも分かっていた。
分かっていたが…何故、教団の仲間である自分にこんな事をするのか、解せなかった。
あの時と同じだ。
あの組手を申し込んできた彼に卑猥な事をされそうになった時と同じだ。
何故、仲間である自分にそんな事をするのか。
俗に染まっていないリナリーの心はそれを理解できなかった。
仲間である自分を襲う理由も、彼からすれば娘同然の年齢である自分を襲う理由も。
「ハァハァ…」
リナリーのか細い身体に覆い被さりながら、ふとももや腰周りなどをいやらしく撫で回す支部長。
愛おしそうに身体を擦り寄せて、脂ぎった手で穢れを知らない少女の身体を弄ぶ。
「な、なんで…なの?」
「?」
「なんでこんな事をするの…?同じ仲間なのに…」
今にも消えそうな霞のような声で問いかけるリナリー。
もう既に相手が誰だか分かっているのだろう。
支部長は一瞬手を止めるも、すぐに「くっくっ…」と声を漏らして下卑た笑みを浮かべる。
「なんでって…そんなの同じ仲間だからこそだよ」
「えっ?」
意図を汲めないリナリー。
声を聞いて相手が支部長なのだと断定できてしまったのも悲しかった。
犯されそうになった所を助けてくれたし、色々面倒も見てくれたのに…
「リナリーちゃん体調が悪いんだろ?だから、おぢさんが…人肌であっためてあげようと思ってさ」
「…えっ?」
さらに意味不明になるリナリー。
支部長の行為はあくまで自分を気遣っての事だという。
だが、身体を撫で回すその手や下品な笑い声からはとてもそうは思えないのだ。
汗をかいてる自分が言う事ではないかもしれないが、体臭だって漂ってきて不快だし。
「ホラ、体調の悪い時は人肌であっためた方が良いって言うだろ?熱もあるんだしさ…んん?」
「…っ!?」
思わず息を呑むリナリー。
それは支部長がブリーフ一枚である事が分かったからだ。
でっぷりと肥えた腹が自分の体にのし掛かり、毛の生えたぶよぶよの脚が自分の脚へと絡み付く。
剥き出しにしたリナリーのふとももとぶよぶよの支部長のふとももが密着しているのが特に最悪だった。
「嫌…結構です…別に体がだるい訳じゃないので」
「んん~?そう素っ気ない事言うなよぉ…エクソシストが体調悪くてアクマ退治に出れないってなったら困るのはこっちなんだからさ…」
自分の行為を正当化しながら、リナリーの身体をまさぐる支部長。
「これも支部長の役目なんだからさ…おぢさんの地肌であっためたげるっ」
「うっ…」
思わず吐き気を催す。
自分の1/3も生きていないような少女に絡み付いて『支部長の役目』などと言うのが気持ち悪かったし、腹が立った。
ただのセクハラでしかない。
前にいた本部では権力をこんなセクハラに使うような人物はいなかったはずだ。
こんな下卑た男が自分の兄と同系列にいるという事が信じられなかった。
体が熱くて重くて、抵抗しようと思っても抵抗できなかった。
この体が熱くて重たいのも不自然だった。
支部長が何か食べ物にでも仕込んだのだろうか。
あまり疑いたくはなかったが、それでも風邪でない事は分かっている以上、不自然だった。
このタイミングで支部長が変な事をしてくるのも。
「胸がドキドキするんじゃないかい?どれどれ…」
「なっ…!ちょっと!」
いきなり胸を揉んでくる支部長。
リナリーの歳や体格の割には大きい乳房を揉んで、「おほっ!」などとご満悦な声をあげる。
ぐにぐにと軟らかさと大きさを確かめるように揉んで、うら若い少女の純潔を弄ぶ。
「離してっ…!」
バチンッ
「ぶっ!」
リナリーの掌が支部長の頬を叩く。
しかし構わず揉み続けてくる支部長。
「ハァハァ…ほらほらぁ~、胸がドキドキしてるよぉ~」
乳房を揉んだだけで心臓の鼓動など分かるわけがないのに、「ドキドキしてる」などと言ってくる。
リナリーの抵抗も無視して、若々しいCカップの乳を揉みまくる。
「ほおら、リナリーちゃんも脱ぎ脱ぎしなきゃ…」
「っ、やぁ…っ!」
無理やり服を脱がそうとしてくる支部長に、リナリーも必死に抵抗するも、うまく力が入らない。
普段のリナリーであれば訳もない相手だ。
男と女といえど、鍛えている若い女と太っているだけの中年男とでは腕っ節の実力も女の方が上だ。
だが、今はおかしな薬を盛られてうまく体に力が入らない。
体がぼうっとするような熱さで得意の足技も出せない。
完全に脱がされるとまではいかずとも、半脱ぎ状態にさせられるリナリー。
「リナリーちゃん乳首見えてるよぉ~!」
「やめてっ…離して!変態!」
チューブトップ状の服を半脱ぎにさせられるようなかっこうでずらされ、乳首を晒してしまうリナリー。
まだ何者も触れた事のない、純潔を象徴するような桜色の乳首。
リナリーも何とか手で隠そうとするも、どけられその純潔の象徴を摘み取られてしまう。
「あっ!やっ!!」
背後から抱き付かれるような形で、後ろから乳首を摘ままれ、擦られる。
「あぁんっ!やだぁっ…」
ぞくぞくとこみ上げてくる感覚に身を捩らせて、声をあげるリナリー。
「ハァハァ…ダメだよリナリーちゃん、そんなエッチな声出して…おぢさんの乳首責めがそんなにイイかい?」
「良い訳ない…っ、んんっ!はあっ…ん!」
おかしい。
何故、自分の乳首がこんなにも過敏なのか、自分でも分からなかった。
全身の血が沸騰しているような…まるで体中が性器になってしまったかのような感覚。
日頃から乳首を弄くる趣味はリナリーにはなかったが、それでもこの鋭敏になった神経は異常なのだとすぐに分かった。
「リナリーちゃんの乳首コリコリしてきたよ…やっぱりおぢさんの指がそんなにイイんだね?」
「んやぁ…っ」
思わず熱っぽい吐息を漏らしてしまうリナリー。
触られると勝手に乳首が勃起して、硬くなってしまう。
それに呼応して喜ぶ支部長。
「口ではやだとか言ってても体は悦んじゃってるよ?そういう素直じゃない所も可愛いなぁ…ハァハァ」
初心なリナリーにはまだ快感を快感と分かるだけの経験がなかった。
だから、今支部長に乳首を擦られて感じているそれは不快なくすぐったさでしかない。
決して、悦んでいる訳ではないのに…体が勝手に反応してしまう。
「かわいい乳首だねぇ…ピンク色で、軟らかくて…ハァハァ」
支部長の吐息が当たっただけでビクリと反応してしまう。
元々こんなに敏感な訳がないのだ。
だとすれば、やはり体調がおかしい。
何か仕込まれたのだろうか?
「体調悪いんだったらおじさんが元気にしてあげなきゃね…」
調子に乗って、乳首を弄くり続ける支部長。
いちいちリナリーが反応してくれるのが愉しくてしょうがないらしい。
リナリーは何とか声を抑えて体も反応させないように堪えるも、どうしてもびくりびくりと反応してしまう。
「んっ…やっ、はぁあッ…!!」
いやらしい手つきで身体の敏感な部分を弄くられ、思わず声をあげてしまう。
口を閉じようと思っても、ついつい変な声を出してしまう。
(私の体どうしちゃったの…!乳首触られただけで、こんな…ッ)
制御不能な自身の身体に、ただただ困惑するリナリー。
地獄のセクハラ看病はまだまだ始まったばかりであった。