人間の作った 装甲機動歩兵 なる物で、空飛ぶ歩兵として
深海棲艦との戦争に身を置いた。
人間と深海棲艦、共に生物同士の物量戦が繰り広げられている。
隊長として、人間存続の為、日々戦闘を行っていた。
さらに1年後、陸上全域を奪還し戦線は海と島になった。
私の部隊で歩兵は散り散りになり私1人になった。
歩兵が配属されることがなくなってしまった。
艦娘といわれる女性達が私の下に配属されることとなった。
今現在1人9殺のキルレート成績らしい。艦娘1人が大幅にキルレートを上げているとか
何とか・・・。
「貴方が隊長?期待しているわ」
「おっと?収容所まで連れて行った・・・えぇと、すまん、名前を聞いてなかった」
「加茂美賀です。今後艦娘名の加賀と呼んでください。ちなみに航空母艦です」
「加賀、よろしく」
「駆逐艦睦月です。よろしくお願いしま~す!」
「あたしは駆逐艦敷波、以後よろしく」
「軽巡洋艦長良です。よろしくお願いします」
「軽巡洋艦北上でーす。よろしくー」
「同じく軽巡の木曽だ。よろしく」
「軽空母鳳翔です。よろしくお願いします」
「潜水艦伊-168のイムヤよ。よろしく」
「我々が戦っている場所は最前線だ。皆の健闘を祈る」
他の部隊へ配属であろう艦娘達がこちらを睨みつけている。
睦月が睨んでいる艦娘達へ手でVサインを作って見せる。
他の面々も満足そうな顔を睨んでいる艦娘達へ向けている。
今度は殺気が飛んできていた。
鳳翔による加賀の面倒見が良い。
お互いに切磋琢磨し、制空権と敵本体への攻撃の為の議論を繰り広げている。
時折鳳翔が加賀を膝枕しているのを見た。
隊に艦娘8人の加入後2年間、負傷などはあったが死傷者なく敵を殲滅していた。
しかし、本土から見える島は取り戻したがその後は一進一退の繰り返しだった。敵が多すぎる。
艦娘の怪我再生能力はすさまじく1日、2日で治ってしまう。
完治が早いのは睦月で直撃を受けても1日で治る。
睦月だけは服がボロボロになっても翌日直っているのは何故だ?着替えている様子は無い。
時折重傷で治療用艦娘に預けることはあった。治療速度が速く3、4日で帰ってくる。
特に木曽、刀だか剣だかを持って突撃はやめて欲しいものだ。
倒すのは良いがその度に集中砲火を受けていく。死なないのが奇跡に近いが重傷になる事
多々で毎回抱きかかえて撤退になっていた。
・・・皆、なぜか知らんが木曽を抱えた時に怒った目を私に向けるのをやめてくれ。
そして木曽、毎回抱きつきの度合いが強くて痛いんだがやめる気はないのか?
戦死者が身近で発生しない・負傷しても馴染みの顔がまた此処に来ることに安堵した。
特に敷波が戻ってくるのが嬉しかった。敷波を持ち上げて私は喜んでいた。
勿論敷波は喜んでくれる。
敷波を持ち上げていると睦月が近寄ってくる。睦月を持ち上げでやると笑顔を振りまくので
隊の雰囲気が良くなるのが分かる。
長良が重傷から戻って来る度にタックルを仕掛けてくる。一回腕の骨が脱臼した。
戦闘が無い日で助かった。
長良がタックルしてくる度に睦月が長良の鳩尾に拳を入れて引きずっていった。
指揮下の艦娘の皆とは背中を預ける・預けられる仲だ。2年間もほぼ毎日戦闘が起こるならそうもなるか。
・・・イムヤ、なぜいつも朝起きると傍にいるんだ?。・・・あ、今日は睦月が頭に
ゲンコツして引きずって行った。
私がボーっとしている時があると、決まっていつの間にか北上が隣に居る。
気にならない程度なので、緊急時以外はそっとしておいた。
艦娘達が配属されて丁度2年ぐらいの時、本部から内地で私の部隊全員1週間、
休養を取るようにと言われた。
内地に着いた途端私は目の前が真っ白になってしまった。気を失ったようだ。
意識が戻ると艦娘達8人が私を覗き込んでいた。皆を見回している最中で皆泣き出した。
「どうした?」
「私達の所為です。私達が隊長を気遣っていればこんな事にはなりませんでした」
「何かあったのか?」
どこかでドアを強く叩く音が聞こえる。
私は部屋の中にいるようで、そのドアが叩かれているようだ。
『貴様達の監督責任だからな!。死んでいるならばこの場で処刑を覚悟して置けよ!。
おい開錠はまだか!?』
『いまやってます!振動で入れにくいからじっとしていてください』
物騒な声が聞こえる。私は起き上がってドアまで行こうとする。
立ち眩みを起こしよろけて加賀に支えられる。
「まだ横に・・・」
「大丈夫だ。ありがとう」
私は加賀から離れドアへ向かう。ロックを解除しドアを開ける。
目の前にいるのは艦娘なのだろうか? 全員が女性だ。
「私達に何か用か?」
私を見て呆気に取られた顔をしている。
「・・・」
「何も無いのか?」
「あの、貴方が倒れられたと聞いて、居てもたっても居られなくなりまして、
此処に来た次第です」
黒髪の艦娘が話し掛けてくる。
「そうか。私はピンピンしているぞ」
「た、体調はよろしいので?」
「勿論だ」
「そうですか」
そういって息を吐き出す。話は終わりのようだ。
「皆、此処から出るぞ。離れるなよ」
私は部下の艦娘達に向かって言う。
この建物を出るまで部下以外の女性達全員が殺気を放っている。
部下達は全員私に密集・密着するように近くで歩いていた。皆顔を青くして震えていた。
敷波が躓いて転んだ、手が震えて立てないようだ、私は敷波を背中におんぶした。
敷波が顔を私の後頭部にうずめる。周りの空気が少し良くなった気がした。
まだ体が本調子ではないようだ。少しふらついたりする。
間近にあるホテルであろう建物に入り、
「9人分の部屋は空いているか?」
と受付嬢に言った。驚いた顔をされた。
「え、ええ。空いていますよ。お盛んですね~。
1階の9号室です。この鍵を使用してください」
皆で指示された部屋へ入った。大部分が畳張りだった。
備え付けの冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出してすぐに一気飲みする。
その後、私は寝具を取り出した。取り出している最中、皆が部屋の棚を漁って加賀が顔を
真っ赤にしている。気にはなるが私は体力切れだった。すぐに眠りについた。
起きた後で全員私の周りで寝ていた。加賀は私を膝枕して座ったまま寝ていた。
・・・敷波が腹の上で寝ていた。私が起きると敷波も目を覚ました。
途端、敷波が顔を赤くした。
「お、おはよう隊長」
「おはよう」
「体の具合はどう?」
「昨日よりはましな筈だ」
「そう?」
「ああ」
「あの・・・実は、今日が休養でもらった1週間の最終日なんだ」
「私はここでそんなに眠っていたのか?」
「このホテルじゃなくて、ここの前に居た建物で寝ていたんだよ」
「そうか」
皆が起き始める
「皆、羽休めはできたか?」
暫くの沈黙の後、全員が頷いた。
「良かった。行くぞ」
ホテルを後にして、我々は戦場へ戻る。
戻る最中で加賀のポケットから何か落ちる。
「加賀、これが落ちたぞ」
私が拾うと加賀は真っ赤になって慌てて私の手からそれをひったくる。
「あ、ありがとうございます」
「今の落とした物は何だ?」
私がそう言うと加賀の目が泳ぐ。他の部下達が明後日の方を向いているのが見えた。
「・・・お、お守りです」
「そうか、大事にな」
「・・・はい」
部下達全員が大きく息を吐いた。
突撃一番、随分と過激な名前のお守りもあるものだ。私も時間があれば何か買いたかった。
ある時、睦月が話しかけてきた。
「隊長、後は艦娘の私たちに任せて内地で待っていてくれませんか?」
「私に戦場に出るなと?」
「そうです」
そっと抱きついてくる。
「今、女性と男性の生きている人の比率が9,000対1にまで減ってしまったんです。
内地では、戦場は女性と艦娘に任せるべき、との世論になっています」
「だからといって」
睦月が私の声を遮って話す、抱き締めが少し力強くなる。
「隊長、睦月、隊長が好きです!死んでほしくないんです」
「私は皆が好きだ、皆に死んでほしくない」
「隊長・・・」
「それにな、私は人間が好きだから、守りたいからこの戦争に身を投じたんだ。
人を守るなと言うならば私に存在意義は無い。それに・・・」
「・・・」
「私は殉職した仲間たちに、私が戦争を生き抜く、という約束をしている」
「・・・隊長、終戦後も生きていてくださいね?」
「勿論だ。睦月もだぞ?」
「はい!やってやりますよ」
「いい返事だ」
睦月の頭を撫でた。いい顔をしている。
珍しく戦闘が無かった日、イムヤが話しかけてきた。
「隊長、私そろそろ体が限界かも」
「限界とは?」
「両手両足は元気なんだけど頭と胴体がそれについていかないの。一昨日、敵からの爆雷を
受けた時本当は完全に避けれると思ったのよ。でも回避運動が全く取れなかった」
「治療用の艦娘へはそれを話したのか?」
「話したわ、でもその治療は行えない。私という自我の根幹部分なんだって。
これからどんどん反射的な行動が取れなくなるかもって言われた。
でも私たちは艦娘。人の為に最後まで戦うか、終戦まで生き抜くかが私たちの使命よ」
「・・・」
イムヤが抱きついてくる。
「私は最後まで戦うわ。でも怖い。今だけでもこうさせて」
「勿論だ」
「隊長・・・」
安心させるように私もイムヤを抱きしめる。
・・・そろそろ日が沈む。
1年後、飛行場が5つくらい作れそうな島の占領作戦が発令された。失敗に終わった。
歩兵が私以外にもう1人居たが重傷を負い、本土に行くらしい。歩兵は私だけになったそうだ。
艦娘が投入されてから今作戦が最大の殉職者数を記録した。私の部隊も
『隊長、やられた、体が動かない・・・』
イムヤだ。戦闘終了後に安全圏を探したが見つからなかった。生きていると思いたいが・・・。
(隊長、すみませんでした。作戦内容が今回すべて裏目に出ました)
「・・・」
{今後の作戦指揮は全て隊長、又は現場の艦娘達に委ねるとの本部から指示がありました}
「・・・」
{隊長?}
「イムヤの捜索に集中しろ」
{・・・イムヤからの信号は途絶えています。私には全く感知できません}
「では、今だけはイムヤを見つけるまで黙していてくれ」
{・・・}
イムヤの捜索を最終日にして打ち切りにした後、木曽と敷波が話しかけてきた。
「隊長、イムヤのこと残念だったね」
「仲間を失うのは慣れない。ずっとだ」
私は流す涙を隠さず話す。
「イムヤが言っていたと思うが、俺達も反射的な行動が出来なくなってきた」
「そうか、イムヤもそれは言っていた」
「あたし達も最後まで隊長と戦うよ」
「人間を生かすために生まれた俺達だ。死ぬ覚悟は出来ているさ」
木曽が私の胸に顔を埋める
「でも、俺達だって心はある。今だけでも良い。このままで」
そして敷波が後ろから私の体に両腕を回す
「隊長、あたしも今はこのままで居させて」
両者から嗚咽が聞こえる。
どこかから
半年後、もう一度同じ島への占領作戦が発令された。成功に終わった。
艦娘の新型が多数配備されたそうで、殉職者数が少なかった。しかし敵の射撃が精密すぎる。
負傷者が多すぎる。
『隊長、すまない。先に逝ってるぜ』
『ごめん隊長、あたしもここまでだよ』
歴戦の我々は最前線へ送られ集中砲火を浴びてしまった。
木曽と敷波が胴体の一部を吹き飛ばされ倒れ行くのが見えた。
最後の悪あがきと魚雷を全弾発射させていた。
その魚雷のどれもが敵に当たり大爆発が起きた。
戦闘が激しく救助は出来なかった。この日、初めて血涙を流した。
占領した島に防衛要塞と艦娘修復施設の建設が始まる、
ある時、北上が私の野営テントに入ってきた。
「ねえ、隊長。隊長を抱いていい?」
真面目な顔をしている。
「いきなりだな」
「いや~、あたし性欲が溜まっちゃってさ~」
この言葉を言っていても表情を変えていない。
「・・・」
「悶々とした状態になっちゃってるのよね~」
「・・・」
北上が涙を流し始める。私の胸に飛びつき、そして背中に手を回してくる。
「死にたくないよ。あたしだって感情が、・・・心があるんだよ。
隊長を好きになっちゃって、離れたくないって思っちゃってるんだよ」
「・・・」
「今だけでもいい思いをさせてよ」
「北上さんだけはズルイよ」
長良が入ってくる。その顔は涙で濡れている。
「私だってその想いはあるんだから」
長良が私に近づいてくる。北上は顔を半分長良に向ける、
その目は涙を流し続けているようだ。頬から落ちる涙が見える。
長良は気にせず私の首に腕を回してくる。
「・・・」
この後二人は何も話さなかった。
だいぶ経った後で二人の寝息が聞こえてきた。
・・・私は今日寝れるだろうか?
3ヶ月後、深海棲艦側の部隊が占領したこの島へ向けて大量に進行してきている姿が確認された。
防衛のため我々の部隊が迎撃に出る。今回も敵の攻撃が精密・上手すぎる。
味方は我々の部隊にほぼ任せっきりのようだった。動ける艦娘が我々以外少ない。
『あ、や・・・』
北上の所持していた弾薬が敵の弾で大爆発を起こし北上は四散した。
『右腕負傷しました、まだ戦えます!』
『私は、ここまでのようです』
長良は片腕を喪失した。
鳳翔は足を吹き飛ばされ、その後、集中砲火を受けていた。
・・・間に合わなかった。
・・・戦闘終了後、鳳翔が波に漂っている。急いで救助に向かう。
負傷箇所が無い。疑問に思っていたところで鳳翔が目を覚ます。
「提と・・・、隊長!」
鳳翔が抱きついてきて嗚咽を漏らす。思考を読み取る限り私の部隊の鳳翔だ。
私は鳳翔を抱きしめた。私の涙はもう乾いているのだろうか?
5年もこの状況が続けばそうなるか・・・。
いつまで経っても、この島に居る艦娘の半数も修復が進んでいない。
長良も修復が行えない。治療用の艦娘はいつ来るのだろうか。
加賀が倒れた。過労だ、艦載機運用の為に頭を使い過ぎていた。
加賀の容態を見に行った。
「隊長、私の自己管理責任よ。ごめんなさい」
「敵機が多かったし、制空の要が君だった。・・・無理はするな」
「今が一番敵機が多い気がするわ。要塞を対空砲の針山にして迎撃機も欲しいところだけど」
「今現在、本土での兵器生産能力が著しく低下しているそうだ。針山は築くことが出来るな」
「隊長、今度は敵の大編隊が来ると私は予想するわ。もう私の能力では限界なの」
「ならば私がどんどん打ち落とせばいい」
「それを考慮しての数で来られれば押し切られるわ。この島を放棄しましょう?」
「動けない艦娘達を放置しては行けない」
「あの艦娘達はもうお役御免なのよ。第1次の治療用の艦娘は今はもうこの星の裏側に1人のみ、すぐに来るとして半年掛かるわ?」
「それなら艦娘達を退避させる為に退避完了まで私は残る」
「隊長は、いつも優しい。優し過ぎるわよ。でもそうだからこそ、この島の艦娘は
貴方についてきたのよね・・・」
「戦闘不能の艦娘達には本土撤退を通達しておく。これで良いな?」
「ええ、なるべく早く完了させてね」
修復不能な艦娘に本土撤退の命令を出した。
皆が私を見ているが隣にいた睦月が皆に怖い顔を押している。
全員が顔を青くして明後日を向いてしまった。
長良にも撤退を命令した。
「イヤ!隊長と一緒に居たい!」
「満足に戦えない者が居ると我々は戦い難くなる。
私は皆を守らなければならないんだ。負傷者だけを贔屓にすることは出来ない」
しばし沈黙が訪れる。
「隊長、お願いがあります」
長良が口を開く。
「何だ」
長良が私に左腕を私の背中に回す。
「私が満足するまでこのままで居させてください」
「勿論だ」
「出来れば隊長も抱きしめてください」
「わかった」
長良に背中を両腕を回す。
就寝のラッパが流れるまでその状態だった。
翌日から負傷者の撤退が行われた。
撤退する全員が見えなくなるまで周辺警戒と此処を去る者達を見送っていた。
負傷者の移動が完了した翌日、この島へ敵機からの爆撃が行われた。
大編隊の敵を捌ききれず爆弾を落とされていく、落とされる度にどこかで悲鳴が聞こえる。
加賀が爆弾の破片で重傷を受けた。
「隊長、長いようで短かったわね」
「加賀、喋るな、輸血の用意を」
「此処には人間用設備は無いわ、あるのは第3次用よ」
「・・・」
「助けてもらってから今まで私が生きてこれたのは隊長が守ってくれたおかげよ。
ありがとう。貴方への恋愛感情はあったかもね、でももう叶わぬ夢」
「・・・」
加賀が私の首に腕を回し私にキスをした。
「私の分まで生き抜いて、幸せになって・・・」
「勿論だ」
「・・・なんだか、色んな意味で妬けちゃうわ」
加賀が腕の中で息を引き取った。
赤い羽根は黒く汚れているようだ。
まだ敵が近くにいる可能性がある。火葬は危険なので水葬となった。
2ヶ月後、戦線が前進していく。
睦月、鳳翔を連れて戦線維持の支援を行う。
最初、鳳翔の動きがぎこちないと思ったが杞憂に終わったようだ。いつもの鳳翔だ。
だが加賀が居なくなったのが痛いと感じる、鳳翔は敵機を撃ち落とすだけで
敵本体へ攻撃を行えない。
途中、深海棲艦側の未確認個体がいた。脅威だと思った私は急ぎ排除を行う。
未確認個体達は私を見た途端、戦闘放棄し、逃げ出した。何体か逃げられてしまった。
戦闘終了後、心臓の止まった人間艦娘が多数浮いていた。もう完全に息は無い。
略式ではあるが水葬を行った。
1年後、人間側が戦線を維持・拡大していく。艦娘はほとんど第3次製造個体になった。
その中、新たに部下が配属された。
「五十鈴です。第1次後期型です。よろしくお願いします」
「金剛です。第2次です。よろしくお願いします」
「二人ともよろしく」
「英雄と一緒に行動できて光栄です」
「買いかぶり過ぎだ。指揮に関してはこのAIに任せているからそれに従ってくれ」
サングラス状のBYを見せる。
『分かりました』
五十鈴の攻撃精度は針の穴に糸を一回で通す精密さだ。流石は第1次艦娘か。
その五十鈴は私に向けてキラキラした目を向けてくる。毎回五十鈴が戦闘終了後に
真っ先に抱きついてくる。
胸をグイグイと押し付けてくる度に睦月も抱きついてくるのと、
鳳翔が私を睨み頬を膨らませている。
ん?金剛、どうした?そんなに両腕を振り回して?。
スポーツか何かやっているつもりだろうか。
何か言おうとしては口を閉じて地団駄を踏んでいた。
補給基地へ戻って少し休養を取っていた時、五十鈴が話しかけてきた。
「隊長、ちゃんと休んでる?」
「少しは、な」
「また、あの時のように倒れられては困るのよ?」
「私が倒れた時は・・・あの時か」
あの時の8人の顔が思い浮かぶ。
「貴方が倒れたとき私達第1次艦娘は現人神が死んでしまうような感覚だったのよ?」
「ハハ、現人神とは大袈裟だな」
「笑い事じゃないわよ。あの時の私達は神様が死んでしまったかもと思って、
貴方を気遣えていなかった貴方の部下達を殺してやろうともしていたのよ?」
「そこまで私の存在は大きいのか?」
「大きいわよ。私は後期型だから戦争初期は見ていないけど、第1次型にとっては
貴方はヒーロー、若しくは神様も同然。稲妻の様に現れては敵が早々に全て居なくなる。
貴方が居なければ第1次型はとっくに皆居なくなっていたわ。人間も居なくなっていたかもね。
そんな人が敵ではなく味方の所為で死んでいたしまったかもなんて、
私達は気が気じゃなかったわ」
「・・・」
「同じことは繰り返さないこと。いいわね、隊長?」
「重々承知しているよ」
「もう!、休める時は休みなさい。そのために第1次型の私が居るんだからね」
「ああ。ありがとうな」
五十鈴から水を渡されて飲む。・・・眠気が来た、疲れが溜まっていたようだ。もう寝よう。
起きたら外が騒がしかったので騒ぎの元へ近寄る。
睦月が仁王立ち、五十鈴が正座していた。睦月が説教をしているようだった。
1年後、敵の偵察機に我々の部隊が負傷した艦娘の護衛している所を発見され、猛攻を受けた。
『隊長、皆、撤退して!』
取り残された五十鈴が叫ぶ。
「五十鈴、今行く!」
『駄目!攻撃が激しすぎるわ。貴方はヒーローなの! 私は貴方が死ぬことを許さないわよ。
老衰まで生きて頂戴!私は何時までも入り口で待ってるわ』
「・・・五十鈴、必ず待っていてくれよ」
『ええ!』
五十鈴を残し撤退する。敵爆撃機を撃墜しながら撤退支援を行う。
金剛の指揮の下なんとか殉職者、落伍者を出さずに退避を完了させた。
集結地点に五十鈴が来ることは無かった。
{隊長、大丈夫ですか?}
「・・・」
{隊長!?}
「隊長?」
「・・・一人にしてくれ」
サングラスを外し、人気の居ないところへ行く。
その日だけは感傷に浸っていた。
何時の間にか大雨になっていた。
1年後、睦月と鳳翔が敵の攻撃を受け負傷した。
精神状態も磨耗し過ぎていると感じ、本土へ治療と療養に行かせた。
尤もあの精神状態だと、もうまっとうな生活は出来ないだろう・・・。
金剛が体調が悪いと言って野戦病院に入院となった。
金剛とナースの意思疎通が出来ないようで第1次艦娘がその間に入っているそうだ。
私1人で戦線にいる最中、敵の思考が入ってくる。
『貴様がいなければ、貴様達がいなければ!私の家族が死ななかったのに!』
私も同じ様なことを、想いをぶつけてきた相手に届くようにする。
『貴様がいなければ、貴様達がいなければ!私の愛する人達が死ななかったのに!』
『・・・』
人型1体の動きが止まる。が、敵が沢山いるので相手にしていられない。
敵の錬度が下がったと思えた。私へ直撃する弾が少ない。
敵を殲滅し終えて辺りを見回す。人型を倒していない事に気付く。
深く考えて人型があの1体だけだった事に気付いた。
・・・敵戦闘機とか、見なくなったな・・・。
ある所で戦闘を行っている艦娘を発見する。
{第1次艦娘達です。援軍要請の信号を発しています。行きますか?}
「勿論だ」
艦娘に近づいていた敵を片付けて、助けようとしている艦娘達へ
無線が良好になる範囲まで近づく。
「生きているか?」
『水が欲しいです』
「受け取れ」
艦娘達真上から予備スロットに入れてある水の容器をばら撒く。その間にも敵を打ち抜いていく。
水を掴んだ後ラッパ飲みしている様だ。足りるだろうか?
「まだ弾薬は残っているか?」
『残ってます』
「援護してくれ、一人でこの数は厳しい」
『はい』
援護砲撃が始まる。流石は第1次、一発一発を確実に当てていく。
ややあって敵の殲滅が完了した。
「あの、ありがとうございました」
右腕が砲や機銃などで針山になっている艦娘が話しかけてきた。
「動けなくなったものはいるか?私が連れていくぞ?」
「い、いえ、居ません」
話し方が緊張している。それに、なんだかジロジロ見られていて居心地が悪い。
「そうか、では諸君らの健闘を祈る」
早々に此処を抜け出す。
第1次艦娘はこの部隊以降、見なかった。