目が覚めた。私の寝室のようだ。横を見るとイムヤが寝ている。いつもの事か・・・。
「提督、起きた?」
寝具の隣で響が待機していた。寝ていた上半身を起こす。
「響、どのくらい眠っていた?」
「1日ほどだよ。・・・心配したよ。もう少し体を労わってよ?」
「これからそれが出来るかもな」
「・・・そうだね。あれ?提督、左手・・・」
「ん?、ああ、やっと再生出来たみたいだな」
「・・・提督は超人だと思ってたけど、宇宙人だったんだね」
「言ってなかったか。・・・言う理由も無かったからな」
「知られたからってどこにも行かないでよ」
「行かないさ。君達を残してはどこにも、だ」
響が抱きついてくる。
「・・・愛してる。今度こそ本当に」
「あの時の告白は、恐怖が見えていたな」
「怖かったんだよ。あの女達みたいに私に襲いかかってくる生物が・・・。
でも今回はホントのホントだよ?」
「タ級もか?」
「・・・なんで今タ級の話をするかな?」
「あの時の会話に出したじゃないか」
「そうだった・・・。あの娘について分かるのは、内地の家での生活の時、
引っ越しをした当初から提督にべったりだったかなぁ?」
「そうだったか?」
「気付いてなかったのかい?」
「気付かなかった。一緒に居て過ごし易いと思った程度だな」
「・・・苦労するよ。本当に」
「ん?」
「何でもない」
背後から何かが巻きついてきた。
「提督、私も提督を愛してるわ」
横で寝ていたイムヤの声だ。抱きつかれている様だ。
「ここに来るのは第1次の時の癖もあるけど、あの時から私は惚れてたのよ?。一目惚れよ」
「私の前で言うのかい?」
「お互い様よ。それに、もう時間と場所なんて選んでいられないわ」
「・・・そうだね」
「ねぇ、提督、私と・・・」
ドアが勢いよく開く。敷波が立っていた。
「提督!、大和、違った、大山さんが倒れた!」
「今行く!。すまない、また後でな!」
2人共、ふくれっつらだった。
敷波に案内され、大山さんの元へ向かう。
「大山さん!」
「あ・・・来てくれたんですね」
「・・・敷波、大山さんの歓迎会を開いてくれ」
「え?う、うん。分かった」
「急いでくれ!」
「は、はい!」
敷波が準備に向かい、この場から居なくなる。
今、大山さんと2人きりになった。
第2次の金剛の時と同じ状態だ。命の火が消えかかっている。
明日の夜明けまで持つかどうかだ。
どうにかして延命を・・・寿命には逆らえない?。そうか・・・。
「・・・私は戦時中に艦娘として、戦艦大和として戦っていたんですよ。
防壁のおかげで今生きてますが、もう持たないみたいです」
「・・・」
「死ぬ前に貴方に会えてよかったです。あの助けてもらって別れた時から、
貴方に会いたいとばかり思っていました。・・・愛してます」
「・・・あの短い間だったけれども、君に出会えた事は、私にとって本当に守るべき者が
出来た瞬間だった。君の為に世界を守って戦っていた、ともいえるのかもしれない」
「・・・」
「・・・残りの余生、私と共に居てくれますか?」
「・・・はい」
大山さんが涙を流す。
「提督、歓迎会の準備が出来たよ」
敷波が伝えに来た。
「分かった。大山さん、体は起こせますか?」
「よっと、出来ました」
「立てますか?」
「・・・無理みたいです」
「では、失礼しますよ」
「キャッ」
抱っこをする。
「・・・提督、後でそのお姫様抱っこ、あたしもやってよ?」
「後でな」
歓迎会の会場へ向かう。
「提督~、ここにどうぞ~!」
「ありがとう」
睦月に案内された席に行く。大山さんを私の座る隣に座らせる。
青葉もこの場に居るようだ。
「提督、挨拶をどうぞ」
「昨日は皆ご苦労だった。今日は慰労会も兼ねた歓迎会ということで楽しんでくれ。乾杯!」
『乾杯!』
「提督さん」
「足柄さん?鎮守府はどうしたんだ?」
「辞めたの、それから、ここの艦娘として登録させてもらったから宜しくね」
「え?」
「ついでに私の下に居た艦娘全員もここに来たからそれも宜しく~」
『宜しくお願いします。英雄さん!』
「え!?」
「あ、私が居る」
北上が声を上げる。
「よろしくね、第3次のあ・た・し!」
「・・・てい!」
北上が北上にゲンコツを入れる。
「痛ぁ!何すんだよぉ!」
北上同士の取っ組み合いが始まった。どっちがどっちか分からなくなってしまった。
『提督、第3次のあたしはど~っちだ』
しばらくして、ぴたりと止まって2人共私に話しかけてきた。
「・・・2人共、笑ってみてくれ」
にかっと笑う北上と無表情の北上が居る。それを見て笑っている方を指差す。
「いじわるぅ~・・・」
無表情の方がふてくされてしまった。
「提督、話が出来る変異体が居たから話してみたんだけど・・・」
タ級が話しかけてきた。
「何か収穫があったか?」
「どうもここに来ると絶対に全滅するから行かない、と言っていたよ」
「まるで我々を知っている様な感じだな」
「何か強い意志、・・・恐怖心かな?、が働いているような感じだったよ」
「あぁ~!、それ私が変異体になっていた時に情報として入ってきましたよ!」
吹雪が会話に入ってきた。
「吹雪、君は平然とここへ入って来ていたが、どうしてかな?」
「私の場合は、ここへの恐怖心が沸かなかったんです。だから何とは無しにこの島に来てました」
「そうだったか」
「そのおかげでまた提督と一緒に居られるんですよ」
吹雪が抱きついてくる。
「はは、良かったな」
「はい!」
皆と談笑していて、ふと、渡された指輪の事を思い出した。
「大山さん」
「はい?」
大山さんが私の方を向く。
箱を取り出す。
「艦娘用の結婚指輪で申し訳ないですが・・・」
箱を開け、指輪を見せる。
「私と結婚してください」
会場内に沈黙が訪れる。大山さんの顔が笑顔と涙でぐしゃぐしゃになる。
「・・・はい」
「・・・有難う御座います」
『大和さん、おめでとう!』
『提督のバカァー!』
会場内に歓声と怒声が響く。
「・・・旦那様、今日はご一緒に寝てくださいね!」
「勿論だとも。大山さん」
「・・・大和でいいですよ。私は貴方の妻であり、艦娘です」
「分かりました。大和、今日は一緒に寝よう」
「はい!・・・なんだか眠くなってきちゃいました・・・」
「・・・それはいけない!。大和、今日はちゃんと寝ないとな!」
大和を抱っこする。
「それでは、皆、お休み」
「おやすみなさい」
「あ~ん、提督~、主役が居なくなっちゃうの~?」
大和を私の部屋に連れ込む。
「一緒に寝るなんてあの時以来ですね・・・」
「私が連れて行った時・・・か」
「あの時は、砲撃や銃声に怯えながら寝てましたけど、今日は落ち着いて寝られますね」
「・・・」
「泣かないでください。最後に貴方に会えて、指輪まで貰えて、私は今本当に幸せです」
「・・・」
「・・・一緒に、寝てくださいますか?」
「・・・勿論」
寝具の中に大和と一緒に入る。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「愛してます」
「愛してるよ」
翌朝、起きると大和は息を引き取っていた。
「・・・だから昨日、指輪を渡したの?」
イムヤが泣きながら言った。
私と大和を引き剥がそうとして、大和の体が冷たいことに気付いたようだ。
「そうだ。昨日しかなかった」
「・・・大和は人間艦娘だったのね」
「・・・そうだ。・・・私は、最後に良い思いをさせられたのだろうか?」
「させたと思うわよ。提督からの指輪を貰ってあんなに喜んでたもの・・・」
「そうか」
「提督、そんなに泣かないでよ・・・。私までもっと泣いちゃうわよ・・・」
「別れは、いつまで経っても慣れないな、私は・・・」
「提督、私は・・・ううん、私達はこの大和よりも、うんと長く傍に居るわ。・・・約束する」
「ああ、約束してくれ」
「・・・うん」
今日は一際朝日がまぶしく感じた。
皆、大和の突然の死に驚いていた。何人か気付いていた者がいた様だった。
妖精に棺を作ってもらい、火葬を行った。
最近BYと会話をしていないことに気付いた。
「BY?」
サングラスに話しかけるが応答が無い。工廠に行く。
「明石、居るか?」
「はい、提督。何でしょう?」
「歩兵装備についてなんだが、整備をお願いできるか?」
「う~ん・・・弄った事は有るので出来る限りやってみます」
鎧を展開して置く。
明石が頭部を見ている。
「派手にやられましたねぇ~。AI用の回路基板とデータ記録媒体が無くなっちゃってます。
・・・AIは完全に死んでますね。後は、電子制御系が壊れてます」
「レーダーやセンサーは生きているようだが?」
「それらは別の所に有って、それらの回路は生きてます。壊れた電子制御系は装着者の
体の動きを強化したり、五体不満足でもその部分を動かすといったサポート用の回路なんです」
「そうか。・・・BYは開放されたのだろうか?」
「え?」
「ああ、私個人の話だよ」
「そうですか」
「直せるか?」
「AIについては新規に基板を貰わないと無理です。最新のAIを取り寄せますね?」
「ああ、そうしてくれ」
「電子制御系は私が良い物を作りますよ!」
「頼んだぞ」
「はい、お任せを!」
「提督、艦娘が6人こちらに来ます」
吹雪が言った。
もう、我々に目を付けている者達は居ないだろう。
「吹雪、相手から応答は?」
「やってみます」
吹雪が無線で話している。
「本部からの要請でこちらへ来ているそうです」
「そうか、歓迎すると言ってくれ」
「はい」
6人の艦娘の中で見慣れた顔が2人居る。
「こんにちは~。あっ、男の人だ!」
「何用でここへ来たんだい?」
「まだ、私がここへ来ていない、という事で派遣されました。
明石です。よろしくお願いします!」
明石が手を差し出してきた。握手をしたいようだ。
「よろしく、明石」
手を取り、握手をする。明石が頬を赤らめる。
「ふふ、男の人、嬉しいなぁ~」
「?。ま、まあ、よろしくな」
「あ、そうそう、護衛の艦娘さん達には大型建造カプセルと
艦娘用の結婚指輪を持ってもらっています。確認をお願いします」
「大型建造カプセル?」
「何でも、大型艦娘の建造できる確率が高いそうです。資材は1回で通常の9倍を使用します。
倉庫が溢れそうな時に使う事を推奨されています」
「そうか、資材生産が出来るようになっていたし1回やってみるか・・・」
「分かりました。設置完了後に1回稼動させますね?」
「ああ、頼んだ」
「では、私は工廠での任に付きます」
「よろしく頼む」
「任されました!」
「アレー!?、何で私が居るのー!?」
明石が中に入ったあとで驚きの声が聞こえた。
護衛の艦娘に卯月が居た。
私が気絶していた時に飛行機に乗って内地の方へ帰っていたそうだ。
「隊長さん!」
「卯月、司令官には会えたのか?」
「はい!。これは司令官からのお礼です。遠慮なく使ってください、だそうです」
袋に入っている指輪の小箱がガラガラと音を立てている。
「多いな・・・」
「卯月もそう思います・・・」
「・・・私は男好きじゃないからな?」
「・・・そうだったら卯月が困りますよ。艦娘との指輪ですからね?
そこのところお願いしますよ?」
しばし無言になる。
「・・・まあ、ありがとう。ご苦労だった。今日は泊まっていくか?」
「いいえ、補給を受けた後、すぐに帰らせてもらいます。司令官の所へ早く帰りたいです」
「そうか、響、補給用の資材を持ってきてくれ」
「分かった」
卯月たちの補給が完了する。
「では、達者でな」
「はい、お元気で!」
明石の護衛だった艦娘5人が帰って行った。
指輪を貰ったので、早速渡してしまおうと思った。
加賀、睦月、敷波、北上、木曽、鳳翔、イムヤ、五十鈴、金剛、響、タ級を呼び出した。
「提督、どうしたの?」
「集まってもらった皆にこれを渡そうと思ってな」
箱を開けて指輪を見せる。
「私は君達をどこにも・誰にも渡さないという意思表示として、受け取ってくれるかな?」
「・・・提督は、大和の時といい、ムードを大切にしないわよね」
「・・・すまないな」
「私は受け取ります」
私も私も、で全員が受け取ってくれた。
タ級の指に指輪が入らない。
「提督、指輪が入らないよ?」
「特注が必要か、頼んでおくよ」
北上が嬉しそうにしている。
「えへへぇ~、ここに着任したばっかりで指輪を貰えるなんて、し・あ・わ・せ!」
「え?」
「あ~!あんた何やってんのさ!。そんで指輪貰うなんて、ちゃっかりしてもぅ~!」
もう一人の北上が来た。
「ふふん!、これはあたしのだからねぇ~!」
北上同士の喧嘩が始まる。
「・・・私には見分けが付かないな」
「大丈夫ですよ。私も見分けがつきませんから・・・」
「え?睦月は分かりますよ」
「副隊長は別だよ。第1次の識別信号が見えてるんだよね?」
「そうかにゃ?」
「・・・そうか。それで睦月は見えるのか」
北上がもう1人の北上をKOしたところで、凄い表情でこちらを向く。
「提督!あたしにも指輪をちょーだい!」
「わ、分かった。・・・はい、どうぞ」
指輪を貰っていない方の北上に渡す。
「・・・ムード作ればよかった」
「これからもよろしくな、北上」
「・・・ありがとね」
大型建造がもう少しで完了するとの報告があった。工廠へ向かう。
ここでの初稼動の建造に大勢の艦娘達が見物に集まった。
カプセルの上部から大きく煙が噴き出す。扉が開いた。
「BY改め、軽巡洋艦大淀です。今後もお手伝いいたします」
「軽巡洋艦長良、只今戻りました!」
涙がこみ上げてくる。
そしてもう1人、
「戦艦大和、帰還しました!」
この惑星での楽しい毎日が、また、送れそうな日が近付いているようだ。