吹雪
加賀
大和
「あ、加賀と大和。ちょっと聞きたい事が・・・」
「なんでしょう?」
「吹雪、如何したの?」
「人間用の防壁はいつ頃から存在したんです?」
「あら?、誰かに聞いたのね」
「・・・機械の艦娘とは違う駆動方式だったと聞いて興味が出て、加賀か大和なら知っているのかなー、と・・・」
「私が知る限りでは、『飛行場が3つも作れる』という島の第1回占領戦が始まる数ヶ月前ね」
「第1次艦娘の疲労も
「そう、それよ。大和はその辺りで手術を受けていたのよね?」
「そうです。良く知ってますね?」
「当時、話題になったのよ? 人間で、防壁を体に埋め込んで戦場に立っている艦娘が居るって、ね。目的は何だったかしら・・・そう、超人的な機械型を上回る荷物持ち・・・いや、力持ちだったわね」
「戦場に出るまでに相当訓練をさせられましたからね。それに、それを言ったら加賀、当時の貴女もでしょう?最前線に居て、且つ第1次よりも戦績が良いと言われてましたから」
「まあ、ね。結果として、私は防壁の埋め込み施術を受けずに死んでしまったわ。BYには、『戦況を鑑みるに、防壁の取り付け施術に行かせる余裕が無い』と言われてしまったからね・・・」
「私の居た戦場は、防壁が無ければ私自身が直ぐに死んでいたような場所でした。・・・まあ、これは加賀の方も同じだったでしょうけれど・・・」
「当時の隊の皆が守っていてくれたからこそ、戦中、あそこまで生きていられた、と加入した当初から実感していたわ。・・・あっと、脱線。防壁の話よね。海戦が主になってから1年半後くらいに存在した、と言えるわね」
「そうですか・・・」
「戦時中で何か気になった事でも有るの?」
「戦時中、人間艦娘の死体が無傷の状態で大量に在った話を聞いたので・・・」
「・・・その人間艦娘って、同じ様な顔が多かった等を言っていた記憶はあります?」
「・・・はい、言っていました」
「・・・で、同じ様な身長の艦娘だった、も?」
「え~っと、・・・言ってました」
「でしたらそれは、第2次艦娘です。第0次を基にした複製艦娘です」
「第0次?」
「人間の艦娘と言う意味です。第2次は障壁とも言える、敵弾を防ぐ防壁を体内に埋め込んで敵と戦っていました。防壁の完成は戦争中期頃です」
「防壁ねえ・・・」
「加賀は第2次を見掛けた事は在ります?」
「
「加賀。第1次が少数になった後は、貴方の隊は、直ぐに第3次だったんですか?」
「そう・・・だったんじゃないかしら? 大和、あの時防衛をしていた島はどうなったのか知ってる?」
「加賀が倒れた日に完全な放棄が決定して、建設していた施設を全て更地にしたそうですよ」
「あの日、第3次用の施設が完成間近で全壊したのよ。
「度重なる襲撃、襲撃の破壊に
「今なら占領が可能では?」
「占領しようとした他鎮守府の艦隊が、『怖くてここに居たくない』や『大量の幽霊を見て、肌が鳥に為るんじゃないかと思う程怖かった』と言って、直ぐに全員が帰還してしまって作業が全く進まないそうですよ?」
「・・・あそこ、敵味方どちらも犠牲が大きかったから、霊的な物が沢山溜まっているわね」
「うわぁ・・・。曰く付きの土地や物件に住みたいかって言われると、ちょっと・・・」
「将来、幽霊の出る場所として人気になるんじゃないかしら?・・・住むと呪われてしまうくらいの幽霊が出たりして・・・」
「やだぁ~、加賀ったら。・・・でも、最終的に撤退するくらいに、激戦の地だったのよね・・・」
「第1次でさえ、戦没者が多かったんだもの。第2次があそこに配備されていたとして、直ぐに死体の山が築き上げられたと思うわ。最終的に山位の高さになっていたとしても驚かないわね」
「金剛を見ると、そんな事はないと思ってしまうのですけど・・・」
「ん?、吹雪、この鎮守府に居る金剛は、元は第2次だったの?」
「そうだったらしいです。
「5年・・・で、戦時中、あの珍妙不可思議な豪運を持ちながらにして、提督が隊に引き入れたと?」
「正確には隊長のAIが、五十鈴と一緒に金剛を招き入れたそうですよ?」
「AI・・・ああ、BYねえ・・・。大きな島の第1回攻略戦後から、BYが元帥と言うべきか、総参謀だったのよねぇ・・・」
「戦略等が良くなったのはその辺りでしたね。それまで本部からは『任せる』で済まされていたので、皆で『もっと考えてよ』って愚痴を言い合ってましたよ・・・。歩兵が生きている間は作戦をAIに現場指揮も兼任させていましたけど・・・居なくなってからは指揮をするのが大変でした・・・」
「それ、本部で作戦を考える人が戦死・暗殺されたのが原因よ」
「・・・深海棲艦の所為ですか?」
「そうよ。精密な人間への擬態服でまんまと暗躍されたのよ。第1次の製造施設も破壊工作で全部破壊されたと同時くらいで潜入者全員を掃討出来たと聞いているわ」
「『白肌の奴は深海棲艦、敵と思え』。この言葉はそんな背景も在ったんですね・・・」
「勿論、本土には肌の白い人も居るけれど、戦時中、『その様な人はまとめて一区画に押し込められている』という話を聞いていたわ。生きているのが本当に人間なのか怪しいけれど・・・」
「確かに。・・・その人達、深海棲艦かもしれないですね・・・」
「深海棲艦以外という可能性も在るけれどね。・・・戦後間もない今、調べる余裕は無さそうね・・・」
「第2次の生き残りもその地域に居るって話を聞いた事がありましたけど・・・全員亡くなっているんでしょうね・・・」
「第2次は寿命が短かったらしいわね?。大和の戦線では第2次は結構居たの?」
「居ましたよ。でも、自動展開型の防壁を埋め込まれて戦場に居たんですが、敵機の機銃掃射でも防壁が展開して直ぐに・・・」
「機銃で防壁が展開してしまってたのね・・・」
「生身ですからね、機銃でも致命傷ですよ? しかも、第2次の人達は『盾が重くて持てなかった』ので、防壁だけが頼みの綱だったんです。そんな訳で、戦闘中無傷で倒れるのが第2次でした」
「盾が持てなかったって、そんな体が貧弱な艦娘だったんですか?」
「・・・そう言われれば、そうでしたね。急造の
「ふ、・・・複製?」
「でも、あの人達なりに、生を受けてから間もない状態で参加してくれたんです。・・・私の掛け替えの無かった戦友達です。・・・私だって生身で戦っていたんですよ?」
「そ、そうですか・・・」
「大和と第2次は生命力を使用して防壁を展開していたのだっけ?」
「そうです。前に見られた通り、私も死ぬ寸前でしたよ・・・。この体は勝手が違うけれど良いわねぇ」
「同感ね。私の場合は、防壁を持たなかったから、勝手が格段に良くなったわ。体が頑丈になるって良いわね。・・・そうだ。ねえ、大和?」
「何か?」
「戦後、人間側で得た物はあったの?」
「それは・・・・・・・・・何も無かったです・・・」
「・・・陸生物と海生物の戦争。そりゃあ、何も無いわよね」
「・・・強いて
「海・・・、海戦当初は汚れ過ぎていたわね。1回の戦闘の度に足に汚れが付着して重くなっていくから大変だったわ。『水質改善の薬や装置でも作ろう』って事になった時が在って、戦場に着いたら直ぐに薬剤をバラ撒いたり、浄化装置を稼動させて戦闘を行ったりしたわねぇ・・・」
「場所によっては漂流物で敵味方の身動きが取れなくなって、『掃除休戦』が起こった所も在るとかなんとか・・・」
「在ったかもしれない話ね。私達の所はそんなに漂流物は無かったから、戦闘に専念出来た・・・いや、出来ていなかったわね」
「それは何故?」
「木曽がよく『足の推進機に物が引っ掛かって避けるのが遅れた』と言っていたわ。長良も同様の事を言っていたしね。敵側も波以外の何かで躓く様な素振りを見せていたし、・・・遮蔽物の無い・敵味方諸共転倒する戦場程、嫌な所は無いわね」
「木曽と長良、・・・負傷率第1位と2位、でしたっけ?」
「長良の方は後々ほぼ被弾しなくなったわ。ある程度綺麗な海面でないと、十分に動けなかったのが原因。囮専門がその役割を出来なかったら、元も子もないからね」
「加賀が居た隊も大変だったんですねぇ・・・」
「・・・隊に居た歩兵の皆、艦娘に任せておけば良かったのに・・・」
「・・・加賀・・・」
「装備のAIから退役を進められていた筈なのに、皆辞めなかった。空母型の艦娘達の方が制空の確保が出来るにも拘らず、よ?」
「・・・」
「最終的に戦場に残ったのは、隊長唯1人。海戦が始まってからの歩兵と艦娘の戦没数比率は9対1以上。日に日に少なくなる人達の中で、隊長が生きていてくれていた事が、皆どれだけ嬉しかったか。・・・勿論、他の人達もよ? 隊員に恋心を抱いた艦娘だって居たの。覚えている一幕は、とある艦娘と一夜を過ごした翌日『体は正直だったな』って言って、相手になった艦娘が隊員を
「・・・」
「・・・ああ、ごめんなさいね。年を取って、話の脱線が過ぎたわ」
「お肌は曲がり角に?」
「・・・なってないわね。・・・私、この体になって、若返ったわよね?」
「・・・そう思います。と言うか、鳳翔が全く年を取って無い様子ですよね?」
「間宮も年取った風には見えませんよ?」
「そうですね。・・・艦娘は・・・死ぬ間際になって、やっと年取った風に成るくらいですよねぇ・・・」
「ちょっと、提督を悩殺してこようかしら?」
「・・・あの人が、それに気付いた事は有ったんですか?」
「・・・無いのよねぇ。イムヤと五十鈴が結構やっているのだけど、提督は家族に接する様な顔をしてるわね・・・」
「家族と思っているから
「吹雪・・・言っておくけど、この鎮守府に居る全員だからね?」
「・・・」orz
「そういえば、五十鈴と金剛、戦時中の勇姿を見てみたかったわね」
「金剛はよく分からない評価。五十鈴は隊から居なくなった敷波・長良・北上・木曽の穴を1人で埋める腕だった・・・と、聞いていますよ?」
「イムヤ・・・潜水型の代わりは?」
「戦中、機械型の潜水型はイムヤの戦没を以って全滅した。・・・との事ですよ?」
「潜水型はあのイムヤ以外見た事が無かったのだけど、どこに居たのかしら?」
「潜水型は陸戦の時に数体が製造され、海戦時にイムヤが最後の1体だったそうです。無音で敵に近付いての暗殺、敵の近くで死ぬ時は自爆しての道連れで、ほぼ急襲用で作られた存在だったと聞きました」
「水を得た魚にならないと、全く本領を発揮出来なかった訳ね・・・」
「海戦の時、イムヤは目覚ましい戦果を挙げていましたね」
「接敵まで時間が有ればイムヤは、水中に限定されたけれど、索敵と攻撃、どちらも非常に優秀だったわ。最後は・・・まあ、私達は使い潰されたと言うか・・・代わりの居ない優秀な者は扱き使われる宿命と言うか・・・」
「・・・」
「爆弾・・・爆雷?、を積んだ敵機がイムヤの居るだろう所へ投下したのを見たのが、最後の被弾報告だったわ。・・・あの時は本当、呆気無かったわね」
「加賀・・・」
「あ・・・っと、五十鈴は面倒見の良い万能型、金剛は運を味方に付けた司令塔・・・で良いのかしら?」
「まあ、今現在の評価だと、そうですね」
「・・・何だか2せ、もとい、2人共に凄い艦娘だったんですね・・・」
「吹雪。提督の前ではないから、隻を使っても良いわよ?。私達、艦娘であって、純粋な人でなくなったんだし。別段、提督の前で使用しても御咎めは無いわ。あの人、気付いて無いだろうし・・・」
「睦月さんが気付くんですよ・・・」
「ああ、・・・災難ね。あの
「私も大変でしたよ。『沢山の人が居る面前で、提督を貴方・旦那様、何て呼ぶんじゃありません!
「・・・再誕の当日に、睦月と地獄の演習。それに負けた事に因る公私混同の厳禁を徹底されたんだったわね」
「何ですか、あの反則級の射撃精度・・・。砲口に弾を突っ込まれたらもう、終わりですよ・・・」
「あの五十鈴と金剛も睦月には頭が上がらないし、諦めたら? ちゃんと使い所を分ければ良い話だから・・・」
「流石、歴史の教科書に載りそうな戦果を挙げただけは在りますよねぇ・・・」
「何言っているのよ?。睦月は制空権が確保出来ていたからこそ活躍が出来たのよ? 私やかぁ・・・」
「か?」
「・・・私や鳳翔、提督の尽力の御蔭よ」
「今、『か』の後はなんて言おうとしたんです?」
「・・・五月蝿いわね、私の勝手よ」
「あーー~っ、そんな事言っちゃうんですかぁー?」
「あー、もう! 次よ次! ・・・吹雪、他に何か質問は有る?」
「・・・今は、変異体との戦闘なんですよね?」
「そうね」
「果たして、・・・終わるのでしょうか?」
「・・・何十年と掛かる、もしかしたら終わらない、のでは?」
「そう思います?」
「最近遠征に行った時、他の鎮守府の艦娘と話す機会が有って、その艦娘が『イ級の数が減らないから大変だ。撃沈された艦娘が変異体として現れた時は撤退、提督を連れての鎮守府放棄も考えて戦っている』とボヤいていたわ」
「他所では苦戦を強いられているんですね・・・」
「それに深海棲艦が全て排除出来たとして、また人間同士の紛争・戦争が待っているんでしょうね」
「司令官が居れば問題無いのでは?」
「・・・どうなのかしら? 吹雪から見れば、提督が居れば『もう、この人だけで良いんじゃないか?』の様な感じなのかもね。・・・でも、陸戦時、艦娘とあの人だけだったら人類は滅亡していたでしょうね」
「・・・そうですね。人間側が逃げてばかりだったら、絶滅していたんでしょうね」
「・・・どうして滅亡が確定的だった様な物言いなんですか?」
「陸戦時、艦娘での
「装備が充実していなかったとか?」
「・・・考えてみれば、それも当てはまるわね。別に、深海棲艦での強力な個体が存在したの」
「現在の姫級や鬼級等ですか?」
「それとも別の存在。深海棲艦の『オス』よ」
「・・・深海棲艦の男性型、と言う事ですか?」
「そう。強固な体を持ち、艦娘でさえ、下手をすれば一撃の下に葬り去る攻撃力。今、変異体等は『メス』の個体しか出現していないけど、『オス』の個体が出て来た場合は第3次でも多くの死傷者が出る事を覚悟で挑む必要があるわ。・・・『オス』の個体1体だけで、よ」
「・・・圧倒的じゃないですか・・・」
「・・・撤退は許されない。背水の陣の中でなんとか倒して、また倒して、人類に明日が訪れたのが今の状態よ。今日、そして明日と何度でも繰り返し戦い、諍いの無い世を手に入れるのが今の艦娘の使命だと、
「・・・あの、艦娘でも被害が大きかったオスの個体は、如何やって倒したんですか?」
「皆で頑張って倒した、としか言い様が無いわね」
「・・・オスを倒すのに、1番活躍したのは艦娘ですよね?」
「いいえ、艦娘以外よ」
「・・・では、誰になるんです?」
「歩兵よ」
「・・・提督の様な、・・・あの軽騎兵の様な人達が一番活躍した、と?」
「・・・そうよ。・・・でも、オスを1体倒すのに90人は必要、・・・だったかしら?・・・」
「90人。・・・人と同じ大きさを倒す為、1体を相手に90人ですか・・・」
「加賀。それは、オス1体だけとの戦闘であれば、です。しかも、メス型が全く随伴して居ない場合です」
「・・・そう、だったわね。・・・オスに護衛が居れば、千人は必要だったわ」
「な、何でそんなに必要になったんですか?」
「オス1体に四方八方から襲い掛かってやっと90人だったの。それに随伴が付いたら相手が一騎当千と同義だったのよ」
「誘導弾が存在していて、何故そこまで?・・・」
「・・・あれは、オスには効果が無かったの」
「・・・うそ・・・」
「嘘だと思いたいでしょ? 人間が作っていた
「吹雪は、他所の鎮守府で見掛ける、艦娘が持っている近接戦用みたいな武器を見た事は有ります?」
「えーっと、・・・はい、有ります。例として、天龍の持っている物ですかね?」
「そうです。あれ等が対オス用の名残です。オスが出て来ない事で、生産が容易なように、弱体化しているようですけどね」
「あれが・・・」
「この鎮守府でも、木曽が愛用してるわね。光ったりしないのが不思議だけど・・・」
「後、活躍したのは、女性の非艦娘部隊ね」
「非艦娘部隊?」
「艦娘としての、適正?で良いのかしら? それが無い女性達が戦車に乗って戦っていたわ」
「・・・その人達は正気だったんですか? 艦娘以上でないと戦えなかったんですよね?」
「戦争なんて生存本能を刺激されなければ前線に立てないわ。至近弾でも大破炎上するような動く鉄の塊に身を任せ、爆撃・爆風を掻い潜る。戦車の砲が生きていれば、近距離での一撃を。それで倒せなければ、戦車を降り、決死の覚悟で敵へ斬り掛かる。皆、未来の為に必死になったわ」
「でも、昔の兵器の方が一番効果が在ったのは何とも言えないですね」
「え?、昔の兵器?」
「骨董品を動かしたのよ。昔は怪獣が出て、その再出現を懸念し、世界規模で防衛予算が0になったという歴史が在るからね。怪獣が出なくなって数千年。対人兵器だけ作れば良いのだから、威力が弱体化するのは必然だわ」
「その対怪獣用兵器で、敵に破壊出来なかった物が在るからこそ、人類が生き延びた要因の一つとなり得ましたね」
「陸戦が終わったのと同じ時期に対怪獣用兵器が動かなくなったのだっけ?」
「私もそんな事を聞きました。何年もの時を経て、よくあの時まで動いてくれたと思いますよ」
「本当、同感ね。・・・でもそれが現代になると、昔と同等威力の兵器が近接攻撃の武器だけだとは・・・ねぇ・・・」
「架空怪獣との戦いが、近年まで響いてましたから・・・」
「それで、あの歩兵装備の大量生産だったのよねぇ・・・」