『提督、建設ができたよ』
「早いな」
『と言っても、そっちと比べれば掘っ立て小屋を作っただけだよ。まだ時間が掛かるよ』
「こちらからの移動を開始させる。それだけの居住性はあるか?」
『あるよ』
皆に拠点の移動を開始させた。
「提督はどうするの?」
睦月が質問してくる。
「拠点移動の完了後少しの間残る。誰か来るかもしれない」
「・・・なるべく早く来てね」
「勿論だ」
{提督、超音速でこちらへ向かってくる飛行物体があります}
荷物、施設道具の移動が全て完了した後の事だった。
外に出ると同時に空が光った。高温の炎の熱と光が体に降りかかる。咄嗟にサングラスを隠し、
炎を体に取り込む。
体の中の羽根が眩しいほどの光を輝かせている。輝きの中に地獄の炎を見た気がした。
{提督、これは大量破壊兵器です。体に異常は有りませんか!?}
「特に何も無いようだ。何だそれは?」
BYから先ほどの爆弾についての情報が流れ込む。
「避難していなければ皆即死だった・・・」
{前回の艦娘による強襲の後、逃げた艦娘達は全員深海棲艦達に撃沈されたとの事です。
その報復行為だと言っています}
「沈没の原因は私の所為という事か・・・」
{艦娘を扱う者が艦娘同士で死闘を行わせるなど本来条約で禁止されています。
今回のこの行為も有ってはならない事です。
意味無しのようですが本部へ抗議をしておきます}
「・・・頼む」
『てい、とく』
イムヤの声が聞こえる。
「・・・イムヤ、どこだ!?」
海の上を漂っているイムヤが居た。
「心配で見に来たの。そしたらあの爆発が。あれが見えた後で体が動かなくなっちゃった・・・」
「早く治療施設へ連れて行くぞ。しっかり掴まってくれ」
新拠点へ行く途中、イムヤが時折、血を吐いていた。
{途中の山に助けられたようです。汚染はここ一帯には及んでいません}
「そうか、良かった・・・」
新拠点に着いて、BYの言葉に安堵する。
「提督、イムヤの事だけど、治療しても、回復の見込みがほぼ無いです」
睦月が言う。
「そうか」
「・・・まだ、仕掛けてきた鎮守府の場所が分からないの?」
睦月が怒気を孕んだ声で言う。
{すみません。今回、前回共にデータが出てきません}
「今回提督のみならず皆死んでいたかもしれないのに、何にも出来ないなんてぇ~~~!!」
睦月が怒声を上げる。その後涙を流し嗚咽を漏らす。
「落ち着け、睦月」
睦月を抱きしめる。
「睦月、今はまだ待っていてくれ。頼む」
「・・・うん、うん・・・」
しばらくして、タ級が入って来た。イムヤを背負っている。
「提督。イムヤの素体を持って来たよ。天恵かな?」
「そうなのか?」
「提督、第3次では艦娘が重複したらね・・・」
睦月から指導を受けた。
妖精達から呼び出しを受けた。
『私達の生産設備が稼動できません』
「なぜ?」
『私達の設備は本部の許可が降りないと動かないのです。移転をした為に許可が必要なんです』
{現在、本部はここの設備の稼働を認可する事が出来ないと言っています。
すまない、とも言っています}
『この島で採掘可能な物で資材を何とかします。でも半年ぐらいが限度です』
「そうか」
潮を呼び出す。
「食料の生産を頼みたい」
「今やっていますが、もっと拡張するという事ですか?」
「そうだ。それと全員へ資材消費の禁止を通達してくれ」
「・・・私達は人間にとって嫌われ者になってしまったんですね・・・」
「極一部の人間には。・・・と、私は思いたいな」
「・・・伝令に行ってきます」
「頼んだ」
人間の男が拠点にやって来た。
「何の用かな?」
「ここの艦娘を1人頂きたく参りました」
「断ると言ったら?」
「まだ貴方達が生きていると、再度攻撃の必要があると報告しておきます」
その言葉に艦娘達が砲を向ける。
「おっと、私を殺したらすぐここへ正義の鉄槌がきますよ~?」
「・・・分かった。少し待っていてくれ」
「提督!?」
私を非難してくる艦娘達を手で制する。1人でイムヤの元へ向かう。
途中、イムヤの素体を担いで行く。
イムヤの休んでいる部屋に入る。
「提督・・・」
「イムヤ、体を入れ替えるぞ。良いな?」
「・・・うん。どうせ今のままじゃ働けないし、やるわ」
私とイムヤ、私と素体、イムヤと素体。それぞれ腕・手を繋ぎ三角形の輪を作る。
イムヤと素体が輝く。輝きが収まると素体が体を起こす。
「体が鈍った感覚ね。でも、気分が良いわ」
「そうか、良かった」
イムヤの頭を撫でる。嬉しそうだ。
素体となったイムヤを担ぐ。
「それをどうするの?」
「艦娘が欲しいという輩が来ていてな、この素体を渡すというのが私の魂胆だよ」
「不味いんじゃないの?もう動作不良の体よ?」
「何とかして見せるさ」
「う~ん・・・?」
イムヤが不安がる。
男へ素体を見せる。男の目に映る素体を新品同様に見せる細工をする。
「ほほぉ、いい素体ではありませんか。」
「どうだ?」
「ええ、では取引成立ということで」
「何の取引だったのかな?」
「・・・私がここの情報を漏らさない事です」
「それが貴様の限界か?」
「ええ。そうです」
「そうか」
「では、私はこれで失礼します」
男はすぐにこの島から離れて行った。
・・・最後、男の姿がぼやけた様な気がした。
「正義とは何だろうな・・・」
「提督・・・?」
「私から見れば悪だ。なのに・・・」
・・・宇宙人の私には、人間の正義が分からない。
隣に居た古鷹が私の頭を胸に引き込む。
「提督。私達は提督が正しいと思っていますよ」
「・・・」
「貴方の下に集う艦娘全員、貴方の正義に付いて行きます」
「・・・有難う」
ヲ級が拠点近くに来た。敵意は無い様で前回の個体のようだ。
「また、ヲ級が来ましたね。訓練相手になってくれて助かるわ。でも今は・・・」
加賀が心配の声を漏らした。
ヲ級が突然、殺気を出し、真後ろを向き艦載機を発艦させた。何かに気を取られている。
「実弾を装填しろ!。対空迎撃戦用意!」
私が声を上げるのと同時に遠くの空からきらりと光る物体が高速で近づいて来るのが見える。
「攻撃対象はヲ級本体とその艦載機ではない!超音速機を落とせ!」
サングラスを掛けながら指示を出す。
空に飛び上がり、ヲ級を援護するように前に出て航空機を撃墜していく。
しかし敵を捌ききれずヲ級が被弾していく。ヲ級が海上で膝を付く。
「提督、私達の艦載機では追いつけません!。機銃での迎撃がやっとです!」
鳳翔が言う。
「何でも良い、敵から攻撃させるな、被弾するな!」
第1波の攻撃が終わらないうちに第2波が来る。
しかし第2波は第1波の敵機を打ち落としていった。
『聞こえますか?こちら飛鷹。私に航空機の撃墜は任せて、私の護衛をお願い。
周りが敵だらけなの!』
サングラス上に飛鷹の現在地が表示される。
「今行く、持ち堪えてくれ!」
『頼んだわよ。英雄さん!』
「勿論だ!」
飛鷹の居る場所へ行く。艦娘1人が他の艦娘全員から攻撃を受けていた。
{攻撃を受けている艦娘が飛鷹です}
BYが言う。飛鷹に近づけないよう、バルカン砲を当てて牽制をする。
隙を見て飛鷹を自分の体と盾の間に挟み、抱えて急速後退する。
「助かったわ、神様!」
「気を緩めるな、まだ戦闘は終わってない!」
「ええ!」
{敵、後退して行きます。こちらの重傷、死傷者はいません}
時間は掛かったが襲撃して来た艦娘の撃退が出来た。
「今回は助かった。有難う」
「そう言ってくれると嬉しいわ。改めて第1次後期の飛鷹よ。これから宜しくね」
飛鷹と握手する。
戻る途中でヲ級が海上で横になって漂っていた。
ヲ級に近付く。息も絶え絶えの状態だ。
「て・・・い、とく?」
「!?」
ヲ級を抱え起こす。
「ていとく、ごめんなさい。また・・・」
「また、にはさせない・・・」
ヲ級を抱きしめる。体の中で輝いていた羽根がヲ級を包み込む。
光が収まると吹雪を抱きしめていた。
「・・・あ、まだ生きてる?」
「・・・吹雪」
「提督、ごめんなさい。あの時、意地を張っちゃたんです。ごめんなさい」
言いながら吹雪が泣き出す。
「いいさ、こうして戻って来たんだ。帰ろう」
そう言って頭を撫でてやる。
「・・・はい!」
良い返事だ。
「ねえ、提督」
拠点の損傷箇所の修復中に飛鷹が話し掛けてきた。
「何だ?」
「最近、貴方が誰かを殺したって噂になってたわよ。本当?」
「断じて、そんな事は無い」
「どこかの鎮守府で最近提督になった、っていう男性が行方不明になったのよ。
それで私が、他の艦娘達と一緒にここを攻撃するように仕向けられたんだけど、
私が貴方だったと知って、反旗を翻したのよ?。危うく死にそうになったけどねぇ・・・」
「・・・男が数日前に、ここに来たな。!?、もしや・・・」
イムヤの素体を渡した男が思い浮かぶ。
「その男性の可能性が高いわ」
「・・・他の第1次達に確認を取ると良い。私達はやっていないぞ?」
「一応、顔の照会を兼ねて話してみるわ」
暫くして、飛鷹が戻って来た。
「ここに来た男の人と行方不明者の顔が一致したわ」
「・・・我々が生きている事は、敵対している者達に始めから筒抜けだったのか・・・」
「そうみたいね。・・・提督、私はここに残って貴方を支えるわ」
「良いのか?、ここに居ては、死を待つのみだぞ?」
「・・・第1次にとって、貴方は今も神様よ。貴方の為ならば、本望よ」
「・・・有難う」
「・・・それはこっちの台詞よ」
飛鷹が小さく言った言葉が聞こえなかった。
「?、今なんと・・・」
「何でも無いわ!、宜しくね!」
「あ、ああ、宜しく」
飛鷹と吹雪の1件以降、爆撃機がここに来て爆弾を落とそうとするのを止める日々が続いた。
吹雪の索敵能力が高いようで日中は吹雪に任せることになった。
乗っていた妖精を1人捕虜にする事が出来た。何故か死んでいるような目をしている。
「私と一緒に働く気はないか?」
その言葉に妖精が涙を流す。
『良いのですか?ここを破壊しようとした私で?』
「勿論だとも」
『・・・うれしいです、是非に!』
妖精ははしゃいでいた。元気を取り戻したようだった。
ロボットの様子を見に来た。
最初は何を作っているか判らなかったが、もう一方の腕を作成していたようだ。
『丁度良かった。このロボットが取り付けようとしていたんですが、
自分だと上手く付けられないみたいです。手伝ってあげてください』
「勿論だ」
もう片腕の方は取り付け箇所の損傷が酷かったようで、その修理が必要だった。
ロボットがどこを・どうしたいか、を伝えてくるので、その通りに直していく。
『はぁ~、上手いもんです。私達では、手が付けられない筈ですよ』
妖精達が感嘆の声を上げていた。
「伊達に、このロボットの整備をしていた訳じゃ、無いさ」
整備しながら妖精たちに言った。
・・・ロボット、と私が言うと、決まって不満を漏らすのは何故なのだろうか?。
修理が完了したようで、ロボットが腕を取り付け始めた。
・・・ややあって動かし始めた。
『もう大丈夫。ありがとう』
ロボットが紙にこう書いた。
「良かったな。・・・さあ、注射の時間だぞ」
そう言って大きめの注射器を取り出すと、ロボットがブンブンと両腕を振り始めた。
「水分補給も兼ねてるぞ。何日か摂取して無いだろう?。諦めろ」
観念したようで、大人しくなった。(や、やるならいっそ思い切り、イァーーーッ!)