※この作品はR-18です。

ある転生者のシークレットライフ   作:パトラッシュ

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第4話 ヴィルマの場合

秘密の日記4

 

「いい、ヴィルマさん。まずいっぱい石鹸を泡立てて、それを胸から全身になすりつけるの」

 

「わかった。最近はいい石鹸が出ているからやりやすい」

 

「そういえばこれもバウマイスター伯爵様が考案したそうね。あの方は本当にいろいろ発明されて……そうしたら裸の旦那様を、自分の体を使って裏も表も磨くのよ。特に殿方は女の胸を好むから、胸で全身を隅々まで洗うようにね」

 

「お義父(とう)様も好き?」

 

「そりゃあもう。あの方は初めて会った時から胸しか見てなかったもの。この秘技を習得してなかったら、私も一年ほどで飽きられてたかもね」

 

「努力するのは当然。ローラ様を尊敬する」

 

「あら、ありがと。でも単調になったらダメよ。胸で殿方をはさんでこすりながら洗ったり、足も使って全身を密着させるよう努めて。手でお尻を掴んで揉んだり、敏感な部分を口で愛撫するのも怠らずに。前戯で最大限に雰囲気を演出してから抱かれれば、殿方の満足度も高くなるから」

 

「……細かいのが多くて難しい」

 

「大丈夫、完璧でなくてもそう思わせておくのが肝心なのよ。殿方は基本的にニブいから、女が奉仕してくれているという満足感を与えるのが大事なの」

 

「勉強になる。性交とは狩りで獲物を罠にかけるのに似ている」

 

「狩人というより女優ね。それも殿方に悟られないよう演じるのよ。私に技を伝授してくれた先輩も言ってたわ。秘すれば花、と」

 

「とても含蓄ある深い言葉。私のモットーにする。でもその先輩は、どうやってそんな名人になれたの?」

 

「ああ、昔その先輩の師匠にあたる人がホールミア辺境伯領の娼館で働いていた時、お客の忘れていった古文書を見つけたのがきっかけだそうよ。それがね……」

 

                  ◇

 

 今晩は私が結婚して初めてヴェル様と一緒に過ごす夜だ。本来なら私がエリーゼ様とヒラヒラに次いで三番目のはずだったが、最後に回してもらった。それもヴェル様の寝室ではなく「私の部屋で過ごしてほしい」と頼み込んで。

 

「お義父(とう)様が揃えてくれた嫁入り道具が遅れて届くから、きちんと飾り付けた部屋で感謝を込めて」

 

「まあエドガー軍務卿には世話になってるし、ヴィルマは奥さんの中で最年少だからな」

 

 ヴェル様はあっさり了解してくれたが、私の我儘も仕方ないという口調なのが悔しい。でも、結婚のため学んだ成果を今夜示すのだ。必ず驚かせてみせる。それにヴェル様と性交すれば、魔力量が大きく増えるかもしれないのだ。自分のためにも頑張らなくては。

 

 エリーゼ様たちの話を漏れ聞くと、ヴェル様はお義父(とう)様など足元にも及ばない好き者らしい。かなりのエネルギー消費が予想されたので、夕食ではご飯とおかずを八十回おかわりし、デザートのショートケーキを一個残らず食べた。「某の分がないではないか!」と導師様がわめいていたけど無視する。育ち盛りの私が思い切り運動するためには栄養が必要なのだ。

 

 夜、予定通りドアがノックされた。ガウン姿で入ってきたヴェル様は、私を見て息をのむ。

 

「え、ヴィルマ、そのドレスは……」

 

「王都の店で買った。気に入ってくれたら嬉しい」

 

 胸元が大きくあいて下は膝上までしかない、極上の薄絹で仕立てられた真紅のフレアスリーブのミニドレス。貴族の娘なら絶対に着ないが、ローラ様から「殿方が思わず脱がせたくなる、新妻にふさわしい衣裳よ」と薦められた。ヴェル様は嬉しそう……というより、私の胸や足を見ながら生唾をのみ込んでいる。どうやら先制攻撃は成功らしい。さすがはローラ様だ。

 

 手を取ってベッドに座らせると、教えられた通り三本指をついて深々と頭を下げた。

 

「ヴィルマ・エトル・フォン・アスガハンの名にかけて、今日は最後まで奉仕する。よろしくお願いする」

 

「……あ、ああ、よ、ろしく」

 

 ヴェル様にキスしながらガウンを脱がせていく。エリーゼ様たちは全員脱がせてばかりだったらしく、「え、俺が脱がされるの?」と戸惑うのを無視して下着まで取ると、すっかり大きくなった男性がそこだけ蛇の頭のように脈打って動く。浮き出た血管を軽く舌でつつくと、ヴェル様は痺れたようにのけぞった。

 

「う、あ、ヴィルマ、こ、これは……」

 

「黙っていて。今は私がヴェル様を愛する時間」

 

「あ、ああ……」

 

「次は胸で気持ちよくなってほしい」

 

 胸をはだけ、乳房でヴェル様の逞しいものを包み込むように挟んで繰り返し愛撫した。時折、舌を伸ばして先端につけるたびに全身を釣り上げられた魚のように震わせる。ローラ様のお客と同じ反応だ。

 

「凄く大きくなってる。男のここが女を歓ばせると聞いている。もっと強くなってほしい」

 

「え、ヴィルマって初めてなの?」

 

「当たり前。私はまだ男を知らない」

 

「で、でも、こんな凄いテクを身につけているのに生娘だなんて」

 

「結婚に備えていろいろ勉強したから。すべてはヴェル様のため。私の胸は気持ちいい?」

 

「うん、も、もちろんだよ」

 

「よかった。ならもっと強くやる」

 

 さらに摩擦し続けると、あおむけに倒れたヴェル様は陸に転がった魚のようにあえぐ。ローラ様に聞いたほどの熱さと大きさになったのを確かめると、教えられた通り素早く身を引いた。

 

「あ、そんな、そこでやめるなんて……」

 

「夜は始まったばかり。今はお預け」

 

 その時の表情ときたら、お預けを食らった犬そっくりで笑いそう。私もドレスを脱ぎ、ほとんど紐でしかない下着を落として全裸になった。再び唇を合わせると、ヴェル様は強く肩を抱いてきた。

 

「ヴィルマ、今すぐ欲しい」

 

「だめ、まだサービスは終わっていない」

 

「そんなあ、蛇の生殺しだよ……」

 

「続きはこちら。一緒に来て」

 

 ヴェル様と風呂場へ入ると、一歩入るなり棒立ちになった。

 

「ヴィ、ルマ、これは、どう、いう……」

 

「領主館を建てる時、ローデリヒさんに頼んでお風呂場を広くしてもらった。ゆっくり入るため」

 

「いや、その、このマットレスと椅子は……」

 

「嫁入り道具」

 

「え、ええ、と……」

 

 呆然とするヴェル様を座らせて全身にお湯をかけ、準備しておいた石鹸を相手と自分の胸にいっぱいなすりつけた。

 

「私の胸で気持ちよくなって」

 

 胸をこすりつけながらキスすると、我に返ったヴェル様は夢中で舌を差し入れてくる。抱き寄せようとするのを離れて、今度は左右の腕を乳房に挟むようにして洗う。さらに右太腿から足の裏まで胸から腹を使ってこすっていくと、「はあ、あう」と短い呻きが繰り返し漏れた。

 

 ヴェル様の男が泡の中から立ち上がり、ひくひくと赤黒く動く。ローラ様に教わった時は面倒だと思ったが、これほど効果抜群とは。さすが長い年月をかけて磨かれてきたマニュアルは確かだ。

 

「ひあ、ヴィルマ、足の裏に乳首があたってくすぐったいよ」

 

「大丈夫。次は背中をやる」

 

 再び石鹸の泡を胸につけて背後に回り、胸を上下させて背中を洗っていく。ときどき耳を舐めたり息を吹きかけながら、不意に手を伸ばして男性をつかむ。

 

「ああ、そこ、は」

 

「ヴェル様、気持ちいい?」

 

「すごいよヴィルマ、こんな高度なテクニックを持っているなんて……」

 

「よかった。失礼する」

 

 今度はお尻を揉みながら、椅子の間に空いた部分から手を入れて下側から念入りに洗っていく。熱くてたくましいものを掴むたびに「あひ」とか「い、あ」なんて情けない声を洩らす姿は、叱られている子供みたいだ。再び前から泡でいっぱいにした乳房で男性を包み込んで繰り返し揉み上げる。少しやりにくい態勢だが、快感に歪むヴェル様の表情を間近で観察できて楽しい。ローラ様もこうやって、義父様をはじめとする客を眺めているのか。

 

 湯船でお湯につかりながらもう一度同じようにすると、もうヴェル様は苦しくなっているようだ。でも耐えてもらわなくては。マットに移るとヴェル様をうつぶせに寝かせ、温めておいたぬめり薬をかけていく。

 

「ヴィ、ヴィルマ、そいつは……」

 

「これはネリギ。海に面した西部で海藻を原料に作られるので高かった」

 

「え、まさか……」

 

 自分にもネリギを塗ると、ヴェル様に体重を乗せないよう注意しながら密着して円を描くように体をこすり合わせていく。手で敏感な部分を刺戟したり、お尻を舐めてあげると、悲鳴のようなあえぎ声が聞こえてくる。今度はあおむけに寝てもらって同じようにしていくと、乳房の下でもう破裂しそうな勢いで脈動する。ローラ様には「ここで興奮した殿方を、時間をかけてたっぷり舐めてあげるのが仕上げよ」と教えられていたが、限界のようだ。

 

「待たせてすまない。どうか私の初めてをもらってほしい」

 

「う、うん、来てくれ……」

 

 ヴェル様が私の腰をつかんで少し動かしただけで、硬くて大きい男性が私の中へするっと入ってきた。あっという暇もなく激痛が脳天まで駆け上がり、硬直してしまう。

 

「うう、い、痛い……」

 

「泣いてるの、ヴィルマ? 今さらやめられないよ。さんざんじらされたんだから」

 

「わ、わかっている。女なら誰でも経験すること。覚悟はしていた。つ、続けて……」

 

 耐え切れず崩れ落ちると、ヴェル様は私を抱きしめてキスしながら小刻みに腰を打ちつけてくる。

 

「あ、あぅ、ああ!」

 

 生まれて初めての衝撃に、錯乱した私は悲鳴ともあえぎともつかない声を洩らし続けた。湯気のこもった風呂場なのに、全身から汗が噴き出す。ようやくつるべ打ちがやむと、私はぐったりとヴェル様の上に倒れ伏してしまった。

 

「こ、これが“せっくす”というものなの? 竜と戦うのより疲れる、お腹すいた……」

 

「ヴィルマ、まだこれからだよ。あんなにたっぷりじらされたんだから、お返ししなくちゃね」

 

「え、ちょ、ちょっと」

 

 起き上がったヴェル様は、私と抱き合うような恰好で責めてくる(後で“ちゃうす”という体位だと教えてくれた)。ヴェル様の大きなものが、私の中に出入りする有様を見せつけられる。さすがに他人のを見ているよりも生々しくて息をのむ。声を上げながらされるがままだったが、やがて痛みとは別のものを感じてきた。

 

「あれ、おかしい、な、なん、だか気持ちがいいような……」

 

「今度はヴィルマが腰を動かしてごらん」

 

「わ、わかった」

 

 夢中で腰を上下させると、間違いなく痛みの代わりに未知の感覚が沸き起こってくる。両手をついて耐えていたが、ついに我慢できずマットに倒れた。ヴェル様が覆いかぶさって突き続けるのを両手足で強く抱きしめると、体の奥で暴れている男性をよりはっきりと感じられた。

 

「もっと、もっと欲しい、凄くいい、なんで、こんなにいいの!」

 

「ヴィルマ、それがイクって感覚なんだ。セックスにおける女の歓びなのさ」

 

「ああ、何度もイク、気持ちいい、死んでしまう、今すぐ死んでもいい、ひあぁ!」

 

 私は髪を振り乱し、切れ切れに悲鳴を上げながらヴェル様に抱かれ続けた。ローラ様の教えのおかげで主導権が取れたと思っていたが、力比べでになっては勝負にならない。どれだけ嬲られたのかわからないままヴェル様の熱い精を受けたのを感じた時、激しく追い上げられていた私は絶叫した。一度で終わらず、繰り返し私の中へ放ったヴェル様も疲れたらしく、横になって息をつきながら汗にまみれた私の髪をもてあそんだ。

 

「ヴェル様、満足した? 私も最高に気持ちよかった。初めて女の歓びというものを知った」

 

「あ、ああ、ヴィルマからこんなサービスを受けるなんて思ってもみなかった。おかげでいつもより興奮して夢中になってしまったよ……改めて聞くけど、誰に教わったの?」

 

「ローラ様」

 

「誰だい、その人は」

 

「王都一の娼館『胡蝶の夢(パピリオ・ソムニウム)』で人気トップの高級娼婦(クルティザンヌ)」

 

「な、なんで、そんな人を知ってるんだ?」

 

「お義父(とう)様のお気に入りで、週に一度は通っている。ヴェル様にとってのアマーリエさんのような人」

 

「え、いやその、アマーリエ義姉さんは娼婦じゃなくて……」

 

「夫婦生活について勉強したいと言ったら、最高の床上手だと紹介してくれた。おかげでヴェル様を満足させられた」

 

「じゃあ、このマットレスや椅子も?」

 

「ローラ様が使っていたのと同じものを希望したらお義父(とう)様が持たせてくれた。だから嫁入り道具」

 

「はぁ、いくらなんでもやりすぎじゃないか、エドガー軍務卿も……」

 

「そんなことはない。エルは王国有数の使い手であるワーレン様に師事して、剣の達人になった。私もプロ中のプロから学んだだけ」

 

「まあ確かにプロフェッショナルのプロスティテュートだろうけど」

 

「どういう意味?」

 

「いや、別に……もしかして過去に、その手の人が転生して技術を伝承したのかな。俺以外にいてもおかしくないし」

 

 何を言ってるのかよくわからないが、ローラ様と『マダム・デュランのマニュアル』の教えに間違いはなかった。後でお礼の手紙を書かなくては。

 

 ローラ様の師匠の師匠にあたるデュラン様という女性が西部の娼館で働いていた頃、忘れ物の手書き文書を見つけたのが最初らしい。あのイシュルバーク伯爵の時代に成立したとされる、夫婦生活において男が女から離れられなくなる技術を紹介したノウハウ集だという。それにデュラン様は自分の得た知識を加え、マニュアルを完成させたそうだ。

 

 長らく王都でも屈指の娼婦として人気だったが、現役引退後に『胡蝶の夢(パピリオ・ソムニウム)』を開き、たちまち王国随一の娼館と知られるようになったのも、雇った女たちを自分のマニュアルで訓練した成果とのこと。残念ながらデュラン様は数年前に亡くなったが、店は一番弟子だった女性に引き継がれて繁盛しており、ローラ様に『マダム・デュランのマニュアル』を教えたのも現在の経営者という。少しだけ読ませてもらったが、女が男を満足させるための様々な性交の技術を綿密に解説していた。

 

 短い間だが、ローラ様にはいろいろ教えられた。最後に「実際のところを見せてあげる。絶対に内緒よ」と言われ、『胡蝶の夢(パピリオ・ソムニウム)』で接客する一部始終を隣の隠し部屋からじっくり観察させてもらった。

 

 その夜のお客は王太子殿下だった。マダム・デュランの教えの限りを尽くしたローラ様の手練手管にされるがままとなり、エリーゼ様並みにある乳房に甘える姿は赤ちゃんに戻ったようだ。殿下はヴェル様に比べてかなり小さかったから好みなのかと思ったが、ローラ様は「違うわよ」と笑った。

 

「基本的に殿方はベッドの中では女に母親を求めるの。かといって完全に母親になってしまうと、今度はオバサンみたいとか物足りないと恋人のように接してくれる女を求める。その時の気分で行ったり来たりするのよ。私みたいな商売の女は、お客の求めを素早く察して母親風と恋人風を使い分けるのが売れっ子になれるコツよ。これもマダム・デュランの言葉だけど」

 

 あれからヴェル様は必ずマダム・デュラン式サービスを求める。最近は「恋人風にベタベタと」「もっとじっくりマットプレイを」などと注文をつけてくる。しかもベッドではなくマットレスで私を抱くので、ネリギで滑りやすいのに「ひよどりごえ」とか「だきあげ」など難しい体位を取らせるのが困る。

 

 おかげで「ヴィルマのテクには堪能させられるね」と褒(ほ)めてくれるが、どうやら年齢や立場的な面からして母親成分はアマーリエさんの担当らしい。ヴェル様があの人を愛妾として離さない理由が何となくわかった。少し残念だが、この技術のおかげで私はバウマイスター伯爵の妻のひとりとして確固たる地位を占められた。回を重ねるごとに性交による快感もより感じるようになったし、魔力量も増えたのだからよしとすべきか。

 

 だけど今もローラ様とはこっそり文通し、ベッドでのテクニックについて助言をもらっているのは秘密だ。「秘すれば花」が私のモットーなのだから。今日はお義父(とう)様が、『胡蝶の夢(パピリオ・ソムニウム)』で新しく取り入れた「くぐり椅子」という道具を贈ってくれた。

 

 早速、添えてあったローラ様のメモを読んで使い方を練習しなくては。にしても、さすがにこれは難しそう……。ダメだ、考えていたらお腹がすいてきた。結婚してから魔力だけでなく食事の量も増えたのは偶然なのだろうか。




※「『胡蝶の夢』のローラ嬢」はSin Guilty著『異世界娼館の支配人』に、「マダム・デュランのマニュアル」は石川英輔著『プロジェクト・ゼロ』に、それぞれ拠りました。なお、クロス物になる予定はありません。
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