「右へ45度、39キロ増速!!」
「はっ!」
戦車達が盛んに砲撃を避け、オスへじわじわと接近している。
戦車の数は次第に減っているが、各々が深海棲艦へとその主砲の照準を合わせ、敵が射程圏内へ収まるのを待っている。
「3時の方向、79度、敵機接近中!対空防御!!」
「はっ!」
車長の声に、機銃手が照準を合わせて押したボタンで、戦車に取り付けられた小さな棒から放たれた一条の線が敵機を貫き爆散させた。
「減速、今の半分へ!!」
「はっ!」
減速した戦車の前で敵弾が爆発し、その戦車は砂煙の中へ包まれ見えなくなった。
しかし直ぐに煙の中から、土煙や埃を被ってはいるが、まだ戦闘に耐えうる巨躯を走らせる。
射程圏内に入るまで手の空いている砲手は、車外カメラで車長とは反対側の周辺状況を確かめている。
その時、戦車の砲手がオスの後ろに現れた航空機を発見した。徐々にその航空機を拡大していく。
「遠くに航空機出現!敵の増援?!・・・いや、味方航空機!!」
砲手はなおもその航空機を拡大して見続ける。その航空機からは、艦娘が落下傘で降下していく様子が見て取れた。
「やった!、艦娘部隊が到着!!これであのデカブツも・・・」
「これ以上あのデカブツを生かして居たら、私達の居場所が無くなるわ!操縦手、左45度、速度2倍!!射程圏内へ、焦らず早く!!あの怪獣の倒すのよ!!!」
「りょ、了解!!」
「・・・ん?」
1つ、落下せず、上に飛んで行く人型飛行物体を砲手はカメラ映像の中で見た。
「あれは・・・あの人型は一体?・・・味方なの?」
忘れ去られた勇士達の存在が思い出されるのは、この戦闘が終わった後だった。
瞬間的に作戦区域まで来た男達は、直ぐ様、搭乗している機体からの脱出への備えを始める。
『転移完了。作戦地域に到達。降下まで、5、4、・・・!!』
操縦手以外の椅子が傾き始めた。傾いた椅子の下は海のみが見える。男はサングラスに手を掛け、空を飛べる鎧を身に纏った。
『2・・・降下、降下!!』
搭乗していた男と艦娘達は次々に機体から弾き出され落下傘が開く。
男とイムヤだけは落下傘が無い。男は背中の推進装置を噴かし、上昇をして行った。
イムヤは落下、ほぼ波飛沫を立てずに海の中へと入水して行った。
『艤装展開!!』
金剛の声で、艦娘達は一斉に艤装を出現させた。
この星では、物質を任意による具現化や小型化・大型化が可能な装置や種族が存在する。代表的には、深海棲艦と艦娘がそれ等を使用し装着、戦闘を行っている。
更には亜空間に物を保管する技術で、瞬時に
それ程までに進んだ、そんな世界で、深海棲艦は人間達を追い込んだ。人間達同士でいがみ合っていたのも原因ではあるが・・・。
深海棲艦は自身に生まれた時から身に付いている武器を持ち、それを小型化・大型化する能力を持ち、それが最高威力で戦艦並みの装甲貫徹能力を持つ。
深海棲艦・艦娘共に、人と同じ大きさで在りながらも、そんな能力を有しているのだから、人にとって敵である事は恐ろしい。
「空母、鳳翔航空隊、発艦!!」
「空母、加賀航空隊、発進開始!!」
落下傘での降下の中、鳳翔と加賀は器用にも自身に搭載した航空機を発進させ始めた。
「オスとの最終決戦よ!!頼みます!!」
鳳翔が自身から出現させた航空機へ声を掛ける、鳳翔から発艦した航空機妖精達は、鳳翔へ握り拳を鳳翔へチラリと見せ、熟練搭乗員としての意地を掛けて決戦の大空へと飛んで行く。
「頼んだわよ!!」
『やってやりますぁ!!』
加賀の掛け声に、加賀から発進した航空機の妖精搭乗員が威勢の良い返事を返した。展開した航空機隊は戦場の大空へ飛び立ち、敵機へと肉薄して行く。
「大和、主砲発射!!」
降下中の大和は展開した艤装から一発を敵へ向けて撃った。撃った弾は水上に居た深海棲艦の足へと当たり、足が砕け散った。深海棲艦の足を失わせ、顔を水面に付けさせる。
「グアァァァーーー~~~!!!」
痛みに悶えながらも、片足を失った深海棲艦は顔を大和に向けて自身の艤装の砲口を合わせ、砲撃をしようとする。
・・・が、それを阻止するように榛名が砲撃をする。・・・艤装へ命中。
ボォン!!ドカドカドカドカドカドカドカドカドカーーーン!!!
爆発の後、その者自身が持つ火薬同等物に因って爆発が9度起き、爆発の煙が立ち込めた。
煙の立ち消えた後には・・・粉々に成った破片が残って居た。
艦娘達は落下傘によって降下しており、海上への着水を始める。着水後に水飛沫が起きる。艦娘達が海面に立ち、着水した後、『ポン』という音と薄い煙の後、落下傘が体から離れた。落下傘の外れた艦娘達は走って助走をつける。その後、自身の足に付いている主機を回転させ、水上スキーの要領で移動を開始。最高速度は、現実に於ける、時速80キロを出して艦娘達は海上を走る。それ以上を出す事も出来るのだが、ハイドロプレーン現象を起こして直進しかままならなくなるので、もっと速度を出す時は戦場へ急行する時のみだ。今はもう戦場に居る。
イムヤのみ、もう着水・入水し、海中へと潜り込んで居る。
深海棲艦達は、人型が航空機から降りて来たのを見て叫ぶ。
「艦娘が来たわよーーー!!!」
「空を飛ぶ人型?!」
1名だけ、上昇して行った人型を見て、何かを理解した者が叫ぶ。
「あ、悪魔だ!!形は違うが間違いない。悪魔が再び現れたぞ!!!」
陸戦を生き延びていた深海棲艦が叫んだ。
人間と深海棲艦との戦争初期。深海棲艦にとって空飛ぶ人型程撃ち墜とし易く、しかし『近付かれたら死ぬ』という驚異的な存在であった。
しかも、今現在で空飛ぶ人型の装備を用いる者は1名しかいない。
深海棲艦達で知らない者は居なかった、『黄金色の盾の悪魔』である。
・・・だが、現在の脅威はその悪魔ではない。艦娘と妖精達なのだ。
たった1名の活躍で戦況が大きく変わる事は無い。その1名に集った戦士達が戦況を大いに変化させたのだ。
大きく戦果を挙げたのは艦娘と妖怪・妖精達である。
それでも深海棲艦達は『悪魔』を目の敵にする。
深海棲艦を最も殺した男へ殺意を込めているのだ。
「まだ陸上生物達の相手をするので忙しいってのに!クソ!!」
「大丈夫、まだ海上迎撃部隊が居る。それにオスが居る!簡単には近付けない筈だ!!」
「持つのか?!」
「少しだけ持てばそれで良い!!」
死中で死を
「グオオォーーー!!!」
オスは咆哮を上げながら首を後ろへ回し、艦娘達の方を睨み付ける。
オスはその目で微かに捉えた、空気を切り裂き超音速で進む航空機(人用輸送機)へと一発を放つ。
『転移!!』
弾が飛行物体に接近する前に、飛行物体は忽然と消えていた。
「貴方は前だけ見て進んでくれれば良い!奴等の相手は私達でやってやるわ!!」
そう言われたオスは頷いて前へ向き直し、戦車へ向けて砲撃しながら前へと進み始めた。
オスは1発をあらぬ方向へと放つ。この身長で撃つのは、今日だけの経験だ。意外と難しいと思った。
とある、争いに負けた残党達。
元々はこの星の侵略に来たのだが、艦娘という人型の化け物達に計画を全て潰されてしまった。艦娘に対抗する為に本星から兵器を輸入したり、この星の技術を使用したりしたのだが、全く歯が立たなかった。今、敗走の真っ最中である。
「クソッ!!本星との連絡が取れない!!如何したってんだ?!」
「・・・実は、この星で俺達のやっている事が、あのウ〇トラ族にバレていたらしい」
「・・・ま、まさか・・・悪、即、斬・・・とか言うんじゃ?・・・」
「・・・本星はもう制圧されてしまったのか?」
「・・・その可能性が十分に在る。だが、大丈夫だ。人間なぞ、俺達にとっては力で屈服させられる。俺達は超人だ。人間なんぞ一捻りだ!」
「・・・ああ、そうだったな」
幸い、まだ宇宙船は無事。数名の人間を誘拐した後、逃げれば良い。
そう思い、少しばかり気が緩み、互いに笑い始める。
『ハッハッハッハッハ・・・』
その高笑いの最中、彼等の近くで爆発が起き、爆風と煙が彼等と辺りを包み込んだ。
・・・煙が晴れ、その場に生きて居る生物は無かった・・・。
その爆音は遠方まで聞こえる。轟音。
まるで、雷が何条も一瞬にして落ちて来た様な耳をつんざく音であった。
一方、人間が住むとある家。
「お母ちゃん、今の音は何?!」
「・・・お父ちゃんの所へ行くかもね・・・」
母と子の親子。戦禍から生き抜いた母は、その音の正体を思い出し、今度こそ死ぬかもしれないと覚悟を決める。
・・・そんな母子の前に、生首が飛んで来る。
「お母ちゃん、あれ!!!」
「見ちゃ駄目!!!」
母は子の視界を覆い尽くし、避難所へと急ぐ。艦娘と妖怪達が直ぐに終わらせるのだと確信して。
・・・避難警報が大音量で鳴り響いている・・・
人<超人<怪獣 = 超人は怪獣に勝てない
・・・しかし且つて、人と超人が、怪獣に勝つ為の装備を身に纏って戦っていた。
それが空飛ぶ人型であった。