「・・・・う、・・ちょう、隊長」
「んぅ?」
気が付くと美賀の膝枕で寝ていた。
「起きたわね。到着して居るわ。皆降りてるわよ?」
「・・・そう、か」
「今、陸と艦を繋いでいるから、降りられるわ」
「ああ、ありがとう」
降りると、遠征に行っているであろう者達以外、鎮守府の皆が待って居た。
片腕を失っている事に驚いている。が、第1次と大淀だけは別だ。
こんな事は今回きり、・・・だと思いたい。
・・・ふと、睦月を探す。・・・居た。睦月へと歩いて行く。
「提督、大淀から、BYを通して事の顛末は聞いています。・・・お疲れ様でした」
睦月が
・・・意識せず、睦月を抱き締めていた。
「あ、・・・如何しました?」
「・・・ちょっと、な」
彼が誰かの名を呼んだ事が頭に残っていたのだろう。何故か、他人事とは思えなかった。
自分と激似の顔だったからかもしれない。
睦月が背中を優しく叩いてきた。
「大丈夫ですよ。ちゃんと居ますよ?」
「・・・ああ」
ややあって、睦月と離れ、皆を見回す。
『むぅー・・・』
『むぅー・・・』
鎮守府の皆と今回連れて来た深海棲艦達で睨み合って居た。殺気は無いが・・・はて?
「どうした?」
『・・・ずるい』
連れて来た美賀以外の深海棲艦達が涙目で言った。
「え?」
『私{(あたし)(俺)}がすでに居るなんてずるいー!!』
「君達は、深海棲艦だろう?」
『そうなんだけどぉ!・・・もうぉーーー!!』
地団駄を踏み始めた。その様子に第1次の皆が苦笑していた。
『
声にの方へ振り向くと、加賀と美賀が近寄って来て居た。
「居たんですね。第3次型として私が・・・」
「生きていたんですね。変異体として私が・・・」
「・・・ああ」
「・・・にしても、その体になって何年なの?」
美賀が加賀に話し掛けた。
「1年少々よ。・・・貴女は?」
「生き返ってから、3年位よ」
「・・・やりました」
「・・・自分自身に対して良い度胸ね。・・・で、隊長とは
「・・・」
「・・・何か言いなさいよ。ハッ!?・・・まさか貴女、そこまで居ながらにして・・・」
「しょ、仕様が無いでしょ!?。ててて提督の前で言う事?!」
「あ!?!」
2人共こちらを向いて、
『聞かなかった事にして!!』
と言って来た。
「え?!、な、何がだ?」
『・・・何でも無いわ』
2人共安心半分、呆れ半分の様子だった。
香取がこちらへ寄って来た。
「ここは別世界、・・・なのですね」
「君にとっては、そうなのだろうな」
「深海棲艦が居る鎮守府なんて、本当に驚きです。・・・そして」
前回会った時には在った腕の方を見ていた。
「・・・そうまでして、今まで貴方は戦って来たんですね?」
「これが、この世界で深海棲艦と戦う、男性の
「・・・この鎮守府の皆が言っていた事は、本当だったんですね」
「・・・ところで」
「何でしょうか?」
「先日、この鎮守府から出て行った巨大ロボットについて、何か知っているかな?」
「あのロボットかは判りませんが、私の居た世界で噂だけは聞いた事が有りました。艦娘以外に深海棲艦と戦っているロボットが居る、と云うのを・・・。ただ、そのロボットと共闘しても、その戦場に残るのはロボットだけ。艦娘は1隻でも浮いているなら良い方だ・・・との話でした。でも私が知っているのは今言った事位ですよ?。建造された後で比較的直ぐに戦場に出て、この世界に居たので・・・」
「・・・そう、か。後は、この後君はどうする?。ここから出たロボットは元の世界?に帰ってしまって、君は居ると云う状況なのだが・・・」
「提督の貴方が良しとするならば、私もここで働かせてください」
「・・・歓迎しよう」
「有難う御座います。・・・練習巡洋艦、香取、これより貴方の指揮下に入ります」
香取が姿勢を正し敬礼をして来たので、答礼する。
「指導、教導ならお任せください。・・・艦と為れる艦娘限定ですけれど・・・」
「今の所、今回連れて来た深海棲艦1名だけだな」
「・・・空母の指導、出来るかしら・・・」
「他の事でも構わないよ。ここの生活に関係する事でも良いぞ?」
「・・・そうですね。見つけます」
「ええっと、提督で良いのかな?」
声に顔を向けると、見知らぬ艦娘?が目の前に来た。
『提督、建造を頼まれていて、それが完了して出てきた艦娘です』
妖精が耳打ちして来た。
「・・・ああ!。そうだったな」
「秋雲、着任!。提督よろしくね!」
手を差し出してきた。握手で良いのだろう。
「秋雲、よろしく」
互いに手を握り握手を交わす。
・・・握手した手をなかなか放してくれない。
握った手の感触を確かめるように手を揉んいる。
「提督ぅ、絵の研究の為にさ、この後2人っきりにならない?」
「絵?」
『
『秋雲、あんたも
『ぶー!ぶー!』
「あ~・・・やっぱり、何でも無い、です。はい・・・」
秋雲が苦い顔をしていた。汗がダラダラと噴き出していた。
「皆、如何したんだ?」
「・・・提督はそのままで居てください」
「・・・そう、まだそのままで・・・」
「隊長は変わってない。これは好機・・・そう、
連れて来た深海棲艦達がなにやら呟いている。
『だが、私は指輪を貰っていたりするのだった~』
『え?!。あ、あ、あああぁぁぁーー~・・・』orz
「もう、北上達ったら!。・・・大丈夫だよ、艦娘用だから」
『え?、か、艦娘用?』
連れて来た者達がまじまじと指輪を見ていた。
「・・・まさか貴女も?」
「ええ、そうよ」
「・・・それで、アレだなんて・・・流石私ね」
「・・・もう頭に来ました!」
加賀が美賀に殴り掛かった。ブンと空振りの音が鳴った。
「ちょっと!?。もっと心を広く持ちなさいよ!」
「何よ!?。私の癖に!!」
・・・何やらいざこざが始まったが、放って置いた方が良さそうだ。
「ね。秋雲、言った通りだったでしょ?」
いつの間にか、秋雲の近くへ青葉と衣笠が来ていた。
「うん、男性だなんてやったね!」
「青葉~、変な事教えないでよ?」
「大丈夫よ、ガサ。ゆくゆくは娯楽本や薄い本を書いて貰うだけよ~」
「本・・・う、薄い本?・・・良いわね・・・」
「でしょ?」
『うっふっふ・・・』
青葉と衣笠が
「その為には先ずこの秋雲が、男性の研究を・・・」
『駄目よ!。私が先よ!!』
「・・・ええぇー~・・・」
秋雲が残念
「秋雲に質問だが・・・」
「何々?。提督の為だったらなんだってしちゃうよ?」
私の問いに対する対応がやけに良い。
「
「・・・何言ってるのさ?」
質問に対して呆れている様だ。
「そうか、為れないか。・・・そうだよなぁ・・・」
「為れるよ?」
「・・・え、為れる?」
「じゃ、ちょっと行って来るから、ちゃんと見ててね~」
秋雲が艦の係留する場所の近くまで行くと、香取よりも小さい艦が突如現れた。
「じゃ、1発
秋雲がそう言うと、砲塔が海へと動き、
・・・砲撃音
砲口から火を噴いて飛び出した弾が飛んで行く。放物線を描き、海へと落ちて行った。
着水箇所で水柱が上がっていた。
「撃つだなんて・・・これは、指導が必要ですね」
香取が顔を引き
「香取、この鎮守府に限るかもだが、今回の秋雲と同じ様に、君と同じ様な艦娘が建造される様だ。その時は習熟だけでも良いから、訓練を頼んだぞ?」
「はい、お任せを」
良い笑顔だ。
「痛!?。ちょっと、香取、痛い、痛いって!。何するのさぁー!?!」
香取が、秋雲に近寄ると、秋雲の耳を掴んで屋内へと連れて行った。
「私も、これからここでよろしく」
美賀が片手を出してきた。握手だ。
「・・・ああ、よろしく」
出してきた手を取り、握手をした。
・・・どこかで腹の音が鳴った。
美賀が頬を染めた。
「早速だけど、食事をしたいわ。胃に穴が開きそうなの」
苦笑しながら言っていた。
「今日の当番は・・・」
{間宮です}
「間宮!。今から、今日来た人数分の食事の用意を頼むよ!」
「はい!やって置きます!。潮、榛名、手伝ってくれる?」
「はい」
「はい、手伝いますよ」
「・・・では、用意が出来次第放送で呼びますので、待っていてくださいね?」
「分かりました」
美賀の応答に3人が厨房へと向かって行った。
「隊長、さっきの3人、人間なの?」
「間宮と潮は第0次。榛名は第3次だ」
「・・・隊長って何語を喋っているの?」
「自分自身の標準語で、意思の疎通・伝達が出来るだけだ。文字は要学習だな」
「・・・やっぱり隊長は宇宙人だったのね」
「え、知っていたのか?」
「隊員だった艦娘で、知らない娘は居ないわよ?」
「そう、だったか」
「隣人が人外なのは戦前まあまあ有る話だったから、今のは確認しただけよ」
・・・バレていたとは知らなかった。
「ところで、あの香取と言う娘も艦に為れるの?」
美賀に訊かれた。
「ああ、為れるぞ」
「・・・私も、艦の姿に慣れる為に、香取に教えを乞うわ」
「ああ、方位盤の見方を教えて貰うと良い」
「むぅ・・・」
「痛た!!。悪かったよ、スマン!」
「もう・・・」
美賀が苦笑していた。
その後、美賀は香取の後を追って行った。
・・・思い出した事が有った。
「大淀ー!」
「はい、何でしょう?」
大淀が近くに来て言った。
「私がここを出発して何日経過した?」
「3日です」
「・・・返事を聞きに行かないとな」
「・・・ああ、そうでした」
大淀と2人で牢へと来た。
「・・・」
捕らえた深海棲艦が無言で居た。タ級が近くに居る。
「返事を聞きに来たぞ」
「・・・貴方は、良いの?」
「何がだ?」
「私がここに居る事よ」
「・・・良く無ければ、ここに来る前に、君は心と体が分離していた」
「・・・」
「ねえ・・・提督、この3日間、素行に問題無しよ。私としては、居て欲しいわ」
「・・・どうする?」
「・・・やるわ」
決意の色を見せた。
「そう、か。・・・では、決まりだ。・・・名は?」
「・・・ハチ、と呼んでください」
「はち・・・潜水、ハチ、イ、8」
大淀が何かを呟き始めた。
「・・・私の名前であり、親友の艦娘名です」
大淀の呟きにハチと名乗った深海棲艦が答えた。
「・・・何故、その艦娘を知っているんです?」
「共に将来を語り合い、戦争で死んだ友人です」
「そう、でしたか・・・」
「私の力の限り、やります」
「・・・無理はするなよ?」
「・・・はい」
「・・・タ級、
「分かったわ」
タ級に言い、ハチに付いている枷を全て外した。
「よろしく、ハチ」
「よろしく、です」
互いに握手を交わした。
「さて、部屋はどうするか・・・」
「私の部屋で一緒に過ごすわ。ほとんど、交代でどちらかは居ない、と思うけどね」
「今日、数名連れて来たから、もう少し楽が出来ると思うぞ?」
「連れて来た?!」
タ級が驚いた。
「ああ。・・・と、言っても変異体だ。純種は君達2名だけだ」
「・・・そう、よね。・・・分かったわ、日程をその者達とも話して調整するわ」
「そうしてくれ。あっと、顔合わせを・・・」
「美賀さん以外はここに来るように言ってありますよ」
「何時の間に?」
大淀の対応がやけに早い。
「え、気付いてなかったんですか?」
「何を?」
「今日鎮守府に来た深海棲艦は、美賀さん以外、第1次艦娘の変異体だったんですよ?」
「・・・・・えっ?、第1次?」
「・・・提督は、その時戦闘中でほとんど考える余裕が有りませんでしたね」
「あ、そ、そうだったのかー・・・」
大淀が呆れている。
「提督、段々と気が緩んできてませんか?」
「・・・そりゃあ、皆が居ると云うのは・・・良い事だからな」
「・・・失言でした。ごめんなさい」
「良いさ。10年以上の付き合いじゃないか」
「・・・有難う御座います」
「思わぬ強敵が!。10年だなんていつの間に?!・・・」
「ふふん!」
タ級の言葉に、大淀が自慢気に鼻を鳴らした。
「あー、・・・でも艦娘の君は苦手だ」
「・・・がびーん」
「・・・ああ、・・・艦娘の・・・ねぇ」
タ級が目を細めて大淀を見ていた。
「長い付き合いでは居ますけど、提督?」
大淀が訊いて来た。
「何かな?」
「・・・貴方の体、貴方だけでは無かったのですね」
「え、気付いていたのでは?」
「私は提督が火の妖怪に近い何かだと思っていたんです」
「火を体に取り込んだ時は見ていたんじゃ?」
「それをしている最中は、服の裏等に隠される事をされていたので、見えてませんでした」
「後は、前に体から出した時は・・・」
「AIとして消滅していた時ですか?」
「・・・そうか、大淀が見たのは今回初めてだったか」
「タ級は見た事が?」
大淀の問いに、
「私は無いわ。でも、響から聞いていたわよ。提督の体から火の鳥が出た、ってね」
タ級が答えた。
「そう、でしたか・・・」
「響から聞いてはいたけど、
「さて!、・・・後は、ロボットの所に行く必要が有るぞ」
話を遮って次の所へ向かう様に促した。
「そうでしたね。行きましょう」
「では、タ級、後は頼んだぞ」
「分かったわ」
去り際、タ級とハチの談笑が聞こえた。
工廠に着くと床にのの字を描いていた明石が、こちらを見ると涙を流して抱き付いて来た。
「おっと、ロボット、どうした?」
明石を抱き留めて訊いた。
「・・・巨大ロボット、取られちゃいました。・・・折角、提督用に作ったのに・・・」
「良いじゃないか、私ではない他人が乗っていたからこそ、私がここに帰って来れたんだぞ?」
「・・・」
「それに、良い物も見れたしな」
「・・・何をですか?」
明石が私から離れて言った。
「救いが無かった男性に、唯一の救いが舞い降りて来た。そして、それを護りきったのが今回君が作った物の成果だ。作った物がその者達に笑顔を届けた。私も含め、本当に助けられたんだぞ?」
「・・・そう、ですか」
「ああ」
「・・・で、戦闘終了後に、突然居なくなっちゃたんですよねー・・・」
「そうだなー・・・」
「空間転移だなんて
「もう1回作れば良いじゃないか」
「もう、あれ用の金属が
「・・・そう、か」
「・・・作った物、良い事、したんですよね?」
「ああ。誇って良いぞ」
「・・・はい!」
明石が元気を取り戻した様子だ。良い顔をしている。
「・・・で、話し変わって、提督」
「何かな?」
「今度の盾の色はどの様にします?」
「・・・戦時中の通常色で・・・」
「え、ちょっと聞こえなかったなー?」
「通常色・・・」
「ああ!!『隊長時の通常色』ですね分かりました!やっときます!」
「・・・あの・・・」
「皆まで言わずとも、いつもの色ですよねー!!。じゃ、塗装しておきますねー」
「・・・あ、ああ。・・・頼んだ」
明石に押し負けてしまった。
「ぷ・・・、くくく・・・」
そして、大淀が口を押さえて笑っているのが見て取れた。
「・・・」
・・・やはり、何となくではあるが、艦娘の大淀は苦手だ。
「・・・あ、ロボット」
思い当たった事が有り、明石を呼び止めた。
「おっと、まだ何かあります?」
「あの巨大ロボットの中は、彼1人だけだったのか?」
「そうです」
「・・・誰かと話していたような雰囲気だったが・・・」
「AIだと思います」
「AIか・・・」
「何かAIを入れる基板が在ったんです。・・・でも・・・」
「でも?」
「・・・提督似の男性が来た途端にAIが入り込んでいたんです。そして取り付く島も無い位、あっ、という間に出発してしまったので、それが『AIだった』としか判りません」
・・・その日の夜。寝ている時、夢を見た。
男性と女性1人ずつ、そして大きなロボットが1体
『誰も居ないな』
『居ないですね』
『・・・ここで、暮らそう。誰も居ない、この島で』
『はい』
『・・・君は、2人だけの生活だが、それで良いか?』
『・・・私は、私だけでは在りません。貴方の守ろうとした皆が私です』
『・・・君と、君達と出会えて・・・良かった』
『私もです。--さん』
『・・・○○、行こう!』
『・・・はい!』
『ありがとう。・・・さようなら、ロボット』
『さようなら』
『さようなら』
男性と女性が手を繋ぎ、ロボットから遠退いて行く。
見えなくなるまで2人を見続けたロボットは大地を割り、割った箇所へ入り込む。
ロボットが全身まで見えなくなると割れた大地が塞がっていく。
ロボットは埋まり、見えなくなった。
・・・・・・ん?!
『
ガバッと上半身を起こして突っ込みを入れていた。
「・・・ん?」
「え?」
大淀が隣で寝ていた。部屋を見回す。・・・自室だ。
「・・・大淀、何で隣に寝て居るんだ?」
「・・・AI」
「え?」
「あの巨大ロボットのAI、平行世界の私だったようです。夢で何度か見てたんですよ。提督にそっくりな方と巨大ロボットのAIとして話している自分を・・・」
「・・・」
「今回、初めて男性に救いの有る夢を見ました。・・・良かった」
大淀が深く安堵の息を吐いた。
「・・・そう、か」
「はい」
「・・・ところで・・・」
「はい?」
「何故、ここで、寝て、居るんだ?」
今度は細かく区切って大淀に問い掛けてみた。
「・・・ナンデデショウ?」
大淀が目を点にして言った。
「・・・ロボットの仕業か」
「・・・そうみたいです」
『・・・』
今回、明石に振り回された。あの巨大ロボットもだが、・・・居てこそだった。
皆を守れて良かったと、この鎮守府での生活を守れて良かったと・・・本当にそう思えた。