愛する・守るべき部下達を失い、1人、深海棲艦との戦いを続ける。
多くの悲しみを乗り越えた先にあるのは・・・。
半年後、敵が簡単に倒せるようなやつばかりになった。人型に遭うのが難しい。
哨戒活動をしている途中、両手両足全損・頭部の機械部分が全て見えた状態の第1次艦娘を
発見した。
目が光っている。まだ稼動しているようだ。
「・・・」
発声できないようだ。外見がもはやロボットだ。
{この艦娘は識別番号がクラッシュしていて誰だか判りません。無線も使用できないようです}
思考を読み取ったところ、水が欲しいようだ。水を取り出して飲ませる。
口の後ろから水が出てしまう。
そこで艦娘の胴体へ、標準でビタミン等の栄養剤の入った、注射器を刺して注入、
痛がっているが気にしない。
空にして注射器の中に水を入れ、針にビニール管をつけ喉に突っ込む。
そしてある程度入った所で注射器の水を食道へ入れる。後ろから出ていないようだ。
体に吸収したであろう時間を見計らい、胸に艦娘を縄で縛りつける。
そして安全圏の基地へ撤退する。
ロボットを連れ帰るその道中で、深海棲艦のタ級を発見する。
久々にあの個体を見た。動く様子、こちらを見る様子も無い。
興味本意で近くに行く。怪我をし、痩せ細った姿が目に映った。
「何のようだ」
タ級が声を出した。声がか細い。
「君に興味があってな」
「悪魔、近寄るな」
「今の私は天使かも知れんぞ」
「ハッ」
「とりあえず、食え」
非常食と水を取り出し渡す。この人外がこれを食せるかは今はわからないが。
「・・・」
食べれるようだ、食べている最中で泣き出した。
「貴様達人間も、同じだったのだな」
「何がだ?」
「お互いに戦争相手がいなければという想いだ」
「・・・」
「私たち人間の形をした種族は人間という種族の存在を許したくなかった。
だから戦争を起こした。だが、この長い戦いで私たち人型は絶滅寸前だ。
死んだ中には私の家族もいた。それは人間も同じなんだな?」
「勿論だ。・・・戦争を終わらせたいのか?」
「あぁ、可能ならば私は生きて終戦の報告を聞きたい」
「君の種族での、戦争の首謀者はどこにいるか知っているか?人間側には首謀者はいないぞ」
「・・・半年前から変わっていなければ分かる。案内しよう。準備は良いか?」
「まずこのロボットを後方へ預けてからだ」
胸に縛り付けていたロボットを指差す。ロボットが、私はロボットとは違う、と心で否定していた。
タ級に付いて行き、首謀者の根城らしき所へ向かう。
私は自身の認識を阻害させ、見えているが見えないようにしている。
人型がちらほらといるがもうこの場所だけにしかいないのだろうか?
どこにリーダーがいるかをタ級が聞いている、聞き込みが終わりタ級が部屋まで案内する。
「ここにいる。取り押さえる用意は良いか?」
頷く。タ級が扉を開ける。
中にいたのは深海棲艦の人型1体だ。驚いた顔を押しているうちに
顔がめり込むような拳をお見舞いし、鳩尾にもう1発打ち込む。
体がガクリと倒れる。気を失ったようだ。すぐさま縄を出し体にグルグル巻いて
簀巻き状態にする。
タ級とお縄にした2体を抱えて猛スピードで駐屯している基地へ帰る。
基地に着いたと同じぐらいでお縄にした深海棲艦人型が目を覚ました。
私の姿に怯えている。
「戦争を終わらせる気があるか?」
しばらく言われた言葉に沈黙していた。
「・・・あるわ」
「この施設には音声と映像を放送する設備がある。君たちの種族にも伝えられる
チャンネル等はあるか?」
「音声チャンネルがあるわ、番号は人間用の物だと・・・」
言われたチャンネルに発信できるようにする。殴った顔をタオルで拭いて綺麗にする。
「では、終戦放送の準備は良いか?」
「ええ」
決意を浮かべた顔を見せた。
この日、9年にも及ぶ戦争に幕が閉じた。
生き残った人間はこの惑星全土で1億人、その内男は10,000分の1だそうだ。
翌日、金剛が入院している野戦病院に来た。
金剛に会いに行く。
「あ、隊長・・・」
「生きているか?」
「後もう少しは」
「戦争が一応は終結したぞ」
「私が生きているうちに終わりましたね」
「そうだな」
「もう少し長生きできれば、隊長と旅行でも行きたかったな~」
「今から行くか?」
金剛が首を横に振る
「・・・そうか」
「隊長、手を・・・握っていてください」
「ああ」
金剛を抱きしめる
「あの、手を握ってくれるだけで良いです」
金剛の顔が真っ赤になる、嬉しそうだ。
「ハハ、そうだったな」
金剛から離れてを両手で右手を握る。
その日、金剛は天寿を全うした。享年5歳だったそうだ。火葬にて式が執り行われた。
立派な墓を建ててやった。所々ダイヤを使うことに不評を受けたが金剛の意思だと言うと
皆が黙してくれた。
半月経過し小規模ではあるが戦闘報告が止まない。
まだ簀巻きにしていた深海棲艦(自らを響と名乗った)のところに詰め寄った。
「まだ人間が攻撃されているぞ」
「待って、話の通じるやつと連絡を取ってみる」
無線で連絡を取り合っている。
「思考を持たない者達が言うことを聞かない!?」
響が叫んだ。
「分かった、人間側に伝えておく」
無線を切った後こちらに向き、
「私たちの人型じゃない者達が暴れ続けているの。そして人型の私たちの絶対数が
少なくなりすぎて制御不可能になっている」
「終わったのに終わらないわけか・・・。響、もう一度放送が必要だ。やってくれるな?」
「うん」
人間側へこのことが伝えられ、半終戦状態に変わった。
深海棲艦で生き残った人型は50人だそうだ。
本土へ行く機会があった。
いつの間にか給与が与えられていた。その半分を使い見晴らしの良い所へ墓を立てる。
沢山の歩兵隊員、イムヤ、木曽、敷波、北上、加賀、五十鈴。死んでしまった者達への弔いだ。
途中で近所に住んでいるという人が手伝いを申し出てきた。私は手伝いをお願いした。
「私は歩兵として戦死した人の息子です」
「そうか」
「父は開戦1年後に戦死したそうです」
「・・・」
「あの、生還者ほぼ無しの男性の中でなぜ貴方はご存命なのですか?」
「ムードメーカーが死ぬわけにはいかないからな」
「・・・もしかして、貴方は戦争中、黄金の盾を使っていた方ですか?」
「そうだ」
「なぜ父は死ななければならなかったのですか?」
「戦争を見ていないのか?」
「全く見ていないです」
「あの戦争はこの国も含めて人間の存亡の危機にまで瀕した。
今、君の近所で両親共に居る家庭はあるか?」
「ありません」
「今はロボットなどで戦っているが、戦争初期は生身の人間しか居なかった。
そして敵は強かった。しかし自分達が戦わなければ人間が、君達の未来が永遠に断たれる」
「私達の未来のため」
「そうだ。私達生身の存在は投入されたらほぼ確実に死ぬという状況の中で戦ってきた。
私達は未来を切り開くための決死隊だった。それは今、生きている私達・君達の未来のために
流した血だ。力強く生きなさい。これは私からのお願いだ」
私の目から涙が溢れてくる。私の涙を見て驚いた顔をされた。次第にその子も涙を流し始めた。
どこかで教会の鐘が鳴っている。雲の色が微笑んでいるように見えた。
戦争の状況はもう事後処理程度の事柄だということで、男の私は本土まで後退して欲しい
という事になった。
私は戦争の功績を称えられ、欲しい物は?と言われて、
「響とタ級それに動けないロボット(当人は断固否定する)を連れて誰も来ない所に住みたい」
と言った。
それを許可され、深海棲艦に襲われてから誰も寄り付かなくなった場所を割り当てられた。
響とタ級に私と一緒に行くかと訊ねた。しばらく考えた後
「行くよ」
「私も貴方と一緒ならば行く」
その言葉とともに我々は住む土地を目指して基地を発った。
家を建て、私達は毎日を過ごした。今、自分がやっていること全てに感動する。
ロボット(やめロッテと伝えてくる)は修理できる人がいないそうだ。
一生このままの予感がする。稼動停止するまでは面倒を見ようと思う。
だんだんと響とタ級が笑う顔を見せるようになった。
細々と暮らしながらものんびりとした日々が続いていた。
ある日、響がこんな話をする。
「貴方が好きです」
「いきなりどうした?」
「好き、じゃない。愛してます」
「どちらにせよいきなりだな」
「貴方には感謝しているよ。出会いは最悪だけど戦争を終わらせてくれた」
「・・・」
「そして、戦争首謀者として敵と味方どちらからも恨まれる立場の私とあのタ級を
こうして匿ってくれている」
「・・・」
「今私は幸せだよ。その最たるは貴方が傍に居てくれることに気づいたんだ。
あのタ級も同じ気持ちだよ」
「あいつも、か」
「あの子も貴方が近くに居てくれるから笑顔なんだよ」
その翌日、今を満喫し安心していたのだろう。
女性の武装集団がやって来る事に気づかなかった。
「深海棲艦を殺せ」
「敵の戦争首謀者を殺せ」
「ここに隠れたわよ!」
家が炎に包まれていた、タ級は逃げ延びていたが響が燃える家の中に居る。
「其処の男性。危険よ、下がりなさい!」
その声を無視して燃え盛る家の中に入る。
ロボット(動けないので酷く慌てている)を先に見つけ、背中に縛り付ける。
響は、居た、腹部を撃たれて命の火が消えようとしている。響を抱きかかえる。
「罰が当たったんだね。貴方ともこれで終わりか・・・」
「喋るな、まだ終わっていない。目を瞑っていろ」
響が目を閉じる。私は大きく息を吸い込む。加茂を助けた時と同じように炎をも吸い込んでいく。
体の中で赤い羽根が輝くのを感じる。同じくして響の体が輝く。
響の真っ白だった肌に血の気が宿る。元々より赤みが増した気がする。
「あ、あれ、まだ長生き出来そう?」
「とにかく此処を離れるぞ」
サングラスを掛け武装し推進装置を噴かす。
即座に家から出て音速に近い速度でタ級の目の前に近づく。
「ヒェ!」
サッとタ級を抱えて我々の都を後にする。
「BY、本部に誰も居ないところを探させてくれ」
{もう話がついています。此処から東へ千キロの島が無人島、且つ建造物が無傷で
建っているので、そこを使用するようにとのことです}
「連絡が早いな」
{あの武装集団が近くまで来ているのは察知していましたが、我々の所に来るかが
分かっていませんでした。ごめんなさい}
「今回は、皆生きている」
{・・・ありがとうございます}
BYに言われた島に着いた。
{今日から貴方に、今も人間へ攻撃をしている深海棲艦を打倒する提督として働いて欲しい、
と本部から指示を受けました。受託しますか?}
「ああ、引き受けると打診してくれ」
{了解しました、提督。それと約1日後に艦娘がこの基地用に妖精を連れてこちらに来ます。
艦娘共々採用して欲しいとのことです}
「妖精、戦時中は世話になったことが無かったな」
{妖精は、貴方の身近では、睦月と鳳翔がお世話になっていたんですよ}
「あの時の二人か?、でも第1次艦娘だったはずでは?」
{睦月は第1次と第3次の複合型、鳳翔は一度沈んだ後に第3次となっていました}
「睦月が老練兵になれたのはそれがあったからか」
{貴方が居てこそ生きていたんですよ}
「そうか?」
{そうです}
翌日、件の艦娘が来た。睦月と鳳翔だった。
二人とも泣きながら抱きついてきた。
「ダ゛イ゛ヂ゛ョ゛ー!」
「また、お会いできて私は幸せです」
「生きていたか、本当に良かった」
見知った二人だった。
私も二人を抱きしめていた。睦月が鼻水も垂らしているのでばっちいなと感じる。
ん?思考を読まれたのか睦月に背中を抓られた。
「羨ましい、というか妬ましい。ライバルが増えたね」
「私もそんな気分だわ」
響とタ級の視線が少し痛い。ロボット(ロボットって言うな)の視線までなんだか痛い。
私は4人にそれぞれを自己紹介させた。
響は深海棲艦を名乗らず、駆逐艦響と名乗った。
「ヴェールヌイでしょ?」
睦月が言う。
「ホントはそうだけど・・・司令官の前では響で居たいんだ」
響が腕を組んでくる。
「そう・・・」
「そうだよ」
視線の火花が散っているように見える。
宥める為に睦月と響二人の頭を撫でながら今後を考える。
それをしている私を見る鳳翔とタ級の視線が痛い。
また深海棲艦との戦いの日々が始まる。