{提督、艦娘からの救難信号が出ています!}
BYが地図を表示し地点を示す。
「提督、ここからでは艦載機の航続距離が足りません」
「そうか、私1人でも行って来る」
「危険です。敵が何人居るかが分かりません」
「私は助けを求めている者を見殺しには出来ない」
「・・・ご武運を」
救難信号の地点へ行くと間宮らしき艦娘が一人倒れていた。少しずつ沈んでいる。
「大丈夫か!?」
そう言って抱きかかえる。
「あ・・・、歩兵。来てくれたんですね」
{注意、艦娘が撃ってきます!}
「しっかり掴まって!」
間宮が掴まってくるが力が弱々しい。
体を支えるのに左手で持っていた盾を左腕で持つようにして間宮を支える。
{警告、妨害装置です。ミサイル照準のロックが出来ません}
「こんな時にか!?」
{空母艦娘は居ません。逃げることを推奨します}
「そうする」
右手の銃で牽制しながら、大急ぎで逃げる。間宮に意識を向けている為1発当たった程度だった。
{追跡はありません。主力を大破させたようで慌てて撤退しています}
「そうか、危なかった」
「・・・」
「おい、死ぬな!、今連れて行くからな!」
治療が間に合ったようで間宮が一命を取り留めた。しばらく安静が必要のようだ。
治療が終わってから少し経った後で間宮が目を覚ました。
「・・・あの、有難うございました」
「生きていてくれて良かった・・・」
「私は本部からここへ移動している途中だったんです。護衛の艦娘達が私を撃って来て・・・
それで救難信号を出しました」
「本部から来た?」
「はい、本部は今何者かの手によってここへの支援が正常に行えない状態です。
私と護衛の艦娘に支援物資を持たせてここへ補給を、と役目を任されたのですが・・・」
「その護衛に撃たれた、と?」
「・・・はい。私が持っていた補給物資は全て海の底へ行きました。それに・・・」
間宮が掛け布団を取る。ズボンの膝から下の部分がヒラヒラしていた。
「もう、歩けません」
間宮が涙を流す。
「間宮、君は第3次艦娘ではないのか?」
「私は人間艦娘です」
「・・・そうか。・・・間宮、ここで可能な限り働いて貰うぞ?」
「こんな私で良いのですか?」
「炊事・洗濯・書類仕事、どれか出来るだろう?」
「・・・慣れるまで大変ですが、料理が得意です」
「では、それを任せた。私のところでは奇抜な料理を作る者が多くてな・・・」
「奇抜とは?」
「・・・栄養剤をたっぷり入れたお茶漬けとか?」
「・・・料理なんでしょうか、それ?」
「本人は料理と言い張ったぞ?」
「・・・料理当番やらせていただきます」
「任せた。・・・といっても、まだ安静にな?」
「はい」
救助した当日、間宮が出された料理に顔を真っ青にした。あ・・・口から出した。
衣笠製の栄養剤入りカレーだった。元隊員のほとんどが吐き出しそうになっていた。
「提督、艦娘がこちらに来ます!」
索敵担当の吹雪が声を上げる。
「数は?」
「2隻です」
「2人か?」
「はい」
「方角は?」
「向こうです」
吹雪が指差す。
『こちら青葉、聞こえていたら、私達の保護を願います』
吹雪の報告のすぐ後で、ここの艦娘ではない声の無線が入る。
「・・・了解した。今から護衛に向かう」
青葉と名乗った艦娘へ通信を行った。
「提督、良いのですか?」
鳳翔が警戒している声で聞いてきた。
「鳳翔、念の為、戦闘機と爆撃機の発進を頼む。攻撃してきた時は頼むぞ」
「分かりました」
鳳翔が頷いたのを見て、武装して吹雪の示した方向へ向かう。
青葉の居る所まで辿り着く。
「青葉、これより私の拠点まで誘導する。そこで保護する」
『分かりました』
青葉達への警戒と周辺警戒を行いながら拠点へ辿り着いた。
途中何事も無かった。
「有難うございました。助かりました」
青葉が言う。二人共ここで不和等の工作活動をする気満々の心持ちだ。
「卯月です。よろしく」
「改めまして、私重巡青葉です。少しの間ですがよろしくお願いします」
青葉達が握手を求めてくる。
「・・・よろしく」
皮肉たっぷりで言ってみた。まず卯月と握手する。
続いて青葉と握手をした。途端に青葉の顔が赤くなる。ん?青葉の頭が真っ白になった。
「女性の提督だったみたいですね・・・」
「そうだね・・・。しょうがないにゃ・・・」
鳳翔と睦月がため息をつきながら何か言っている。
「あ、あ、あの!。もう一度改めまして、重巡青葉でう!・・・うぅ。貴方の指揮下に入ります。不束者ですがよろしくお願いします~!」
青葉が頭を下げた。・・・あれ?、敵意が無くなってしまった。
「よ、よろしく・・・」
「提督、戦時中に言った様に、男だという自覚を持ったほうが良いですよ」
睦月が口を尖らせて言う。
「青葉の様子と何か関係が?」
「ふんだ!」
そっぽを向かれてしまった。
「あのあの!カメラに写ってもらっても良いですか?」
「勿論だ」
私にカメラを向けて撮影をしている。角度を変えて何度もシャッターを押された。
「いや~、早速現像させてもらいます~」
「青葉、君は自分の鎮守府へ連絡したのか?」
「・・・ええ、してあります」
「そうか」
「でも、私はここに残っても良いですか?」
「手続きとかは大丈夫か?」
「・・・一旦戻ってからまた来ますね」
「そうしなさい。その時は歓迎するぞ」
「有難うございます」
青葉が衣笠を見つけて話をしていた。衣笠も話が合う様で、青葉については問題無い様だ。
「睦月、卯月の方だが、話をされても話半分で聞いておくよう、皆に通達しておいてくれ」
「・・・卯月は信用なりませんか?」
「助けたい者が居るから従っている・・・と私は見た。命令は忠実に実行に移すとも見ている」
「分かりました。伝えておきます」
卯月は私の見立て通り、我々の不和を狙っていた。通達をしていたのが功を奏した。
卯月が足並みが乱れない事に焦りを感じている様だ。
青葉と卯月を呼び出した。
「卯月、もう分かっていると思うが、言うだけ無駄だぞ?」
「・・・」
「もう良いだろう?」
「良い訳無い!」
卯月が怒鳴る。
「このまま帰ったら、卯月の司令官がぁ~・・・」
卯月が泣き崩れる。
「・・・提督、この卯月は私が居た鎮守府とは別の所属なんです」
「そうか。・・・青葉、君の鎮守府へ案内してくれるか?」
「今日、迎えの艦娘達がこちらに来ます。それまでお待ちください」
「・・・分かった」
「提督、艦娘が4隻こちらに接近中です」
吹雪が方位を指差す。
「全員に戦闘準備の指令を送ってくれ」
「了解しました!」
警報が鳴る。皆が慌ただしく艤装を身に着ける。空母組は発艦を急いでいる。
「先に行っているぞ!」
鎧を展開して飛び始める。BYのレーダーでぎりぎり捕捉している距離まで来ている。
『すぐに追いつきます!』
「任せた」
艦娘4人の元まで行った。全員が私を見つけて呆然としている様子だが・・・はて?
「何か用かな?」
『あ、あ、青葉と卯月の保護をして貰ったという事で帰還の道中の護衛を任された艦娘です』
好意を感じられる。
「そうか、誘導する。付いて来てくれ」
「は、はい!」
声で聞こえて来た。
「鳳翔、加賀、大丈夫のようだ。航空機の発進中止!」
『了解』
『提督、私は~?』
「ああ、すまない。飛鷹、君もだ」
『了解』
飛鷹が拗ねた声で了承の声を言っていた。
4人を連れて拠点まで来た。睦月、如月、古鷹、加古、衣笠、飛鷹を交えて話をしている。
連れてきた艦娘達が地団駄を踏んでいた。楽しそうだ。
「青葉、卯月、行くぞ」
「はい」
「いやだ!」
青葉は頷くが卯月が嫌がる。
「・・・卯月、私達は失敗したの。もう終わったのよ」
「・・・」
青葉の言葉に卯月がうなだれる。・・・青葉、君は何もやっていなかったような?
「卯月、ここに残るか?」
「・・・」
「君にとって居るも地獄、戻るも地獄か?」
「・・・」
卯月にとって今、絶望の真っ只中に居るようだ。
「卯月、ここに残りなさい」
「・・・」
「戻っても地獄なら、ここに居るべきだ」
「・・・」
卯月がコクリと頷いた。
「睦月、行ってくる」
「1人で、ですか?」
「如月を連れて行く。そんなに防衛を疎かに出来ないだろう?・・・留守を頼んだ」
「・・・そうですよね。了解しました」
如月と青葉が戻る為の艦娘達に話しかける。
「戻るのは青葉だけになった。君達の鎮守府には2名共に戻ると口合わせを願えるか?」
「・・・分かりました。そう報告しておきます」
「如月、卯月の変装をしてくれるか?」
「・・・カツラでもする?」
「・・・私に知識が無かった」
「提督、こういうのはですね・・・」
青葉が知識を持っているようで、如月を変装させていた。青葉?、そこまでして良いのか?。
道中、深海棲艦の戦艦級を見つけたがこちらを見つけると逃げてしまった。
「また出ましたねぇ・・・」
「人型の個体がこんな頻繁に出没するなんて・・・」
「今、英雄さんが居てホントに命拾いしたよねぇ」
「・・・場所が分かったことだし、そろそろヒーローさんの元へのお引越し始めちゃう?」
「良いねぇ~。でも、あたしと同名の艦娘居たよねぇ。・・・あっ、第3次だったか。英雄さん、行っても良い?」
「君達の今の提督が許せば、かな?。手続きはちゃんとやってからにしないと、こっちもあっちも困るぞ?」
「承諾の言葉いただきました!キタコレ!」
皆がはしゃいでいた。・・・本当に良いのだろうか?
青葉の提督の居る鎮守府に到着した。
「あの、鎧を装着したままで行くのですか?」
道中を共にした、第1次艦娘が言った。
「私は、君達の提督を信用していないからな」
「・・・そうでしたね。では、提督の居る執務室へご案内します」
道中、私を見て興奮する艦娘ばかりだった。
「お帰・・・え?歩兵!?。・・・英雄さんだったのぉ!?」
ここの艦娘がノックをしてその艦娘共々執務室へ入ると、
この部屋で座っていた女性が私を見て驚いた。
「質問に答えてもらう」
「・・・はぁ、とりあえず座ってくださいな」
髪をガシガシ掻きながらこちら側の椅子に近づいてくる。私には好印象を持っているようだ。
お互いに応接椅子に座る。
「艦娘達は席を外して頂戴」
「卯月も頼む」
「分かったわ」
艦娘全員が部屋を出て行く。
「あれ、如月でしょ?」
「そうだ。卯月の変装をしてもらった如月だ」
「似てるから問題ないか・・・。まず私の名前は足柄よ」
「・・・艦娘にそんな名前が居たような?」
「居るわ、私は戦時中の第0次、プロトタイプよ」
「そうか」
「貴方については・・・言わなくとも長年ここで提督をやっていて知っているから良いわ」
しばし沈黙が訪れる。
「さて、卯月のことだが」
「卯月はここに送られて来たの。元々は男の提督の艦娘だったと言っていたわ。
貴方、提督を始めたのよね?」
「勿論だ」
「貴方のところへ妨害、不和、破壊工作、何でも良いから戦力を削げと言われて実行に移したの」
「それで青葉と卯月を私のところへ?」
「そう。私は今脅されていて、今ここに居る艦娘全員を人質に取られていて
それに従うしかなかったの」
「この部屋で人払いをしたのは?」
「ここに居ると第1次艦娘の見聞きした事を盗聴されているのよ。
人払いした今、まだバレていないはずよ」
「そうか」
{提督、歩兵AIから救難信号が発信されています!}
地図と地点が表示される。救助に行こうと立ち上がる。
「ねえ!、一応私を殴って」
「・・・何もしないのはマズイか。分かった」
「ちょっと、顔はやめて!?」
「む、そうか。いくぞ!?」
鳩尾に拳を見舞う。足柄が腹を抱えてうずくまる。
「う、効くぅ~」
「ではまた」
「えぇ、また・・・」
ドアを開け外に行く。誰かの叫び声が聞こえたが無視する。
「あ、提督」
「卯月、青葉と一緒に行動してくれ。急いで行く所がある」
「・・・ご武運を」
「有難う」
如月を残し、急いで救援を求める場所へ飛んで行く。
燃え盛る建物がある。
{ここが救難信号のポイントです。誘導します、急いでください!}
「分かった」
BYの誘導どおりに建物を進んで行く。
{来てくれましたか・・・良かった・・・}
救難信号を出していたサングラスが、炎で融けていった。
「あ、・・・隊長」
「無事か!?」
サングラスを外し戦時中の部下を見る。縄で縛られていたのを切ってやる。
「無事じゃないかも・・・」
四方八方が炎に囲まれる。
「いいや、無事だ」
私が火を吸い込んでいった。羽根が輝きを増すと同時に暗い炎が強まっていると感じる。
「・・・俺に、隊長は宇宙人だと言っていましたね」
「喋るよりも脱出が先だ」
サングラスを掛けなおし、飛ぶ。鉄格子の窓を突き破って出る。
一呼吸置いて建物が崩壊していった。
「BY、どこに行けば良い?」
{責任を持って隊員を預かると言っている人がいます。
『人外対策局で会ったなと言えば信用するか?』と言っていますがどうしますか?}
「・・・懐かしい言葉だな。場所を指示してくれ」
{では、伝えます}
指示された場所まで来た。
「やあ、英雄。貴様とは尋問した時以来だな」
尋問を受けた時に見たあの顔だった。
「あの時の人でしたか」
「そうだ。・・・では、この男性は私が責任を持って預かるぞ」
「待ってください。隊長、卯月という艦娘を知っていますか?」
「今、訳有りの様な卯月を保護しているぞ?」
「・・・すみません。何か録音機を使わせてください」
{では、私が録音しましょう}
『・・・卯月、君の司令官として命じる。俺が迎えに行くまでの間で良い、
今世話になっている所の防衛の任に付くことを命じる。待って居てくれ、必ず迎えに行く』
拠点に戻り、卯月に録音した音声を聞かせる。
「・・・」
「卯月。良い提督に会ったじゃないか?」
「・・・提督じゃない。司令官です」
目元をごしごしと拭いている。
「そうか」
「・・・司令官に言われた通り、卯月はこの地の防衛の任に付きます」
「よろしく」
「よろしく!」
憑き物が落ちた顔をしていた。良い顔をしている。
ふと、ロボットの事を思い出し工廠へ行ってみる。
「あ、隊長さ~ん!」
見知らぬ艦娘がこちらへ向かって走って来る。新顔なのに見慣れた感情を持っている。
「見てくださいよ。ちゃんと治りましたよ!」
「・・・どこも変化は無さそうだが?」
辺りを見回して資材が少なくなっている程度だ。
「私が、ですよ。わ・た・し!」
「君が、治った?」
「・・・ロボットですよ、貴方が整備してくれてた・・・」
「君が、か」
「助けて貰ってから、本当にお世話になりました」
ロボットが私を抱き寄せ、私の顔に近づいて来てキスをしてきた。
『おおぉ~、ここでの2回目が見れましたー!』
これを見た妖精達が茶化してきた。
「・・・えへへ~。長かったぁ」
嬉し涙を流している。
「・・・」
「第1次前期、明石、これより工廠での開発を担当いたします」
「・・・明石だったのか」
「私も、少しでも貴方のお役に立ちたいです。・・・私は貴方に害をなす存在を許しません。
最後の時まで貴方の為に働きます」
「・・・有難う。頼むぞ」
「なんだったら今、下の処理もいたしますよ」
「・・・今は遠慮しておく」
「・・・ちぇ~」
「では、妖精達、明石と一緒に作業を頼むぞ」
『・・・申し訳ないですが、明石違いなんです』
「え?」
『私達の必要とする明石は、建造カプセルで建造された明石、なんです。
この明石さんと一緒に働きますが、十分な連携は取れません。ごめんなさい・・・』
「・・・隊長、出来る限り良い物を作っておきます」
「資材がもう少ししかない。仕損じるんじゃないぞ?」
「私は第1次ですよ。失敗なんかしませんよ」
「あ!?。あちゃ~、腕力の確認しなきゃね・・・」
スパナで回していたボルトの頭をボキッと取ってしまっていた。肝が冷えた。