※この作品はR-18です。

ある転生者のシークレットライフ   作:パトラッシュ

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第5話 アマーリエの場合

秘密の日記5

 

「ああ、義姉(ねえ)さんを抱いていると本当に気持ちいいです……」

 

「ヴェル君、私みたいなオバさんに気を遣わなくていいのよ。若い奥さんが五人もいるのに」

 

「本当ですよ、俺にとってアマーリエ義姉さんは癒しなんです。純粋に愛していればいいのだから……」

 

「愛するだなんていけないわ。その言葉はエリーゼさんたちにとっておかなくては」

 

「確かにみんな好きだし、女性としても文句はないけど、全員が魔法使いで複雑なバックを抱えていますからね。俺と結婚することで魔力量が増えるのを喜んだり、バウマイスター家との関係を深めようと狙っているメンツの顔が浮かんできて……」

 

「でも、私やマインバッハの父にも打算はあるわ。ヴェル君もわかってるだろうけど」

 

「ええ、けれど義姉さんは政治も魔法も仕事も関係ない、あくまでも個人の問題だから。そんなのを考えなくていいだけで、今の俺には救いですよ……」

 

「でも私はヴェル君が結婚するまでの“あてがい女”だったのに……」

 

「こんなに甘えられるのも義姉さんだけです。もっと思い切り淫らな女になって、俺を悦ばせて」

 

「あ、ヴェル君、そんなに激しくしないで、ああ、やっ、こ、壊れちゃうわ……」

 

                  ◇

 

 義弟だったヴェル君の愛人になって四年あまり。その間、昔のバウマイスター騎士爵家の嫁だった頃には考えられない経験をしてきました。

 

 夫のクルトがヴェル君を謀殺しようとして返り討ちにされるという最悪の結末を招いた後、息子たちの将来を案じていました。跡取りの長男が失策をやらかして死んだり廃嫡された家を弟が相続した場合、遺された妻子は一切の権利を奪われて片隅で不遇の生活を強いられるのが普通です。まして、ヴェル君が当主となったバウマイスター家は伯爵となり、これまで手が付けられなかった未開地の開拓を押し進めています。そこには有力貴族の子弟や縁者が仕官しており、彼らが「お屋形様は実は亡兄の妻子が疎ましいのだ」などと忖度(そんたく)してカールとオスカーを害する事態もあり得ます。

 

 私個人としては夫のやり方があまりにひどかったので、ヴェル君を憎めませんでした。彼も「可愛い甥っ子たちに罪はないですよ」と将来の領地分与を約束してくれますが、彼の気が変わってしまえば無意味です。

 

 思い悩んでいたところへ、お義父様から「あてがい女」になる話を持ちかけられたので受けようと決めました。亡夫の不始末を償うため未亡人が身を差し出す話は、実家のマインバッハ家にいた時分に聞いたことがあります。まさか自分がそうなるとは思いませんでしたが、母親として子供を守るためだと自分に言い聞かせて。

 

 その晩、パウルさんが新築してくれた待ち合わせ場所の小屋へ行くと、ヴェル君とぎこちなくあいさつしました。

 

「あまり経験豊富じゃないから少し心配だけど、短い間だけどよろしくね」

 

「はは……。よろしくお願いします」

 

 とはいえ、女からどう誘えばいいのかなんてわかりません。いつもエリーゼさんたちに囲まれているヴェル君ですが、結婚までは誰にも手を出せないし、その手のお店にも行けない立場です。慣れない者同士どうすればと戸惑っていたら、不意に彼が私を抱き寄せてキスしてきました。

 

「え、そんな急に……」

 

 思わず抵抗しようとしましたが、十二歳も年下なのに男の力にはかないません。舌を差し入れて口中を舐めるような情熱的なキスなど未経験に等しい私は、頭が真っ白になってしまいました。はっと気付いたら、いつの間にか服のボタンを半分も外され、スカートを留める紐もゆるめられ落ちかかっていました。信じられない早業に唖然としましたが、そのまま座っていたソファで襲いかかってくるように思えて必死に訴えました。

 

「ま、待ってヴェル君、落ち着いて、ベッドで……」

 

「アマーリエ義姉さんは、俺がこの世界に来て初めての女なんです。我慢できませんよ」

 

「え、それは……」

 

 ヴェル君に軽々と抱き上げられてベッドへ投げ出されてしまい、それ以上は聞けませんでした。あらわにされた両の乳房に甘噛みを繰り返され、いつの間にか下着に入り込んでいた指が私を強く愛撫してきます。

 

「や、あ、お願い、もっと優しくして……」

 

「ダメです、もう義姉さんが欲しくてたまらないんだ、義姉さんのすべてを俺のものにする、遠慮はしない」

 

 乱暴に服を脱がされ、全身を舐められ、隅々まで撫でさすってくる強引さに翻弄されながら、嫌がっていない自分を感じていました。結婚するまで顔も知らなかった亡夫は、好きなように私を抱いて終わったらすぐ寝てしまうのが常だったので、夫婦生活とはそんなものと思っていました。しかもオスカーが生まれてからは私を放置して囲っていた農民の娘に夢中になっていたため、ここ数年は空閨に等しかったし。けれどヴェル君は自分を求めてくれていると思うと、全裸にされて好きなようにもてあそばれようとも、嬉しくてたまらなかったのです。

 

「あ、ヴェル君そこは……も、もう二人も子供を生んでいるのに……」

 

「すごくきれいですよ、義姉さん。まだ女盛りなんだから、卑下なんかしないで」

 

 初めてだなんて信じられない舌に責められた私は、何度も大きな声を上げながら体をしならせました。湧き上がってくる未知の歓喜。これが快楽というものなのかしら。あまりの気持ちよさに繰り返し体をのけぞらした私は、大きく息をつきながらぐったりしてしまいました。

 

「義姉さんが抱きたい、俺のものにしたい」

 

 その時、生まれて初めて愛の告白を聞いたと思ったのは間違いではないでしょう。私は、自分も裸になって伸(の)しかかってくる義弟を――いえ、愛してくれる若者を抱きしめて囁きました。

 

「ええ、ヴェル君、どうか私をあなたのものにして……あっ、はぅ!」

 

 火傷しそうな男が押し入って容赦なく蹂躙するのを、私は強烈な歓喜とともに受け入れました。身体の奥底を炎で焼かれて、もう何も考えられません。ベッドのきしむ音を遠くに聞ながら、深くつながった絶頂感に満たされて髪を振り乱し、あえぎ続けました。

 

「あっ、はぁ、あ、つい、熱い、ものが、いっぱい、ぶつかってくる……」

 

「ああ、義姉さん、気持ちいいです、義姉さんが初めての女で、嬉しくて、俺」

 

 若い精力を持てあますように、ヴェル君は激しく私の上で動き続けました。未知の体験に自分が壊れてしまうのではと慄きながら、いっそ壊してほしいと頭の片隅で願っていたのを覚えています。私を壊してしまうほど強く、激しくヴェル君が私を愛してくれているのだと。愛されるのなら、めちゃくちゃになってもいい。いくらでも好きにしてほしいと。

 

「あ、あん、ん、やあぁ……」

 

「ごめん、義姉さん。わかっているけど止められないんだ、欲しくてたまらないから、義姉さんを思いやれない……」

 

「か、かまわ、ない、いくら、でも貪って、いっそ、食べてしまっても、どう、なっても、いいから……」

 

 女として求められる歓びに全身を震わせ、少しでも肌を密着させようと両手足できつく抱きしめました。

 

「あぁっ、こ、こんなの、や、あぅ」

 

「義姉さん、今……」

 

 ヴェル君の熱さを刻みつけられて溶け合った時、私はきれぎれに「好き、好きなの、ヴェル君……」と呼んでいたのを覚えています。「俺も好きです、義姉さん」と返されるのが嬉しくて、心も体も歓喜に満ちていました。その夜、一度では終わらず何度も抱かれた私は、最後には「もっと欲しい」と求めるほどに。

 

 

 お義父様も私自身も期間限定の「あてがい女」のつもりでしたが、こちらの思惑などヴェル君は最初から無視しました。十二歳も年上の私を大切に扱い、都合がつかない日以外はほぼ毎日のように会いに来て、「瞬間移動」で王都へ連れて行かれて食事や買い物を楽しんだりと、夢にも思わなかった生活を送れるようになったのです。

 

 「あてがい女」になったときは、たとえどんな無理難題を押しつけられようと黙って耐える覚悟でしたが、そんなことは一度もありませんでした。逆にヴェル君が一層甘えるようになってしまったのです。

 

 こんな年増女を傍らに置くなんて本当に変わっていますが、私はヴェル君が甘えて求めるものをすべて受け入れるようにしました。寝室では自分を「ヴェル君」と呼ばせ、子供が母親にしがみつくように私を抱きます。「義姉さん」と呼ぶ姿はカールやオスカーより幼くて、とてもブライヒレーダー辺境伯と並ぶ南部の大貴族とは思えません。周囲から常に「お屋形様」だの「伯爵様」と呼ばれて持ち上げられることに「息が詰まるんだ」とぼやくのが少しかわいかったのは内緒です。

 

 密会場所の“逢瀬小屋”にも豪華な家具やベッドを入れ、口の堅い職人さんを高給で雇って内部を改装し、細々と注文して造り上げた風呂場は驚きの出来上がりでした。広い内壁は美しい彩色タイルで飾られ、大理石の浴槽には青銅製の竜の頭部から豊富な湯が注がれ、窓には極彩色のステンドグラスがはめ込まれています。

 

 特に自分で考案したという魔導具を使ったお湯を浴びる“しゃわー”という仕組みは、おそらく王宮や大貴族の屋敷にもないでしょう。バウマイスター伯爵家の財力からすれば痛くもないのかもしれませんが、豪華な装飾や設備を見たパウルさんが思わず引いていました。

 

「ヴェル君、いくら何でも……」

 

「平気ですよ。俺がしたくてやっているんだから」

 

 その“しゃわー”の下で温水に打たれながら私を抱くのが彼の好みだとは、絶対の秘密です。最初はベッドで抱かれた後、浴室に移って背中を流してあげていたら、急に振り返って抱き着いてきたのです。「え?」と思ったら壁際に立たされて、荒々しくキスされながら彼の太く逞しいものが容赦なく押し入ってきました。突然のことに、私は思わず抵抗しました。

 

「あっ、こ、こんなの――」

 

「義姉さんが好きなんです。まだ足りませんよ」

 

「で、でも」

 

 私の訴えを無視して、ヴェル君は激しく突き上げてきました。強引なのは初めての時だけで、その後はずっと穏やかに愛してくれていたのに。私は“しゃわー”のお湯を浴びながら、か細い悲鳴を上げ続けました。なのに、しばらくすると彼にされるがままだった下半身が奇妙な感覚に包まれてきたのです。

 

「へ,変よ、どうしてこんなに気持ちいいの、なぜ」

 

「義姉さん、よかった。歓んでくれるんですね」

 

「お、お願いヴェル君、もっと……」

 

 片足を持ち上げられた格好で、あるいは壁に手をついて背後から犯されながら、必死に求め続けました。そう、私は初めて女の歓びを知ったのです。

 

「嬉しいですよ、義姉さんは今こそ完全に俺のものになったんだ」

 

「う、嬉しいのはこちらよ、こんな私なんかを愛してくれて……もうヴェル君から離れられないわ、本当よ、う、あぁーっ!」

 

 男の熱いものが体の中に注ぎ込まれるのを感じながら、自分はもう完全にヴェル君の女になったのだと思い知りました。三十近くになってようやく私は、望んでいた普通の結婚生活を送っている気分で、息子たちの父親である亡夫の記憶は片隅に押しやってしまいました。

 

 その後も時折、ヴェル君は“しゃわー”の下で私を獣のように激しく抱きました。多少乱暴に若さをぶつけられても女として求められている、女の歓びを味わえる嬉しさで夢中でした。彼が結婚すればこの生活は終わるのだから、それまでは好きだと言ってくれる男に愛される幸せに身を任せても罪はないと自分に言い聞かせながら。

 

 

 私がヴェル君の思われ者になったことは、周囲にも影響を与えていました。亡夫の失策で未開地開拓の利権に食い込むどころか、逆に排除されかねないと青くなっていた実家のマインバッハ家の父や兄などは大喜びでした。実の娘を利用してでも家のため、領民のために動こうとする父を知ったヴェル君は、「実に貴族らしいですね」と嫌そうにつぶやいていました。

 

 それから間もなく来た父からの手紙に、「私の不注意でバウマイスター伯爵に誤解を与えてしまったようだ。領地領民の未来を思い悩むあまりだったが、不快に感じられたなら謝罪したいと伝えてほしい」と焦ったような文章が綴られていたのです。

 

 どういうことかとヴェル君に尋ねたところ、先日、カールとオスカーに分与される予定の領地を視察に来たマインバッハ家の執事が、私の名を出して自分たちが優遇されるのは当然みたいな態度だったとか。

 

「そんな露骨に義姉さんを利用するつもりなら、逆に締め出すぞと脅しつけておきました。驚いたマインバッハ卿が、慌てて釈明の手紙を寄こしたのでしょう。いくら義姉さんの親でも、俺が思い通りに動くと勘違いされては困りますから」

 

 未成年らしくない冷酷な口調に驚きましたが、実の兄に殺されかけた経験のためかと思うと何も言えませんでした。もし私がバウマイスター伯爵家内で大きな顔をしたり、実家にもっと利益を分けるよう求めたりすれば、ヴェル君の失望を買ってカールとオスカーのみならずマインバッハ家への対応にも悪影響が出かねません。それ以来、私は子供たちの未来のため日陰の身に徹しようと思い定めました。実家にも「ヴェル君を利用しようとして怒らせないでください」という手紙をしたためて。

 

 ブロア辺境伯家との紛争が終わって間もなく、十六歳になったヴェル君はエリーゼさんたちと正式に結婚し新婚生活を送るようになりました。私もお役御免かと思いましたが、彼は「大貴族様の我儘ですよ」と言いながら週に一度は会いに来るのをやめません。さすがにどうかと思いましたが、愛していると囁いてくれる若い男の肉体に溺れていた私から「もうやめましょう」とは言えず、愛人としての勤めは続きました。

 

                  ◇

 

 二か月ほどたったある日、ヴェル君から寝物語に「今度、アーカート神聖帝国へ行きます」と告げられました。五年ごとに親善訪問団を交換し、互いに優れた魔法使いを送り込んで実力を披露するのだとか。

 

「戦時に役立つ魔法使いの存在を宣伝する政治的な目的もあるそうですが、それ以外は気楽な観光中心だとか。義姉さんにも帝国のお土産を持ってきますよ」

 

 数日後、彼は奥さんたちと旅立ちました。ところが滞在中に帝国の皇帝が崩御してしまい、新皇帝の即位式典に出席するため帰国が遅れるとヴェル君が私に貸与されていた魔導携帯通信機で伝えてきました。

 

「眠たい政治の話をさんざん聞かされて、もううんざりだから早く帰りたいですよ」

 

「大貴族様の義務でしょう、頑張って」

 

「そんなぁ……」

 

 すねるような口調の電話を思い出して苦笑しながら部屋で繕い物をしていたところへ、慌てた様子のパウルさんが駆け込んできました。

 

「アマーリエ義姉さん、大変です!」

 

「何かありましたか?」

 

「ブライヒレーダー辺境伯様からの知らせで、アーカート神聖帝国との連絡が突然途絶えたそうです。国境付近の様子から、首都で内乱が発生したようだと」

 

 内乱? つまり帝国で戦争が起こったと? だとしたら……。

 

「じゃあヴェル君や奥さんたちも巻き込まれて?」

 

「その可能性が高いらしい。しかも、軍が『瞬間移動』の魔法を使える者を帝国へ送り込もうとしても魔法阻害が働いていてダメだったとかで、ヴェルも動けないのではとのことでした」

 

 そんな、ヴェル君たちは――。

 

「とにかく事情がわかるまで待つしかありません。あいつも奥さんたちも強力な魔法使いだし、導師様やブランターク殿もいるけれど、訪問団メンバーの行方もつかめないので政府も混乱しているようです。俺もエーリッヒやローデリヒさんと対策を話さなきゃならないから」

 

 パウルさんが去っても、私は呆然と座り込んで動けませんでした。ヴェル君が内乱に巻き込まれて行方不明だなんて、少しは見えてきていた未来が突然閉ざされてしまった気分です。はっと思い出して、携帯通信機でヴェル君にかけてみましたが、雑音しか聞こえません。それから一年以上も続く、不安な日々の始まりでした。

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