1つ、補給物資要請時にて
『相分かった。
大本営の者と大淀は連絡を取っている最中である。
「ここからこの星の反対側への反覆戦闘をするには、それが必要不可欠です。到着次第、請け負った作戦を開始します」
『頼む。・・・それから、大淀、で良いのだったかな?』
大本営側の男性と、大淀が話している。局長が大淀へと訊く。
「何か?」
『君を、・・・『大淀という艦娘が欲しい』と言う、鎮守府勤務の男性が居てな・・・』
「お断りします」
大淀は拒否を即答。
『現在の君の提督の所には、欲しいモノは何でも与える。だから・・・』
「では、この星に存在する権利全てを本鎮守府の提督にください」
『そ、それはっ!・・・』
彼は言葉に詰まる。この星を寄越せと同義。そんな決定権を彼は持っていない。彼も、この星に住んで居るだけなのだ。
「私大淀は、現提督への多大なる利が無ければそんな事は出来ません」
『・・・だが、その男は脳筋と言える。そんな頭は無いぞ?』
「我々艦娘が管理運営すれば良いのです。艦娘はこれからどんどん増えますよ。変異体も増えるでしょうがね・・・」
大淀の言葉に、彼は無言になる。
大淀の提督は一介の兵士として生き抜いただけに過ぎない。考える事を放棄し、AIの支援・補佐を受けながら、その都度の戦闘を全て生き抜いた歴戦の兵士。ただの生命力が極端に高い古参兵。月日が経ち、人々の頭の片隅に残って居るかどうかも分からなくなった様な存在。
・・・鎧を着用した姿を見せれば話は別だが・・・。
「・・・交渉、決裂ですね・・・」
返す言葉が
「局長。戦時中に於ける本鎮守府の提督の功績、まさか忘れた訳ではあるまいでしょうね?」
『な、何故私を判った?!』
彼・・・局長は大淀へ、自身を『重要な立場に居る者』としか言っていなかった。驚くと共に『この大淀は一体何者なのだろう?』と局長は思う。
「私は人間を見限り、現提督を尊敬・崇拝しています。艦娘という人間を嫌い、艦娘という人外を嫌い・・・そして戦争を終戦へ導いた方を忘れ去った人を、ヒトを私は許しません・・・」
『お、大淀。・・・俺は、君の提督の事を忘れてはいないぞ』
「ええ、『貴方』は忘れていないだけ。・・・局長。貴方は戦後、彼に手厚く支援してくれました。深海棲艦を捕らえ、純種との終戦放送を流した時、貴方はどれだけ喜んだか。・・・そして、彼に住む場所を提供してくれた事、感謝しています。・・・人間達が、ただその日その日を静かに・真っ当に暮らしていた深海棲艦を、襲う事を止めていただけなかった事だけが悔やまれますが・・・」
『さ、最後のそれを知っているのは、大本営に居る俺達と彼、当の深海棲艦のみの筈!・・・誰か喋ったのか?!』
「いいえ。知っている者がもう1人・・・いえ、人間では無いですね・・・もう1名居ます」
大淀の言葉に『そ、それは誰だ?!』と局長は言うが、
「分からなければ、それで良いのです」
大淀は局長へ答えを出さなかった。
「・・・人間には忘れる権利と言うモノが在る。そして、人の脳は古い事を忘れやすい。・・・嫌な体験を除いて。・・・ですが、機械は全てを忘れない。
『き、機械?・・・ハッ!ま、まさか、君は・・・!?!』
大淀の言った言葉に、局長は誰かを思い出す。
「誰の事です? 私は大淀です。・・・では、修復材の件、頼みました」
白々しく、大淀は『待っt…!』と言う声を聞きながら、電話を切った。
「大淀。今の・・・良いの?」
ソファで横になっている艦娘が大淀へと心配そうな声を出す。
「
「戦後、本部は、あたし達機械型を保護してくれた事もある。あたし達は、本部に少し恩義が有るよ・・・」
「隊長・・・提督は、本部には貸しが有っても借りは在りません。先日の件で、我が鎮守府が更に『貸し』を作りました。ふふふ、
したり顔で大淀は
それを見た艦娘は思う。
『ああ。この鎮守府って、提督とその艦娘の国なんだなぁ』と・・・。
1つ、ノルと男の鎮守府の艦娘達。
男とノルが言い合いをした後。
「ノル提督・・・で良いですか?」
男が明石・北上と共に工廠へと入って行った後、男の鎮守府の艦娘の1名がノルへと近付いて話し掛ける。
「え?、ええ・・・」
「先程、私達の提督が血を吐いたようですが・・・もしや、貴女が?・・・」
その艦娘が、途中から殺気を出しながら、ノルへと質問をする。
「ち、ちちち違うわ! 私は何もしていないわよ!?」
「本当ですか? 私、他鎮守府の方は、第1次以外を信用出来ないものでして・・・」
ノルは否定の仕草で首を激しく動かす。ノルは、自身に話し掛けている彼女以外にも、殺気をヒシヒシと感じており顔真っ青。最早、
「ノル提督が何もしていないのは、私達が保証するわ」
ノルと共に来た第1次達が言うと、ノルを威圧していた艦娘は自分達の艦娘を見る。1名の艦娘が苦笑しながら頷いた様子に『大丈夫である』と思い直してノルから遠ざかる。
「ああ、ノル提督」
去り際、思いついたように彼女はノルを名指しする。
「私達の提督は、私達の鎮守府の男性です。貴女には、決して、渡しませんからね」
彼女はノルへと笑い掛け、その他の艦娘達もノルへと作り笑顔をする。
・・・『この時の彼女達の笑顔はやんごとなく怖かった』と、後にノルは語っている・・・
怖くなったノルは自身の艦娘達の治療が終わると同時に、輸送機に強制的に乗せられ、あれよあれよという間に帰って行ったのだった。このあたりの事は、恐怖で記憶が曖昧になっているという。
1つ。あの夜、空を見上げ、
「アレハ・・・隊長?」
彼を見て、涙した変異体が居る事を・・・
変異体の中には、当時、男が助けられなかったと涙を流した者達が居る。
「・・・私ハ・・・隊長ノ部下ノ、艦娘。・・・タイチョウ?・・・ハッ、隊長!!」
その変異体は思い出す。艦娘だった時の事。そして男達の事を。
「私ハ・・・私ハ還ッテ来タ!!」
生きていた艦娘の成れの果ては全てを思い出し、しかし悟る。・・・この体では彼に逢いに行けない、と。艦娘では無いから。敵の体と成ったから。
「・・・ナラ、セメテ、深海棲艦ヲ討トウ」
それが彼への助けとなると信じ、彼女達は同族を討つ決心をする。
・・・後に、戦友達との再会を果たした、とある変異体の彼女はこう話した。
「・・・ソレニシテモ、一体全体、ココハ何所ナノカシラ?・・・」
ヒトの手が何年も入っていない島を見回し、彼女は途方に暮れる。
1つ、ノルとその艦娘達。
まるで、襲撃に遭わなかった様に建って居る鎮守府の建築物。だが鎮守府の外を見れば、鉄塊が、砲撃と爆弾の跡が
『ノル提督、お帰りなさい』
ノル提督が帰りの航空機のタラップから降りると、そこには、死んだ筈である、防衛の任に就かせていた第1次艦娘達が居た。
「・・・あれ? 皆、生きてたの?!」
「死にましたよ!そりゃもう、盛大に討ち死にです!!」
「いやぁ、オス型は強敵でしたね。・・・全滅しましたし」
「私達は別個体として生き返ったと思えば良いです」
ノルへしみじみと否定した言葉を言う、元第1次の艦娘達。
しかし、戻って来てみれば、ノルの艦娘達はそこに居たのだ。
『艦娘が死んだら第3次艦娘として、もう1度生まれ変わる』
眉唾だった話は、今まさにノル提督の前で起きていたのだった。
「いや、生き返ったって・・・おかしいでしょ?この星って、こんな世界だったの?」
ノルの言葉に、ノルと一緒に男の鎮守府へと行った艦娘は否定する様に首を動かす。
「死んだ命は生き返って来ません。・・・妖精が艦娘を建造する様になるまでは、ですけど・・・」
「艦娘は例外になったみたいですね」
「但し、魂の器は妖怪達が造る、第3次艦娘になる。・・・そうなったみたいです」
「・・・艦娘全て、最後は第3次になるんでしょうね」
「今後、第4次艦娘とか出来るんでしょうか?」
「・・・在るとして、どんな個体になるか、想像も付かないわね」
「オス型も簡単に屠れる艦娘とか?」
「・・・ありそう・・・」
「でも、巨大化されたら苦戦はしそうね・・・」
「オス型なんて、敵ではもう出て来ないでしょ!・・・たぶん・・・」
「あ、逃げ道作ったわね?」
その場の艦娘達が次々に喋りだす。
「兎も角、生きて居てくれて良かった・・・」
ノルは生きて居た艦娘の1名を抱き締める。
『・・・機械型艦娘特有の固い部分が無いのは、第3次になった証なのだろうか』
とノルは抱き心地で思った。
「早速ですが、ノル提督?」
生き返った艦娘の1名がノルへと話し掛ける。
「
「異動願いを承諾して欲しいのですが」
「嫌。どうせ貴女達の事だから、今日行って来た鎮守府に行きたいって言うんでしょ?」
「ちぃ、バレたか!」
「
『ちぇー・・・』
言われた全員が残念な顔をする。
「まあ、今の件は置いておいて・・・」
気持ちを切り替えた艦娘の1名はノルへと別件を話し始める。
「提督。この人、如何します?」
この人。男が救助し、木曾が動けなくしていた女性。ノルの艦娘達へ引き渡していたのだった。
彼女はノル提督を険しい表情で見つめているが、別段、ノルへと何かをしようという意思は無さそうに感じに見て取れる。
何かを決めた様な、清々しい顔をしている側面もある様な、そんな顔。
「あの睦月曰く、戦車兵としてここに来た人間の生き残りです」
「・・・大本営に連れて行けば良いのかしら?」
ノルの言葉に第1次の1名が戦車兵の彼女へと何回か話し掛ける。
「私に何か?」
「・・・言語判明。・・・『大本営へ行きます?』」
「・・・ええ、お願い」
大本営に送られた彼女は、直ぐに、局長と面会する事になる。
1つ、捕虜にした深海棲艦。
深夜。灯火管制を
『提督。チャント、寝具ノ上デ寝テヨ?』
そんな声が部屋の外から聞こえた後、男は自室の扉を開ける。
男は自身の部屋へと戻る。男は疲労しており、今にも寝てしまいそうな顔。
「オ、オカエリ・・・」
捕虜にした深海棲艦が声を掛けるが、
「・・・」男は余りの睡眠欲求に、その声に全く気付かず、寝具へと行くが・・・途中で力尽きて上半身だけを寝具の上に乗せると眠りに就いた。
ソファに居る彼女は体を動かせず、男のその
彼女が悶々としながら暫く経つと、1名、男の部屋へと艦娘が入室。
「・・・提督、又こんな格好で寝ちゃって・・・」
艦娘は『何時もの事だな』と言わんばかりの優しい表情をしながら、溜め息を吐く。
その艦娘が男へと近付き、男を持ち上げて寝具へと正しく寝かせる。そして、男へと掛け布団を掛け、自身もその掛け布団の中へと入る。
・・・その様子を捕虜は見ていた。見ていて、羨ましい様な、妬ましい様な気分。
その捕虜の視線を感じ取り、その艦娘が彼女へと目を向け・・・
『羨ましいでしょ?』
そう言わんばかりの表情を彼女へと向ける。彼女は何故だか知らないがこう言いたくなった。
「ムキーッ!」
・・・29日後。彼女は元気に男を追い掛け回したり、自身の住む鎮守府の為、敵の漸減に務める様になる。
艦娘と深海棲艦。それ等の者達は、人型でありながら、超人・・・人外と言える者達。
人間を守る為、人間を殺す為、ヒトデナシ達は戦い続ける。
・・・人間達は双方共に代理戦争状態になっている事を知らないまま、今だこの星の海では、争いが続く・・・
1つ、味の事。
己の鎮守府へと戻った木曾は、男との約束通りに、厨房へと入り調理をしていた。
少々力み過ぎて、まな板に切り込みを入れる事多々。お玉を1個壊した程度の事態は起こったが、概ね順調に作成は完了。
「出来たぞ!会心の出来だ!!」
料理、カレーを作った木曾は自分の腕に満足する。
厨房に来た間宮は「味見して良いですか」と木曾に問い、木曾は了承。間宮は味見皿にルーを1口分入れ、それを口にする。
間宮は「ふ~ん」と何回か頷くが喋らない。
木曾は不審に思い、「味は如何なんだ?」と間宮に問うてみる。
「至って標準的な味ですね。点数にすると100点中、59点と言ったところでしょう」
「ほう、間宮の舌でその点数か。・・・良い出来になったな・・・」
木曾は満足そうな顔をして・・・
「ちなみに、提督は60点です」
間宮の蛇足に、その満足そうな顔は一瞬にして瓦解。
妖怪、『1足りない』が現れた瞬間である。
焦った木曾は間宮に教えを乞うたが、「完成してからでは無理です」と言われて
・・・しかしその日、疲労過多の提督が起きて来る事は無かった。セーフ。
「提督が作ってくれるからこそ、美味しいと思えるのよねぇ」
「提督が料理の腕を上げたら、嬉しくて死んじゃいそう!」
「提督、また作ってくれないかなぁ・・・」
「待ち遠しいわぁ・・・!」
・・・如何も、味付け以外が調味料になるようで、間宮もこれには苦笑を浮かべる外なかった。
1つ。大井の事。
「ねえ、睦月」
睦月は「およ?」と、声を掛けて来た大井へと振り向く。
「大井、暗い顔をして如何したの?」と睦月は大井の表情を見て心配する。
「もしも、・・・もしもよ? 誰かに『親しい者を討て』と言われたら、睦月は討てるの?」
大井の問いに、睦月は顔を引き締め、真顔になる。
「・・・その時は、自分の利を天秤に掛けるわ」大井の問いに睦月はそう答え、続けて言う。
「大井。あの戦闘の時、貴女は天秤に掛けたでしょう? ただ水平線を眺めて朽ちる時を待つか、皆で楽園を持ち生涯を過ごすかを。・・・私は楽園を得る為にここまで生きて来たの。提督と探し続け、10年経っても、未だ旅の途中。でも、ようやくその場所が見え始めた所なの。私の手の届く所にいつも彼が居て、彼が生きて居てくれることが私の楽園となる。彼は私無しでも生きて居られるかもしれないけれど、私は彼が生存して居なくては生きて居る理由が無い。彼、提督が生涯の上官・戦友であり、伴侶と見てしまったから。・・・私は、提督の為に、提督の利の為に全力を尽くすわ。例え、提督と私以外のヒトや艦娘が敵に回ったとしても・・・」
睦月のその答えに、大井は
「私・・・時間が欲しいわ」
「・・・ええ、良いわ大井。でも、長くは待てないわ。今は戦時状態、事態は
無言になった大井へ睦月は、微笑み、続けて言う。
「大丈夫! この鎮守府の提督は、深海棲艦との生活をして、考えが多少は丸くなったわ。・・・降参が前提条件にはなるけど、捕虜として生かす器量は有る。降参する敵を見つけたら、連れ帰って来れば良い。協力者になる様子なら、ここの皆は仲間として見るぞよ? ・・・まあ、自身に飛んで来る砲弾を掻い潜り、生きたまま捕らえられるならだけど、ね・・・」
数日の時を経て、大井は深海棲艦と戦う事を決心。戦線へと出向き、己が望んだ未来を想い、戦い始める。
1つ。提督の懐具合について
「・・・この大本営でも運営資金が足りないぞ・・・」
大本営。虎の子の戦車隊が壊滅し、次の陸上防衛の為の兵器を思案中である。戦車隊の遺族へ、見舞金等、戦死報告もしなければならない。現在、てんやわんやである。勿論、資金繰りも・・・。
「オス型が出て来たからなぁ・・・」
「今、この中で一番貯金が多い奴って言うと誰だ?」
「皆同じ位ですよー・・・。1次産業から、軒並み物価高騰してますし、減俸されたら生活出来ないですよ?」
「だよなぁ・・・」
生きている以上、衣・食・住は必要。局長は次の手を打つ。
「ここ1年間、預金の減って無い奴は居るか? この中に居る者じゃなくて良い」
「調べてみますね」
従業員が情報端末を操作し、1名が浮かび上がる。
「あ、居ましたよ。・・・うわぁ、このヒトかぁ・・・」
浮かび上がった候補者に従業員は思わず頭を抱えた。
英雄。人間の為に深海棲艦との戦争に身を投じ、唯一終戦まで戦い続けた、空飛ぶ人型装備を操る者。
夜空に輝く星の数以上の深海棲艦を殺傷したとの報告は在るが、その記録に到ったのは終戦間際だった。
彼は決して、装備の操縦技術が抜群に上手いとは言えなかった。生存能力がずば抜けて高かっただけ。彼を戦場で見た艦娘達は口を揃えて言う。
『例え心の臓を撃たれようと生きており、彼は敵へと持っている銃を構え引き金を引いていた。彼は不死鳥の様だった。彼・・・神を撃った者は、神が放った雷に因って討たれる。その様は、弾が反射した風に見えて、自業自得。・・・でも、弾が物理法則を無視した軌道を描くのはちょとsyれにならんしょ・・・。私達もあんな事してみたいものです』
操作の腕としては、今も生きて居る人間が一番良かった。・・・しかし、怪我・負傷はその人間を
・・・そして現在、人とヒト共に、深海棲艦と直接戦う者は英雄のみ。
基本、一度しかない命。・・・戦場で、最前線で生き続けるというのは難しい。艦娘以外は。
艦娘が台頭した現在、英雄は過去の存在と相成った。深海棲艦という強敵と戦う以上、艦娘でさえ戦没者が出る。古参の艦娘はもう、3桁に成り果てている。
時の経過に因る忘却と存命者減少により、英雄の知名度は限りなく低い。
「英雄さんか・・・」
「彼と・・・鎮守府住まいの方は、軒並み金銭の利用が出来てないみたいです」
「ほぼ人外の方が鎮守府の管理者になってますしねぇ・・・」
一目見て人外と判る提督は、『あの英雄でさえ人間に迫害される』と判断し、鎮守府外へ出る事を極力しない。ただでさえ、少し前まであの『怪獣殺し』へ喧嘩を売っていたのだから、「外へ出たら、英雄を知っている者に、殺されるかもしれない」と怯えている。憶えている者と会うなど、天文学的な確率であるのに・・・
「衣・食・住は妖怪達が賄ってくれているみたいですね。あのヒト、島暮らしですし、お金とは無縁なのでは?」
「使用履歴は、1年半位前の、大量な宝石購入。それからは、我々の支援と、あの島での生産能力で生きて来た様ですね」
「・・・英雄さんから取るしか無いのか・・・」
「現地まで行って墓碑から宝石を? いやいや、それは不味いですよ!」
「預金の方だよ!」
「・・・私達、結局彼に、頼りっきりですね・・・」
「彼は俺達の伝手を頼っている。・・・悲しい事だが、彼の、人とヒトとの人脈は、戦争で全てと言って良い程に、無くなったからな・・・」
「・・・でも、良いのですか?これがバレたら、彼の艦娘達が黙っていないと思いますが・・・」
「彼女等は、提督の意向に沿うなら・人間の為ならば、これ位は目を瞑ってくれるさ。
言いながら局長は手に持っている書類を持ち上げ、従業員へと見せる。
「・・・それに丁度、向こう(件の鎮守府)から、有料での物資補充の申請が来た。ほぼ、彼の貯金全てを使い切る金額分だ」
局長の説明に、従業員達は何とも言えない顔をする。他者の金、しかもこの場に居る全員が知っているヒトから全額を使おうと言うのだ。ヒトデナシ達は彼に同情。
「・・・『貸してくれ』と言われたら、貸して上げましょうかねぇ」
「『貸与』ではなく、『あげる』で良いのだぞ?」
「その時は、局長が払ってくださいね?」
「良いだろう。・・・まあ、そんなに無駄使いされる事は無いだろうがな・・・」
局長のこの発言が後に、局長の懐が大破する悲劇を生むとは誰も予想だにしなかった・・・。
僅か数日間の宿泊代に、彼の給料3ヶ月分が消ゆ。(無情)
局長は業務員へ見せていた書類をもう一度自分で確認する。
「終戦直後時点の、彼の貯金額を知っている。そして先日の電話内容。・・・やはり、あのAIは艦娘か、自身を別の機械に写して生きて居るのか・・・」
局長は、今回の書類に記されている、物資請求に掛かる費用を見ながら、先日の大淀との会話を思い出す。
あの英雄の事を知っている存在。
あの者は、第1次艦娘達だけが知り得る、第1次から大本営へ極秘事項として提供された情報を持っていた。戦後、『英雄が襲い来る人間達から逃げた』という情報を知っているのは第1次とあのAIのみ。
大淀という艦娘が、あのAIだったのかは定かでない。・・・が、英雄の鎮守府では、同じAIが今だ活動をして居ると考えるのが現実的。そのAIの、大本営への評価は良し悪し5分5分であろう。
大本営。戦う者達へ指揮と支援をする本部として、その活動を完全掌握出来ていない時期に一大作戦が世論に出て逆らえなかったり、とある鎮守府の不穏な動きを警戒して人員を割いていた為に英雄の支援が疎かになったり、本部としての機能がマヒしてしまったのを1鎮守府に助けて貰ったり等、援助に依りやっとまともに活動出来そうな状態に成ったのが今現在である。
「局長。・・・私達は、英雄の鎮守府に監視されているのですか?・・・」
従業員の不安交じりの言葉に、局長は『心配無用』という表情をして口を開く。
「先程言っただろう? 我々・・・人外対策の本部・大本営は必要だからこそ、人外・艦娘達に活用されている。長年生きて来て居る者の人脈、伝手、情報網を頼りにされているんだよ」
局長は隣に侍る艦娘に「なあ?」と言う。その言葉に、その艦娘は「にゃしぃ!」と笑顔で答える。
今
1名の艦娘を、大本営と艦娘達を結ぶ架け橋とし、組織へと加入させて活動を維持している。その艦娘も大きなヒトと艦娘との情報網を構築。今だ続く戦いへ、日夜届く敵深海棲艦の情報に耳を傾け、各鎮守府へと支援を行う。
全てはこの星の人間を守る為。大本営は人外への対策を今日も練り続ける。
1つ。戦車の生存者の女性について。
大本営へと連れて来られた女性は、局長と面と向かって居る。
「今回の事で良く分かっただろう? 対怪獣兵器を用いようと、人間は艦娘より弱いとな」
「・・・はい、もうハッキリと・・・」
戦車の車長として戦場へと赴いた彼女は、戦車隊の突撃が敵にほぼ完封されてしまった事を悔やむと同時に、深海棲艦の強さ・恐ろしさを再度目の当たりにして生還して来た。
自身も艦娘として戦っていた。対深海棲艦戦車の噂を聞き、それならば敵を一網打尽に出来ると
彼女は改めて、人間が深海棲艦と戦う事の無謀さを味わった。
「戦車隊は本日を以て完全に解隊する。もう、あんな戦車製造に充てる防衛予算は、向こう90年無い」
「・・・そりゃそうですよね。オス型に致命傷を負わせられなかったんですから・・・」
「それで、君は除隊処分となるのだが、何かやりたい職は在るかな? 斡旋してあげよう」
「そうですね。・・・チンジュフという所で、テートクをやりたいです」
「・・・戦線近くに居座る事になる。時として死ぬかもしれないぞ?」
「昨日、運良く死ななかっただけでも儲けものですよ。戦時中、艦娘として戦って来た経験を活かしたいと思います」
「・・・そうか。頼んだぞ、ユキカゼ」
「・・・もう、その魂を捨て、捨てた名ですよ・・・」
「ああ、そうだった。・・・すまない」
かつて艦娘だった彼女は深海棲艦掃討の為に、今、活動を始める。
「今の私の名は、フー・スノーです!」
「・・・えっ?」
「今の私の名は、フー・スノーです」
「すまん。・・・ユキカゼと聞こえるのだが? それとも、男性用の名前か何かか?」
「・・・耳が腐っているんですか?」
「・・・
「・・・何分、こんな台詞を言えるのは・・・局長、貴方だけになってしまいましたから・・・」
「・・・そうか。・・・そうだな・・・」
・・・1からの始まり。彼女は又、艦娘との縁を作り始める。
1つ。戦場へ来て散った、たった1名の増援歩兵。
「・・・遂に、俺も
彼の魂は地獄へと送られ、彼はその場に広がる景色を堪能する。
・・・といっても、感慨に
地獄に居る歴の長い者、死神が彼に気付く。
「あれ?・・・大隊長?! 随分と
「おお、ちくわ好きか。本当は9年以上前に死んで居たんだがな。・・・地縛霊として長居してしまったよ」
「戦争で死んで、『何もしてないのに・・・』って言う奴が多いですからねぇ・・・」
「やっとこの世に来る決心が付いたんだ。これから、よろしくな」
「まあ、今度の輪廻の輪に入る時迄、待って居てくださいな。ヒトや深海棲艦が多く死んで、次の器が準備出来ないのですよ・・・」
「人間と深海棲艦、減り過ぎたからな。・・・当然と言えば当然だな・・・」
今現在、人間は100億が1億人へ、そして深海棲艦の純種が残り僅かとなった。戦争に因る、生命体の減少は余りにも多かった。
だが人間達は、又過去の栄光を取り戻すだろう。今は艦娘達が必死になって人間の個体数維持に努めている。艦娘達に任せる事になるが、彼女達ならばやってくれる。あの男とその艦娘達が居るならば尚の事。
彼は、そう確信出来ていた。
「・・・貴方!」
彼と死神が話している所へ、誰か、女性の声が聞こえる。
彼が見回すと、彼へと向かって来る女性が居る。
「おお、我が妻よ!」
彼は、大手を広げ、彼女へと歩み寄る。
彼とその妻は、あの世にて再会を果たす。互いに抱き合い、自分達の存在を確かめ合う。
死の先で結ばれた魂は、生物という枷が外れ、次の輪廻までの間、仲睦まじく暮らす。
次に生を受けた時、この2名は互いの事を忘れ、別々の道を歩き出す。運が有れば又この2名は出会い、そして結ばれるだろう。次の生では、どんな生物になるかは分からないが・・・。
「・・・来世は良い生涯を送れると良いですねぇ・・・」
そう言い残し、死神は自分の持ち場へと戻って行った。
最後の1つ。子を孕んだメス型に逃げられていた事。
「オギャー、オギャー!!」
「ヨーシ、ヨシ。貴方ガ育ッタラ、シッカリ人間ヲ駆逐スルヨウニ頑張ッテ貰ワナイトネー」
赤ん坊を生んだそのメス型は、頭の中で人間を殺す算段を考え巡らす。
先の襲撃前にオス型との交尾をしていたメス型が無事に生き延び、子を育て、人間達への殺意を燃やす。
彼女は忘れない。人間達の傲慢さが生んだ海の悲劇を。人が我々の事を忘れ、のうのうと生きて居る妬みを。親しき者達が死んだ悲しみを。家族が殺された怨みを。愛しき者を殺した怨みを。
その全てを怒りに変え、人間を、艦娘を討とうと考える。
・・・光に溢れた世を闇で覆い尽くす為、彼女は暗い海の底で、その時を待ち続ける。
・・・その時はもう訪れない事を、一生、懸命に否定しながら・・・
似合いそうな曲
初代ゴ〇ラ メインテーマ
怪〇大戦争 メインテーマ