吹雪
加賀
大和
青葉(途中から)
「元はと言えば、提督が使っている装備はヒト対ヒト用だったわね」
「敵鎮守府急襲用で、提督が使った追加兵装。アレは
「建物は1発で半壊したわ。吹っ飛ばした建物の破片が爆撃しようとした機体の所まで飛んで来たから、もうちょっと爆破の角度を考えて欲しかったわ・・・。あの威力、戦車だったら至近弾で撃破間違い無し・・・かしら?」
「それは艦娘も同じでは?」
「そうね、衣笠位の巡洋艦級の榴弾威力と言えるのかしら?」
「・・・艦娘以外で、艦並みの威力・・・」
「
「加賀は
「それを担いだ人を見てないのよ。別の物なら見た事があるけれど・・・何時使っていたのか、皆目見当がつかないわ」
「・・・戦前に、原案者が排斥された事が悔やまれますねぇ・・・」
「大和は原案者を知っているの?」
「はい。・・・どうも聞いた話では、頭が良過ぎた。・・・らしいです」
「良過ぎた?」
「出る杭は打たれる。・・・だったそうです。慎重派。部下が『完成したのでは?』と問うても、『未完成です』と言う。詳細を事細かく指摘・説明しても、その原案者に追随するだけで、派生を作れる者は居なかった」
「・・・全く。よく、やるわよねぇ・・・」
「今から20年位前に、テレビ中継であの装備のお披露目がやっていたんです。・・・ですが、推進装置を噴かした所で姿勢を制御出来ずに墜落、試験者は即死だったそうです」
「・・・ああ、在ったわねそんな事。空中戦の革命とか言っていたっけ・・・。
「
「その事故の後、免職処分になった人が居たわよね?」
「ええ。その人が原案者でした。研究班の長で、事故の全責任を背負わされた上、全ての汚名を被って左遷されたそうです」
「左遷って、何所へ?」
「父は『分からない』と言っていました。連絡は取れても『もう、私はお役御免の様子ですので・・・』と、全く取り合わなかったそうです。その人が抜けた所為で、研究が遅々として進まなくなったそうです」
「進まなくなったって・・・、随分と個人の能力任せだった様子ね?・・・」
「実際問題、他の人が出来ると思っていた事が、次の段階へ全く進まなかったのです。国を挙げた研究だった為、政府が何とか原案者に指示を仰いで研究をしたみたいです」
「・・・その結果が、『私と大和の前に現れて窮地を救ったのは、未完成状態の代物だった』と?」
「・・・そうなりました」
「そして、その未完成品が最後まで生き残った、と・・・」
「新班長が新型を作っていた様なのですけど、新種の金属が無ければ、新型を作っても意味が無い状態だったそうです。実際、生き残ったもう1人は未完成品の問題点を改善しただけの物だったそうです」
「・・・提督もそうだけど、よく生き残ったわよねぇ。・・・まあ、最後の出撃で大怪我をして、半身不随だそうだけど・・・」
「実は、もう1人、・・・1名?、生きているヒトが居るんですよ」
「え?、生存報告は無かったわよ?」
「歩兵としては死んだんです。でも、中のヒトは生きていたんですよ。あの方、頑丈でしたから・・・」
「誰なの、その人は?」
「・・・私の部隊に居た、深海棲艦のオスでした」
「・・・居たのね? 地上で暮らしている深海棲艦が・・・」
「『家族全員を同胞に殺されたから、
「・・・では、何故居なくなったの?」
「あの時、最後に残った歩兵が
「そんな話、初めて聞いたわ」
「口外無用ですよ? 本土の人達と接点が無いこの地だからこそ、貴女達の耳に入れたのですからね?」
「はい」
「・・・今の話、私は忘れるわ。別段、憶えていても仕様が無いもの」
「・・・あ、あはは・・・」
「青葉も聞いちゃいました」
「青葉さん?」
「はい?」
「口・外・無・用、ですからね?・・・」
「・・・実はその話、
「え?、深海棲艦のオスが提督をやっている事が、ですか?」
「そうです。
「青葉・・・貴女も苦労して来たのね・・・」
「いえいえ、睦月様や加賀様程では・・・」
「・・・様付けだなんて、初めて言われたわね・・・」
「
「私が、私じゃない存在として提督の元に還る可能性も在ったわよ?」
「それについては、睦月が他所の艦娘との接触を阻止していました。彼女達が居なくなった後は、『誰かとの接触を断っていたので問題が発生しなかった』のです」
「そう、だったのね。・・・ふふっ、青葉が来た時の、提督が握手した途端に呆気に取られた顔ときたら、・・・思わず顔が引き攣ったわ・・・」
「提督のあの顔、一体全体何だったんです?」
「今もだけど、まだ話していないのよ」
「・・・何をです?」
「男と艦娘がお肌の触れ合いをすると、その艦娘が男の仲間になってしまうかもしれない。って事を、ね・・・」
「あっ・・・司令官に言ってない、・・・のでしたっけ?」
「青葉が来た時、睦月は無暗に艦娘と握手した提督を怒っただけ。
「言わなくても良いのでは? ・・・このままでも面白いですし」
「・・・まあ、当時の隊に居た面子は揃ったのよね。そうね。私も、面白いからこのまま黙っておくことにするわ」
「あの、・・・どうか、青葉が提督の信頼に足る艦娘であると、保証人になってくれませんか?」
「じゃあ、青葉。先に私達の信頼を得て頂戴」
「・・・ど、どうすれば良いので?・・・」
「鳳翔を厨房に、絶対、入れない事」
「ム、無理ですよぉーー~!! あの色欲に染まり過ぎた恥ずかしがり屋(鳳翔)、厨房へは神出鬼没なんです! 別の案でお願いします!!」
「じゃあ・・・衣笠へ、厨房でのいつもの癖を注意する役目をして頂戴」
「・・・ああ、ガサのアレですか・・・。分かりました。私もあの調味料は入れられたくないですし・・・」
「何故、衣笠はあんな事をするんです?」
「・・・あれは『短時間で腹を満たし、尚且つ栄養・水分補給も済ませてしまおう』という魂胆・・・じゃないかしら?」
「衣笠に調理を任せると、大抵は大皿1つのみで栄養配分の良い物が出て来るんですよねぇ。水っ気もたっぷりですし。・・・ただ、味を強制的に
「見栄えなんて関係ない出来ですよねぇ・・・。カレーなら良い出来なんですけど…」
「ガサ・・・衣笠については、
「体は正直・・・生きているんだから、食事は生命線よね・・・。でも、だからと言って、この場所で第1次だけが普通に食せる物を作るのはいただけないわ」
「まあ、衣笠のそれは徹底しますよ。でも、頻度を下げられるくらいですかねぇ。・・・何たって、当人の命に係わった案件ですから」
「よろしくね。
「加賀はあの味で食べれていたんですか?!
「戦闘用食が不味い物だった時、それを必死に胃に入れていたのよ? 衣笠のあの程度なら、1回口に入れて、味に慣れたら完食出来るわ」
「・・・提督も完食出来ていましたね。あの戦争を生きたのなら、当然と言えば当然ですよねぇ・・・」
「戦時中の戦闘食とは、例えるなら、どのくらいの味だったんです?」
「・・・その辺の雑草や、木の根でも
「それに?」
「戦闘食を食べると、怪我の治りが早かったのよ。全治3ヶ月が1週間で治っていたわ」
「流石に信じられませんね・・・」
「あら?、大和は戦闘食を食べた事が無いのね?」
「私は大口径砲の開発の為、研究員達に捕まってました。その間の食事は全て液体の栄養剤でしたよ・・・」
「戦っていたのなら、食べた経験がありそうなのだけど?」
「その後も液体が食事でした。『固形物は隊長の所へ持って行く』と言われて。・・・この言葉に反発は在りませんでした」
「反発が無かった?」
「固形物を摂取する事が余りにも無かったのと、隊長達に持って行って欲しいと言う、皆の総意でした」
「・・・大和、貴女の居た所は、戦闘が楽だったと言うの?」
「いいえ、そういう訳ではなくて・・・」
「では、どういう訳?」
「・・・加賀、貴方達はお腹だけでも満たして欲しい。私達が出来たのはそれ位だったんです・・・」
「・・・・・・・・・え?」
「・・・加賀。貴女は知っていました?」
「・・・青葉、何が?」
「貴女の居た隊、他の9倍以上の戦死率だったんですよ? 戦死率は他の分隊・小隊の艦娘も含めて、です」
「・・・嘘」
「嘘だと思うなら、睦月さんに聞いてみると良いですよ? ・・・貴女の居た隊は、敵と最も戦闘をした隊です。海戦が始まった当初、貴女の隊に居た歩兵の数は覚えています?」
「・・・約、5,000人よ」
「他の隊は多くて500人だったそうです。そして、日を追う
「・・・そうよ」
「敵撃破数は戦死者数より大きく上回っています。歩兵1人当たりの空と海の敵撃破・殺傷数は他の隊の12倍以上。そして、第2次艦娘を除けば、1日当たりの死者数が最も多かったのが加賀の居た隊になります。どれだけ激戦区に居たかが分るでしょう?」
「・・・本当に、私は何時死んでもおかしくない所に居たのね」
「
「
「隊長だった
「艦娘での被害は第1次治療型艦娘。明石の様な艦娘が重点的に狙われたんですね?」
「・・・そうよ。第3次の治療型艦娘が来て、第3次では第1次が治療出来なかったと言えるわ。実際問題、第1次達は『貴女達の機構は複雑過ぎる。だから、私は貴女達の修復を行えないし、何も言えない』と言われて帰されてたの。どんどんと第1次達で脱落者が出ていたわ」
「・・・聞いていると、あの睦月さんが生きているのが不思議なんですが・・・」
「あれは特別。駆逐艦級の皮を被った超弩級戦艦よ。しかも、第1次の皮を被った第3次と来たわ。腕や足が吹き飛んでも第3次と同じ治療方法で治るんだから、あんなに無茶苦茶な活躍が出来た、と言えるわね・・・」
「・・・あんな見た目で弩級戦艦・・・。発育の悪い、良い年をした大人・・・」
「青葉。・・・副隊長がそれを聞いたら如何なるか・・・」
「い、イヤですね。分かってますよぉ~~・・・」
「・・・まあ、あの人、精神的に半世紀は生きてるんじゃないか?、って考え方をしているけどね」
「流石、当時に艦名変更があっただけありますね!」
「・・・艦名変更? ・・・ああ、睦月みたいな事ね・・・。番号な名前から、ちゃんとした名前になったのだったかしら?・・・」
「
「・・・それは建造完了する前よ・・・」
「ところで、・・・青葉。貴女の歩兵への評価は?」
「深海棲艦との戦闘では、艦娘と妖怪・妖精が居れば要らない存在です。・・・さっきの歩兵と艦娘の話で、敵航空機だけで見れば、加賀と鳳翔に撃墜数で大きく負けています。ル級の撃破数でも、日毎の戦果で見れば戦艦型や空母型に劣ります。艦娘が潤沢に居れば歩兵は要らなかった、と言えます」
「む、・・・そうなるわよねぇ・・・。潤沢に居れば、か・・・」
「ですが・・・
「・・・オス、残っているのかしらね?」
「味方の方は勘定に入れないでくださいよ?」
「敵の方だけよ。・・・果たして、敵側のオスが生きているのかしら?・・・」
「
「吹雪は・・・この鎮守府で生を受けたんだったわね」
「はい。オスは見た事が無いです」
「この鎮守府で建造されて良かったと思う?」
「はい、司令官が良い人で良かったです!」
「・・・彼が良い人・・・ねぇ・・・」
「あれ?、・・・加賀、違うんですか?」
「戦前にあの人がテレビに映った事が在るのよ。・・・悪い事でね」
「どういう事で映ったか覚えてます?」
「えぇと、・・・男の浮気による、男を女同士で取り合う喧嘩を助長した。・・・だったかしら?」
「・・・今時分だと、別段、普通な気が・・・」
「・・・ま、良いんじゃないですか? 今は本当に女性同士で取り合う時代になってしまいましたし・・・」
「そうよね・・・。あ、提督の事と言えば、敵の撃破数が星の数以上と言う話が合ったんだけど、本当なのかしら?」
「制空戦の時の、敵機撃墜数が主なのでは?」
「・・・そうね、それだわね。後は、1戦毎に人型等を数体倒した事でコツコツと数を増やして行ったと・・・」
「うわぁ・・・よく今も生きてますよね」
「
「あれ?、空と言えば、さっきの話での、対怪獣兵器で飛行機型は? ・・・それが在ったなら、制空戦が楽になったと思うんですけど・・・」
「戦時中に稼働出来たのは全部、陸上移動型だったの。流石に、骨董品の航空機は飛ばさなかったみたいよ? 今頃なら、点検修理が完了して、飛んでいる物があるんじゃないかしら? あの時に来た水上機みたいに」
「あれが骨董品ですか・・・。・・・で、地上兵器の方の修繕は?」
「失われた技術だから、修復まで時間が掛かるんじゃないかしら? 最悪、展示品のままになる物も在るかもね」
「・・・まあ、対怪獣用の飛行機型が有ればまたオスが出て来ても安心ですよね」
「飛行機で修復・復元が完了したのは全部輸送機なの。対怪獣兵器の残存数は現在0よ」
「じゃあ、オスが出て来たら如何やって対処するんです?」
「艦娘だけで対応可能かもしれないし、もしかしたら、提督頼みになるかもしれない。・・・対怪獣兵器級の物を明石が作れると良いのだけれど、そう簡単に作れるか如何か・・・」
「提督頼みか、木曽に戦時中の剣を持たせる事になるのでしょうね・・・」
「・・・提督に依存していて良いのでしょうか?」
「仕様が無いわ。あの人、オス殺しの異名を持っているのだもの」
「オス殺し・・・」
「・・・性的な部分を折る的な意味で?」
「まさか、あの人はノンケよ。・・・多分だけど・・・」
「ちょっと、加賀?、何で仮定形なの?! ・・・私が結婚指輪を貰った場面を覚えているでしょう?」
「では、訊くわ。大和はあの晩、情事はしたの?」
「・・・してません」
「イムヤが『営みをした痕跡は全く無かった』と言っていたし、あの時、貴女は体が限界だった様ね?」
「ううっ・・・。そう言う加賀達は如何なんです? 長年の付き合いでしょう。勿論、裸でのお付き合いは・・・」
「無いの。あの人が1人になる間を狙うと、狙っていたかのように、面倒事が舞い込んで来ていたの。提督絡みになると、金剛の運も形無しなのよね・・・」
「では、吹雪も?」
「・・・私の場合は、子供扱いされていると言うか・・・。敷波も同様ですけど・・・」
「ふふっ・・・奥さんは誰なのかしらね?」
「勿論、
「
『むぅ~~~!』
「あのぅ、加賀?」
「ん?、青葉、如何したの?」
「提督は対オス用と思って良いのですか?」
「・・・良いのだけれど、良くないわ。・・・もう、あの人だけなのだから・・・」
「・・・もう、提督だけ・・・なんですよね・・・」
『・・・』
「ん?・・・鎮守府奪還任務が発令されました! 大和、加賀、吹雪は至急、各々の標準装備で滑走路の輸送機前へ集合せよ!」
『了解。装備換装後、輸送機前へ向かいます!』
「鎮守府の奪還任務だなんて、敵の大規模攻勢が起きたわね」
「迎撃設備が全部やられたのかしら?」
「・・・オス・・・なんでしょうか?」
「・・・そうでない事を祈るわ」
おおっと、吹雪と大和、聞き流してしまう痛恨のミス!
(木曽達の回想、を参照)