戦時中に死んだ艦娘達が続々と第3次艦娘となって還って来た。
だが、彼にとって第3次艦娘の扱いは難しく、新しく迎えた吹雪を轟沈させてしまった。
気落ちしてはいられない、まだ跳梁跋扈する深海棲艦達が居るのだから・・・。
睦月の呼んだ第1次艦娘達を新たに迎え入れ、拠点運営を開始したのだが・・・
金剛含めて訓練を行ってから2ヶ月以上が経過した。如月が帰って来ない。
{提督、如月を貸与した鎮守府のデータが全て消滅しています}
「消えた?。・・・BY、場所は記憶しているか?」
{はい}
鳳翔に付いて来てもらい、如月を貸与した鎮守府へ向かう。
深海棲艦に占領された恐れがある為、偵察機を何機か積んでもらう。
ギリギリ偵察出来る場所まで来た。鳳翔に偵察機を発艦させる。
「あの・・・提督」
ある程度時間が経った後で、鳳翔が青ざめた顔で私に言う。
「どうした?。如月は居たのか?」
「・・・」
鳳翔が沈黙したままになる。
仕方が無いので見ている光景を見せてもらう。
・・・如月が両手両足をもがれた状態で男に嬲られている光景だった。
その周りには艦娘が何名か立っている。
「あ!提督!?」
私は鳳翔の言葉を後にして大急ぎで助けに向かう。
「な!なんだ貴さハッ!」
問答無用で男の顔面に拳を入れる。立っていた艦娘達が一斉に私に砲を向け発砲してくる。
如月に当たらないよう守りながら、撃ってくる艦娘1人、又1人と戦闘不能にしていく。
やがて立っているのは私だけになった。痛みに呻く艦娘達が多数居る。
歯向かって来た艦娘達全員気絶させた。
「ば、馬鹿な。精鋭が・・・クソッ!」
男がカプセルの中へ逃げるとフッと消えた。転送装置のようだ。
男が消えて一呼吸置いた後で装置がスパークを起こした。
私が転送装置を使用しようとしても反応しなかった。
{私の記録では、転送装置は競技場ぐらいの大きさが必要な筈です。
・・・今は、ここまで小さく出来たのでしょうか?}
「あ・・・、提督?」
如月の目が虚ろだ。
「すまなかった。見知らぬ人を信用した結果、君をこんな状態にさせてしまった」
「でも・・・、助けてくれました。格好良かったですよ。さながら白馬に乗った王子様」
「・・・」
如月の意識が無くなってしまった、まだ生きている。
予備スロットから栄養剤を取り出し、注射しておく。保温シートを出して如月に巻きつける。
「あ・・・、あの」
不意に声をかけられる。女性だ、立てない様子でここまで這って来たようだ。
敵意があるか確認する。無いようだ。
「私と一緒に来るか?」
「お願いします」
泣きながら言ってきた。もう一つ保温シートを出して女性に巻きつける。
「鳳翔、聞こえるか?」
『感度良好。どうぞ』
「これより帰還する。道中頼むぞ」
『了解』
二人を抱えて拠点へ帰還する。帰りの道中二人とも安心した表情で眠っていた。
「あの、ありがとうございました。私、潮と申します」
女性が名乗ってきた。今は立てるようだ。
「潮、どうする?、内地へ帰るか?」
「い、いいえ。私には住む家が在りませんので・・・」
「そうか。良ければここに住むか?空き部屋がまだあるぞ?」
「・・・あの、助けて頂いてから何から何までありがとうございます」
潮は涙ながらにそう言った。
「その代わりといっては何だが掃除や雑用等を頼むぞ」
「はい、精一杯やらせていただきます」
潮は、泣きながらも嬉しそうだ。
如月は何とか自己修復機能によって数日で完治した。全体的な損傷は軽かったようだ。
「提督、来てくれて、本当に嬉しかったのよ・・・」
あの~?、如月、泣いて感謝の言葉を言いながらまさぐるのは、ちょっと・・・。
これに怒る反応をする筈の睦月が複雑な表情で見ていた。
木曽、古鷹、加古、衣笠が如月を見て泣いていた。
「・・・提督」
執務室での抗議文の作成中に加古がソファに寝たまま話しかけてきた。
「何だ?」
「あたし達第1次艦娘は、基本的に人間に危害を加えることが出来ないんだ。
だから、あたし達をどこかへ異動させる時は、相手を知ってからにして欲しいんだ。
・・・今回の如月の件みたいになる可能性が十分にあるんだよ。
鎮守府を統べる人がこんな事を犯すなんて、思いもよらなかったけど、さ・・・」
「・・・今回の件は、私の失態だった、の一言に尽きる」
「ああぁー!、て、提督が善意でやったのは重々承知してるよ!。
それに、如月も生きてるしさ・・・なぁ!?」
私の声に加古が慌てた様子で言った。
「・・・そうだな」
「・・・今日はあたしも手伝える所は手伝うよ」
加古がソファから起き上がり、こちらの机に近づいてくる。
「そうしてくれ、助かる」
私が加古の椅子を用意し、そこに座らせる。
「・・・ああぁー、もう!。提督~、文鎮とかある?」
片手では紙が動いて書きづらい様子だ。
「ハハ、ちょっと待ってくれ。今出すよ」
不意に執務室の扉が開いた。入って来たのは睦月と木曽だった。
「提督、如月の件、すまなかった、俺達の人を見る目が無かった所為だ」
机の向かい側に来て、木曽が開口一番にこう言った。
「君達の所為では無いよ。
艦娘を統べる人がこんな事をすると、思わなかった私に責がある」
「・・・あそこの女の提督さんは良い人そうだったので、
睦月も納得して如月を残したのですが・・・」
睦月がそう言った。・・・女性?
「・・・ちょっと待て。睦月、女性の提督だと言ったか?」
「え?、はい、そうですよ?」
「・・・至急、潮を呼んでくれ」
「?、・・・はい」
呼び出しの放送の後、潮が来た。
「あの、何でしょうか?」
「潮、君の、私がここに連れて来る前の鎮守府、について知っている事が有れば言ってくれ」
「・・・いや、いや・・・」
潮が体を震わせながら拒否をする。泣き崩れてしまった。
今の内に潮の記憶を読み取る。
女性2人が見える。
「・・・私はこの鎮守府を任された提督よ。大本営の命令が無ければここは渡さないわ!」
「命令書はあるわ、ほら」
「・・・呆れた、こんな偽造書類で騙せる様な私では無いわよ!」
1人の女性が腰の拳銃に手を掛けようとする、
・・・銃声・・・
拳銃に手を掛けようとした方が頭を撃ち抜かれ、倒れた姿が在った。
「大人しく渡せば良いものを。・・・損したわね、命を」
そう言ってこちらを向く。
「喜びなさい、ここがお前の家よ、監獄という名の、ね。アハハハ・・・」
・・・ここで読み取るのを止めた。必要十分だろう。
私が殴ったあの男は、生きている女性の方の仲間、で良いのだろう。
「潮、言わなくて良い。・・・無理を言ったようで、すまなかった」
潮に近づき、頭を撫でた。
「・・・!?。ひゃあ!」
潮が顔を真っ赤にして悲鳴を上げた。
「うわ!?、ど、どうした?」
「す、すいません!。し、失礼します!」
潮が物凄い勢いで退出して行った。
「あの潮って娘、どっかで見た事あるんですけど・・・う~ん、記録取って無いや・・・」
睦月が頭を傾げていた。
{提督。貴方に、攻撃を受けたという事で、報復を行うと宣言している鎮守府があります。
ただ、その鎮守府の場所は秘匿されています。その指揮を執っている者の声紋が
如月を捕らえていた男と一致しました。厳重に警戒をしてください}
「その男の逮捕は?」
{今現在、艦娘への法律が有りません。よって、今現在貴方だけに罪が有ります}
「・・・そうか」
{貴方が私を装着しての人間と艦娘への戦闘行為は本来行えませんでした。ですが今回、
その安全装置を解除していました。今後もこのような事に遭った場合は私の判断で
攻撃を行えるようにしておきます}
「分かった」
警戒を厳とさせておこう。古鷹、加古、衣笠に交替で周辺警戒の任に就かせた。
「隊長~!」
戦時中の隊員だった長良が来た。飛びついてきた。片腕で抱き付いて来る。
「腕は治らなかったか」
「はい・・・。第1次の明石が居なくて、私達第1次の修復は絶望的だそうです・・・」
「そうか。とりあえず良く来てくれた。歓迎するぞ」
「提督、艦娘がこちらへ急速接近中です。こちらの呼びかけに応じません!」
見張りをしていた衣笠が大声を上げる。
サングラスを掛けその艦娘達の方へ向かう。
向かう時に航空機とすれ違った。すれ違った後に拠点で爆発が起こる。
長良の顔が見えた気がした。
「長良?」
思わず拠点の方を向く。向いた後、左手が引き千切られた。
砲撃されたようだ。
落ちていく盾を慌てて拾い上げ、砲撃してきた艦娘達へ体を向ける。
「提督!、長良が!、長良がぁ~!」
悲痛な叫び声が聞こえた。
{長良の反応、消失しました・・・}
と、BYが言う。
その声を聞き攻撃した艦娘達へ攻撃を行う。出撃した艦載機を撃墜していく。
制空権を確保し艦娘達を大破へ追い込む。大破しても執拗に攻撃を行う。
攻撃用の武装を全て壊し、攻撃してきた全員を大破へ追い込んだ所で艦娘達が逃げていく。
どんなに攻撃をしても倒れない。これが第3次なのだろうか・・・。
拠点のレーダーから見えなくなった所で追跡を止める。
拠点に戻ると古鷹が長良の片腕を握り締めていた。
「うぅ~・・・長良ぁ~」
古鷹が泣いている。第1次艦娘達が涙を流している。
「提督、腕が・・・」
響が青ざめた顔で言う。
「大丈夫だ。だが、皆に料理が振舞えなくなったな。戦闘に支障は無いから、
気にしなくて良いぞ」
「そういう問題じゃないよ。如月を取り返しただけでここまでするなんて、
ネズミにも劣る頭の人間だよ。提督、攻撃してきた所を教えて。皆で撃滅してきてやる」
「・・・どこが攻撃してきたのか、分かっていないんだ」
「そんな・・・、指を銜えて見ていろと言うの?」
「・・・今は、耐えてくれ」
響に言う。
「・・・」
響が悔しそうな顔をして沈黙していた。
「響、この拠点の正反対の地点へ妖精を連れて別拠点建設の指揮を執ってくれ」
「・・・今回よりも大規模な攻撃が来る、と?」
「そう思っている。出来るだけ早く頼む」
「・・・分かった。他に誰かを連れて行く。良いよね?」
「勿論だ」
響がタ級と建設作業が得意な妖精を連れて建築の作業に行った。
長良の亡骸を貰い、ロボット(また一人、第1次が逝ったのね)の前で一人泣いていた。
ロボット(この腕、私が使えるかも?)が長良の腕に興味があるようだ。
外見に傷はあるが損傷箇所は無い。
腕を取り付けられるよう整備は済ませてある。試しに取り付けてみた。
ややあって腕を少しずつ動かし始めた。書く物が欲しいようだ。
ペンを渡し紙を書ける位置に持ってくる。
『工廠に行きたい』
ロボットがそう書いた。
工廠まで担いでいく。
『どうしました?』
妖精が聞いてくる。
「このロボットが工廠に行きたいと意思表示をしたから連れて来た」
『その腕・・・』
「長良の腕だ、使えるなら使わなければな」
妖精達にそう言う。
ロボットを作業机の前にある椅子の上に座らせる。またペンと紙を渡す。
腕の使い方に慣れたようでサラサラと書いていく。
材料表のようだ。その紙と妖精達を交互に指差してくる。
「これを用意してくれ。出来るか?」
妖精たちに頼む。
『この島と私達の施設で供給可能です。すぐにお渡しします』
妖精達がせっせと用意していく。
その間にロボットが手招きをしている。
近寄ってみると片腕で私に抱きついてきた。妖精が戻ってくる前に離れた。
『やるだけやってみる』
ロボットがペンでこの文字を書いた。
「そうか、頼んだぞ」
私の言葉に拳を出して親指を上に立てた。