響は、誰も信頼していなかった。
響は元々、人間だった。
軍艦の心を持っていた事で艦娘という存在にされてしまった。
人間として生涯を終えたかったのに、人間扱いされなくなった事に激怒した。
正体不明の存在、後の駆逐イ級と呼称される存在が確認され、
人間艦娘となった響は、艦娘の実験体として、その掃討の任を受けた。
響は呆気無く死んでしまった。
・・・いや、生きていたのだろう。随伴していた人達が助けてくれれば・・・
正体不明な存在の恐怖、そして点々と出現し続ける艦娘が居れば良い、
且つ現在の艦艇でも処理出来る存在だったから、1人の艦娘が死んでも問題無いとした。
助けに来たと思えば、目の前を
『こいつは失敗だった』
という顔で通り過ぎる事で、更に激怒した。
・・・そこで、人間艦娘、響の幕は閉じた。
・・・?、響が死んだと思ったら生きているではないか。
・・・深海棲艦として・・・
深海棲艦となった響が初めに気付いた事は、イ級達が自分に懐いて来る事。
その後に気付いたのは人間達への消える事の無いだろう、憎悪の炎。
「君、どうしたんだい、こんな所で?」
彷徨っていると、人型の深海棲艦に話し掛けられた。
「・・・迷子になってしまったんだよ」
「可哀想に、私の所へ来るかい?。歓迎するよ?」
「・・・お願いします」
「うわぁ・・・」
住まいとしている海底洞窟の中の汚れを見て響は思わず声を上げる。
「まだ綺麗な所から来たんだね。・・・陸上の生物が出す汚染物質の所為で、
どんどん我々が住めなくなってしまっているんだよ」
その人型は憎しみの声を含んで言った。
汚染物質を出すのは人間しか居ない。
その言葉に響は人間への憎悪が強まっていった。
響は決意した。深海棲艦達の全力を以ってして、人間を取り除かなければならぬと。
「私を見殺しにした人間達に粛清を・・・」
己が激情をも、糧にして・・・。
幸い、響には人間だった時に学んだ知識がある。
世界情勢の記憶力や、戦略・戦術について響を上回る者は居なかった。
深海棲艦達の特徴をすべて把握し、計画を練っていった。
深海棲艦は長老を頂点としている事が分かり、長老に会いに行き、説得を行った。
長老も陸上生物への怒りを持っていた。直ぐに説得は終わった。
響は、長老に自身のもとへ深海棲艦達を集合するよう、指示した。
集まるまで、長老に戦についての議論をしようとしたが、
深海棲艦達の皆は戦闘のイロハを知らないそうだ。
作戦立案は響に委ねられた。
深海棲艦達の通信網は手広く、全ての者達が数日の間に集まった。
・・・いや、もう生活出来る場所が、今居る場所ぐらいしか無いのだった。
「私達は陸上の生物、人間、という種族によって生活圏を奪われつつある。
人間は武器を持っている。・・・が、幸い、私達には立ち向かう武器を生まれながらにして
持っていて、人間は我々の存在にまだ気付いていない。・・・今が好機だ。
私達の生存圏確保と、我々の生命の危機を取り除く為に、人間を滅ぼそう。
・・・どうか、お願いだ」
響は演説をした後、頭を下げた。
「このまま海が汚れては、その娘の言う通り、我々は絶滅の一途を辿る。皆、やろう!。
我々は地上に出て活動が出来る体を持っている。陸上に居る生物達を駆逐し、
綺麗な海だった時代を取り戻そう!」
長老が言った。
『オオオォォォーーー!!!』
ワレワレノジンチヲマモレー!
長老の声に集まった全員が賛成の雄叫びを上げた。
・・・いや、困惑している者が若干名居た。・・・が、今、そんな事は些末な事だった。
「響よ、私はもう年だ。それに長老とはいえども、戦いに関しては全く解らない。
そなたに全てを任せるぞ?」
「・・・分かった。やるよ」
響はこの時から、深海棲艦の元帥として活動することとなった。
サクセン、カイシ!
テキチヲコウゲキセヨ!
作戦決行日が来た。先ずは索敵網に掛からないように偽装し、船舶を全て破壊した後、
レーダー類をすべて破壊させた。
その後で、響が人間達が傍受出来るであろう無線周波数で言った。
「我々は深海棲艦である。これより、陸上生物を駆逐する事を宣言する。死ぬが良い。
明日は無いと思え。我々は、我々の明日の為に、陸上に住むお前達の明日を奪う。
私はここに、深海棲艦の為の、聖戦を行う事を宣言する!」
事実上の人間達への宣戦布告。それと共に陸上への進行が始まった。
瞬く間に海から上陸し、陸上への進行が始まった。
イクゾー!
トツゲキィー!
ハタヲトリニイケ!
リョウカイ!
□
「おい、どうした?。応答せよ。応答せよ!」
「如何した?」
「私の管轄している部隊全員との連絡が通じません」
「・・・きっと、大量破壊兵器を使用したんだ」
「大量破壊兵器?」
「爆発すると、私達の誰かが管轄する部隊全員が居なくなっていると思って良い」
「敵側の味方まで巻き込んでいるんじゃないのか!?」
「巻き込んでいる、だろうね。奴らも必死という訳だ」
「これでは、迂闊に地上に出れないぞ?」
「後、何回かは撃たれる可能性は有る。しかし、そんなには使わないと思う」
「何故だ?」
「そこに何年かは、人間が住めなくなるからだ。
使用回数分だけ、陸上生物達は自分の首を絞める事になる」
「・・・成る程」
一撃で大量の深海棲艦を葬れる諸刃の剣、これ以降使用される事は無かった。
・・・が、密集していた為、結構な数がやられてしまった。
■
ツギノ、メイレイヲコウ!
ナニ、キコエナイゾ!?
「・・・おかしい、通信妨害施設を全て破壊した筈なのに、
遠方との連絡が中継を交えないと無理だ」
「確かに、変だな。我々は陸上生物に妨害を受けるまで、水上での交信が出来ていたのだよ」
「小型の通信妨害装置が出来ていたのかもしれない。・・・盲点だった」
「今現在は我々に分が有る状態だ。ちゃんと中継地点に兵を配置すれば良いと思うぞ?」
「・・・そうしよう」
人間の死の商人の存在、まだ自分達人間が絶滅すると決まったわけではない。
無線封鎖と探知妨害はしていたのだった。
イッキカクホ!
ヘイシヨ、ヨクヤッター!
バンザーイ!
テッキハッケン!
テキノホヘイタイヲハッケン!
『こちら陸上進攻部隊。想定外が発生しました。空を飛ぶ陸上生物の兵器が強力過ぎます!』
「何事にも問題は付き物だ、倒せない相手では無いんだろう?」
『はい、我々の対空機銃で撃墜は出来ます。・・・が、全滅した部隊が在ります。
陸上に降りて活動出来る様で、それにやられた模様です』
「・・・今現在、その報告は貴様の所だけだ。今の内に、どんどん進攻をせよ。
人間の数を減らせば、その分そんな事は出来なくなる」
『はい、了解しました』
人間側の歩兵装備の出現。だが、まだ試作段階だった。
殆どが何もしなくても墜落していった。
エンゴセヨ!
ホウヘイタイムケノ、ヒョウテキガアル!
ホウヘイタイニ、ヒョウテキヲシジセヨ!
ホウゲキヲタノムー!
リョウカイ!
□
ドゴンッ!!ズシャアーーー!・・・
ある時、作戦を立案していると外で物音がした。何かが落ちた音。
「何だ?」
作戦本部の面々、が確認へ外へ出てみると、人型の金属の塊が落ちていた。
近寄ると金属の塊は跡形も無く消えた。その後は人間が潰れた姿が目に映った。
「さっきの金属の塊が、空を飛ぶ陸上生物の兵器だったんだろうか?」
「かもな。・・・おい!、そこのお前、人間なんかの葬儀をする気か!?」
どこからか現れた深海棲艦の1体が、自己流で手厚く葬ろうとしていた。
「死んだら只の、生物の死骸だ。このぐらい良いだろう?」
「・・・勝手にしろ」
■
ジョウクウエンゴキ、ヲヨウセイスル!
『こちら陸上進攻部隊。空を飛ぶ兵器が沢山飛来して来ました。強力過ぎます!』
「その為に空母系を沢山配備したのだ。戦闘機で撃墜せよ」
『・・・了解!。おい、順次発艦だ!。・・・おおぉ、簡単に倒せるな・・・』
人間側の歩兵装備が充実し、着用者達が、深海棲艦打倒の為に飛来して来た。
世は正に、深海棲艦と人間側との、命の大量喪失時代となった。
オレハコウゲキヲオコナウ!
ツイテコイ!
リョウカイ!
イクゾー!
□
『人間の雌が、武器を持って我々に攻撃する姿が、時折目撃される様になりました』
艦娘の存在。まだ名前は分かっていないが、この時、目に見えて出没し始めていた。
「脅威か?」
『我々の索敵網に掛からない様に接近し、闇討ちをしてくるそうです。
威力が我々の下位の存在の武器と同じくらいです。接近されると怖いくらいです』
「見つけ次第、生きて返すな。進軍の妨げになる物は早急に砲撃・爆撃によって潰せ」
『了解しました』
第1次艦娘と第2次艦娘の出現。だが、まだ重火器の配備が進んでいなかった。
■
コウヘイ、キテクレー!
『こちら陸上進攻部隊。空飛ぶ人間の中に金色の何かを持って我々の攻撃を防ぐ奴が居ます。
強力過ぎます!』
「落ち着いて対処しろ、集中砲火を浴びせれば、倒せない相手では無い筈だ」
『了か・・・グァー!、目が、目ガァーーー!。アアァァァーーー!!!・・・』
「・・・・・・は?、おい、応答せよ。応答せよ!」
「我々は陽の光を直視出来ない。鏡による光の反射などに弱いぞ。対策が必要だ」
「・・・そうみたいだね、技術班に対策装備を開発させろ」
「了解しました!」
後に、人間側で英雄と呼ばれる存在が現れた時だった。
ゼンショウチテントノ、コウシンガキレタ!
テキガシングンチュウニアル!
アイニード、ア、サプライズドロップ、オーバー!
ネガティブ、ア、サプライズドロップ、オーバー
『こちら陸上進攻部隊。食糧不足により前進出来ません・・・』
「陸上生物の物で食い繋げ!。押している今が最大の好機だ!」
『行く先々、全て燃やされて何も有りません。・・・補給線確保まで、進軍を中断します・・・』
「・・・許可する。・・・クソッ!!」
響は地団駄を踏む。
「ここまでは良かったが、してやられたな」
「本当にやられたよ」
オレハコウゲキヲオコナウ!
ツイテコイ!
ダメダ!
オレハボウエイヲオコナウ!
・・・イクゾー!
テキカンハッケン!
『こちら陸上進攻部隊。人間の雌と思しき生物が我々の主力を倒す火力を持って出現しました!』
「倒せるのか?」
『爆弾の至近弾でも当たれば一撃です。・・・が、空飛ぶ兵器が邪魔をして来ます』
「空母系を前線へ投入しろ、空飛ぶ奴等を優先的に打ち落とせ。
大砲持ちは盲目撃ちでも良い、どんどん砲撃せよ」
『了解・・・あ!?、金色の奴だ!。落とせ、絶対に落とせ!・・・グァーーー!!』
「・・・おい、応答せよ。応答せよ!・・・やられたか」
「金色の、・・・厄介だな。今回も生かして返してしまうのだろうな・・・」
「金色の奴は、敵が最後の1兵になった時に狙う、くらいにしないと我々が持たないな・・・」
「・・・そうだね、そうしよう」
艦娘の武器が整い、且つ歩兵との挟撃。
これ程の強力な巻き返しが来るとは、深海棲艦側は、思いもしなかった。
テキグンブタイヲハッケン!
テキガテゴワスギル!
エイセイヘーイ!
エングンヲヨウセイスル!
ワレワレハ、エングンガ、フソクシテキテイル・・・
ワレワレハ、キチジツ、オクレテイル!
『こちら陸上進攻部隊。戦線を維持出来ません。・・・後退します』
「・・・了解した」
響は膝を折り、床に手を着いた。
「・・・チク、ショウ!!」
ドンッ!
その後、床を手で叩いた。
「・・・敵の無線を傍受した限りでは、艦娘とか言っていたな。奴らの命中精度は凄まじいな」
「私の管轄する作戦地域ではそれ程でもないと言っていたぞ?」
「何でも、出血する方と、しない方で分けて考えると良いらしい。
出血しない方だと、傷付いても打ち返してくるそうだ。」
「後方支援専門の奴が居るから、そいつを優先で狙う必要があるようだ。
そいつが居ると、翌々日には戦線に復帰している、同じ個体が居たそうだ」
「そんなのデタラメじゃないか!、我々は重傷の完治に結構な時間が掛かるというのに・・・」
「どこかの施設で艦娘が作られているらしい。破壊出来れば良いのだが・・・」
「・・・工作員が必要だな。人間の索敵に探知されない擬装服が開発出来たから、
それを使う必要があるな」
「後は・・・金色の奴が居る。現れては、こちら側の戦力を根こそぎ奪うんだから、
やってられんぞ」
響以外で議論を繰り広げていた。
「・・・本拠地占領は諦め、海へ戻ろう。占領した島は利用する」
響が立ち上がってそう言った。
「艦娘の作られる施設は破壊しよう。兵器工場が在れば、それもだ。
破壊工作は擬装服を使用し行う。空飛ぶ人間達は数が少なくなっている、
そっちの施設は余裕が出来たら、後で狙えば良い」
「それに賛成だ」
「しかし・・・最近、生身の人間以上に身体能力を持った人間のような奴らが
工作活動の邪魔をしているとの噂だぞ?」
「人間のような奴?、艦娘とか言うのじゃなくて?」
「何でも、人間の様な姿で、人間じゃないそうだ。金属の塊を纏っている訳じゃないのに、
変な話だよ、全く・・・」
「・・・特務を任せる者は多めに投入する」
「それが最善だろうな・・・」
響達は知らなかった。この惑星には宇宙人が居る事を。
後に、第3次艦娘と呼ばれる者達が一緒に行動している事を。
そしてその宇宙人達が、人間を、陸上に住む者達を、必死に守ろうとしている事を
知る由も無かった。
テキグンブタイヲハッケン!
テキノホヘイタイヲハッケン!
テキカンハッケン!
テキノセンスイカンヲハッケン!
ダ・・・リョウカイ!
グハァッ!、クッソォー・・・
エングンヲヨウセイスル!
『こちら侵攻阻止部隊。敵が多過ぎて手が足りません。援軍はまだですか!?』
「知能の無い個体達を大量繁殖させた。人間を襲う事を強化させた種をそちらへ送る」
『そんな奴では直ぐにやられてしまいます!』
「その為に、管理するのが嫌と言うほど前線へ送ってやる。
何なら管理しなくても良いぞ?。執拗に人間達を襲うようにしてある」
『・・・期待してますよ』
「勿論だ。空母系も居る。期待していろ」
『了解』
後に、イ級、ヌ級と呼称される存在を大量に繁殖させた。
ワレワレノ、ジンチヲマモレー!
ワレワレノ、ハタヲマモレー!
□
「おかしい、艦娘の生産工場と思しき箇所を全て破壊した筈なのに、艦娘は増える一方だ」
「出血する方の艦娘じゃないか?」
「あ、・・・そっちが居たな。だが、奴らは脅威足り得るか?」
「いや、全く無い。直ぐに失血死とかするんだから、ほっといても問題無いだろう」
「同じ顔の奴ばかりが居る部隊が在ったから、
夢でも見てるんじゃないか?、とかの報告が有ったな」
「ハハ、だが直ぐに消し飛ばせるんだろう?」
「ハハ、そうだよ。気持ち良いぐらい直ぐに、だ。しかも損害を出さずに、だとさ」
「・・・陸上の時もこれくらい楽だったらなあ・・・」
「・・・そうだったよなあ・・・」
「最近、攻撃を受けてボロボロになっても死なない艦娘が居る、という話を聞いたよ」
「違う種類の艦娘が出てきたのかも、な・・・」
「戦争を起こさなかった方が良かったんだろうか?」
「さあな・・・だが、あのままでは、我々の生活の場が無くなっていたのも事実だ」
「・・・あの娘がもう少し頭が良ければ・・・」
「言うな!。艦娘という存在が無ければ、後もう少しだった筈だ!」
「艦娘・・・生かしてなるものか」
艦娘への憎悪が、知能の無い個体にまで伝播していった。
■
コウヘイ、キテクレー!
『こちら侵攻阻止部隊。知能の無い個体が変化していますが、これは?・・・』
「我々は大量繁殖させた個体しか送っていないぞ」
『・・・そう、ですか』
「問題発生か?」
『強くなったんです』
「強くなった?」
『形が変わったというか、目の色が変わったというか、強さ分けする必要が出てきたかと・・・』
「そうか、では、呼び名が決まったら伝える」
『了解』
ここより、イ級やホ級の概念、そしてeliteにflagshipの概念が生まれた。
テキカンハッケン!
テキガシングンチュウニアル!
ワレワレノ、ジンチヲマモレー!
ウオアー!
□
ある日、深海棲艦側の潜水艦が1体、本拠地に戻って来た。
「如何したんだ?」
「・・・潜水艦型の私達はもう、私だけになったの」
「そんな馬鹿な!。後500位は居た筈・・・」
「全部、あの金色の悪魔にやられたの」
「・・・そんな」
「誰かを探しているついでみたいな感じで、私達はやられたの。
もう、ここから出たくないの!。死にたくないの!。・・・うぅ」
潜水艦の深海棲艦が泣き崩れた。
この日以降、深海棲艦で戦闘を行う潜水艦は思考を持たない生物だけとなった。
この後、悪夢の様な数々の出来事で、深海棲艦側の同艦種はほぼ1体ずつとなるのだった。
■
ワレワレノ、ハタヲトリモドセー!
『こちら侵攻阻止部隊。こちらの攻撃が弾かれるようになりました!』
「何だと!・・・」
『ですが、まだ手は有ります。一定時間経つと完全に消えるので、そこを狙えば倒せます』
「・・・そうか」
『・・・しかし、食糧生産をしていた大地を占領されてしまいました。
それと共に、我々の切り札となる者達が死にました』
「・・・奪還せよ。占領した事を後悔させてやれ!」
『・・・了解!』
第1次後期型艦娘の存在が確認されたが、絶対数が少なかった。
それもその筈、生産施設の破壊成功により、そんなに数は作られなかった。
第1次前期型と共に一番の大舞台で一番の損耗をし、人間側の勝利。
正に第1次艦娘の大一番だった。
この大地の占領戦と防衛戦で第1次型艦娘は戦闘可能数が2%を切った。
テキチヲコウゲキセヨ!
エングンヲヨウセイスル!
□
「また、金色の奴を撃墜出来ませんでした」
「奴は化け物か、悪魔だ」
「奴を落とせない限り、我々は絶滅するやも知れない」
「もう、イ級達等に任せた方が良いのかも知れんな」
「それで奴等を倒せると?」
「消耗戦には持って来いだ」
「確かに、な」
人型は敵と出会った場合、撤退するのが定石となった。
だが、それを容易く逃がす程、悪魔は甘くなかった。
■
ワレワレハ、エングンガ、フソクシテキテイル・・・
コレイジョウ、オサレタラキケンデス!
『こちら侵攻阻止部隊。・・・知能持ちの空母系が1体を残し全滅しました』
「・・・そうか。その空母は安全圏へ連れて行け。生きて貰わねばならん」
『・・・金色の奴は、もう手が付けられません。それに、死なない艦娘が大量に出現しました』
「危ないと思ったら潜って直ぐに逃げろ。それを出来るのが我々だ。・・・死ぬなよ」
『・・・了解』
この時、占領された島では第3次艦娘が生産・建造され始めていた。
そして、第2次艦娘は、度重なる戦闘により、寿命を迎えつつあった。
人間側の主力は第3次艦娘へと移行する。爆弾を抱える存在の大量生産である。
□
「奪還は失敗に終わったか・・・」
「もう我々には1部隊に何名かを担わせ、後はイ級達等に任せるしかない、か・・・」
「それしか無いだろうな」
「あの娘に任せて失敗だったな」
「陸上の生物も憎ければ、あの娘も憎いときた、殺してやりたいが・・・」
「それでは、一時的な、気持ちのはけ口を作っているだけだぞ」
「・・・クソッ!」
もう、響の信用は失墜していた。
それでも、担ぎ上げた手前、完全に邪険にする訳にもいかなかった。
■
響は前線の視察をする事にした。
「外の視察をしてくる」
「死ぬかもしれないぞ?」
「どの道我々は、死、あるのみだ」
「・・・そうだな」
響も人間と戦える。艦娘とだって戦えると思っていた。
「へえ、我々の頭脳が居るなんて、珍しいな」
「艦娘と戦ってみたくてね」
「戦場に出ないが無い奴が、言うじゃないか」
「・・・」
「!?。おい、マズいぞ!。悪魔だ、逃げろぉー!!」
『う、うわぁー!!』
金色の弾を弾く何かを持った空飛ぶ人間が、強烈な殺気を放ちながら次々と味方を倒していく。
その姿は、響達にとって悪魔・悪鬼羅刹の如く映った。
コウタイセヨ!
ダシュツセヨ!
アブナイ!
・・・響だけは奇跡的に逃げ延びることが出来た。・・・響だけは。
「もう、外なんて、出ない。・・・出れない、死にたくない、・・・又、死にたくないよ・・・」
生存本能による、死の恐怖。・・・それも、2度目。
シマウマが必死にチーターやライオンから逃げるように、響はシマウマとなった。
部屋に閉じ篭って指示を出すだけとなった。
響自身の憎悪が他人の憎悪に負け、心が折れた時だった。
ワレワレハ、エングンガ、フソクシテイル・・・
『こちら進行阻止部隊・・・私の部隊は、他は知能の無い個体だけになりました』
「・・・戻って来い、戦場は知能の無い個体だけに任せろ。
知能の有る我々は、子供達を育む必要がある。・・・未来の為には君も必要だ」
『・・・了解』
艦娘と、金色の奴に知能を持つ兵を殺された。
深海棲艦側はもう、人型を殺されるわけにはいかなかった、
イ級達はただ戦うだけの機械の様な存在。
もう、形勢は覆らない。
□
「人間側の通信を傍受した限りでは、何故か戦っている私達が居るらしい」
「馬鹿な、兵達は全員戻って来ている筈だ」
「怒りに任せて死にに行った奴は居るが、その数との戦闘報告が合わないのだよ」
「・・・決起集会の時に、集まらなかった輩が戦っているのだろうか?」
「いや、全員があの時、集まっていたそうだ。
それに、今戦っているあいつ等とは連絡が通じない」
「益々もって訳が分からないな・・・」
「敵の敵は味方、だと思っておこう」
「・・・そう、だな」
轟沈した艦娘達の変異体の存在、最後の最後で変異体は登場した。
ただし、人間達の脅威となる前に戦争が終結したのだった。
■
・・・・・・
響は自室をウロウロしていた。
「・・・」
響は悩んでいた。如何にしてこの戦争を終結させるか、を。
深海棲艦側はもう絶滅寸前・・・いや、後何十年・何百年かで絶滅する程の数になった。
9分、9秒でも長く深海棲艦の人型を残す為の策を考えていた、が、
「私が捕まるしかない」
その事は分かっていたが、
「その後、如何する?。私を捕まえた人間側が、衝動に駆られ、私を殺したら何にもならない。
誰に捕まれば良い?。・・・信頼出来る人間なんて、人間の時、居なかった」
・・・バタンッ!
自室の扉が勢いよく開いた。
・・・開いた扉の先に、金色の物を持った人間側の悪魔が居た・・・
「!?」
見た瞬間、響は体が動かなかった。
悪魔は、強烈な殺気を放っていた。響は、蛇に睨まれた蛙、の状態だった。
響が固まって居ると、
ゴスッ!
悪魔が猛烈な速さで迫って来て、響の顔に握り拳を打ち込んだ。
響は気ぜ・・・
ドスンッ!
・・・鳩尾めがけて、もう一発良いのを貰った。
気絶しかけて、腹部へもう一発貰った感触もしっかりと覚えてから、気絶したのだった。
響が目を覚ますと、体が縄でグルグル巻きにされていた。
少し目を動かしたところで、あの悪魔が居た。気絶する前と、同じ位の殺気を放っている。
響は恐怖で体がすぐに震え始めた。
「戦争を終わらせる気があるか?」
悪魔が言った事を、直ぐには理解出来なかった。
戦争が終わる。こう言ったのを、少し経ってから理解できた。
「・・・あるわ」
響にとって願ってもない事だった。響は決心を固めて言った。
「この施設には音声と映像を放送する設備がある。
君達の種族にも伝えられるチャンネル等は有るか?」
「音声チャンネルが有るわ、番号は人間用の物だと・・・」
仲間達への周波数を教えた。もう気付かれていたのだろうが、教えた以上やるしかない。
教えた後で、顔を拭かれた。拭かれた布の後を見るに、響は相当鼻血を出していたのだろう。
「では、終戦放送の準備は良いか?」
悪魔の声が心なしか震えていた。泣いているのだろうか?。
「ええ」
響は意を決して、終戦の為の放送を行う。
ワガホウノ、ハイボクダ・・・
「この放送を聞いている者達よ、私は深海棲艦と陸上生物との戦争を起こした張本人である。
今日、私はここに、深海棲艦側の敗北を宣言する。我々深海棲艦は、最早戦う力は無くなり、
将来絶滅は確定になった。我々深海棲艦は、海深くへ潜り、残りの余生を過ごす。
もう、陸上生物達の前に姿を現す事は無いだろう。同胞達よ、すまない。
・・・終わりの時まで、海の底でひっそりと過ごしてくれ。・・・終わり」
こうして、深海棲艦と陸上に住む生物達との戦争が終結したのだった。
人間達の時間で9年が経過していたらしい。
深海棲艦となった響には9ヶ月くらいの時間経過に思えていた。
人間を2年間程陸上へ隔離出来ていた事で、海で綺麗な場所が増えた。
海の美しい自然や魚等は増えたが、深海棲艦達は絶滅の道へと進む。