翌日の朝。この星を照らす恒星が顔を出し尽くした後で男は起床。
男は朝の自主訓練を、そして朝の艦娘達の訓練を見る。
途中、男が見て居ると、張り切った艦娘が足首を捻るという事故が起こる。男は彼女を入渠兼治療施設、浴場、へと運び浸からせた。
艦娘の彼女は「ごめんなさい」と申し訳なさそうに言うが、男は気にしていない様子で「大丈夫だ。後9日で本調子になるんだろう?」と言う。
それに対して彼女は顔を引き攣らせて「が、頑張るます!」と言い、・・・内心『出来るかも?』と成否が半々な気持ちになったという。
そして昼。時刻は正午を過ぎている。
男は明石がモノを発明したと言う話を聞き、興味本位で明石の居る所、工廠へ赴く。
「明石!」
男の呼ぶ声に、『は~い!』と明石2名から声が響く。
「・・・ああ、すまない。第1次の明石!」
「はい、何でしょう」
第1次の明石が応答し、もう1名はスゴスゴと退散して行く。
「艦娘用の装備で、超音速機が作成出来たとか、そんな話を聞いたんだが・・・」
「ああ、完成しましたよ。コレです!!」
ジャ~ンという効果音が付きそうな風に明石はモノを見せる。航空機のプロペラ機。
リアル世界では、戦闘機『烈風』に瓜二つの形状をしている。
この世界では(人間が乗れるサイズでは作れないが)音速を超えるプロペラ機を作れる。
大きさとしては、人間の搭乗出来る実物の、24分の1。戦時中は音速を超えられなかったのだが、技術が進み、音速を超えられる航空機を作れるようになった。高性能機であれば、マッハ3を超える事も可能。(そこまでの速度を出せば)燃費最悪ではある。
この航空機に妖怪・妖精が乗り、敵との戦闘を行う。
・・・その他に、艦娘自身が航空機を操るという事をする。稀な例であるが、艦娘自身が操っていると、『操っている航空機とその艦娘同士に線(糸?)が繋がれているのが見える』という話が在ったが定かではない。この星では今現在、見えるヒト達は死んだ、又は星から避難して居なくなってしまっている。
航空機は深海棲艦との戦争当初、人間が搭乗し深海棲艦達と戦っていた。その航空機を『妖怪・妖精用に24分の1にまで小さくして、数時間も飛行させる』と言うのだから難しい。始めは、この世界では化石的な技術、足収納機構無しのプロペラ機から作った。現在はジェット機等を作れるようになっている。
最近は搭乗員の命優先の設計で、航続距離の問題が達成出来ていない。装甲を付け、頑丈にすれば重くなる。重くなれば積載猶予が少なくなる。その積載猶予の中に、弾薬と燃料の搭載量が含まれる。空気抵抗を考えても、速さを取った設計は燃料を喰う。増槽を使用しても航続距離900キロ。この深海棲艦と戦う星では、3桁の航続距離は不足気味である。型落ち機では、増槽込みで2,000キロを飛べる機体が在る。・・・が、妖怪達は人間と同じ様に習熟訓練が必要である。長時間その機体に缶詰めになれば疲労するし、長時間飛行出来る機体は装甲が薄い為に被弾時の命の保証は出来ない。
そこで艦娘の出番。空母型の艦娘は航空機を亜空間に収納させる事が出来る。自身の艤装に航空機用の燃料と弾薬を仕込み、その艦娘に乗艦した妖精へ航空機の補給と整備を任せる。そして、その艦娘自らの持つ航空機発進用媒体を以て、航空機を飛び立たせる。装甲の厚い航空機を
艦娘は1回の補給で移動可能距離約9,000キロ。時間にして約100時間。これは最大移動距離であり、ここまで個々で移動させると、疲労の色は隠せず。本来は人用輸送機で片道だけでも楽をさせるのが定石である。
しかし本当は、往路だけでなく、復路での迎えも必要。深海棲艦は神出鬼没であり、『行きはヨイヨイ、帰りはコワイ』をさせる事が果たして良い事なのかは別。
「・・・プロペラ機だな」
戦前、男はお披露目されたのとは別物の航空機に乗っていたのを思い出し、明石の作ったモノへ疑問を持つ。民間の物好き者が『燃費が良いんだよ、燃費が。・・・ちょっと遅いけどな』と言っていたのは聞いた事が在る。
「超音速に耐えうるプロペラ機を開発出来ました。・・・現状、燃料消費量を考えると、コレにするしか・・・」
明石は長距離を飛行出来る航空機を作っていたのだった。その飛行距離1,200キロ。
「燃費か。・・・まあ、敵機の追随を許さなければ良いのだから、これで完成形と言えるのでは?」
「今後、対艦娘戦があるかもしれないと考えると・・・不安が残ります」
艦娘対艦娘戦。鎮守府を統べる大本営はこれをご法度としたが、この星の未来を考えない者達が又やらかす事も視野に入れる必要が在る。だがこの男は、そんな事はもう無いだろうと考えている。
「通常はそうそう無い話だろう?先の話はそもそも非人間が人間を捕らえる為、先遣隊を送り込んでいたのだし・・・」
「そうではあるんですが、如何せんこの星は不安要素を持っています。ややもすると、誰かが突然、星間転移を可能にするようなトンデモ機械を開発するかもしれません。更に、ほぼ戦後になってから発見されたこの島の事。島が隆起して出来たにしては建物が在った事が謎です。電話が在った事も妙。しかも、艦娘の建造機まで在った。私達の運が良かったにせよ何にせよこんな珍妙不可思議な事、私、頭がおかしくなりそうですよ・・・」
「・・・大丈夫だ。第3次という不思議な存在がある。今に始まった事じゃない」
男は『実は、この星にそんなトンデモ機械が運ばれた事が在る』とも言えず、明石を
「提督・・・」先程頭がおかしくなりそうと言った、頭のおかしい(誉め言葉)明石は男を見る。
「ま、私にとっては第1次も奇怪な存在だがな!」
・・・
「・・・こぉんの
明石は雰囲気を台無し(?)にした男へ、大きく振りかぶって、軽く、速い脳天チョップを繰り出した。
「甘いな!!」
ミス! 提督は半身を移動して避けた!
空振りした明石はもう一度男の頭へチョップを繰り出そうとするが、それを察知した男は逃げる。明石はそれを追う。2名は追って、追われて、ぐるぐると回り始めた。
「
「ハハッ!足の調子は良いみたいだな!!」
「何ヶ月経ったと思ってるんですか?!材料が有って、ある程度直せば、機械ですから、数日あれば治せます!むしろ提督がおかしいんです。爬虫類か何かですか?!」
「私はヒトデナシだ!」
男は笑顔で明石へ答える。それに明石はアハハと笑い出し、尚も男を追い掛ける。
明石は思う。・・・願わくば、この男と共に太平の世で生きて居られる事を・・・