時は少し
金属の塊、空飛ぶ人型の鎧に身を包んだ者と白衣を着た女性が一つの装置の前に居る。
「この時が、来ましたか・・・。まだ、終わってないと言うのに・・・」
『いや、俺はもう準備が終わっている』
女性の声に男性の機械的な音声が響いた。
ここには男が装備している様な物がズラリと並び、その中で装備の着用者1名が女性に話し掛けている。
『俺を出せ。この装備の保持者がオスと戦っているんだろう?』
「・・・貴方の調整は終わりました。・・・が、たった1人で、戦況が如何なるものでも無いのですよ?」
『いや。あのヒヨッコも居る。もうヒヨッコでなく、英雄になってるだったな・・・。今後、変異体とやらでオスが出て来るとも限らん。今回、強力な増援も当てにならん状況。あいつには生きて貰わなければ、俺が・・・俺も困る』
「2人でも、戦況が如何なるものでも無いのです!!貴方達は
『だから何だ?我々はあの大きな蜂に決死の覚悟で戦い、その多くが噛み砕かれ、粉とされながらも勝利を収めた。・・・その中で、俺も
オス型・メス型両者を相手に、歩兵装備を身に着けた人とヒトの大多数が散兵線の花と散りながらも勝利を収める。この男性が死んだ当時、艦娘という存在は試験投入段階だった。武装が弱く、艦娘本体自身もメス型と渡り合えるかも怪しい。
しかし、戦わなければ人類全てがこの星から消える。彼は人類の未来を憂い、その身が死ぬ迄戦っていたのだった。
そして今、死んだ魂を呼び起こされ、彼はまたオス型との戦いへと向かおうとしている。
「今は艦娘の時代です。艦娘が居れば如何とでもなります」
『当時、艦娘で何ともならなかったのがオスだろう?』
「・・・」彼女は何も言えない。オス型が艦娘を圧倒していた為に、空飛ぶ人型の彼等が、決死の覚悟でオス型を殺傷していたからだ。
『メス型は良い。オスより脆いんだからな。艦娘は対メス型専用に作っていたとしか思えなかった。・・・艦娘の攻撃全てが、オスへ、軽微の傷しか与えられていなかったんだからな。・・・オスを討伐した俺達は艦娘達の救世主となった。・・・オスを撃破した代償は、皆の、死ぬ間際の『未来を頼む』。・・・あの言葉、意味が重かった・・・。俺も死に際、ヒヨッコだったあいつに言った。今も尚戦うあいつには、その言葉がズッシリと乗っている筈だ。・・・最早あいつは、あの装備で戦った者が居た証として戦場に居るのだろう。そして今、自身の手でオスを倒す為にだ』
彼の言葉に、彼女は俯く。彼女は泣いている。悔し涙。
「・・・本当に、生きると言うのは、ままならないものですね」
『早く俺を現地へ。生者の
「・・・分かりました。転移台へどうぞ」
彼女は、とある台へと彼を
彼女は台に取り付けている操作パネルを叩き、彼を旅立たせる場所を入力して行く。
「現状の最高装備で行かせるんです。相応の戦果を期待します」
『・・・やれるだけやるさ』
入力し終わった女性がスイッチを押すと、転移台が輝きだした。転移台に乗って居る男性も輝きだす。
『ああ、そうだ!』
装備を身に着けている男性は振り向き、女性へと声を掛ける。
『もう一度、オスと戦うこの機会をくれて、有難う』
・・・一瞬だけ光が男性を覆い尽くし、その光が消えると男性は居なくなっていた。
「・・・貴方が・貴方達がもう一度戦うのは、こんな時ではないのに。・・・出来れば、もっと活躍させたかった。もっと人を・・・生かし、活かしたかった。こんな完成度にならなければ、・・・ああ、私を1人にさせた奴等が恨めしい!!!」
彼女は地団駄を力の限り分で叫んで居たのだった。
『おお、いつもながら、怖い怖い』
『嫉妬?それとも怒り?』
『狂った?ねえ、狂ったっぽい?』
彼女のヒステリーを周囲の歩兵用装備達が騒ぎ始める。この機械達・・・いや、彼等もまた、彼女に由って魂を呼び起こされた存在。
見た事の無かった彼女の様子へ、軽い意地悪をしている。
「そこ、五月蝿い!!」彼女が怒鳴る。
『わー怒ったー』・・・棒読みである。
彼女は『こいつ等は仕方が無い』という表情で、転移して行った彼の、最後の位置を見る。
『明石さん。・・・本当に、今回は我々全員が行かなくて、大丈夫なのですね?』
彼等の内、1名が代表して彼女へと問い掛ける。彼女(明石)は頷く。
「ええ。・・・隊長がここへ来た時が、貴方達との別れの日です」
『貴女を信じましょう。・・・で、この
「船がやって来ます。滅亡の使徒とも言える様な・・・この星の技術では、対抗出来そうに無い様な物が」
『・・・そんな物に、我々は勝てるのですか?』
「勝たなければ、この星の歴史全てが終わります」
『この間の侵入者達より、もっと強く、我々は倒される。・・・そう言う事ですか?』
「そうです。前回は彼奴等に強硬的に装備を盗まれましたが、倒された者は居ませんでした。今度戦う敵は、全滅を覚悟で行っても、全滅するでしょう。例え味方に、あのオス型が居ても、です」
『私達には信じられません。・・・しかし、前回の急襲を分かっていた貴女の事です。必ず来るのでしょうね・・・』
『・・・あれは、申し訳ない。明石さん。貴女の言葉を信じていれば、物を奪取され、隊長のAIが破壊される事も無かったのに。・・・本当に面目無い』
彼等の謝罪に、明石は「もう良いのです」と言う。
「・・・どうせ、彼女は処理能力に問題を有する、不完全なAIだった。今回渡した装備のAIの方が、より早い応答をしてくれるでしょう」
彼女は鼻を鳴らしながら、少し自慢気に言い放つ。・・・その様子に、1名が頭を掻きながら、明石へと言う。
『あ~、明石さん。・・・その事なんですがねぇ。・・・貴女の渡した装備、使用不可って連絡が朝に来てましたよ・・・』
その言葉に、明石は固まる。
「・・・そんな
暫くして声を発した明石は掠れた声しか出せなかった。