※この作品はR-18です。

艦これ ある惑星の宇宙人な英雄   作:セビンリア

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前日 厨房にて

 鎮守府を照らす陽は傾き、今日という日の、恒星からの光が消えようとしている。この鎮守府を夜の闇へ誘(いざな)う。この地は、北極や南極に近い場所ではなく、陽射しが永続的に照らす地では無い。又、恒星がその地を照らすように惑星が自転している訳でもない。

 鎮守府の煙突からは薄く煙が上り、その煙から発する匂いに釣られて腹を好かせた者達がその発生源へと近付いて行く。

 匂いの元へと近付いた艦娘達は、建物へと入る。その建物の中には机と椅子が大量に置かれており、入口から奥の方へ行くと厨房がある。そう、ここは食堂である。

「間宮、カレーライスを超大盛で1つ。栄養剤1つ!」

「はい!・・・はい、お待ち!!」

間宮と呼ばれた者と、厨房の中で調理を行っていた者が注文を受け、素早く差し出す。

「おお、早いわね。どうも!」

「野菜は?」間宮は問い掛ける。

「栄養剤が有るからいいわ」

 料理を受け取った艦娘は間宮と離れ、近くの席へと座る。

 

 今日の厨房には間宮と数名の艦娘が待機し、食事をする艦娘を待って居る。

今の時間は夕食時。数多くの者達が食事にと食堂へ入り込み、自分の頼んだ料理に舌鼓を打つ。

「間宮、一頭分のステーキ中段焼きの野菜盛り合わせとご飯特盛りは出来る?」

「・・・ごめんなさい、加賀。未だ肉は、そこまで供給出来ない状況よ・・・」

「・・・そう。・・・じゃあ、カレーライス超大盛1つと栄養剤をちょうだい」

「はい!・・・はい、お待ち!!」

間宮と、厨房の中で調理を行っていた者が注文を受け、素早く差し出す。

「あれ?、野菜は?」最初に野菜と言われていたのを思い出し、間宮は問い掛ける。

「栄養剤が有るからいいわ」

 料理を受け取った加賀は間宮と離れ、近くの席へと座る。

間宮は少し機嫌を損ねる。

「よくあれを飲むわよねぇ・・・」

間宮の独り言に厨房の調理担当の1名が反応。

「飲めなきゃ、あの戦争は生きて行けなかったわよ。あたしが生きて居るのは、あれの御蔭でもあるんだからね~」

「そう言う衣笠、貴女は余り服用しない様だけど?」

「そりゃあ、ごった煮でもやればその必要は無くなるわよ」

そう言った衣笠へ、「栄養剤入りカレーライス」と間宮は皮肉を込めて衣笠へ発言。

「まあ、間宮!あたしが好きであれを出したと思ってるの?」

「栄養剤だけなら飲めたのよ!後にも先にも、無理やり胃に流し込んだのはアレだけよ!今度やったら、提督の手料理にそれを混ぜるわよ?」

「ハイ!ごめんなしあ私は謝るますだから許して下しあ間宮様どうかそれだけはぁ~!!?」

「・・・明石も言ったりする、その変な言葉使いは何?」

「え?提督が稀によく言う台詞よ?」

「ま、稀によく?・・・栄養剤は全て破棄しようかしらね・・・」

 折角私(間宮)が栄養管理を出来るのにと言おうとしたが、

 

「間宮、それは困るよ」

間宮のボヤキを聞いた男の声が止める。

「提督・・・」鎮守府唯一(ゆいいつ)の男性。男が食事の為に、間宮の前に足を運んで居た。

「間宮。君へは言って無かったが、今日で、全員への毎日の食材確保の目途がやっと整ったんだ。もう暫くは言われたら出すようにしてくれ。大体、後90日位だ」

「あのカレーライス以来、私にはアレを出されませんでしたが?」

「あの時の君の扱いは、捕虜であり重傷者。あの時完食出来なかった時点で、私は君がアレを服用出来ないと決定したからな」

「・・・もしかして、提督は毒見したんですか?」

「勿論完食さ。別段食えない程では無かったが、・・・後方支援所属の君ならそんなものなんだろうな」

「うぅ、・・・ずっと最前線の方に言われると反論し辛いです・・・」

「これでも、一度は引退した身だよ。やっと味覚が戻って来たんだ。私だって良い食事にはありつきたいから、しっかりと頼んだぞ?」

「はい、それはもう、お任せください!」

 間宮の反応に、男は満足そうに頷く。そして衣笠へと目を向ける。

「ああそれと、衣笠。今から、料理の中に栄養剤を入れる事を禁止とする」

「ええぇ~!?どうせなら一編に摂取した方が良いでしょう?!」

「今、臨戦態勢の状態では無い。味も士気を上げる作用の1つなのは、君も解っているだろう?」

男の諭(さと)しに、衣笠は「・・・うん」と頷く。

「間宮と、調理の交代要員が未だ少数。間宮だけでは如何(いかん)せん体力が持たない。そこで君の、良い味覚と体力が頼りなんだ。衣笠、頼むよ」

「・・・ま、まあ、提督に頼りにされちゃあ、仕様が無いわね!衣笠さんにお任せあれ!」

 男の言葉に衣笠は恥ずかしながら胸を張る。男は、その衣笠の様子に、微笑を浮かべている。

・・・間宮は羨ましそうに衣笠を見ている。

 

『提督ぅ~、注文早くぅ~』

 男が後ろから聞こえた声の主の方を向くと、そこには夕食を貰おうと、艦娘達の長蛇の列が並んで居た。

「ああ、すまない。間宮、カレーライス並盛と栄養剤を頼むよ」

「あの、野菜は?」

「栄養剤が有るから、遠慮するよ」

「・・・もうぉ~!提督までそう言うんですか!?」

「な、何だ、固形物は頼んだだろう?」

 間宮の膨れっ面に、男は思わずたじろぐ。間宮は怒る。

「固形物だけで、栄養配分良く、食して欲しいんです!それで摂取されたら私達の立つ瀬が、・・・元も子も無いんですよ!!」

 間宮のぷりぷりした様子に、男は『なんだ、そんな事か』という表情になって間宮へと言う。

「それは食材保管庫の貯蔵量が1割を超えてから言ってくれ。まだ、輸入出来るようにはなれども、綱渡りに近いのだからな」

「・・・見抜かれていましたか・・・」

 現状、この鎮守府では補給が出来るようになったが、食料・弾薬共に備蓄が心許(こころもと)無い。

今現在、供給量が需要を上回り始め、毎日微量の備蓄が可能となっている所だ。

「私よりも艦娘達の方が頼りになるんだからな。良い食事の配膳はそちらの方に頼むよ。老兵は死なず、ただ朽ち果てるのみ、だ」

 男のその発言に、間宮は何か言おうとしたが、衣笠が肘で間宮を軽くつつく。間宮が衣笠の方を向くと『言うな』という仕草で間宮を見て居る。間宮は仕方なく無言で、「はい」と男に注文された物を出す。

「ありがとう。ん~、美味そうな香りだ」と言って料理の乗ったお盆を持ちカウンターを離れた男を、艦娘達は様々な表情で見ていたのだった。

 

 

 その後も注文を捌く今日の調理担当達。

 その中で、大井が姿を現す。

「間宮、で良いのかしら?」

「む?、貴女は・・・大井さん?」

「ええ、大井と、呼び捨てで良いわ。これから宜しく」

「はい、よろしく! 何にします?」

「カレーライス並盛と野菜盛り合わせ並盛。後、茶葉系の飲料水は在る?」

 間宮が固形物を出しながら、大井の問いに対して何か有るかと逡巡(しゅんじゅん)していると、衣笠が口を開く。

「今の所、緑茶なら作れるわ。後は果物の擂(す)りおろしか、艤装で作れる炭酸水くらいよ?」

「茶葉系が飲みたいから、緑茶で!」

「はい、じゃあ、隣の受取口で待ってて」

「分かったわ」

 衣笠が頼まれた固形物料理と緑茶、そして『何かの液体』を大井用のお盆へと置く。

「はい、大井、どうぞ」

「ありg・・・何これ?」

 配膳を渡された大井は頼んでいない液体を訝しげに見る。

「飲めば分かるわよ」

 衣笠は悪戯が決まった様にクスクスと笑う。

 

 

 大井は席に座って『何かの液体』を見ている。

その液体は無臭。水の様に透き通った色をしており、別段、飲める物に思える。

 だが、衣笠に訊いた時のあの顔、『毒物に近しい物なのでは?』と勘繰ってしまっている。

 

「あら、大井? それを見つめたままで如何したの?」

 大井がその声の方を向くと、赤ん坊を胸の方で巻き付けた艦娘が居た。

「如月・・・」

 その艦娘名は如月。赤ん坊は生後9ヶ月を過ぎているだろう頃合い。

 

 

「大丈夫?」

 赤ん坊を見て居た大井は、しばらく無言だった。それを如月に心配の声を掛けられる。

「ああ、これを頼まないのに渡されて、どんな味なのか分からなくて・・・」

 大井は如月へ『何かの液体』を示す。それに如月は何とも無い様な表情をしている。

 

「良ければ、如月(私)が飲んでしまっても良いかしら?」

「ええ、どうぞ」

 大井は如月へ『液体』を渡す。それを如月は「どうも」と一気に飲み干した。

「この容器(コップ)は私が返しておくわね」

 如月は、大井へとそう言うと、去って行った。

 

 その入れ替わりで木曾と敷波、イムヤ達がやって来る。

「なあ、大井姉さん?」

「木曾、何?」

「如月の事だが・・・固形物を摂取した様子は見受けられたか?」

 その問いに大井は「いいえ」と答える。

「衣笠から変な飲み物を渡されて、如月にそれを飲んで貰って、その後行ってしまったわ」

 大井の答えに、木曾達は『又か』と言う顔をする。

彼女達の顔を見て、大井は「一体全体、如何したってのよ?」と訊いてみる。

 

「如月は・・・艦娘恐怖症になったと言えば良いのかな? 勇気を出して大井と話したのだろうけど、・・・何か如月とは話せた?」

 敷波が答えと、大井への質問を言う。

「如月に言われたのは、『飲み物を頂戴。渡した事に対する感謝。自分で返却する旨の言葉』その3つよ」

それに木曾達は「そうか」と言い。少しだけ安堵をする。

「やっと少しは、塞ぎ込んで居た状態から脱したかな?・・・」

「あれは、この鎮守府の提督の所為なの?」

 大井の問いに、木曾達全員が「違う」と否定。

 

「ここの提督は、ここに居る皆を家族と思っているからな!」

 木曾は自慢気に言い放った後、「俺達も食事を貰いに行ってくるよ」と大井から離れて行く。それに敷波とイムヤも、苦笑しながら、続いて大井から立ち去る。

 

 ・・・大井は、「何か、聞きたかった答えと違う」と思いながら、食事に手を付け始めた。美味であった。

 

 

 

 間宮は何か在ったのか、とても不機嫌なご様子。

先程、注文をせずにコップのみを返して来た者が居た。返しに来ただけで、何も頼まずに・・・だ。

『ご馳走様ね』

 何も注文していないのに、彼女はその台詞を残して立ち去る。

 この島(鎮守府)には、現在、この食堂以外に食事処は存在しない。

その中で調理人の目の前に来て、何も食べずに『御馳走様』と言う生物が居るだろうか、いや居ない。(え?)

 隣に居る衣笠もその様子を見ており、引き攣った笑顔をしながら間宮と共に給仕をしている。

 

 そんな中、朝潮が訓練に少々疲れた様子で間宮の前に来る。

「間宮・・・さん?今日って金曜日でしたっけ?」

「この星に、金曜と言う曜日は無い、ですよ?・・・朝潮?」

 間宮は朝潮を見て手が止まる。間宮にとっては、昔に見知った艦娘だったからだ。

「お久しぶりです。・・・で、良いのでしょうか? 本部勤務での、私が異動する迄の間以来ですね」

「まあ、まあ!朝潮、また頑張ってね!!」

 間宮は朝潮のその言葉に喜び、励ましの言葉を贈る。

「はい! では、栄養剤をください」

 朝潮、触雷す(食ライス)。間宮の手が又止まった(!?)。今度は表情筋も止まっている。隣の衣笠は『我、関せず』の体(てい)で自分のやる事だけに集中し始めた。

「・・・え~っと・・・カレーライスも要るわよね?」

 動き始めた間宮が突然、不機嫌な声を出し、朝潮を威圧する様な質問をし始める。

「えっ? えーっと、栄養剤だけで良ぃ・・・」

「要・る・わ・よ・ねぇ?」

 朝潮が見る間宮、彼女は満面の笑みの中(?)に物凄い怒りを纏っている。否定をしようものなら、怒髪天を突きそうな様子である。

「は、はいぃいるますぅ!!!」

 顔を真っ青にした朝潮は、間宮には逆らえないと、それも頼んだ。

 

・・・この日から間宮が、液体のみを注文する者に、固形物の摂取を強要する様子が散見される様になる。

 ちなみに、カレーライスを大盛で盛られた朝潮は『美味しい』と食を進めるが、4分の3を食した所で顔を真っ青にして手が止まる。

 自身の食事を終えて「大丈夫?」と隣に寄って来た敷波の問いに、「いいえ。・・・胃が・・・満タンです」と助けを求める目をした朝潮。

見かねた敷波が食べ切った。

 

 

 

 

 日は没し、食事をしていた面々は食べ終わった後に退去。夜の当直・警邏(けいら)の任に就く者と、睡眠を取る者とに分かれ、明日に備える為の準備へと入る。食堂では、食後の食器洗いで、間宮と衣笠が忙(せわ)しなく働いている。

 

 衣笠がチラと間宮を見ながら口を開く。

「間宮。提督はあの装備の万能さに気付いていない、ただの1兵士・1戦闘機なの。万能だからこそ、敵からの優先排除目標だった。最後まで戦場に居たあの人は、私達にとって、神様が天下って私達を助けてくれた様な存在なのよ。私達は提督が・・・彼等が居たから、あの地獄の戦場を抜けたと思っているわ」

「私だって、やっと地獄を抜けたと思ってますよ。成り行きで諜報員をやらされて。・・・終戦になって気が抜けたんですね。・・・ここに来る時、護衛に撃たれるだなんて・・・」

「そう言えば、義足を履いているのよね?誰に作って貰ったの?」

「妖怪ですよ。『電気の絡繰り(カラクリ)は苦手だが、自然の材料だけで作れる義足は作成出来るから任せろ』って言われて待ってたら、ピッタリな物を用意されました。戦闘艤装は義足が壊れるからもう重くて出せないけど、調理用器具位なら何とか持てるわ」

「へえ、良いのを貰ったわねぇ。じゃあ、先日の提督に抱き付いたのは・・・」

「あ、アレは・・・その、先にやった彼女が羨ましくて・・・つい・・・」

「抱き付くのは良いのよ。問題は提督を下にした事。・・・もう1人共々、何? 提督を豆腐の角に頭をぶつけさせて死なせたいの?」

「あっ。・・・あぅ・・・私、実は女学校出身で男性に免疫が無くて、慌ててやったらあんな風に・・・」

「・・・学校、良いわねぇ~。私も、提督に夜の個人授業でも受けようかな?」

 衣笠が学校という言葉に哀愁混じりの反応をする。間宮は『しまった!』と思う。

衣笠が間宮の様子に気付き、慌てて「気にしなくて良いわよ」と言う。

「私が学校で学ぶ事は無いわ。だって、記録出来ちゃうんだもん。他のしたい事って言うと、提督との甘~いひと時。これに限るわね!」

「男の人とそんな事、やってみたいものですねぇ・・・」

「間宮はそういう経験無いの?」

「・・・春来れど 戦禍に燃ゆり ふくは消ゆ 着きし楽園 己(おの)が身ひとつ」

 春とは終戦後を意味する。終戦になったが、戦禍に因って形有る物は残らなかった。

 ふくは、服と福を掛けている。全てを失くし、最後に来たこの場所は楽園に成りつつある。

・・・本当に楽園になるかは、未来だけが知っている。

「・・・そっか・・・」

 双方共、藪蛇をつついて飛び退いてしまった状態になってしまう。

衣笠が雰囲気を戻す為に口を開く。

「ああ、間宮。私や他の機械型と話す時は、砕けた言い方で良いわよ」

「私が諜報員の可能性が在りますよ?」

「貴女はこの鎮守府に来てから、尽力してくれたわ。・・・それ以上に、歩兵の存在を忘れていない」

「私が歩兵と初めて出会ったのは、私を救ってくれた顔の見れなかった人。・・・私は忘れません。補給物資輸送の護衛で散った人達を。私の出した料理を涙して『最後の晩餐だ』と言って、散って行ったあの人達を」

「私、激戦区に居たのは1回だけだった。隊長が・・・当時の提督が私達の頭上に来て敵を蹴散らしていった姿。格好良い・・・いえ、神々しかった。私、あの時にこの世とお別れするんだと思ったけど、提督が留めてくれたの」

「・・・最後まで、戦場に立っていた男性は、隊長だけでしたね」

「あの過酷な大戦争を最初から最後まで戦場で生き延びたのも、隊長だけよ。私達第1次は、全員が隊長の部下であり、今だ部下。隊長の1声が在れば、私達第1次全員が目標を攻撃するわ。・・・例えそれが元々の防衛目標で在っても・・・」

「衣笠・・・」

 間宮は言葉を失う。

 

 元々の防衛目標、人間。

 深海棲艦との戦争が終わった今、海岸付近に居を構える様な人間は稀有(けう)。誰も海へと近付かない。自分達の造り出した艦娘という存在を忘れる為、艦娘に深海棲艦打倒を完全委任して居る為である。

 それよりも、衣笠にとって、別の問題が大きい。

 

「私達は忘れない。私達を過大評価した事を。敵を過小評価した事を。私達を・・・いえ、隊長という存在を忘れ、人達からの支援が0になった事を・・・」

 

 

 戦争後期。男の元へ艦娘2名が増員された事が在る。手配したのは第1次達。当時の第1次達の大部分は疲労と損傷に因り、満足に動けない状態に在った。だが、頭は回る。

第1次達は(当時の)総合能力最高の艦娘1名と不思議な豪運を持つ艦娘1名を送り込んだ。彼女達は懸命に男の為に戦う。1名はその圧倒的な攻撃精度と多彩な攻撃方法を以て。もう1名は自分達艦娘に向かって来る害を逸らす能力を以て。

 

 そんな中、1体のオス型が現れる。大量のメス型を伴って。

他艦隊の艦娘達は、オス型に傷1つ付けられず、戦闘不能。救出に来た男とその部下の艦娘達4名がそのオス型達と接敵。2名の艦娘がメスの空母型の猛攻を受け、味方航空機9割喪失・2名共に大破。

 男も奮闘。何とかメス型を空母型残り1体へ。その最後のメス型を狙うが、オス型がその空母型を守る為に、敵機が男を追い掛け回す為に、オス型へ近付けず・メス型を狙えない。男は次第に傷付いて行く。

この時、今だ健在だった男の隊員(艦娘)1名が突撃を敢行。男とその他の艦娘達を逃がす為に殿(しんがり)となった。

 男達は一旦拠点に戻り、補給と治療を行う。部下3名の制止を振り切り、男は単身、再度オス型討伐へと向かう。・・・が、殿となった艦娘は生きて海上に居らず。海面には、その艦娘の髪結い(リボン)と、オス型の上半身の無くなった、焦げた下半身のみが漂(ただよ)っていた。

 

 この時には、妖怪達の造る第3次達が台頭(たいとう)。第1次達やこの男も、老兵となっていた。

第3次達は自分達が完全無欠だと思い込んで敵と戦う。連戦に因る負傷で死者が出る。

その死者が深海棲艦として蘇り、艦娘へと牙を向く。艦娘が敵に変化し、それを倒す為に艦娘を造る悪循環が始まる。

艦娘が変化した個体を『変異体』と呼ぶようになる。終戦時には、変異体が各地で艦娘との敵対行動を取る。

深海棲艦との戦争は未だ終わりが見えない。

 

 

 間宮と衣笠の所へ、彼女達近くの壁をノックしてその場に入って来た者が居る。

「あら、・・・大井?で良かったかしら?」

 

「間宮と衣笠。質問をして良いかしら?」

 大井の問いに、間宮と衣笠は頷く。

「如月の赤ん坊なんだけど・・・あれは提督の子供なの?」

その問いに、間宮と衣笠は否定するように首を動す。

 衣笠が答える。

「あれは他人の子よ。当時、如月は嫌がったけど、この島の設備では流産をする事が出来なかったの。・・・ここに戻ってから、18日で彼女は人間の子供を出産。出産した子は、暫く別の艦娘に預けてたわね」

 

 

 艦娘は身体細胞の分裂が早い。

 人外の艦娘は、この星では、戦闘する為に生まれた種族。

新陳代謝は素晴らしい速度だ素晴らしい!!

最長でも、90時間で破壊された部位の再生を完了する。勿論、体を治す為の設備が在ってこその再生時間である。

 艦娘の細胞分裂速度の早さは、妊娠時の、赤ん坊を出産する迄作用する。僅か1ヶ月以内に出産出来る大きさへ成長、そして出産となる。

 

 人間男性が鎮守府の提督の任に就く事が在った。しかしその様な人間は、ただの色欲に囚われた、艦娘を犯したいだけの色情狂だった。

 見ず知らずの男性提督に狙われた第1次艦娘達は、その男性の追跡から逃げ切り、大本営(本部)へ助けを求める。その嘆願を聞いた大本営は、女性提督と第1次だけが居る鎮守府(花園)や、当鎮守府へとその艦娘達を向かわせる。

 そして色情狂へは第3次艦娘達を宛てがわれる。

『お前が父さん(パパ)になるんだよ!!』と服を剥かれながら・・・。色情狂の末路。赤玉が出ても精を吸われ続ける。殺されはしない。その男性が真っ白に燃え尽きるまで性行為に勤しむ。それこそ髪も真っ白になる迄・・・。

 

 

 

「如月が『暫く自分の子を見たくない』と言った事も有って、別の鎮守府で短期間働く事になったんですよねぇ・・・」

「青葉は上手い事偽装させたわよねぇ。第3次の反応に成ったんだもの。吃驚(びっくり)したわ」

「口調もあの時の卯月そっくり!」

「・・・あれは、実はね、人間の卯月も当初はあんな性格だったらしいわよ?」

「へえぇ! ・・・ま、解る気はしますね。艦娘に成り立ての駆逐艦型は、大方、子供ですし・・・」

 間宮と衣笠の脱線話になって来たので、大井はそこで2人の間に手をかざし止めさせる。

 

「ああ、ごめん。・・・要は、当鎮守府の提督は未だ、この鎮守府の艦娘と性交渉はしていないわ」

衣笠が結論を言う。

「皆を見ていると、好かれている様子なのに?」

「それは・・・事情がありまして・・・」

大井の問いに、間宮はそう言いつつ困り顔で衣笠を見る。

 

「深海棲艦との戦争後、本鎮守府の私達は艦娘と戦っていたの」

 衣笠の答えに、『冗談なのか?』という顔の大井。

「これが冗談なら、ここは1年前に艦娘の楽園に成っていたわ」と衣笠は言う。

「大井、見た・聞いたでしょう? この場所に於ける、物資の状況、食料生産事情、そして訓練中の艦娘達の練度を・・・」

 

 

 本来なら、弾薬は消費するが、食料は満足に摂取出来る状態に在る。艦娘達は新参を除いて、訓練か実戦の中で経験を積んで、静止目標位なら百発百中でないと困る。

 今日、訓練中の艦娘の中に、この世に顕現してから1年以上の艦娘が混じって居た。

顕現して1年以上を経て静止目標への射撃精度に問題の在る艦娘は、余程に訓練をしていない者となる。

 深海棲艦との戦いは続いている。本当ならばこの鎮守府に於ける艦娘は、戦闘を行える艦娘は出払い、留守番は訓練中の艦娘が殆どとなる。

 ・・・それが如何だ。現在、殆どの艦娘は遠征にも出ず、待機して居る。

一因としては、今の物資を浪費した男の所為でも在る・・・のだが、通常、建造機稼働(大型機を含める)程度で動けなくなる事は無い。

 

 

「遠征に行く事も出来るけど、しないの。別段、やらない訳じゃ無い。提督のひと声が有ればやるわ。今、この場の私達には、一部を除いて、『深海棲艦を倒そう。他所の鎮守府を助けよう』と言うやる気が足らんのよ」

 

 

 鎮守府間の紛争が起こった。ほぼ、この鎮守府 対 他所の全鎮守府との争い。幸い360度全てが海であるこの島は、敵対する艦娘が来る迄に、深海棲艦との戦闘に因って傷付いた様子の敵が多数だった。

 ・・・しかし、度重なる敵達に物資を焼かれ、食料を焼かれ、この島に住む者達は草を食み生きて居た。

この島の艦娘達は怒る。自分達の身の安全では無く、自身の提督の安全が脅かされている事に。

艦娘達は、基本、誰かを守る為にこの星に顕現して居る。それは、同じ艦娘の誰を守る場合でも在る。だが、大体は艦娘の身では無い者、人やヒトを守る為に生まれる。守る者が対象を守れない時、作戦失敗という単語は切腹モノである。

満足に情報収集も出来ず、急襲が続き、耐えるだけで半年以上が経過。艦娘達全員は怒髪天を突いていた。

 転機は、単身この鎮守府へと救難信号を打電し、ボロボロに傷付いた艦娘を保護した時だった。

助けた艦娘は伝える。敵対者の本拠地。移動用の足がここへと来る事。裸を見られて恥ずかしい事(ん?)。

 情報提供を受けた男とこの島の艦娘達は、ほぼ全ての戦闘用物資を持って行き、敵対する親玉達を完膚なきまでに倒し尽くす事を決意。移動用の足が来ると、それに乗ってカチコミへと飛び立って行った。

 ・・・しかし、なんと、敵対していた提督達は人でなしだった!!

しかも艦娘全てを喪失している様子。狙うは人でなし達のみ。

人間でないならば容赦は要らない。艦娘に喧嘩を売った、鎮守府だった場所は荒野と化したのだった。

 

 

 ・・・この状況が終わったのは、19日前。

 当鎮守府に深海棲艦と戦う日々が戻り、表でのうのうと食糧生産を出来るようになった。そんな中、本部から支援物資が届く。

 それは大型建造機。

主な部分の外観はカプセル状である。錠剤用カプセルの半分、半楕円形に近い形。なので、本来は大型建造カプセルという名が相応しい。それに扉が付いている。

・・・ちなみに、妖精がやる気になると『ヒャッハー!!』だの『我に応えよ! いざ、共に深海棲艦を消毒だぁー!!!』という声が建造機の中から聞こえ、約18分程で艦娘が顕現する。妖怪有能。

 届いた大型建造機を用いて最初に出て来たのは、長良・大淀・大和。・・・他所の大型建造機では、大淀は顕現しないらしい。海上で顕現(ドロップ)するらしいのだが、発見報告は(つい最近から発見報告が出始めたので)稀、極少数である。

 

 今現在、当鎮守府は、機能の復旧と新機能追加の真っ最中である。

 

 

「ヒトデナシ、って何?」

大井は問う。

「人外って事です。あれは宇宙人だったそうですね?」

間宮の答えに、衣笠は頷く。

 その言葉に、「宇宙人・・・」大井は軽く呟く。

「ここの提督と私達艦娘で敵の拠点を廃墟にしてやった、と言う訳なのよ。・・・まあ、あの件では、提督の出番は無くても良かったと言えるわね・・・」

「敵に提督と同じ装備を着用した者が出現した、と言う話を聞きましたが?」

「見た事の無い外観だったから、多分、新型だわ。・・・でも、私達艦娘か味方航空機で撃墜出来る程度の技量だった。事実、妖精の乗る航空機で奴を翻弄出来たからね」

「では、私達艦娘の、最大の敵は・・・」

「深海棲艦よ。叩いても、叩いても、虫や鼠の様にキリが無い。・・・でも、私達は深海棲艦全てを討ち払う為に、今ここに居るわ」

 衣笠はキッパリと言い切った後、「でも・・・」と付け加える。

 

「『腹が減っては、戦は出来ぬ』。私達はこの鎮守府を活動拠点、寝床として日々戦っているわ」

 

 

 

 間宮達と別れた大井は外で空を見上げる。

「・・・居ない。・・・ねえ、貴方は今、生きているの? 何処に居るの?」

大井は空へと呟く。その声は、陽の沈んだこの地を照らす、星々の輝きの彼方へと消え行く。

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