『上空、制空権を確保!』
『残るはオス型1体のみ!』
艦娘と妖精達はメス型の排除を優先し、今、ようやく倒し終えた。
後、残るはオス型のみ。
上空の空飛ぶ人型は居なくなり、艦娘・妖怪連合 対 オス型、の戦いとなった。
「オスを攻撃。
『了解!!』
金剛の号令に艦娘達は従う。人類の脅威を一刻も早く打倒する為に、男達が願った目的の為に、その脅威へと立ち向かう。
艦娘達の居る位置は、鎮守府跡地へ上陸目前の地点。戦艦型艦娘達がオスを射程範囲に捉えている。
もうオス型以外の敵を倒し、残すは敵機とオス型のみである。
艦娘達は上陸はせず、そのまま海上で戦う。陸上には、オスの攻撃から自身を守れる遮蔽物が無い。強固な防空壕など、夢物語でしか無い。しかし爆発の衝撃は海上で戦えば、伏せる事で運が良ければ波で威力を低減出来る。深海棲艦と戦う以上、人並みの大きさで戦える以上、ましてやオスと戦うならば海に居る方が良いのだと艦娘達は理解している。
「総員、最大戦速! Follow me!!」
「了解!!」
オス型と戦う為、艦娘全員が速度を限界まで上げる。
「主砲、斉射!!」「榛名、全力で、参ります!!」
大和と榛名がほぼ同時にオスへと砲撃を行う。オスは男達に切られた自身の腕を拾い、それで砲弾から自らを庇う。・・・千切れた腕へと着弾。衝撃でその千切れた腕が手から離れそうになるが、まだ手に持っている。オスは反撃に、大和と榛名へ砲撃する。
『キャー!!!』
被弾を逃れた大和と榛名は着弾時の爆風と大きな波飛沫に飲み込まれた。
局所的な津波とも思える程の波に飲み込まれ、怪我こそ無いものの、大和と榛名は大きく戦列を離れる。
大和と榛名は機関を、悲鳴を上げている様な音を出してまで戦列へと復帰。蛇行する。
特に大和は出力を上げ過ぎて、艤装の煙突からは時折火を噴く程。
睦月と大井以外、他の艦娘は機関出力を限界超えて稼働させ、蛇行している。生還出来たら分解整備が必要になる位。
しかし、オスとの戦いでは最高速度と機動力がものを言う。メスとは比べ物にならない威力、そして効果範囲が広過ぎる。戦艦級でさえ至近距離での着弾は艤装への損害を被る。先程の波に呑まれた榛名の艤装は、オスへと砲口を向けていた砲塔が爆風と波の圧力に因ってひしゃげり、一部使い物にならなくなった。
木曽・五十鈴・吹雪も撃っているが、効果が無い。
オス型は堅く。木曽達の攻撃をものともせず、大和や榛名を執拗に狙う。
「敵へ効果無し!副隊長!!」
木曾の声に睦月は何も言わず、オスへと砲撃する。・・・オスは取れた腕で自身を庇う。庇った腕が消失、生きていた片腕の手首から先が無くなる。オスが痛みに咆哮を上げ、怒りに変換する。オスは艤装の砲口を睦月へと向ける。睦月へと発砲する。睦月は予想していたとでもいう様な的確さで、爆風効果範囲さえも避ける。大きな波飛沫が睦月を、艦娘達を襲う。
『ウワーッ(キャー)!!!』
五十鈴・木曾・吹雪が波に逆らえず、呑まれ、睦月と大井から大きく離れて行く。波に攫われた3名はその波に逆らう事が出来ず、そのまま遠方へと流されて行く。
<・・・痛い。心も、体も。・・・これが、戦うって事だったのか?こんな中で戦っていたのか?オオイ姉さん・・・>
オスが心の中で、悲鳴をこぼす。・・・その悲鳴を大井は読み取った。
あれは弟だ。生まれは違えど、種族は違えど、長年、一緒に過ごした実の(ともいえる)弟。赤ん坊の頃から成長を見て来た大井にとって、これは家族を殺す事。かつて戦った相手は
「大井、何やってる!?撃って!!」
一向に攻撃を行わない大井へ対し、睦月が業を煮やして問う。
「・・・駄目!出来ない!!」大井が言う。
「何故!?」睦月が問う。
「弟だから、弟に似ているから!」
「あれが私達の敵。戦うしかないの。家族でも、似ていても、殺すしか道はない!!」
「・・・私には、出来ない!!」・・・大井は撃たない。
「今、貴方が彼を殺す事が、彼を早急に痛みから、ひいては人類の脅威から守る事が出来る。撃って!!」
睦月がそう言っている間にもオスが、睦月と大井を狙い、砲撃を行う。狙いは外れ、巨大な波飛沫が2名を襲う。それにも負けず、睦月は果敢に砲撃を続ける。それに続いて金剛、榛名、大和も砲撃を行う。オスは自らの艤装で全員の砲撃を受け止め、弾く。
艦娘側の航空機が、上空からオスへと爆撃を行う。オスは意にも介さない様子で、邪魔だと、対空砲撃を行う。
少しずつ、オスがほんの少しずつ傷付く。航空機爆弾を食らい、睦月、金剛、大和、榛名の砲撃を受け、オスの体・艤装がボロボロになっていく。
オスも受け身ではない。砲撃を艦娘達へ行い、巨大な波飛沫や爆風によって艦娘達を苦しめる。無差別な対空射撃によって、航空機を撃墜する。最早、オスの周りは敵だけ。オスは全てを手当たり次第に攻撃。オスから繰り出される圧倒的な火力・爆発範囲に因り、航空機が撃墜され、艦娘が傷付いていく。
遂には大和が直撃を受け被弾、大破。加賀同様、遠くへと吹き飛んで戦線離脱。
「大井、貴方は何の為にこの時代に来たの?
「・・・違う。私は誰かとの恋愛を求めてこの世界へ・・・」
「恋愛、良いわね!これ以上オスを放置したら、恋愛対象が全滅するわよ!!宇宙でも行くつもり?今、そんな物はこの星に無いわよ!あのオスを
「・・・・・・ぅうううぅぅぅーーー~~~・・・!!!」
大井は涙を流しながら、オスへと自身の持つ砲口を向ける。
(オオイ。君は未来へ行く。それは、未来が今になり、今が過去になる。この時代で、君達は怪獣と戦って来た。そして、未来へ行けば又、違う生命体との戦闘になるかもしれない。・・・もしかしたら、今と言う過去の、親しかった生物が君へと牙を向く可能性が在る。それを振り払う勇気・
・・・大井は少しの
大井の撃った弾はオスの片足へと着弾。その足を吹き飛ばした。
「グゥオオオォォォーーー~~~!!!?」
オスが体勢を崩す。オスの構えていた砲塔が空中へと向き、発射された。発射された弾丸は、ほぼ垂直に、一直線に空へと突き抜けて行く。弾丸は雲を突き抜け、雲に風穴を空ける程の速さを保ちながら吹き飛んで行き、大気圏を抜け、宇宙の彼方、この星を照らす恒星へと飛んで行った。
体勢を崩したオスは背中から大地へと地響きを立てながら横になる。オスは痛みを堪えながら上体を起こす。艦娘へと目を向け、砲塔を艦娘、睦月へと照準を合わせようとする。
・・・その時、空から1発のミサイルが天高くから降って来る。
『あっ!?!
『オスの爆発に巻き込まれるな!!』
蜘蛛の子を散らす様に艦娘側の航空機がオスから全速力で離れる。
大爆発
降って来たミサイルはオスの艤装へ当たり爆発。艤装が爆発を起こし、誘爆で大爆発をも起こし、オスが一時的に見えなくなる程。オス型を守って居た深海棲艦側の航空機は破片と衝撃で全て爆散。現時点で敵機も全滅。
爆発によってオスの艤装破片が四方八方へと飛び散り、艦娘達へ降りかかる。物凄い勢いで降って来てはいたが、空気抵抗によって速度・威力が減衰し、艦娘達は当たっても問題無い程度だった。
・・・爆発の煙が徐々に晴れる。オスがボロボロの姿で上体を起こした姿勢で居たが、ゆっくりと背中を地面へ着けた。
飛行機の飛行音以外、沈黙が戦場を包む。
『オスの沈黙、・・・無力化を確認せり!!』
妖精の1名が艦娘と妖精全体へ報告する。
『やった、やったぞ!!』
『提督がやった。提督が止めを刺したんだ!!』
『艦娘はオスと戦える。こんなにも戦えるんだ!!』
航空機搭乗の妖怪、妖精達の完成の声が溢れんばかりに聞こえ始める。
歓声の中、睦月は顔をクシャリと歪めている。
「提督・・・。やはり最後の一撃は・・・提督に・・・人間が用いた兵器に持って行かれましたね・・・」
睦月は呟く。目からは一筋の涙。己の提督が、長年の戦友が、愛した人が、恩人が死んだ。
余りにも呆気ない最後。睦月はそう思う。少しの間だけ、提督以外に、もう1名の姿も見えたがそれも直ぐに逝った。本当に、睦月は残念に思う。
「提督・・・今の未来は、守れましたよ・・・」
哀れな大井を背に、今、睦月は止めど無い涙を流す。
『飛行場はどんな様子だ?』
『・・・1つ、瓦礫を退かせば使用可能なのが在る。艦娘と乗艦妖精に瓦礫の撤去を要請する』
『了解。撤去作業を始める。12分待て』
『9分で終わらせてくれ。上空の皆。終わるまで周辺警戒だ』
『『了解』』
『それにしても・・・』
『如何かしたか?』
『・・・いや、何でも無い・・・』
男が爆発の炎に巻き込まれたのを目撃した妖精は、間違いであって欲しいと閉口した。
人里まで来た深海棲艦達の偵察機達は、親からの信号が途絶え、困惑する。しかし、困惑したのも一瞬。怒りに身を任せ、その身に抱える爆弾を人間へ浴びせようと、見えた人型へ向けて急降下。爆弾投下。
爆撃して来る事に気付いた人型(艦娘)は艤装を展開。先ず爆弾を機銃で貫き、爆散せしめる。
偵察機はもう一度爆撃を試みようとする。・・・今度は対空弾幕の雨霰。自身に沢山の弾痕を浴び、自らの意識は爆散と共に無くなった。
「いやぁ、待機して居て良かったですねぇ~」
「現地では戦闘終了しているし、この第1派だけで終わりだな!」
「まあ、副隊長からの通信でしたから、やらない訳にはいきませんでしたね」
艦娘達は自らの艤装を消し、周囲を見回す。
「・・・さて。艤装を展開した以上、これで私達も人間と共に暮らす生活から、オサラバしますかねぇ・・・」
周りには、感謝は有れども、艦娘達を畏怖と恐怖の目で見る視線ばかり。この場に、自分達の居場所は無くなったのだと彼女達は理解し、この先の事を考えて移動を開始。先ずは助力を求め、大本営へと向かい始める。
「頭では分かっていたけど、艦娘だって判った途端にこの扱い、もう嫌になっちまうよ・・・」
「本部を頼りましょう。今の私達には、それしか道は無いのですから・・・」
「職探しか。・・・見つかる職は在るのかな?」
「いっその事、馬車の御者仕事でも始めますかねぇ・・・」
「復興途中だし、ヒトの輸送か物資輸送、何かの役には立つか・・・」
「馬、・・・見つかるのか?」
「本部に頼めば何とかなるでしょう」
「体を隠す為に、合羽は貰っておきましょう」
「艦娘にとって、人の世間は辛いよなぁ・・・」
「あぁ。・・・今思うと、隊長の所に行った、古鷹達に付いて行くんだったなぁ・・・」
「まあまあ。その古鷹達に、副隊長の伝言『人を守ってくれ』、それを言われて私達は居たんですから・・・」
「・・・隊長が馬車に乗る事が在ったら、着任を許可して貰うか!?」
「ああ、良いですねぇ!!」
「直ぐ来たら如何するのよ? まだ、彼の鎮守府は大規模整備出来ていない筈よ? ひょっとすると、人里に居るあたし達全員が隊長の所へ駆け込む可能性が在るわよ?」
その中で、1名の艦娘は結論が出ていた。
「ヘン、まだ、来る訳無いじゃないか。隊長が来るとしても、約1年後だよ」
「しかして、その理由は?」
理由を聞かれ、その艦娘は答える為に口を開く。
「副隊長とAIが止める。未だ潰せてない、『人間至上主義者に隊長を見られては不味い』ってね」
「果たして、約1年で0に出来るのか?」
「減らす事は出来るよ」