※この作品はR-18です。

艦これ ある惑星の宇宙人な英雄   作:セビンリア

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幕間5 戦争中期 哀れ男達

『カンパーイ!』

 

 ドキッ!☆男だらけの宴会場!1人が乾杯の音頭を取って

・・・あれ?至って普通の光景だな・・・

 

「とうとう、海へ追い返すことが出来ましたね」

「長かったな~・・・」

「いや~、隊長の活躍っぷりったら、凄まじいですね」

「はは・・・よせやい」

「俺達にゃ出来ない事をやってのける!」

「そこに痺れる!」

「憧れるぅ!」

「・・・いや、本当に恥ずかしいって・・・」

「いや~、眩(まぶ)しい存在ですよ。ハ・・・」

「ハゲてないと言っとるだろうに!」

「え、疾風(はやて)の様に、装備を最高速度で扱える存在と言おうとしたんですが・・・」

「・・・・・えっ?」

「やーい、隊長、引っかかってやんのー!」

 

 からかいの声に隊長と呼ばれた者が「ぐぬぬ・・・」とでも言いたげな表情をしていた。

ちなみに今、隊長はストレスがマッハで頭がツンツルテンである。合唱。

 

 

 

「あ・・・あの・・・」

いつの間にか、1名の女性が赤い布を手に持ち、男達の宴会場に乱入して居た。

 

「こ、これをどうぞ!」

真っ赤なスカーフだった。それを隊員の1人に手渡した。

 

「ア、アリガ・・・」

「で、ではこれでっ!!」

手ぶらになった少女はそそくさと去って行った。

 

「お~、今の内に追いかけたら如何だ?」

「・・・イヤ、良イ。情ガ移ル。今ノ一瞬デ十分ダ」

「・・・浪漫だなぁ・・・」

「ああ・・・」

 

 渡された隊員は、哀愁の表情を浮かべ、渡されたそれを見ていた。

 

 

 

 

「時に、お前・・・童貞捨てて来たか?」

「ブホッ!!、ソ、ソンナノ今関係ナイダロッ!。・・・オマエハドウナンダ?」

「あ~・・・いや・・・」

「ブーメラン乙(オツ)!。コノ、ホウケイガッ!!」

「あーっ!、言ったなこのヤロー!!」

「まー、まー、落ち着けよ。・・・さて、ここで隊長に報告があります」

下世話な事から喧嘩が始まりそうだったのを1名が制止させ、言った。

 

「ん? 副隊長、何かな?」

「隊長の、敵航空機と陸上歩行型、両方合わせての撃破数が現在1位とAIが言っていました!」

『お~!!、おめでとうございまーす!!』

「・・・ありがとう」

祝福され、感謝の言葉を言う隊長の顔は、複雑な表情で笑みを浮かべていた。

 

 報告を言った副隊長が急に真顔になった。

 

「あと、皆に、本部とAIの総意に依る報告が有る」

もう一度、副隊長の放った声に沈黙が場を包み、皆が報告に耳を傾けた。

 

「ここに居る隊の半数、私、副隊長を含めて他の戦線へ異動となる。戻ったらAIと話して確認してくれ」

 

 今、この場にサングラス(歩兵装備のAI)は無い。艦娘による深海棲艦への監視・警戒体制が確立し、艦娘よりも体力の無い人間達が休息を取れるようになった。AIの声が女性というのもあり、AI抜きでの会話・談笑をしたい男達にとって、AIを離れた所に置いた、戦中初の会話の場だった。

 

 この宴の場、この部隊は第1次艦娘達にとっての『英雄』が居る歴戦の、沢山のベテラン歩兵が生き残った部隊。

 

「そうか。・・・副隊長、他に何か報告は有るか?」

「・・・現時点を以って、妖怪と艦娘に未来を託す事になった。・・・皆、任意だが、戦争から降りて、普通の生活に帰る事も有りだぞ?。本部が職を保障してくれるそうだ」

 

「・・・帰れないな。俺は艦娘と一緒に戦う。死んだダチと約束したんだ」

「俺も戦う。もう家族も居ないしな・・・」

「話じゃ、まだ本土で網を張ってる奴らが居るらしいじゃねえか。全員ぶちのめすまで、俺は降りねえよ」

「俺も降りねえぞ」

「俺も、俺も!」

 

 結局の所、装備を受領した兵士で、平時の生活に戻った者は最後まで居なかった。

AIの定時報告が無くなった兵士は殉職扱いとなっていた。生還した者から、終ぞ報告は無かった。

 

 

「・・・新米、お前は降りて良いんだぞ?」

「俺はもう3ヶ月です!新米じゃないですよ!?」

「馬鹿野郎、俺達1年以上の奴から見ればヒヨっ子同然よ!」

「・・・新米、お前は異動の対象になっていた。死に急ぐなよ?」

「・・・皆もですよ?」

『当たり前よ!』

 

 

 

「聞けば、娘さんがこの戦争の数日前にTV(テレビジョン)に映っていたそうじゃないか?」

「・・・アア、映ッテイタ。・・・ソレカラ数日後ニ音信不通トナッタ。隊長ノAIノ記録(データ)ニ、娘ノ死ンダ姿ガアッタヨ・・・」

「・・・あ~、その、なんだ。・・・聞いてすまなかった」

「・・・イヤ、良イサ・・・」

「・・・お前は、まだ同胞を討つつもりか?」

「・・・ソウダ。家族ヲ殺サレ、モウ誰モ居ナイ。同ジ種族デアッテモ敵ダヨ」

「・・・そうか。またこんな風に飲もうな?・・・」

「アア、マタ、ナ・・・」

 

 男達の中には、味方として、敵側の種族が居た。

 地上に住んで居た所を襲われ、全てを失った敵種族。その怒りを以って自種族に牙を向くその様は『悪鬼羅刹の様だった』と見た者は言った。

 

 

「それにしても、職って言ったってなぁ・・・。何をすれば良いんだろうな?」

「女が通う、男の娼館でも出来ていたりして?」

「・・・男女の比率っていくつだっけ?」

「1対9,000・・・だったかな?。女性に対して、子供を9人も作れば一生食うに困らない、臨時の法律を作るとか何とかを聞いたぞ?」

「・・・中出しOK、か・・・」

「・・・毎日、とっかえひっかえ、性行為で腰を振る・・・」

「腰を壊す→その状態で性交渉する」

「腰振れねえだろ?!」

「・・・騎乗位・・・」

「腰を壊した状態での性交渉に因る激痛・・・」

「・・・(骨疲労的な意味で)男は死ぬ・・・」

「おいィ!?止めろ馬鹿!!この話は終了!!・・・土木業でもやるか・・・」

「妖(あやか)し達が土木はやると言って張り切っている、という話だぞ?」

「うわぁ。本気出したら半年の工期が30日以内で完了とか勘弁してくれよ・・・」

「妖精の真の本気は1桁の日数で完成って聞いたぞ? しかも欠陥が全く見当たらない。俺達の立つ瀬が無いな・・・」

「じゃあ、家具作りでも・・・」

「電化製品以外は、職人級の精度で作れるそうだぞ?」

「・・・住(じゅう)の職に関しては諦めるか・・・」

 

 

「・・・隊長はどうするんです?」

「・・・ムードメーカーが降りるわけには行かないな」

「元副隊長と話していた事、忘れなかったんですね・・・」

「あんな話をした翌日に目の前で消え去った奴の事、忘れられないよ・・・」

「・・・アイツ、隊長の盾の色を考えた奴の友だったそうです。宇宙人だったそうですよ。ほぼ身一つで来たから、サングラスを貰って戦っていたそうです」

「・・・そうか・・・」

 

「宇宙人? そんなに居るものなんですかねぇ・・・」

新米が疑問を口にした。

 

「俺も宇宙人だぞ。ちょっと足をめくるから見てみろ」

隊員の1人が自身の長ズボンをめくると、その素足は地面を映していた。かろうじて足の輪郭(りんかく)を視認出来る程度である。

 

「・・・あ、ホントだ。透き通る足なんて初めて見た。・・・もしかして、隊長もそうだったりします?」

「そうだが、・・・身体的な特徴は人間と変わらないから、なんとも・・・」

「何か、通常、人間では出来ない特技って持っているんですか?」

「・・・そうだな、少し心を読む事が出来る程度かな」

「心を読む?。・・・覚り妖怪だったんですか?」

「妖怪ではないよ。どれ、ちょっと悟りを開いてやろう」

「何か違うさとりの様な・・・」

 

「『今日のオカズは何にしようかな・・・』だな。・・・お前・・・この後、抜くのか?」

「ちょお~~~っ!!!何言ってんですか!?」

隊長の笑いながらの問いに新米が顔を赤くし、茹蛸(ゆでだこ)の様になった。

 

 隊員の1人が慌てている新米にポンと肩を置き、一言、

 

「外で艦娘と話してみろよ。案外、抜いてくれるかもしれないぞ?」

「~~~っ///」

隊員におちょくられた新米が思いっきり足を踏んだ。

 

「イテッ!!、イッテッテッテ!!」

踏まれた隊員が足を抱えピョンピョンし始めた。自業自得である。

 

『ハッハッハッ!!』

日中に笑い声が飛び交う。・・・その後で、鈍い音が聞こえた後で、喧騒が響き始める。

 

「バタン、ム牛ゥン・・・」

ドサッと倒れる音も聞こえた。喧嘩は始まっていた。

 

 

 そんな様子を眺める女性達が居た。見られている事を知られる事無く、彼女達は希望と決意の表情をしている。

 

 戦火を生き延びた男達の喧騒(けんそう)の中、陽が傾いて行く。

 

 

 

 ・・・昇りきった陽が徐々に沈んで行く。

 

 

 男達の内で誰かが歌いだし、それに続いて皆が歌いだした。

 

血(けつ)の飛沫(しぶき)か   胸の色

命は世界に   飛び散らる

ヒトの男(おのこ)と   生まれなば

最前線の    華と散れ

 

持ちたる銃は  当てならず

近接装備    如何(どう)かせん

地上の歴史   幾千年

守りし者の   漢魂(おとこだま)

 

人命まもる   武士(もののふ)は

今やその数   幾人か?

幾万余ヶ所を  渡り鳥

武装は解けじ  また戦

 

 

 AIから教えられた歌詞の替え歌。誰が作ったか、皮肉一杯の、戦う男達の歌。

 男達全員が口ずさむ。・・・この後、各々がそれぞれの戦地へと赴いて行く。

 ・・・本当は、自分達が活躍出来る時代は終わったのだと、熟練の者達は分かっていた。

しかし、だからといって、昔の生活が戻ることはない。平時の生活に戻ったとしても、心的外傷等で頭がおかしい最低野郎として見られ、まともな生活を送れないだろう事を全員が思っていた。そう見られない為には、戦場で華々しく散り、この世から消滅することが華である。・・・という風潮が充満していた。

 だが、彼等は役立たずではない。敵を道連れにして来た実績がある。

 

 

 

「皆・・・」

 宴もたけなわになった所で、隊長が声を出した。

 哀愁が漂っていた。この中で、一体何人が生き残るのか。何億人もの人々が死んで行ったこの戦争で、今の何人が生き残れるだろうか。

 

「隊長、言わずとも分かってます」

「俺や皆、・・・最期のその時まで全うしますよ!」

「・・・諸君の健闘を祈る!!」

『了解!!』

 

 

 この中で、生きて再開出来るとも分からない。

各々が、戦果を土産にし、再開出来る事を信じて死地へと旅立った。

 

 

・・・・・・

 

 

「なんて事がありましたね」

「ああ・・・そんな事、あったな・・・」

 

 約2年後、大きな作戦を控え、男2人が杯を交わしていた。2人だけ、である。

その他の顔触れは姿を見せない。

 

 

「・・・今日の隊長と会う数日前まで、もう1人生きていたんですよ。でも、俺の腕の中で息を引き取りました・・・」

新米だった隊員がポツリと呟いた。

 

 ・・・他の面々は顔を見せないのではない、見せられなくなったのだ。

 あの世で皆が待って居る、・・・待って居ないのかもしれない。死の先はあの世か、魂の循環か、はたまた風になって吹き渡るのか、生きとし生ける者には誰にも分からない。

 

 

「あいつ、死に際になんて言ったと思います?。『ちゃんと包茎治して、沢山女とヤれよ』って。・・・俺、包茎じゃないと、何度も言ったのに・・・」

 新米だった兵士が震える声で話し、尚も言葉を紡ぐ。

 

「艦娘は良いですね。機銃程度ならやられない体を持ち、俺達よりも臨機応変な攻撃で対処出来、しかも命中率もすこぶる良い。それに、死なない為の防壁まで有る。艦娘だけが居れば良かったんじゃないんですか?艦娘が居れば、空を制し、地を制する事が出来たのでは?そして、もう、海も制する事も可能なんじゃないんですか?」

 隊員は俯き、しばらく無言になる。

 

「隊長、・・・俺達は、必要だったんですか?」

 ようやく口を開いた隊員は、隊長へと疑問をぶつける。

 

 

 間を置いて隊長は語りだす。

「我々は必要だった。・・・だが本当に必要だったのは、艦娘が登場するまでだった。・・・いや、艦娘が投入されてもう少しの期間は我々が必要だっただろう。でも本来は私や君、あの時居た皆も、後方で艦娘を支えて居れば良かったのだろうな・・・。

 だが皆、装備を纏い、最前線に身を置いた。『憎き敵(仇)を討つ』という本人達の意思が在った。我々は敵にとって、悪夢の象徴なんだ。・・・敵にとっての悪夢は、私だけだったのかもしれないがな・・・。

 我々は戦場を駆け、大きな蜂に立ち向かう小さな蜂の如く散って行った。我々は小さな蜂だったんだよ。我々、個々の力は艦娘に全く敵わなかった。・・・それでも、戦わなければならなかった。後退は許されなかった状況で、艦娘が居なかった状況で、我々は小さな勝利を物にする事で今に至っているんだ。決して、我々の死は無駄ではない。・・・無駄ではない筈なんだ・・・」

 

 

 隊長は自分自身にも言い聞かせるように言葉を紡(つむ)いだ。

 暫しの沈黙の後、最後の隊員が口を開いた。

 

「隊長、今度の作戦終了と共に、俺は戦線を離れようと思います。・・・今度で、隊長と戦場で会う事はもう無いです」

「・・・そうか」

 隊長の生返事の後、隊員が隊長の方を向き、もう一度口を開いた。

 

「隊長も、もう離れましょうよ?。もう我々の役目は十分なんでしょう?」

 隊員の言葉に、隊長は否定する様に首を振る。

「私は離れない。約束をした。・・・それに、死を見過ぎた。・・・敵が憎い。死ぬまでに、辛くとも楽しかった当時の生活に戻れないんだ。自身が死ぬまで戦場から離れられないよ。・・・敵を、海の底まで追い掛け回してやる」

 

 怒りの混じった嗚咽と共にそう言いながら、隊長は涙を流した。

 隊長が発したのは、決して、弱気な言葉ではない。

相手が聞けば、裸足で逃げ出しそうな、死神からの台詞だった。

 

「隊長、・・・戦闘狂になってしまいましたね」

「・・・否定出来ないよ。・・・君だってそうだろう?」

「俺はもう、戦場から身を引く決心が着きました」

「・・・君まで、死なないでくれよ?」

「どう・・・でしょうね? 俺も、年を取りました・・・」

「・・・」

 

 隊員は持っていたグラスを掲げ、

「明日の未来の為に、・・・俺は今度の戦場を生き延びられたら、指揮官として、敵と戦っていきます」

決意表明をする。

 今度の戦場を生き延びられるかは分からない。だが、彼は『まだ戦う』と口にした。

 

 彼の様子に、隊長はグラスを掲げ、

「明日の未来の為に、・・・私は戦線で戦い続ける。・・・散って逝った、皆の為に・・・」

決意を口にする。

 隊長も又、今度の戦場を生き延びられるかは分からない。だが、彼も『戦う』と口にしたのだった。

 

 2名は掲げていたグラスを口に持って来くると、中身を飲み干した。

 

 

 

 そんな2名の様子を眺める女性達が居た。2名に見られている事を知られる事無く、彼女達も涙を流していた。

「ありがとう・・・そして、すまない・・・」

「私達は・・・超人であっても、度は越えてなかったのよ・・・」

 

 彼女達が誰にも聞こえない声で呟いた。

 

 

 

 ・・・深い悲しみに包まれた静寂の中、夕陽は沈んで行く。

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