{提督、未確認の大型物体が出現したとの事で、強行偵察の要請が来ました}
牢を離れて直ぐにBYから報が入った。
「大型物体・・・、香取が発見されたのか?」
{違う様です。他の鎮守府で接敵した艦娘がほうほうの体で帰って来たのですが、敵の姿が『超弩級の軍艦だった』と言うだけで、まだ信憑性が薄いんです}
「・・・分かった、行こう。地点は?」
{ここです}
地図が表示される。この鎮守府から遠い。
「・・・この距離で行けるのは、私だけだな」
{提督が出た事は大淀の私が連絡します。では、行きましょう}
「了解」
現地へと急行する。
・・・・・・
「・・・香取の艦の姿よりも大きいな・・・」
目的地付近まで移動し、艦を発見した。香取よりも巨大な大砲に、航空機の発着場まである。
・・・こんな大きな船舶は戦後初めて見た。いや、戦前でも見た事が無いかもしれない。
{提督、探知・発見されました。警戒してください}
「了解」
探知されるのが早い。しかも、こちらのレーダー探知距離外からの探知だった。
高速移動しながら様子を伺う。
{注意!。超音速機3、接近中!。人間の乗る大きさ!。こちらの最高速より速い!}
「嘘だろ!?。退却する!」
{注意!、敵、機銃、発砲開始!}
「むぅ!?」
後ろを振り向き盾で弾いて、こちらも銃で撃ち返す。
・・・1機目は撃墜した。
2機目にも命中・・・当てたと思った弾が、ヒラリと急旋回で回避されてしまった。
「バラければどうだ!?」
バルカンを撃ち出し、牽制攻撃を仕掛ける。
何発か当たったが、穴が空いた箇所が無い。
{警告!
「妨害は!?」
{出来ません!}
何発かは落とせた。
・・・直撃の1発を盾で防ぐ
・・・盾を持っていた腕が、盾と一緒に肘まで消えた。急いで痛覚を遮断する。
{提督!}
「・・・死ぬかもな」
{諦めないで!}
「こっちのミサイルは!?」
{今の衝撃で使用不可!}
「・・・海に入る!」
{溺死しますよ!?}
「何とかする!」
・・・機銃掃射を潜り抜け、何とか海中に入った。
海中に入り、水が入って来ない様に念じながら退却する。
途中、どこに居るかを探す様に勢い良く弾が入水して来た。
・・・・・・
・・・どれくらい経ったのだろうか?。敵からの攻撃は無くなった。
「敵の様子は?」
{海上からの反応は消えました}
「ここから近い陸は?」
{表示します}
地図と現在地、進行方向が表示される。
「最寄の島に行く」
{・・・戦争時、奪還したのみで何もしていません。それでも行きますか?}
「水中は・・・寒い」
{・・・はい}
・・・島に辿り着いた。
海から上がるだけでも、ひと苦労だった。
{提督!。気を確かに!?}
「・・・無理だ・・・」
武装を解いて、ゴロンと横になる。
「隊長?。隊長!?」
「?・・・加賀、か?」
加賀の声が聞こえた。
「加賀・・・すまない。少し、休む・・・よ」
私は意識を手放した。
・・・・・・
「・・・ん?」
目を覚ますと、金属の天井が目に入った。
「あ・・・隊長、起きた?」
加賀の声が聞こえた。
「加賀、ここは何所・・・ん!?」
目を移すと深海棲艦が目に入った。即座に物陰に隠れ、警戒する。
・・・片腕が無いのを忘れ、1回躓いてしまった。
「誰だ、貴様は!?」
「・・・誰だ、と言われても、加賀、と言うしか無いのだけれど・・・」
深海棲艦が加賀の声を発した。
「加茂美賀だ、と言って・・・信じてくれる?」
「・・・」
確か、加賀の人間時の本名だった筈。
・・・嘘を言っていない。
{提督、私の事も判っていました。質問の内容にも答える事が出来たので、本人と見て良いです}
「・・・」
「起きたら、・・・ね・・・こんな姿になっていたのよ」
「・・・」
「あの時、死んだと思ったのに、こんな姿になって生き返ってた。・・・目が覚めたら海の中だったのを覚えてるわ」
「・・・加賀」
「・・・美賀と言ってくれる?。今の私はもう、加賀とは言えないわ」
「・・・美賀、君は確かに死んだ筈だ。・・・そして、水葬で海の中へ沈めたんだ」
「そう・・・」
「けれど・・・生き返ったんだな」
「・・・人間が生き返るなんて、聞いた事無いんだけどね」
「実はな、君以外にも、例が有るんだ」
「・・・え?」
「君と同じく、深海棲艦として
「・・・同じく、深海棲艦。なのね・・・」
「そうだ」
深海棲艦としての生まれ変わり・・・
「・・・時に、美賀」
「何か?」
「人間への敵意は有るか?」
「・・・」
「有るならば、君を・・・」
「無いわ。艦娘に対しての敵対意識も無かった」
「・・・ならば、何故、君は・・・」
「隊長、貴方への執着心よ」
「執・・・」
「--さん。貴方を愛しています」
「・・・大山さんに言った時の名前、覚えていたんだな」
「ええ・・・でも、貴方は・・・」
「・・・」
「そう、よね。・・・この体じゃ、警戒するわね」
「・・・ところで、ここは何所だ?」
「ここは私の艦としての中よ」
「・・・ふね?」
{提督、香取に続いての2例目ですよ}
「またコレなのか・・・」
思わず天を仰いだ。
「で、艦と言うからには、何所に向かっているんだ?」
{本部が接敵したあの艦を脅威として捉え、本部に指示された場所へ向かっている所です。後、小1時間で港へ着きます。無人ですが・・・}
「そうか。武装の修復は終わっているか?。もしもの時用で金属は入れておいたんだが・・・」
{はい、終わっています。ですが、燃料が切れかけています}
「そこまで使用していたか・・・」
{それに提督、無茶は出来ませんよ?}
「そうだな。・・・が、やるしかあるまい」
今、片腕が無い。最大限の戦闘行為は出来ないかもしれない。
「まだ、戦争は終わっていないのね」
「いや、戦争は終わった」
「・・・終わったのに何故、隊長はまだ戦っているの?」
「戦争は深海棲艦側が敗北を宣言した。・・・が、人間と艦娘への敵対心が消えない個体がずっと襲って来ているんだ。それ等を絶滅させない限り終わらない」
「・・・それで今回隊長は重傷を負った、と?。・・・いえ、さっきBYが言っていた限りでは違う様相を呈しているわね」
「・・・今回は訳が解らないんだ。乗れる艦が出現して、且つ攻撃できる・してくるなんて思いもしなかった。威力も桁違い。それでこの有様だ」
「私も含めて、未知との遭遇なのね・・・」
「君が人間の時、生身で戦っていたのが嘘みたいだよ」
「・・・違和感は有るんだけど、・・・軍艦の魂を持った者だから出来るのかもね」
「にわかには信じ難いな・・・」
{提督、もう1つ別件が発生しまして・・・}
「何か?」
{提督にそっくりな方が我々の鎮守府に現れたんです}
『そっくり?』
私と美賀の2人一緒に言っていた。
{そうです。提督と信じて疑わない者が出る程の容姿、挙動と話し方がそっくりでした}
「・・・見てみたいものだな」
{会話をした時、後ろ向きの発言が気になりました}
「後ろ向き、か・・・」
今は前向きか中立の発言を心掛けているが、実際は如何なのだろうか?
{その後、明石が作ったロボットに乗って脅威対象へと向かっているようです}
「ロ、・・・ロボットに乗ったぁ?!」
{そうです。ホントに明石は・・・あんな巨大な物をいつの間に作ったのやら・・・}
「巨大?」
{全長100メートルは有ろうかと云う程の巨体です}
「・・・見たのは幻想では?」
{鎮守府の皆が見たのですから、本物です}
「・・・鎮守府に被害は?」
{そのロボット用出入り口付近が僅かに欠けただけです。さして、被害は有りません}
「行き先は?」
{どうも、あの脅威対象へ向かっている模様です。接触まで後、数時間です}
「・・・2体を会わせても良いものか・・・」
{会う前に撃沈を推奨します}
「・・・そうだな。だが、あの戦闘能力の前には近付けないぞ?」
相手の航空機3機に纏わり付かれただけで自身がこの状態。本気を出されたら、ひと溜りも無いだろう。
{その為に、今向かっている所があるんです}
「・・・一体、何が有るんだろうか?」
{何かの研究所です。極秘の内容と通達されました}
「そうか」
「隊長、私は隊長を降ろした後、如何すれば良い?」
「・・・一緒に来た方が良い。さもないと死ぬだろう」
「如何して?」
「人間達が、今の君を見たら、君を殺しに来る可能性が高い」
「・・・」
「実際問題。戦後に深海棲艦を匿っていて、その深海棲艦を殺害せん、と人達に襲撃された事があった。どこかに居て、見られた場合、君1人では庇えないぞ?」
「・・・一緒に行って良い?」
「勿論だ。・・・それにしても・・・」
「?」
「姿は変われど、人間の君に生きて会えるなんてな・・・」
「・・・そうね」
「あの時、君が持っていたお守りの効果が有ったのかもな・・・」
「お守り?・・・あ!?///」
美賀の顔がどんどん赤くなっていく。
「如何した?」
「あ、あのお守りの事は忘れて頂戴!!」
顔を真っ赤にして言われてしまった。
「え、そ、そうか・・・」
陸に着き艦から降りた。加賀も降りると艦が消えていた。
{提督、ここに地下への入り口が在り、今その場所が開くそうです}
「こんなに海に近い場所に建設して残っているなんてな・・・」
{国の首相のみしか知り得ないものだったので、当時の深海棲艦達も知らないままになった、と思います}
「そうか」
ややあって地面に人が通れる大きさの穴が開き、人型の誰かが出て来た。女性だ。
目的地は地下室だった様だ。
「・・・来てますね。お待ちしてました」
「明石?」
思わず口に出してしまう程に明石そっくりだった。
「・・・取り敢えず入って、付いて来てください」
「あ、ああ」
余りにもそっけない態度だった。
私と美賀は慌てて女性に付いて行く。
「先ず、先程貴方が言ったように、私は明石です」
歩きながら、明石が名乗った。
「ここは何の・・・」
「対深海棲艦用となった歩兵装備の研究所です。そして私がその歩兵装備開発者の1人です」
「君は研究者か・・・」
「勿論、歩兵装備の作成も出来ます」
「では、私をここに呼んだのは・・・」
「いいえ、貴方の装備強化ではありません。武器は持って行って貰う物が有るにはあります」
「何をしたいんだ?」
「・・・今、脅威対象の艦と新種の深海棲艦人型が手を組んだ様に一緒に人間達の密集している地を目指している事が確認されました」
「何だって?!」
「今の艦娘達の力では、全く歯が立ちません。そこで貴方には、それ等を殲滅して貰う必要が有ります」
「だが・・・」
「無理を言っているのは承知の上です。ですから、ここに来てもらったんです」
部屋に着いて、明石はそう言うと、何かボタンを押した。
目の前に在る扉が開くと、新型であろう、歩兵装備に身を包んだ者達がゾロゾロと出てきた。
『隊長、お久しぶりです』
『この時が来てしまったんですね』
スピーカーから流れる様な声、だが、
「・・・まさか、そんな」
掠れた声しか出なかった。
当時の隊員達の声だった。忘れる事は無かった。
「・・・私は艦娘の研究が始まる前から、深海棲艦の脅威を感じ取りました。そして完成させたのが男性しか装着出来ないようにした装備です」
「何故女性には・・・」
「女性は艦娘として大多数が死ぬ事を運命付けられていました。だから、コレを男性専用にしたんです。でも、単にコレを生み出しただけでは深海棲艦には勝てない。死んだ男性の魂を使い、もう1度歩兵にする事にしました。魂の憑依を安定させるのは、戦後になってしまいましたが・・・」
1人ずつ、当時の隊員だった名前を呼んでいく。
『はい』
『俺です。隊長、涙脆いのは相変わらずですね・・・』
『名前、覚えていてくれたんですね。あれから何年も経っていると云うのに・・・』
『・・・』
途中、何名か返事が帰って来なかった。
「・・・何名かは
「そうか・・・」
「歩兵として生きている者に縁の有る者の魂を定着させる事が出来ました。今も尚、歩兵として残ったのは・・・貴方だけです。つまり、今ここには、貴方と一緒に戦場を駆けた歩兵の魂のみが居ます。この様な事態の為に、憑依させた体を慣らせていました。使ってやってください」
「・・・皆、死地へ向かう覚悟は良いか?」
『俺達はこの時を待っていました!』
『この為に、今、我々はここに居ます!』
『この体になったからには、魂尽きるまで戦います!』
『人間の為、隊長の為、散兵線の花となってやりますとも!』
『我々は人類防衛軍です!』
『全ては、この星に住む、人類の未来の為に!』
『『人類の未来の為に!』』
「・・・分かった。行こう」
覚悟は十分な様だ。
「後、貴方はこれを持って行ってください」
「盾と、・・・鉄球?」
「盾は新金属で作りました。溶鉱炉に入れない限り、この星の物理化学全てで壊す事は不可能です。鉄球のような物は、攻撃対象へ自動追従・撃破後、手に戻って来るようにしてあります。後、破壊対象となる艦のような物には防壁が張られており、戦艦級艦娘の主砲であればその防壁が貫ける事が確認されました。艦に向かって思い切り投擲すれば、貴方なら誘導機能と相まって防壁を貫いて攻撃が出来る筈です。・・・私からは以上です。戦果を期待しています」
「・・・君は、ここに1人なのか?」
明石以外に、人が誰も居ない事に気付いて問うてみた。
「・・・人間は嫌いですので・・・」
「何故?」
「研究の成果を全て奪われた挙句、研究者な艦娘として1人ここに幽閉された様なものです。誰が人間なんか・・・」
「・・・時期が来たら、私の鎮守府に来るか?」
「・・・」
「無理にとは言わないよ。それに最悪、今ここに居る全員が死ぬ可能性も有る。言っていたな、という事を覚えていてくれたらそれで良いさ」
「・・・考えておきますよ。・・・さあ、余り時間的余裕は有りませんよ?」
「・・・と、そうだ、補給が必要なんだが」
「用意して有ります」
『はい、隊長、どうぞ』
「そうか、ありがとう」
隊員達の助けも借りて手早く武装の補給を済ませ、自身に栄養剤を注射した。
自分の体の動きを確認する。・・・片腕が無い以外問題は無さそうだ。
「・・・これで、補給と言うんだから、貴方は人外ですよね」
「それでなければ、あの戦争を生きては居ないさ。生きている隊員は1人だけだしな」
「・・・そうでしたね。・・・ところで」
「何かな?」
「そこの一緒に来た深海棲艦は如何するんですか?」
明石が美賀の事を聞いてきた。
「・・・美賀、如何する?。君がこの戦闘に参加したとて、勝敗に結び付くと私は考えていない。敵の攻撃手段を全て見ておらず、奇策を
「隊長、私は行くわ。貴方が戦うならば、私も戦場で出来る限りの事をするわ」
「分かった、行こう。・・・話変わって、君は海上では艦になる事が必須か?」
「いいえ、隊長を運ぶ為に艦になっていただけよ。如何かした?」
「さっき話していた艦になる艦娘が『海上では艦になる事が必須だ』と言っていたから、君も同様かと思った次第なんだが・・・」
「・・・難儀な体質の艦娘なのね。私はもっと柔軟よ?。この姿のままでも海上に居れて、戦闘も出来るわ」
「そうか」
「美賀さん、で良いんですよね。これをどうぞ。歩兵に救助される人用の対G装備です。着て行ってください。流石に今の服で歩兵に連れて行って貰うのは危険です」
「そう、ね。着て行くわ。有り難う」
「更衣室へ案内します。手早くお願いします」
「分かりました」
美賀が着替えの為、部屋を移動した。
「お待たせ。支度出来たわ」
ややあって、着替え終えて来た。
「今来た服は落下傘も備えています。場合によっては使用してください」
「分かったわ」
「・・・皆、行くぞ」
『了解』
「ご武運を」
「ありがとう」
明石の言葉を後に、隊員達と研究所を後にした。
・・・
研究所から外へ出た。
「では、失礼」
美賀を持ち上げる。彼女が顔を赤くして縮こまった。
「今、私だけで良かった。・・・恥ずかしいわね・・・」
「大丈夫、すぐ慣れるさ」
「・・・そういう意味じゃ無いんだけど・・・」
「え?」
『そう言えば、隊長は艦娘殺しでしたね』
「どう云う意味だ?」
『・・・あー、これも解って無いみたいで・・・』
『ハハ、隊長、相も変わらずで・・・』
隊員達の茶化しにも似た何かだった。
「・・・皆、準備は良いか」
『いつでもどうぞ!』
「・・・出撃!」
全員が推進装置を噴かし、決戦場へと向かう。
「BY、皆の指揮を頼むぞ」
・・・BYからの返事が無い。
「・・・BY?」
{・・・もう、一生無いと思っていたのに、この機会が来てしまったんですね}
「・・・そうだな」
{提督の為に、未来の為に、一所懸命にやらせていただきます}
「頼んだ」
{お任せを!。各員、
『了解!』
歩兵間の索敵済み対象の位置情報共有、作戦参加者の残存数等が確認出来る。
第1次型が居れば、その艦娘とも情報共有が出来るのだが・・・、居ない者は仕方ない。
「加賀、・・・じゃなかった。美賀、周波数合わせを、番号は---だ」
「了解」
「・・・それにしても、新種の金属が黄金色なのか」
『ああ、それの元々の色は、この星で沢山取れる金属と同じ色ですよ』
「えっ?」
『時機を見て隊長に渡そうとして、完成と同時に終戦だったんで渡せていなかった物ですよ』
『その色は隊長にピッタリですよ』
その声に盾を少し持ち上げる。
「そ、そうかn・・・」
『うおっ、眩しい!。光が反射するんでこっちに向けないでください!!。禿げてるみたぃ・・・!!』
「ハゲて無い!!。というか、今は武装中だろうに!?」
『・・・やっぱり、相変わらずだわー^^』
『安心するわぁー^^』
「・・・もう止めようかな、この色・・・」
『気にしてたらハ・・・』
「ハゲてない!」
『え、判断が鈍りますよ、って言おうとしたんですけど・・・』
「え?」
『ふふ・・・』
BYと美賀の笑う声が聞こえた気がした。