「はい、データの転送、完了しました」
{有難う}
データの受け取りが終わったSPは
{・・・ふむ、改めてデータを見ると、作りの荒い部分が多かったですね。・・・はい、第1次艦娘用の修理作業に関しての情報を他の記憶領域に置ける
SPは貰ったデータを改造し、明石へと戻す。膨大な情報量にまた時間が掛かる。
「は、はい。どうぞ。・・・うわ、結構膨大な情報量ね。時間が掛かるわ・・・。あ、そうだ。提督、立ち会って欲しい艦娘が居ます」
明石は男へと言う。その言葉に、男は呆ける。
「最近に顕現した艦娘の報告は無く、建造機は今稼働させている途中の筈だが?・・・ん?、立ち会って欲しい?」
明石が言った艦娘というのは第3次艦娘という、妖怪・・・もとい、妖精が造る艦娘である。
元々は妖精が受肉する為の儀式に深海棲艦の細胞を用いて艦娘も一緒に生成・
対深海棲艦の為に艦娘建造機を作り、それで艦娘を造るようになる。建造機が量産出来てから第3次艦娘の増産量は凄まじく、たったの1ヶ月で第1次艦娘の残存数を上回った。生存性も高く、1回の戦闘で死者が出ない事もある程。
第3次艦娘を建造機で作り始めたと同時期に第1次艦娘は新規建造が出来なくなっていた。なので、艦娘の切り替えの時期が良く、陸に住む者達を守る為に貢献した妖怪・妖精は偉大である。
・・・話戻って、現在、艦娘は
男は驚く。この島は不思議な所であると思ってはいたが、まさか艦娘が眠って居るなど考えもしていない。
「見せた方が早いですね。今出しますので、
明石は言いながら、机に近づいてボタンを1つ押した。
小音量のブザー音が鳴り響きながら、床の1部分が静かに開く。開いた床から、立直型で楕円形、人1人が入れる位のカプセルが現れた。その中には、女性が眠って居た。
「寝ているのか・・・」男はカプセルの中に入って居る女性を見て言う。
「妖怪達が対爆撃用に地下壕の拡張工事をしておりまして、その最中で睡眠カプセルを発見し、
「・・・ほむ、地中に埋まって居た、と?」
「そうです。カプセル外観の経年劣化からして、15年近く経ってます」
{じゅ、15年!!?}
SPが酷く驚いた声を発する。
「ん? SP、如何した?」
SPの動揺した声に、男は驚く。
{カプセルで眠っている者が、艦娘だと言うのですか?}
SPは問うが、男は別段何とも思っていない様子。
「人間艦娘の件が在るし、別段、眠らせられて居ても不思議ではないのでは?」
{『艦娘』が居るのは、おかしいんですよ。艦娘の研究は今から約20年前から始まったんです}
「偶然、艦娘が眠りについたのでは?」
{それに、生物を生きて保存するカプセルだなんて代物、完成したのは約12年前なんです}
「・・・15年前は完成していない?」
{そして、第3次の存在が確認されたのは、深海棲艦との戦争中なんです}
「・・・戦時中、今から10年以内なのか・・・」
男とSPの問答、そこに明石が『待った』を掛ける。
「あのぅー、彼女を起こしてみましょう。謎が解けるかもしれませんよ?」
「む、そうだな」
頷きながら男はサングラスを弄り、鎧を身に纏う。
男の付けたサングラスは亜空間にそのサングラスと対となった鎧が存在する。男はそれを引き出して身に纏った。武装等も付いており、それらは殺傷力の有る物。流石に武器は取り出していない。
「あの・・・武装しちゃうんですか?」
「この女性が目覚めた瞬間に敵対する可能性も在るぞ?」
「む、・・・そうならないと思いたいですが・・・。コホン。では、覚醒させます!」
明石は眠る彼女を覚醒させるボタンを押す。中では煙が立ち込め、少しだけ眠って居る女性が見えなくなる。
煙が消えると、透明の蓋が音もなく消えた。眠って居た女性が覚醒し始め、目が動き始める。
「・・・ん、・・・んん!?!」
起きて目を大きく見開いた彼女が、男に驚いた後、男の足を思い切り横蹴りした。
「うっ!!…ぶおっ!!」
蹴りが力強く、男の足が地面から離れ、横腹から地面に叩きつけられた。男は次の攻撃に備え、急いで彼女から離れる。
明石は急いで手近な極太スパナを手に持ち、女性の次の行動を注視している。自分やこの地に住む者達に被害が及ぶならば、全力を以って立ち向かう態勢に入った。工廠に居る男と明石以外の作業員も女性の行動を注視して居る。
「何で、初めに人と目が合うと思ったら、こんな妙な鎧姿なのよ!? ・・・ハア・・・」
起きた艦娘が呆れた声を出した。
『・・・』
・・・が、この場に居る者達は新顔の女性への警戒を解かない。見知らぬ者に親しい者へ無礼を働かれて、何もしない様な者達ではない。
「まあ、良いわ。私を起こしてくれたんでしょ?。ありがと・・・」
そんな様子を気にも留めない様子で、起きた彼女は感謝を口にした。
「え?、なんだそれは?」と男は困惑。
近くに居た妖精が『シマッタ!!』という顔を一瞬したが、直ぐに平常の顔に戻した。
・・・が、それを見た明石は『後でお仕置き案件』だとその妖精に目配せ。妖精は顔を引き攣らせて身震いした。
「今、何年経ってるか分からないけど、『文字が変わっていれば書いても意味無し』として絵だけにしたのよ。今の世の中じゃ、右も左も分からないんだから、貴方の住んでいる所に
「出会った印象が最悪なんだが・・・」
「ちっ、…悪かったわよ。これで良い?」
「随分とまあ・・・」
起きた艦娘の物言いに、男が困った声を出した。
「文字が変わっていれば意味無し・・・。ああーーーっ!!。あの設計図の何枚かに、分散して書いてあったのは貴女の事だったのかぁーー!!!」
明石が思い出した事を、大きな驚き声を上げて喋る。それを彼女は呆れた風に見る。
「気付いて無かったの?。よく私の埋まって居ただろう場所が分かったわね?」
「貴女を探し当てたのは、実は妖怪なんです。『艦娘の起源にして頂点が
「妖怪か。それに、・・・起源にして頂点、ね・・・」
起源と言われた艦娘は遠くを見ている目をしていた。
彼女の気が遠ざかっている内に男と明石が話し合う。
「提督。この艦娘は信用して良いと思います」
男は唸る。何もかも、を信用していない様な女性を信用して良いものかと思案する。事実、会って直ぐなので、打ち解ける為の時間が足りない。・・・だが隣に居る明石は、さも、大丈夫だと言わんばかりの表情だ。
「2人(?)を守って、人を放り投げて山にしている絵が在ったんです。あれは10割中10割、彼女の事です。こちらも礼儀正しい対応をしていれば、義理と情で答えてくれますよ」
明石は言うが、男はその回答を真に受けて大丈夫なのか答えがまだ見つからない。見かねた明石が男をからかう。
「・・・そんなに心配しているとハg」
「禿げてない!」男が明石の心配にすかさずツッコミを入れる。
「何言ってんですか。心労過多で、隠居し始めの時は禿げてたくせに」
「最初だけだろう!?」
「ツルツルだったのは事実ですよ。どの道、鮮明に覚えている私の記憶では、貴方のすっぴん姿を見た当初からでしたよ?。私にはバッチリ、バレてますからね~」
「・・・バレていた・・・だと?」
明石の言葉に、男がガックリと肩を落としていた。
「まあ、
暫くして、気を取り直した男はサングラスを弄って鎧を解いた。
「・・・へぇー、今はそんなのが流通している時代なのね・・・」
眠っていた艦娘は少し驚いただけで、抑揚の無い声で感嘆の声を上げた。
作業員の面々は明石と男の様子に、自分達のやる事へと戻って行く。ここは整備と開発をする工廠、この建物の中に居る皆が忙しい。彼女を警戒しつつも自身の持ち場へと戻り、戦う者達への後方支援に忙しく動く。
「この世に生を受けた時、最後は弓を引いてくる帆船相手には無双していたけど、今は如何なのかしらね?・・・」
「は、帆船。・・・もう、それは数千年前の話ですよ」
「・・・そう。現在は如何なの?」
「今、船は・・・浮かんでいる物は装甲を最も厚くした輸送船くらいですかねぇ・・・。一時は、深海棲艦に全て水没させられましたから」
「深海棲艦?」
「深海棲艦とは、陸上生物を根絶やしにしようとする海の生物達の総称です。深海棲艦が陸上に侵攻、占領を許しました。・・・陸上生物の皆と艦娘の活躍によって今は少数となりました。しかし、まだ戦闘は続いています」
「ふぅん・・・」
明石の語りに、女性は適当に相槌を打った後に周囲を見回す。工廠内で小さい倉庫の様な物を見た所で、その目が固定された。
「あ、アレ使ってるんだ?」
女性が倉庫の様な物を見続けた状態で言う。それに明石が答える。
「ああ。この島で唯一だった艦娘建造機です。今はもう1つ追加されて、計2つ所有していますよ」
「やっぱり、私の様なのが、まだ出て来ちゃうんだ。・・・父さんは保存していたけど、私が生まれ出でた後は全く使用していなかったわよねぇ。・・・ん?、もう一つは倍以上の大きさが有るけど如何して?」
「あれは大型建造機ですよ。見知った顔が出て来た時は、提督、嬉しくて気絶してましたよねー?」
「か、還って来たんだぞ?! 開いた口が塞がらない様な出来事だったじゃないか?!」
「ええ。・・・そうなんですよねぇ。私からしても。・・・いつ見ても、不思議な物ですよねー・・・」
「?」
「ああ、こっちの話ですよ。気にしないでくださいな」
男と明石の会話に女性は不思議に思ったが、気にしないことにした。
明石の言葉の少し後で、小型の方の建造機が煙を上げ始めた。
「な、何?!・・・ああ・・・」
女性がそれに一瞬驚いたが、建造機の稼働音だと分かると真顔になる。その他の面々は驚かなかった。
「そういえば、小さい方を稼働させていたんだったな」
建造機。人9人分の体積を入れる空間が在る。カプセルのような形をし、見方を変えれば、頑丈な倉庫にも見える。煙突が付いており、そこから煙が上がれば、扉が開き、艦娘が出て来る。出て来る艦娘は全て第3次艦娘。大型建造機は通常の建造機の3倍の大きさ、人27人分の空間がある。
しかし、この鎮守府に於ける、小さい方の建造機は倉庫に色々とモノをくっ付けたような形をしている。
「戦艦型が出て来ると心強いですよね」
「私的には、空母型が現れてくれると、現在の空母組の負担が減って嬉しいのだがな・・・」
「妖精の話ですと、全て乱数との事ですし、そこが難しい所ですよねぇ・・・」
「まあ、生存性が高い第3次が出てきてくれるのだし、誰でも問題は無いな」
「敵がそんなの関係無い位の猛攻をして来たら・・・」
「その時はその時、だな。誰だって、死ぬ時は死ぬ。我々のやっている事は、命の取り合いだからな・・・」
「・・・そうですね・・・」
明石と男のやり取りの間に、小型建造機の扉がゆっくりと開き・・・艦娘が姿を現す。
「あ・・・」
建造機の中から現れた艦娘が男を見て呆然としている。
「如何した?」
心配した男は建造機から出でた艦娘へ声を掛ける。
「あ、あの・・・戦時中は何かとお世話になりました!」
そう言いながら、艦娘は男へと頭を下げる。
「世話になった?・・・ああ、君に似た顔の艦娘は戦時中、幾度も見たな・・・」
男は過去を回想し、彼女の様な容姿の顔を思い出している。
男の記憶で、1番記憶に残って居たのは、海上に死体として浮いて居た艦娘の遺体。
その多くが彼女と同様の顔だった様な、うろ覚えな記憶が在った。そうだった気もするし、違う気もする。
しかし、この男を知っているという事は戦時中に彼を見た事がある事の証左。
「駆逐艦、朝潮です。あの時以上にお役に立つ覚悟です!よろしくお願いします!」
「・・・うむ。期待しているぞ。取り敢えずは、訓練をしてくれ」
「・・・訓練、ですか?私は直ぐにでも戦闘に参加出来まs・・・」
「新人は、先ず、訓練、からだ」
「は・・・はい、了解しました!」
男の有無をも言わさない様子に、朝潮は慌た様子で承諾。
『では朝潮。施設等の案内をしますので、付いて来てください』
妖精の1名が朝潮の脇腹の服を引っ張りながら言う。
「はい。では、隊長、これにて失礼します!」
去り際の朝潮の台詞に、男は苦笑し、手で挨拶を返す。
「さて、自己紹介がまだだったな。君に聞くが、名のる気は?」
男は、先程まで寝ていた艦娘へと向き直り、名を名乗らせる。
「・・・私は大井よ」
「私は明石です」
「あそこにも、似た顔が見えるけど?」
大井があそこを小さく指差す。そこには、明石と似た顔が居る。
「興味があれば、話し掛けてみてください。あそこの明石は、私との得意分野が違います」
明石の答えに、「そう」と大井は生返事で返答。
後は自分の番だと思い、「私は・・・」と男が名を言おうとするが、
『ここの提督
「む、・・・そうだ」
男の自己紹介は大井と明石に遮られてしまう。
そう。男はこの鎮守府の管理者、司令官、提督である。何処か間の抜けた印象を与えるが、それでも昔は幅を利かせた事のある大物。・・・もう、人の間では、この男の話題が出なくなって久しい・・・。
「大井さん。これからどうします?。ここで極力のんびりと暮らすか、深海棲艦打倒の為に戦闘に参加するか、それとも内地へ行って暮らすか、の3択くらいですかねぇ・・・」
明石が大井へと選択肢を出した。
「決断の前に、私、艦娘って言うのに分類されるんだっけ?」
「・・・そうなります」
「艦娘が内地へ行った場合、如何なるの?」
「艦娘だとバレれば、住民の皆さんに『海は平和になったの?』ともれなく言われますよ?」
「・・・嫌味?」
「・・・そう、なります。・・・今は、海の幸を市街地へ持って来れたら高値で取引可能な時代です。まあ、漁をするには物凄い生存能力と労力が要りますが、ね。現在、海辺に近寄るのは自殺行為。そうならない様に安全を守るのが艦娘の役割と言う訳です」
「・・・そっか、人は 弱者なのね・・・」
「はい、艦娘がヒトを守れる強者となっています」
「・・・変わらないものね」
「生身ならば、そうなります。さっきの提督の装甲鎧や戦車で、何百・何千人とかき集めてやっとこさ艦娘と横に並べる状態だったのが数年前の事でした。・・・今は、屍の山と成り果てましたが・・・」
明石が答えた後で大井が思考し始めた。
(平凡な暮らしの為には、猫の手も借りたい状況。・・・私もやれる筈よね・・・)
大井が答えを見つける為に小さく口に出して考えていた。
「やるわ。私もここで働かせて貰おうじゃないの」
「その言葉を待ってました! さあ、そこの妖精が住む部屋を予め用意していました。付いて行って部屋の確認をしてくださいな」
「ええ、よろしく明石」
大井が明石に手を差し出し、明石も手を出して握手をした。
「貴方もよろしく」
「ああ、よろしく。大井」
大井は男とも握手をし、手を放した。
「ところで、・・・ここには、球磨姉さん等は居るのかしら?」
大井は思いついた事を質問してみる。
明石は「貴女の姉妹艦ですか?」と言う。
頷いた大井へ「ここには、北上と木曾なら居ます」と回答。その答えに、大井は少し顔を緩める。
「そう、早速会って見るわ。案内よろしく」
『はい。お任せを』
妖精と共に大井は歩き出す。
「じゃあね」
大井は男と明石に手を振り、工廠から出て行った。
(第1次の反応無し。・・・明石の言っていた通り大井も、当時話題になっていた第3次艦娘、なのかしら?・・・)
SPが大井について考えたが、結論は出なかった。
「・・・父さん、成功したわよ・・・」
大井は小さく呟く。その瞳に、涙を溜めていた。
『そうだ。大井さん』前を歩く妖精が大井へと話し掛ける。
「何? それと大井で良いわ」
『では、大井・・・』妖精は勿体ぶってから言い放つ。
『地獄の大戦争後の世界へようこそ』