『カンパーイ!』
ドキッ!☆男だらけの宴会場!1人が乾杯の音頭を取って
・・・あれ?至って普通の光景だな・・・
「とうとう、海へ追い返すことが出来ましたね」
「長かったな~・・・」
「いや~、隊長の活躍っぷりったら、凄まじいですね」
「はは・・・よせやい」
「俺達にゃ出来ない事をやってのける!」
「そこに痺れる!」
「憧れるぅ!」
「・・・いや、本当に恥ずかしいって・・・」
「いや~、
「ハゲてないと言っとるだろうに!」
「え、
「・・・・・えっ?」
「やーい、隊長、引っかかってやんのー!」
からかいの声に隊長と呼ばれた者が「ぐぬぬ・・・」とでも言いたげな表情をしていた。
ちなみに今、隊長はストレスがマッハで頭がツンツルテンである。合唱。
「あ・・・あの・・・」
いつの間にか、1名の女性が赤い布を手に持ち、男達の宴会場に乱入して居た。
「こ、これをどうぞ!」
真っ赤なスカーフだった。それを隊員の1人に手渡した。
「ア、アリガ・・・」
「で、ではこれでっ!!」
手ぶらになった少女はそそくさと去って行った。
「お~、今の内に追いかけたら如何だ?」
「・・・イヤ、良イ。情ガ移ル。今ノ一瞬デ十分ダ」
「・・・浪漫だなぁ・・・」
「ああ・・・」
渡された隊員は、哀愁の表情を浮かべ、渡されたそれを見ていた。
「時に、お前・・・童貞捨てて来たか?」
「ブホッ!!、ソ、ソンナノ今関係ナイダロッ!。・・・オマエハドウナンダ?」
「あ~・・・いや・・・」
「ブーメラン
「あーっ!、言ったなこのヤロー!!」
「まー、まー、落ち着けよ。・・・さて、ここで隊長に報告があります」
下世話な事から喧嘩が始まりそうだったのを1名が制止させ、言った。
「ん? 副隊長、何かな?」
「隊長の、敵航空機と陸上歩行型、両方合わせての撃破数が現在1位とAIが言っていました!」
『お~!!、おめでとうございまーす!!』
「・・・ありがとう」
祝福され、感謝の言葉を言う隊長の顔は、複雑な表情で笑みを浮かべていた。
報告を言った副隊長が急に真顔になった。
「あと、皆に、本部とAIの総意に依る報告が有る」
もう一度、副隊長の放った声に沈黙が場を包み、皆が報告に耳を傾けた。
「ここに居る隊の半数、私、副隊長を含めて他の戦線へ異動となる。戻ったらAIと話して確認してくれ」
今、この場に
この宴の場、この部隊は第1次艦娘達にとっての『英雄』が居る歴戦の、沢山のベテラン歩兵が生き残った部隊。
「そうか。・・・副隊長、他に何か報告は有るか?」
「・・・現時点を以って、妖怪と艦娘に未来を託す事になった。・・・皆、任意だが、戦争から降りて、普通の生活に帰る事も有りだぞ?。本部が職を保障してくれるそうだ」
「・・・帰れないな。俺は艦娘と一緒に戦う。死んだダチと約束したんだ」
「俺も戦う。もう家族も居ないしな・・・」
「話じゃ、まだ本土で網を張ってる奴らが居るらしいじゃねえか。全員ぶちのめすまで、俺は降りねえよ」
「俺も降りねえぞ」
「俺も、俺も!」
結局の所、装備を受領した兵士で、平時の生活に戻った者は最後まで居なかった。
AIの定時報告が無くなった兵士は殉職扱いとなっていた。生還した者から、終ぞ報告は無かった。
「・・・新米、お前は降りて良いんだぞ?」
「俺はもう3ヶ月です!新米じゃないですよ!?」
「馬鹿野郎、俺達1年以上の奴から見ればヒヨっ子同然よ!」
「・・・新米、お前は異動の対象になっていた。死に急ぐなよ?」
「・・・皆もですよ?」
『当たり前よ!』
「聞けば、娘さんがこの戦争の数日前に
「・・・アア、映ッテイタ。・・・ソレカラ数日後ニ音信不通トナッタ。隊長ノAIノ
「・・・あ~、その、なんだ。・・・聞いてすまなかった」
「・・・イヤ、良イサ・・・」
「・・・お前は、まだ同胞を討つつもりか?」
「・・・ソウダ。家族ヲ殺サレ、モウ誰モ居ナイ。同ジ種族デアッテモ敵ダヨ」
「・・・そうか。またこんな風に飲もうな?・・・」
「アア、マタ、ナ・・・」
男達の中には、味方として、敵側の種族が居た。
地上に住んで居た所を襲われ、全てを失った敵種族。その怒りを以って自種族に牙を向くその様は『悪鬼羅刹の様だった』と見た者は言った。
「それにしても、職って言ったってなぁ・・・。何をすれば良いんだろうな?」
「女が通う、男の娼館でも出来ていたりして?」
「・・・男女の比率っていくつだっけ?」
「1対9,000・・・だったかな?。女性に対して、子供を9人も作れば一生食うに困らない、臨時の法律を作るとか何とかを聞いたぞ?」
「・・・中出しOK、か・・・」
「・・・毎日、とっかえひっかえ、性行為で腰を振る・・・」
「腰を壊す→その状態で性交渉する」
「腰振れねえだろ?!」
「・・・騎乗位・・・」
「腰を壊した状態での性交渉に因る激痛・・・」
「・・・(骨疲労的な意味で)男は死ぬ・・・」
「おいィ!?止めろ馬鹿!!この話は終了!!・・・土木業でもやるか・・・」
「
「うわぁ。本気出したら半年の工期が30日以内で完了とか勘弁してくれよ・・・」
「妖精の真の本気は1桁の日数で完成って聞いたぞ? しかも欠陥が全く見当たらない。俺達の立つ瀬が無いな・・・」
「じゃあ、家具作りでも・・・」
「電化製品以外は、職人級の精度で作れるそうだぞ?」
「・・・
「・・・隊長はどうするんです?」
「・・・ムードメーカーが降りるわけには行かないな」
「元副隊長と話していた事、忘れなかったんですね・・・」
「あんな話をした翌日に目の前で消え去った奴の事、忘れられないよ・・・」
「・・・アイツ、隊長の盾の色を考えた奴の友だったそうです。宇宙人だったそうですよ。ほぼ身一つで来たから、サングラスを貰って戦っていたそうです」
「・・・そうか・・・」
「宇宙人? そんなに居るものなんですかねぇ・・・」
新米が疑問を口にした。
「俺も宇宙人だぞ。ちょっと足をめくるから見てみろ」
隊員の1人が自身の長ズボンをめくると、その素足は地面を映していた。かろうじて足の
「・・・あ、ホントだ。透き通る足なんて初めて見た。・・・もしかして、隊長もそうだったりします?」
「そうだが、・・・身体的な特徴は人間と変わらないから、なんとも・・・」
「何か、通常、人間では出来ない特技って持っているんですか?」
「・・・そうだな、少し心を読む事が出来る程度かな」
「心を読む?。・・・覚り妖怪だったんですか?」
「妖怪ではないよ。どれ、ちょっと悟りを開いてやろう」
「何か違うさとりの様な・・・」
「『今日のオカズは何にしようかな・・・』だな。・・・お前・・・この後、抜くのか?」
「ちょお~~~っ!!!何言ってんですか!?」
隊長の笑いながらの問いに新米が顔を赤くし、
隊員の1人が慌てている新米にポンと肩を置き、一言、
「外で艦娘と話してみろよ。案外、抜いてくれるかもしれないぞ?」
「~~~っ///」
隊員におちょくられた新米が思いっきり足を踏んだ。
「イテッ!!、イッテッテッテ!!」
踏まれた隊員が足を抱えピョンピョンし始めた。自業自得である。
『ハッハッハッ!!』
日中に笑い声が飛び交う。・・・その後で、鈍い音が聞こえた後で、喧騒が響き始める。
「バタン、ム牛ゥン・・・」
ドサッと倒れる音も聞こえた。喧嘩は始まっていた。
そんな様子を眺める女性達が居た。見られている事を知られる事無く、彼女達は希望と決意の表情をしている。
戦火を生き延びた男達の
・・・昇りきった陽が徐々に沈んで行く。
男達の内で誰かが歌いだし、それに続いて皆が歌いだした。
命は世界に 飛び散らる
ヒトの
最前線の 華と散れ
持ちたる銃は 当てならず
近接装備
地上の歴史 幾千年
守りし者の
人命まもる
今やその数 幾人か?
幾万余ヶ所を 渡り鳥
武装は解けじ また戦
AIから教えられた歌詞の替え歌。誰が作ったか、皮肉一杯の、戦う男達の歌。
男達全員が口ずさむ。・・・この後、各々がそれぞれの戦地へと赴いて行く。
・・・本当は、自分達が活躍出来る時代は終わったのだと、熟練の者達は分かっていた。
しかし、だからといって、昔の生活が戻ることはない。平時の生活に戻ったとしても、心的外傷等で頭がおかしい最低野郎として見られ、まともな生活を送れないだろう事を全員が思っていた。そう見られない為には、戦場で華々しく散り、この世から消滅することが華である。・・・という風潮が充満していた。
だが、彼等は役立たずではない。敵を道連れにして来た実績がある。
「皆・・・」
宴もたけなわになった所で、隊長が声を出した。
哀愁が漂っていた。この中で、一体何人が生き残るのか。何億人もの人々が死んで行ったこの戦争で、今の何人が生き残れるだろうか。
「隊長、言わずとも分かってます」
「俺や皆、・・・最期のその時まで全うしますよ!」
「・・・諸君の健闘を祈る!!」
『了解!!』
この中で、生きて再開出来るとも分からない。
各々が、戦果を土産にし、再開出来る事を信じて死地へと旅立った。
・・・・・・
「なんて事がありましたね」
「ああ・・・そんな事、あったな・・・」
約2年後、大きな作戦を控え、男2人が杯を交わしていた。2人だけ、である。
その他の顔触れは姿を見せない。
「・・・今日の隊長と会う数日前まで、もう1人生きていたんですよ。でも、俺の腕の中で息を引き取りました・・・」
新米だった隊員がポツリと呟いた。
・・・他の面々は顔を見せないのではない、見せられなくなったのだ。
あの世で皆が待って居る、・・・待って居ないのかもしれない。死の先はあの世か、魂の循環か、はたまた風になって吹き渡るのか、生きとし生ける者には誰にも分からない。
「あいつ、死に際になんて言ったと思います?。『ちゃんと包茎治して、沢山女とヤれよ』って。・・・俺、包茎じゃないと、何度も言ったのに・・・」
新米だった兵士が震える声で話し、尚も言葉を紡ぐ。
「艦娘は良いですね。機銃程度ならやられない体を持ち、俺達よりも臨機応変な攻撃で対処出来、しかも命中率もすこぶる良い。それに、死なない為の防壁まで有る。艦娘だけが居れば良かったんじゃないんですか?艦娘が居れば、空を制し、地を制する事が出来たのでは?そして、もう、海も制する事も可能なんじゃないんですか?」
隊員は俯き、しばらく無言になる。
「隊長、・・・俺達は、必要だったんですか?」
ようやく口を開いた隊員は、隊長へと疑問をぶつける。
間を置いて隊長は語りだす。
「我々は必要だった。・・・だが本当に必要だったのは、艦娘が登場するまでだった。・・・いや、艦娘が投入されてもう少しの期間は我々が必要だっただろう。でも本来は私や君、あの時居た皆も、後方で艦娘を支えて居れば良かったのだろうな・・・。
だが皆、装備を纏い、最前線に身を置いた。『憎き
我々は戦場を駆け、大きな蜂に立ち向かう小さな蜂の如く散って行った。我々は小さな蜂だったんだよ。我々、個々の力は艦娘に全く敵わなかった。・・・それでも、戦わなければならなかった。後退は許されなかった状況で、艦娘が居なかった状況で、我々は小さな勝利を物にする事で今に至っているんだ。決して、我々の死は無駄ではない。・・・無駄ではない筈なんだ・・・」
隊長は自分自身にも言い聞かせるように言葉を
暫しの沈黙の後、最後の隊員が口を開いた。
「隊長、今度の作戦終了と共に、俺は戦線を離れようと思います。・・・今度で、隊長と戦場で会う事はもう無いです」
「・・・そうか」
隊長の生返事の後、隊員が隊長の方を向き、もう一度口を開いた。
「隊長も、もう離れましょうよ?。もう我々の役目は十分なんでしょう?」
隊員の言葉に、隊長は否定する様に首を振る。
「私は離れない。約束をした。・・・それに、死を見過ぎた。・・・敵が憎い。死ぬまでに、辛くとも楽しかった当時の生活に戻れないんだ。自身が死ぬまで戦場から離れられないよ。・・・敵を、海の底まで追い掛け回してやる」
怒りの混じった嗚咽と共にそう言いながら、隊長は涙を流した。
隊長が発したのは、決して、弱気な言葉ではない。
相手が聞けば、裸足で逃げ出しそうな、死神からの台詞だった。
「隊長、・・・戦闘狂になってしまいましたね」
「・・・否定出来ないよ。・・・君だってそうだろう?」
「俺はもう、戦場から身を引く決心が着きました」
「・・・君まで、死なないでくれよ?」
「どう・・・でしょうね? 俺も、年を取りました・・・」
「・・・」
隊員は持っていたグラスを掲げ、
「明日の未来の為に、・・・俺は今度の戦場を生き延びられたら、指揮官として、敵と戦っていきます」
決意表明をする。
今度の戦場を生き延びられるかは分からない。だが、彼は『まだ戦う』と口にした。
彼の様子に、隊長はグラスを掲げ、
「明日の未来の為に、・・・私は戦線で戦い続ける。・・・散って逝った、皆の為に・・・」
決意を口にする。
隊長も又、今度の戦場を生き延びられるかは分からない。だが、彼も『戦う』と口にしたのだった。
2名は掲げていたグラスを口に持って来くると、中身を飲み干した。
そんな2名の様子を眺める女性達が居た。2名に見られている事を知られる事無く、彼女達も涙を流していた。
「ありがとう・・・そして、すまない・・・」
「私達は・・・超人であっても、度は越えてなかったのよ・・・」
彼女達が誰にも聞こえない声で呟いた。
・・・深い悲しみに包まれた静寂の中、夕陽は沈んで行く。