ノルの鎮守府から、攻撃が止む。
「敵拠点、沈黙。上陸します!」
一向に反撃が来なくなり、上陸する事を決意。既に上陸を開始している。
『了解。・・・注意しながら進め』
「了解。・・・周辺警戒! このまま上陸をするわよ!」
「『了解!」』
連絡員が周囲に居る者達へ声を掛け、それに応じた声が多数聞こえた。
「・・・もう、全員死んだんじゃないかな?・・・」
1名がそんな言葉を呟いた。
それを隣に居た者がたしなめる。
「甘いわよ。あいつ等、本当に凄いし、しぶといんだから。当たったと同時に撃って来た1発で1匹殺られたのを見たでしょう?」
「ああ。見たが、まぐれで当たったんじゃないかと・・・」
「半年以上、回避の訓練だけをさせ続けたのよ?!・・・私、何の・・・為に、・・・あの子をここまで育てて来たのよぉ?!」
1名が涙目になりながら絶叫。
『鳴くのは死ぬ時にしろ』
「・・・了解。・・・畜生!」
了承の言葉の後、涙を拭いながら、くぐもった声で悪態を吐いていた。
「それにしても、味方してくれるオスが居た、だなんて・・・」
1名がチラリと異性を見る。敵の攻撃によって体が少し煤けているが、傷を負っている様子は無い。
「何でも過去から来たとか。・・・嘘か本当か分からないわね・・・」
「何だって良いじゃない?彼が居たから今回、占領出来そうなんだから。この後、超化薬を飲んで貰う手筈よ」
「超化薬?」
「怪獣、・・・いえ、
「戦中のアレをやる・・・彼を使い潰すの?! あれは飲んでから1日も体が持たなかった筈じゃ・・・」
「私達にもう未来は無いわ。今回やっているのは、私達の事を人間に思い出させ、恐怖させる事。可能ならば絶滅よ。『あの悪魔が死んだ』とか言う話もあるし、その隙を突いた今回が最初で最後。私達はどう動いても、後々、艦娘から猛攻を受けてどの道死ぬでしょう」
「・・・そうよね」
「まあ、私はあの悪魔が生きていると思っているけどね」
「・・・縁起でも無いわ」
「縁起なんかもう無いわ。死なば人間諸共の覚悟でここに居るんだから」
「・・・ああ~、生きてこの戦場から出られたら、まともな恋をしよう、っと」
「『あの悪魔』なんて如何?捕虜にしたあの娘をまだ生かしているって話よ?話せば解り合えるんじゃない?」
「嫌よ、怖いわ、悪魔だなんて。それに、さっきその悪魔が死んだかもって噂が在るんでしょうに・・・」
「・・・今後、他種族でないと、貰い手は無いわよ?」
「・・・私達、戦前はただ生きて来ただけなのに・・・。こんな星、糞食らえよ!!」
「そうよ。糞食らえよ。だから、私達の手によって人間の命も終わらせるの。せめてもの反抗よ」
「そうね。・・・それにしても」
1名が周囲を見回しながら困惑の表情を浮かべた。お喋りをしながらも上陸し、敵生存者の排除をしようとしていたのだが、肝心の敵が全く出て来なかった。
「敵の生存者が居ないわね」
「呆気無い・・・で、良いのかしら?」
「頑丈な艦娘が居ると思っていたんだけど、人間の艦娘だったのかしら?」
死体の近くへ1体が近づき、遺体の状態を確認した。
「・・・いえ、体が金属で出来ている艦娘の遺体が在るわ。機械型の艦娘だったみたい」
『こちら、ズンダー隊。機械型艦娘の死体を確認。見える限り全てが機械型だ』
『こちら、イェーク隊。こちらも辺り一面、機械型だけよ』
『こちら、エクシィ隊。此方も機械型のみよ』
機械型艦娘の遺体の発見。他所でも同じような報告ばかりが続く。
機械型艦娘。陸戦時、空を飛ぶ人間と共に自分達の種族を苦しめた存在。しかし、倒せない相手では無かった。
徹甲弾ではなく、榴弾で倒せる相手だった。・・・では、何が一番深海棲艦を苦しめたか。
「純粋な人間の死体が無いわね」
「人間の個体数は限りなく少ないと考えて良いのかもね?」
「・・・好機よ。この星の生存競争から引きずり落してやりましょう。私達と同じ様に・・・」
「人間への復讐、上手く行と良いわね」
「その為の今作戦よ」
人間達だった。
決死の覚悟で大量に襲い掛かるミツバチの群れ。毒針の一突きが深海棲艦達にとって、最大の死因であったのだった。
「こちら、ヴォウエー隊。敵、生存者無し」
「良し。偵察、及び戦闘隊を出撃させよ!」
空母型から、人間の住処を探す為、偵察用の航空機が発進。今居る位置的には、小半刻もすれば、人間が住んでいる集落等が発見されるだろう距離である。
深海に在る、とある拠点。
「報告します。敵拠点、占領しました」
「・・・我々の最後の復讐劇だ。最初だけでもそうでなくてはな・・・」
伝令役の言葉に、寝転がって居る指揮者らしき者が言った。
「・・・本当に良かったのですか?・・・今からでも・・・」
しばらく無言になった後、伝令役が指揮する者へ声を発した。
「くどいぞ。海に住む事を選んだ我等は、どの道息絶えるのだ。先達から大分後れを取ったが、最後の最後まで戦い、この星の生物達の歴史に、恐怖の象徴として名を残す努力をする。素晴らしいではないか」
「・・・先の戦争に参加させなかった子供達は生かすべきです。平和に暮らさせるべきですよ!?」
「・・・平和なんて何所に在る?我々が安穏に暮らせる場所が何処に在るというのだ?」
「陸に上がれば・・・」
「ならば先の戦争が起きない方が良かったな? その代わり、海に生ける者は居なくなっただろうがな」
「・・・陸に居る私達に連絡を取りましょう。一緒に住まわせてくれるかもしれませんよ?」
「我々は同族を、陸に居る生物諸共、殺したのだぞ?現に、陸に住む同族の者に、『視界に姿を見せたら殺す』と言われたではないか」
伝令役が押し黙った。
「我々は海の生物として死ぬか、戦前に陸へ上がり、陸上生物として海に住まう同族に牙を向けるかの2択だったのだ。私や私達の決断は遅過ぎたのだ。私達の側に居る子供達は後々、艦娘に殺される運命だ。だから、こんな行動をしているのだろう?」
「・・・貴方、・・・いえ、長老・・・」
伝令役は指揮者(長老)へと肯定する様に首を動かす。
「妻よ。君には子供の頃から色々と迷惑を掛けた。・・・すまなかったな。あの娘の言葉に乗り、私達の子供達も死なせてしまった。私も潔く戦地で死にたいものだが、もう体が動かないし、遠くからの声が聞こえない。そして、
「・・・もう良いです。戦争を起こさなければ、数年前に私達は汚染で死んでいたでしょう。私だって、体が碌に動きません。貴方の世話だって、やっとこさ、なんですからね?」
伝令役はそう言って、長老の隣で横になった。
伝令役の彼女も、本当は分かっている。だが、人間達への憎悪は強くとも、彼女は今だに若者達を死地へ送った事に対して後悔している。如何にかすれば、自分達の種族が、この星が息絶えるまで存命出来たのではないかと・・・。
しかしもう、土台無理な話である。オスの個体数は子孫を存続させる程生存して居らず、僅か33名が生活していくのも厳しい程の食料不足。食べ物を探そうと遠出した者は、艦娘に見つかると、殺されてしまった。・・・深海棲艦をよく知らない艦娘に殺されてしまったのだ。
もはや、長くを生きて行く術は無い。ならばと、最後の賭けに出た。戦争時の目標、人間達の絶滅である。
最後の悪足掻きになるかもしれない。だが、最後の1名まで戦う覚悟で全員が出立した。
おそらく、帰って来る者は限りなく少ないだろうと長老の彼とその伴侶は思っている。
「・・・最後まで迷惑を掛ける・・・」
2名の生物はやがて来る、最後の時を待って居た。
自分達以外に生物が居ない事を確認した後、深海棲艦の女性1名がオスへと薬を手渡した。
「直ぐにこれを飲んで。これを飲んだら即時行動開始よ。ここは人間達の居住地が射程圏内に入る。方角を探す為に索敵機を飛ばすから、その後で砲撃よ。その間に、陸上生物達の猛反撃が予想されるわ。貴方の任務は人間を絶滅まで追いやる事。今日、私達と、死ぬ覚悟は良いわね?」
その言葉にオスは、頷いてから、薬を飲んだ。
飲んだ直後、オスが呻き声を上げながら、その体が巨大化して行った。
近くで見た女性は、頼もしいと思うと共に、事を起こす前に1回でもヤっておくべきだったと後悔。
だがもう何もかもが遅い。彼女は
巨大化が終わり、オスは45メートルを超える巨体となった。
「グゥオオオォォォーーー~~~・・・!!!」
オスが戦いへ赴く為の激励となる咆哮を上げ、前進を始めた。
薬を飲ませた女性が拳を振りかざし、大きく口を開いた。
「行くわよ!我等の目的が達成される事を願って!!」
『オォォォーーー~~~・・・!!!』
この場に居る全員が拳を振り上げ、雄叫びを上げた。
深海棲艦の上陸を物陰から見ていた者達が居る。各々が武器を持ち、深海棲艦への攻撃を、今か、今かと待ち構えている。皆が重武装。実弾の
『メス型、後9歩で有効射程圏内に入ります』
『皆、死ぬ覚悟は良いか?』
1名のその言葉に、全員が頷く。
『今日の様な日の為に、我々だって兵器を作って来たんだ。むざむざ人間をやらせはしない』
『良いか、オス型には俺達の攻撃が届かない。メス型を1体でも多く倒せ』
『『了解』』
音を立てず、妖怪達は深海棲艦達を待ち受ける。
上陸した深海棲艦達が1歩、又1歩と人間達の住む場所へ歩む。
『今!』
妖怪達の持つ武器の射程圏内に入ったと同時に、妖怪達は発砲を行う。逃げる事は考えていない。目の前で散った艦娘達と同じ様に、彼等も又この場で散ると、腹を決めたからだ。
『うおぉーーー~~~!!!』
草木によって見えない銃口から、深海棲艦へと爆発弾頭や徹甲弾が発射されて行く。
「キャ、ギャ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ー゛ー゛ー゛~゛~~・・・!!!」
「クウゥッ!!!」
1体は集中砲火を浴びて爆散。もう1体は手傷を負えど、まだ行動が可能な程度。
「ウオォォォー!!!」
オス型が『邪魔だ』と言わんばかりに自身の艤装を巨大化し1発発射。発射した弾が妖怪達へと迫る。
『1体
『後は頼んだ』。この言葉を言う前に、深海棲艦へと発砲を行っていた妖怪達は塵も残さず消し飛んだ。
広範囲榴弾。余りにも効果範囲が広過ぎて戦術核でも使ったのかと
煙が晴れ、妖怪達の居た草むらは・・・荒れ地と成り果てていた・・・。
「1名倒れた! さっきの奴等の所為だ!!!」
「
『了解!!!』
・・・そんな彼女達とオスの眼前・陸上の遠方を覆い尽くすように、突然現れた陸上生物達の部隊が迫り始めている。
「やはり来たわね!」
彼女はこの事を予期していたからこそ、オスを巨大化させたのだった。
「蹴散らして往くわよ!
『オォォォーーー~~~・・・!!!』
彼女達はオスと共に、人類絶滅の目的の為、突き進む。
「ゥオオオォォォーーー~~~・・・!!!」
オスが咆哮を上げ、突如オスの体から(先程より更に)とても大きい大砲が出現すると同時に、その大砲が火を噴き、巨大な弾丸を打ち出す。打ち出した弾は遠方を覆った点の中で爆発。
オスの打ち出した弾丸は大地へ着弾すると大爆発を起こし、至近距離の爆発に因って周囲の戦車が爆発。多数の戦車が金属の塊と化す。
生き残った戦車の中では、恐怖に因る悲鳴が轟く。
「そのまま蛇行しながら進行!!慌てない、慌てない。私達も冥途に行くかも、なだけよ」
成人に差し掛かった様な外見の戦車長女性は落ち着いていた。恐怖は有るが、戦時中何度も経験したことだ。
次は私達の戦車かもしれないが、この歩みを止める事など出来ない。私達は家族・身寄りが誰も居ない。仲間も失い、私を孤独にした奴らへの、怒りの申し子としてこの席に座っているのだからと喝を入れる。また現れた深海棲艦オスへ、車長の彼女が知る、唯一の攻撃効果を確認出来た戦車に乗り込んで敵と相対している。
「私達の目的はあのデカブツをこれ以上、先へ進ませない事よ。私達人間の未来が掛かっているわ。・・・砲手、射程圏内までの距離は?!」
「も、目標まで、あ、あと20キロ!!」
「あ、私も距離は見れるんだったわ」
「しゃ、車長!?!」
「ごめん、ごめん。・・・熱線放射装置、準備!!」
「りょ、了解!!」
「オス型の片足、脛の部分に照準を合わせ!そのまま待機!!射程圏内に入ったら、動きを少しでも遅延させるのよ!!」
「了解!!」
「そぉれ!突っ込めーーー~~~!!!」
『アラホラサッサーーー~~~!!!』
乗組員達がヤケクソ気味に大声を上げた。
そんな大声を出した車内の中、外では至近距離で爆発!!!
自分達の戦車が大きく振動するが、まだ健在である。
「その意気や良し!!」
車長は乗組員達を励まし、モニターで真横を確認した。・・・そこに見える筈の戦車が無かった。
「ザーシヤ・・・先へ往くわ」
車長は隣で走っていた戦車の中に居た、友人の名を口にした。あの戦争を生き延びたのだと言っていた。去年子供を授かって喜んでいた姿が目に浮かんだ。『幸せ者め爆発しろ』とあの時思ったが、いざ居なくなると悲しみしか浮かばなかった。
生きて居る戦車達は、次々と