夕暮れの空。1人、墓の前に佇んでいる者が居る。
「・・・」
ここに在る墓標全て、名を刻まれているのは、彼が戦争中に知り合った人々。
その全員が、戦争の死神に命を刈り取られ、散って逝った。
「・・・もう一度、
呟く彼の声は震えて掠れていた。
「・・・うぅ・・・」
涙を流し始め、嗚咽を漏らす。
顔をぐしゃぐしゃにする程の泣き様だった。
暫くして、彼は立ち上がり、墓標全てが見渡せる所へ行く。
墓標から見て沈む夕陽を背にした。
彼は息を大きく吸い込み、
「皆、愛して、いたぞぉー!、・・・愛しているぞぉー、今もぉーーー!!」
涙を流しながら、言葉を詰まらせながらも、大声で叫んだ。
・・・今、彼以外に、この場に生物は居ない。
彼以外に、温もりは、無い。
{隊長、・・・今日で戻らないといけません。
暗殺者の手が迫っている、と本部から連絡が来ています。
それを跳ね除ける事が出来るのは、現状、貴方だけです}
彼の掛けているサングラスから、音声が聞こえる。
「・・・いっその事、殺してしまった方が良いのだろうか?」
{それはいけません。あの者達は、ゆくゆくは、知能の無い個体達を統率する一助
となってもらう必要があります。・・・貴方の気持ちは解りますが、絶対に抑えてください}
「赦せと、殺すなと・・・言うか・・・」
{そうです、・・・私も、貴方と同じ気持ちです}
「っ、ならば!・・・」
{私は、頭に血が上る事がありませんから・・・}
「・・・」
{私に体が有れば、私がやっていたかも知れません。
でも、あの者達を生かす必要があるんです!。・・・どうか・・・}
「・・・解った」
悔しさを滲ませて言い、ガクリとうなだれる。
その背中は
「イムヤ、木曽、敷波、北上、加賀、五十鈴。
そして、長良、睦月、鳳翔・・・愛していたぞ・・・」
{・・・}
彼は小さく呟いた。
サングラスに聞こえていたのかもしれない。何か小さく声を漏らしていた。
「・・・皆、この手が届かなかった、なぁ・・・」
彼はそう言うと、立ち上がりサングラスに手を掛ける。
瞬時に、夕陽に照らされて輝く、金属が彼を覆い隠す。
{隊長。本部から、何か欲しい物は有るか、と連絡が来ています}
「・・・何処か人が来ない場所を探させてくれ。そこに私も住んで、奴等を監視する」
{・・・了解しました、良い所を探して貰いましょう。・・・お疲れ様でした}
「BYには、まだ働いて貰うぞ?」
{元より、そのつもりです}
「・・・そうか」
金属の塊は飛び上がり、夕焼け空へ消え去って行く。
去り際、持っていた盾が、キラキラと輝いていた。
ここに在る数多の墓標には、骨も無ければ、魂も無い。
ここに居ない魂達は、来るべき時を、