「提督、救援要請です!」
吹雪が方向を指差して言う。即座に非常警報を鳴らす。
「航空機の発進を急げ。先に行っているぞ!」
『了解』
サングラスを掛け、急いで信号の発進場所へ向かう。
単独で航行している艦娘とそれを追う深海棲艦の群れがいた。
私を見て人型が逃げ出してしまった。まだ、その他が居る。
「!?・・・?」
砲撃によって足をもがれた艦娘を抱きとめる。
「大丈夫か、死ぬなよ!?」
盾で敵から覆い隠しながら後退していく。
何体か倒すが如何せん数が多い。助けた艦娘の艤装が重いことで満足に動けない。
「・・・のことは・・・」
声が掠れていてちゃんと聞き取れなかった。自分を見捨てろと言おうとした。
「見捨てないからな!」
「・・・」
『提督、航空機による攻撃を開始します』
「航空機は全滅させておいた。やってくれ!」
『さすが!』
大量の航空機が飛来してくる。私を通り過ぎて深海棲艦への攻撃をしていく。
あっという間に生きている個体がいなくなった。
「助かった。これより帰還する」
『護衛は任せてください』
「頼んだ」
無事に拠点へと戻った。すぐさま救助した艦娘を入渠施設に入れる。
「有難うございました。私は本部からの伝令でここまで来ました」
声を出す部位を怪我しているようで、懸命に発声をしているようだ。
「本部から?」
「人外対策局、と言えば分かると」
「そうか」
「今、貴方達を攻撃している首謀者の住処が判明しました」
「・・・」
「場所は・・・・・・の鎮守府です」
「・・・」
{提督、艦娘を連れてここからだと約2日の時間を要します。・・・行きますか?}
「私だけなら良いが艦娘達を連れて行く必要があるだろうな。・・・足が必要だ」
「今何時ですか?」
助けた艦娘が言ったので、時計を見る。
「午後5時くらいだ」
「あと1時間ほどで艦娘が13人ほどが乗れる水上機が到着する予定です。
それに乗れば10時間ほどで行けます」
「何故、水上機がここに来るんだ?」
「本部が何者かに乗っ取られようとしています。
それを防ぐ為に、ここに居る方々が必要との事です。
電撃戦による、敵対勢力殲滅の為に、貴方達が必要不可欠と言われました」
「操縦主は信頼できるのか?」
「人外対策局の局員なので信頼してくれ、との事でした」
ここまで嘘はついていない。
「・・・行こう。もう物資量的に最初で最後だ。行ける皆で最後の一矢でも報いてやる。
響、皆を食道へ召集してくれ」
「分かった」
響が召集の為に走って行き見えなくなる。
「伝令ご苦労だったな。有難う」
助けた艦娘の頭を撫でる。
途端に顔が真っ赤になり、鼻までお湯の中に浸かってしまう。
「大丈夫か!?」
溺れたと思い、急いで背中に回り体を引き上げる。
「キャ~!」
かすれた声が施設内に響き渡った。
声を聞きつけた睦月が入ってくる。
「睦月、丁度良かった!。この艦娘用に風呂の中に入れる椅子か何かを持ってきてくれ」
「・・・」
睦月が突っ立ったままで居る。
「睦月?」
「・・・大丈夫ですよ、手を離しても。というか提督、食堂に行きましょう」
「え?」
「大丈夫、だ~いじょ~ぶ。さあさぁ、行きましょう」
睦月に引き剥がされて、食堂へ押される。
「あ、ああ、分かった。ちゃんと治しておくようにな!」
治療中の艦娘がコクリと頷いた。まだ顔が赤いままだった。
皆を招集した場所に来た。皆揃っているようだ。
「これより、我々の生存権を賭けての戦場に赴く。場所は鎮守府だ。
君達と同じ艦娘との戦闘になるだろう」
艦娘達の表情が険しくなる。
「水上機が約50分後に到着する、搭乗する13人を編成を合わせて、言い渡す」
第1班
金剛
加賀
飛鷹
鳳翔
榛名
衣笠
第2班
睦月
敷波
北上
木曽
五十鈴
響
全体支援
イムヤ
「以上だ。呼ばれなかった者はここの防衛を頼む。敵の数は未知数だ、最悪全滅だろう。
・・・君達の命、私が貰うぞ」
睦月と加賀が前に出てくる。
「提督の為ならばどこへでも・どこまでも付いて行きます。どんな後悔もしません!」
「私達は貴方が居なければ、死んでいた・ここに居る筈の無い存在よ。
ここに居る全員、義理堅いわよ。貴方の為ならどんな事でもするわ。
・・・それが人や艦娘を殺すことになっても、よ」
皆が頷く。
『私達の命、貴方に託します』
全員の息の合った言葉だった。
「・・・有難う。・・・出撃準備を始めてくれ」
「それにしても、班というのは、言い回しが違うような・・・」
睦月が言う。
「そうか?6人1組だからこの言い方で良いと思うのだが・・・」
私がそう言うと。
「・・・そうでした。提督にとって私達は人でしたね」
「嬉しい限りだわ。・・・私達、人として、抵抗しなきゃね」
「?」
・・・艦娘という不思議な体ではあるが、彼女達は人間だ。
加賀がそうで在ったように・・・。
私はそう思っている。
「睦月さん、衣笠さんと加賀さん。今すぐ、工廠へ来てください。お渡ししたい物があります」
明石が声を上げる。
「え?、明石さんは居なかったんじゃ?」
衣笠が疑問の声を上げる。
「とにかく早く行きましょう。時間が惜しいです!」
「は、はい!」
3人が明石に連れられて工廠へ行った。
出撃準備が着々と進められている。
衣笠と加賀が嬉しそうな顔で出てきた。睦月はがっくりと肩を落としていた。
睦月が飛鷹と話して、飛鷹が工廠へ入って行った。
その後、飛鷹が嬉しそうに出てきた。
準備が終わったところで水上機がこちらへ向かってくる。
{接岸許可を求めています}
「許可する」
着水・停止した水上機から人が出てくる。元隊員を引き渡した時と同じ人だった。
「やあ、来たぞ」
「・・・何でも屋ですね。貴方は」
「伊達にあそこに居るわけじゃないさ。さあ、乗れ!。
ああそうだ、貴様用に持ってきた装備がある」
そう言って、物を渡される。
「これは、歩兵装備の大砲?」
「貴様の追加用装備だ。弾がソフトターゲット用しかなかったが建造物を壊せる程度の威力だ。
今回の攻撃対象となる鎮守府については建物全て全損させて良い。思い切りぶちかましてやれ」
「艦娘を気にする必要は?」
「無い。あそこに居る全員、提督の色に染まっちまっている。ひと思いにやってやれ。
もうひとつ、戦時中の歩兵装備の現代版が盗まれている。
目標の誰かが所持している可能性がある。貴様の持っている物よりも何倍も高性能だ。
・・・楽に勝てる相手では無いからな?」
その言葉に頷く。
「ああ、それと・・・、これを渡しておく」
体を密着させてボソッと言いながら小さな箱を渡してくる。
「これは?」
「艦娘専用の結婚指輪だそうだ。大本営・・・本部か。
その艦娘を袂を分かつ時まで放さない、という意思表示の証だそうだ。
本部に頼めばもっとくれるそうだぞ?。重婚しても良い、との事だ」
「・・・考えておきます」
「皆、搭乗してくれ」
「提督は?」
「私は護衛の為に機外で周辺警戒を行う」
「・・・戦時中と同じだな。任せたぞ」
「はい」
「私達も艦載機を飛ばして警戒を・・・」
「それには及ばんよ。深海棲艦の軽空母級の艦載機ならばビクともしない装甲だ。
コイツ1人で十分だよ」
私を指差しながら言う。
「・・・そうでしたね。提督、道中の私達のお守りをお願いします」
「勿論だ」
「出るぞ。遺書は書いたか?」
「艦娘の私達には必要無いです」
「・・・そうかい」
{提督、少し私と話しをしましょう}
移動中BYが話しかけてきた。
「どうした?」
{私についてです}
「BYについて?」
{・・・私は、戦時中に艦娘として出現する予定でした}
「BYの、艦娘としての存在は、戦時中に全く居なかったと?」
{そうです。私はプロトタイプ、第0次、としての誕生と同時に戦時中前期までのAIに
私の脳を移植していたんです}
「移植されたのに何か問題が?」
{魂がAIの中に入ってしまったんです。それと同時に第0次の体が死んでしまいました}
「・・・それで、今、BYは如何したい?」
{いいえ、何も。単なる私の昔話ですよ}
「そうか」
{・・・出来るならば、この身が尽きるまで貴方を手伝いたいです}
「頼りにしてるぞ?」
{お任せを}
「・・・ふふ」
{ふふ}
長年の付き合いに、長い言葉は不要のようだ。
『提督、艦娘部隊の降下開始、10分前です』
「了解した。準備は良いか?」
『響以外は準備良し、です』
『ちょっと、酷くないかい?』
『貴女は初めてでしょう、こういうの?』
『・・・否定出来ないね。私を最後に降ろして欲しい』
「降下の順番は睦月に任せるぞ」
『了解にゃっしぃ!』
「・・・睦月、それは流行り言葉なのか?」
『え?』
「あ~、別に気に入っているなら、そのままで良いんだぞ?」
『・・・提督、ひど~い!』
「え?」
『まあまぁ、いつもの事だぞ。なぁ睦月副隊長殿?』
『むっき~!』
『睦月だけに?』
『・・・むっき~!』
少し鈍い音が聞こえた。
『痛~い』
『・・・戦時中、何回もやった事だもの。心配要らないわ』
「そうか。・・・皆、行くぞ!」
『了解!』
艦娘達の降下が始まった。眼前には遠くに鎮守府の明かりが見える。
水上機が水面ギリギリを飛行しハッチが開く。二人ずつ水上機の進行方向を向いて降りてくる。
響だけが危なげだったが全員無事に降下完了した。
『ここまでだ。成功を祈ってるぜ』
「泥舟にでも乗った気持ちでいてくださいよ」
『ぬかせ。・・・貴様だけが頼りだ。俺達に、人間に明日をくれ』
「?・・・やるだけやってみますよ」
『頼む』
水上機が遠ざかって行った。
「まだ日の出前だが航空機の発艦は可能か?」
『出来るわ。私達はプロよ』
「・・・行くぞ。我々の明日を取り戻すぞ。攻撃開始!」
『行きますよ!。空母各員、発艦始め!』
私の掛け声と共に金剛の指揮が入る。
電撃戦が功を奏したようだ。特に抵抗も無く鎮守府近くへ辿り着けた。
施設を順に破壊していく。悲鳴が聞こえるが無視する。
『提督、航空機が接近中です。援護します!』
「任せた!」
迎撃に来たのは超音速機だった。
それらを打ち落とす超音速機がいた。
『提督には指一本触れさせませんから、安心してください!』
「頼もしいな!」
捕虜にした妖精の声だ。超音速機に乗っているようだ。私でも撃墜が難しい機動をしている。
『提督、如月も来ました。援護します!』
遠くに、卯月の格好をした如月が見えた。
「無事だったか」
『青葉や他の艦娘もいますからね』
「支援を頼んだぞ!」
『了解!』
慌しく敵が出てくる。艦娘ではないようだ。・・・人間でもないような?
肩の炸裂弾で攻撃する。消し飛んだ。やわらかい敵用のこれでも効くようだ。
『クソァ!貴様がいなければ、簡単に事が運んだものを!』
「む!?」
{銃撃、かい!・・・}
BYの声をさえぎる銃撃。
・・・・・・
あたまがすこしかけた。れいのほへいようそうびだろうか?
サングラスがすこしかけて、ひのでがみえる。
『提督ー!』
「大丈夫だ!来るな、俺が相手をする!」
思考が戻ってきた。敵の歩兵へ攻撃する。当たらない。肩の大砲を分離して捨てる。
『ハッハァー!、そんな旧式装備でこの俺が倒せるものかよ!』
その間にも発砲してくる。弾速が速過ぎて逸らせない。鎧と体に少しずつ傷が付いていく。
こちらも発砲する。当たらない。
『提督をやらせはしない!』
超音速機に乗った妖精が牽制射撃を行う。敵が火の粉を払おうとするが当たらなかった。
『クソッ!ちょこまか動きやがって!』
「その声、如月を襲っていた奴だな!?」
段々と敵の動こうとする軌跡が見え始めた。回避もしやすくなったが、攻撃もしようとすると
体が追いつかない。
『そうだ!。奴隷として躾けてやったが頑として服従しなかったんでなぁ!』
「貴様ぁ!」
盾で攻撃を防ぐ。受け止めると取っ手の上から半分が無くなってしまった。
『お前に揺さぶりをかけようとしたが全然効いてなかったようだなぁ!』
「あんなのは早々に見破ってやったさ!」
『つくづく邪魔な奴だよテメェは!計画が全ておじゃんになったんだ。
お前だけでも殺して帰らなきゃ、故郷への示しがつかねぇ!』
どこに攻撃をするかが見えてきた。鎧に掠る音が聞こえる程度になった。だが当たらない。
「我々に対して攻撃したのは全て貴様か!?」
『当たりだぁ!この惑星を征服しようと思った我々にとってお前は邪魔だったんだ。
あの爆弾でさえ死なないのは盲点だったよ!』
相手の高速機動にまだ体が追いつかない。また外れる。
「その言葉、宇宙人だな貴様!?」
『お前も宇宙人だろぉ!』
攻撃をすんでの所で回避する。こちらの攻撃は足のふくらはぎに少し傷を負わせる。
「そうだ!。だが貴様とは違う。私は1人、この惑星の生物と共存する為にここに来たんだ!」
『そうだろうよぉ!。のんびり暮らしてるから楽に事が運んでたのに、
本当にお前は俺らの邪魔してくれたよぉ!、クソが!』
バルカン砲をばら撒いてきた。行く手を塞がれる。
弾が出なくなった。こちらは今弾切れだ。
「・・・」
『俺の、邪魔だから、早く、今、死ねぇー!』
剣を取り出して突撃してきた。速い。避けられない。
私の体に剣が刺さる。私を呼ぶ悲鳴が聞こえる。
「獲ったぁ!」
「捕らえたぞ!」
歩兵装備を纏った奴に抱きつく。
「何だ、貴様!。離せ!」
「私の他に、鳥が挨拶をしたいとさ!」
「鳥ぃ!?」
頭部の鎧が欠けた部分から火が噴き出す。
「ひ、火の鳥!?。クソ!離せ!ガァーーー!」
私が体を放すと、炎が敵の歩兵を包み込んでいく。
敵の鎧が蒸発し、中に居たであろう宇宙人が消えた。炎が私の中に戻っていく。
塵も残ら無いほど燃やしてやったようだ。落ちていく物が無い。
何?、魂まで燃やした?。それは見えなかった・・・。
・・・力が抜けてしまった。自分の体が地面へ落ちていく。・・・違った、下は海のようだ。
・・・海に叩きつけられると思ったのだが、はて?
「隊長、提督!、生きてますか!?」
「・・・睦月か」
睦月に抱えられていた。
「提督、深海棲艦の変異体が殲滅対象に攻撃しています!」
「・・・金剛、潮時だと思うか?」
「はい、思います」
「・・・よし、撤退す・・・」
・・・・・・さん・・・
声が聞こえた。私を呼ぶ、懐かしい声が。幻聴?、いや近くに居る!
「提督?」
「・・・皆、撤退を開始してくれ。あそこに行く用がある」
変異体に攻撃されている鎮守府を指差す。
「無茶ですよ!?」
「助けたい命がある」
「・・・隊長の時からこれだけは譲りませんよね。提督、ちゃんと帰って来てくださいね・・・」
「勿論だ」
大急ぎで声の聞こえた所まで行く。壊せなかった建物の中だった。
冷凍カプセルがあった。人が入っている。解凍と書いてあるボタンを押す。
「ここは?・・・あ!、貴方は!?」
「話は後だ、急いでここを脱出するぞ!」
「は、はい!」
私に抱きついてきた。しっかりと腕を巻きつけている。
助けた人がギリギリ失神しない程度で脱出を開始する。
深海棲艦たちは鎮守府攻撃に夢中で私に気付いていないようだ。
『提督、護衛は任せてください』
「頼むぞ」
超音速機に乗った妖精が直掩につく。
攻撃をされずに安全地帯まで抜けれた。それほどに鎮守府攻撃に目が向いていた様だ。
無事に、睦月達の元へ戻って来れた。
「提督、ご無事で何よりです。その娘は?」
「ああ、大山さん、で合ってるかな?」
「憶えていてくれたんですね!」
「・・・ああ、あの時の一緒に避難した人ですね」
「え?・・・あ!?貴女、生きていたんですか?。激戦地へ送られたとの事でしたが・・・」
「いいえ、死んだわ。この体は第3次艦娘の物よ」
「そう、でしたか・・・」
「良いのよ、こうして今を謳歌しているわ」
「・・・羨ましいです」
加賀と大山さんで話が盛り上がる。
『おい、聞こえるか?』
人外対策極のあの人の声が聞こえる。
「聞こえますよ。どうぞ」
『とりあえず、やったな!。これから貴様達を返す便を手配してやる』
「どこに行けば良いですか?」
『第0次の足柄が居る所といえば分かるか?』
青葉と如月を探す。居た。
「・・・分かりました。そこへ向かいます」
『待ってるぞ。神様』
通信が切れた。神様、大袈裟過ぎじゃないか?
「青葉、君の提督の所へ案内してくれ」
『了解しました。皆さん、私に付いて来てください』
足柄の居る鎮守府まで来た。
足柄と人外対策局のいつもの人まで居る。
「まってたわよ。用意は出来てるわ。さあ行きましょう」
「さあ、乗れ!」
「皆、帰るぞ」
『はい!』
さっき乗った物より少々、・・・いやかなり大きいがどうしてだろうか?
航空機のタラップに足をかけたところで体が後ろに倒れた。
体に限界が来たようだ。急速に眠気が来た。
「提督!?大丈夫ですか!?」
「睦月・・・、疲れた。今の指揮を頼む・・・」
「提督、てぃ・・・・・・・・!」
支えてくれた睦月にそう言って目蓋が落ちる。そのまま寝てしまった。