あの刺激的な夜を過ごした八人の乙女達。それから彼女達の生活に小さな、けれど大きな変化が起きた。自慰行為の始まりである。それによって彼女達はストレス解消―――となっていたのは僅かな間であり、逆にそれを感じるようになり出した。
全ては、あの切っ掛けの夜が原因である。一人で慰めても、二人で慰めても、消える事のない下腹部の熱。それを消すにはどうすればいいのか。それを八人は嫌と言う程分かっていた。
そんな時、あの世界から手紙を携えファラが現れた。その手紙には無事響と未来も妊娠した事が書かれており、その切っ掛けとなった八人へお礼をしたいとソフィーと彼女達が言っている事も記してあった。だが、その末尾にはこうも書かれていたのだ。
―――是非、泊まりでお越しください。
そこの文字がそれまでと異なる事に気付き、マリアがファラへ問いかけると、彼女はどこか妖艶に微笑んでこう告げた。
「そこは、シキさんではなく未来が書きましたので」
「未来が……」
「はい。響と二人で貴方達をもてなすには宿泊でないと難しいと」
その言葉で彼女達は察したのだ。あの夜のような刺激的で淫靡な時間がやってくるのだと。そうなればどうするかは言うまでもない。早速とばかりに翼が奏へと会いに行き、その事を知らせ、残る者達は予定を合わせて外泊の準備を始める。
誰もがどこかでこう思っていたのだ。今度はもっと気持ちいい事を、もっと凄い事を教えてもらえる、と……。
「ねーちゃん達、ありがとなっ!」
シャトーへ着いた八人を真っ先に出迎えたのは、満面の笑みを浮かべるソフィーだった。その歓迎に彼女達は複雑な想いでぎこちない笑みを返す事しか出来ない。
「あ、あはは……お役に立てたとは思わないけどね」
「んな事ねーって。おかげで歌鈴も神楽もねーちゃんだ。響ママと未来ママが赤ちゃん産む頃には二人もしゃべれるかもしれねーから、そん時はまた来てくれよ? あの二人にもちゃんとお礼言わせるからさ」
無垢な笑顔と言葉が今の彼女達には痛い。何せ、彼女達があの日した事はあの二人を焚き付けただけであり、その後は、三人による営みを見ながら初めての快感をその体と心へ刻み付けられただけなのだから。
それでも目の前の少女には関係ないと、そう思って八人は笑みを返す。と、そこで顔を出す者達がいた。歌鈴と神楽を抱き抱えた切歌と調である。
「いらっしゃいデス」
「約半年ぶりだね。そっちはどう?」
「こっちでは何と三か月デスよ。半分デスね」
「やっぱり、こっちとそっちじゃ時間の流れ方がおかしいのは変わらないかも」
「そうみたいだね。神楽、お姉ちゃん達に挨拶」
「あう?」
「歌鈴もデスよ」
「だぁ」
あの日よりも少しだけ成長した二人の幼子を見て、八人は心からの笑みを見せた。まず少女の切歌と調が近寄り、それに続いて響達学生組が近付く。マリア達三人は笑みを浮かべながらその光景を眺めた。
「あっ! 響ママ達だ!」
そこへソフィーの声が響き、全員が同じ方向へ視線を向ける。そこには、少しだけ大きくなったお腹を揺らすように響と未来がいた。
「や、久しぶり」
「元気そうだね」
「ええ、おかげさまでね」
「ホント、元気過ぎて困ってるぐらいさ」
マリアと奏の含みを持たせた声に、二人はすぐさまそれを理解し小さく微笑む。
「そっかぁ。じゃ、今日は勿論?」
「泊まり、だよね?」
「ああ、私達全員そのつもりで来ている。その、期待しても構わないのだろうか?」
翼の問いかけは全員の問いかけと察して、二人の妊婦は一瞬だけ妖艶に笑う。それが何よりの答えであった。八人はその笑みだけで今夜の事を想像し、未だ消えない熱を思い出したかのように蕩けた顔を浮かべた。
「分かってる。ちゃ~んとそっちのお望み通りに用意してあるよ」
「最高の初体験、させてあげるから」
もう、それだけで八人は喉を鳴らした。どうなるかは分からないが、確実にこれだけは言えたのだ。そう、今夜は眠れないと。
こうして上機嫌のソフィーを先頭に歩き出す彼女達だったが、勿論目的は夜にこそある。だがしかし、その前に八人は一つ妊婦二人へ聞きたい事があったのだ。
「あの、響さん達に聞きたいんですけど……」
「「何?」」
「えっと、歩きながらじゃ言い難いのでどこか話せる場所ありますか?」
「なら、子供達が来ないところだね」
「そうだね。響、先に案内してあげて。私は一応みんなへ言い含めておくから」
「よろしく。その辺りは未来の方が適任だし」
「どうせ私は怒ると怖い未来母さんですよ~っだ。ソフィー、みんなは子供部屋?」
「ん。ママが文字の勉強やってる」
ソフィーと共に歩き続ける未来。切歌と調もその後に続いて去って行く。その背中を見送り、響は八人へと向き直った。
「じゃ、行こうか。今夜のパーティー会場に、ね」
その言葉の意味を彼女達が理解するのは、その場へ到着した時だった。そこは、居住スペースと研究スペースの中間点に位置する場所で、大浴場からすぐの部屋。前回来た際に夢子達から聞いた説明ではそこは大広間と聞いていた事もあり、八人は本当にパーティーをするための場所と思って、自分達の推測を内心で恥じていた。
「どうぞ」
響がドアを開けて八人を室内へ案内する。そこには、布団が敷き詰められており、まるで旅館の団体客が宿泊するかのようだった。
「これは?」
「ここが今回の貴方達の部屋だよ。ここはどういう部屋か聞いてる?」
「夢子ちゃん達は大広間って」
「うん、それで間違ってないけど、それは表向き。私達夫婦の間じゃ、ここはプレイルーム。つまり、乱交部屋だよ」
その瞬間、八人が揃って顔を真っ赤にした。分かってしまったからだろう。ここが自分達の宿泊場所であり、そこが乱交部屋と呼ばれていると言う意味を。響はそんな彼女達の反応からそれを悟り、唇をペロリと舐める。
「ふふっ、もう期待してきちゃったのかな? そうだよねぇ。あの日、貴方達はイク事の良さを知った。でも、どれだけイっても満足出来ない。ううん、満足し切れないって気付いちゃったんでしょ? オチンポがぁ、ここに入ってきたらって、そう思ってオナニーしていたんじゃない?」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
図星であった。何度もそういう道具をと、そう思ったのだ。だが、その度に彼女達は思いとどまった。やはり、初めてはちゃんとした男性と。そういう歯止めがかかってしまったのだ。そう、八人はそういう意味で真面目であったために。
「心配いらないよ。今夜、最低でもスープを飲めるから。ううん、飲ませてあげる。気になってるよね。どんな味なんだろう。どれだけ美味しいんだろうって……」
ゆっくりと八人へ近付き、彼女達に声をかけていく響。その優しくゆったりとした喋り方は、さながら催眠術だ。八人の思考を、徐々に徐々に淫らな方向へと誘導していくのだから。
「熱くて、濃くて、とびっ……きり美味しいオチンポミルク。お口で飲んでも美味しいけど……」
「ぁ……」
そこで響はクリスの下腹部をそっと押した。
「ここで飲むともっと美味しいんだよ?」
「っ!」
耳元で囁かれる言葉と内容。それでクリスは小さく震えた。軽く達したのである。それを見て響は妖艶に笑うと、その隣にいる翼へと近付く。
「それだけじゃない。オチンポは、とっても熱くて硬いんだぁ。男の人のオチンポは剣だからね。そして、女は鞘。なら、当然納めてもらうべき、だよね?」
「ああ……私が、鞘……」
想像しただけで翼は背中にゾクゾクとした快感が走るのを覚えていた。この世界の自分が女となったように、自分にも防人や剣としてではなく別の生き方を刻み込まれてしまうかもしれないと、そう思って。
「そうそう、初めては痛いって思ってるかもしれないけど、心配ないからね。私も、みんなそうだったけど、あの人とすると痛みなんてほとんど感じないか、感じても気持ち良さに変わっちゃうんだ。……そっちのマリアさんはどっちかな?」
「っ!?」
小声で告げられた言葉にマリアが震える。それは怯えではない。それは歓喜。彼女はもう自分の内に秘められている性癖を教えてもらっているのだ。他ならぬ自分自身から。故に答えは分かり切っていた。すぐに快感を覚え、それを貪り出す事を。
「それと、もう知ってる通り、あの人とはみんなは妊娠し辛い。ううん、こう言おうかな。アナルでスープをもらわないなら一度や二度出されたところで出来る事はない。……つまり、何の心配もなく中出ししてもらえるんだよ、奏さん」
「…………そうかい」
響の言葉に奏は顔を赤くしながら軽く背ける。それでも、その声には嫌悪感や拒否感は皆無であった。むしろ、良い事を聞いたとばかりに喜びや安堵の色が宿っているぐらいである。そこから奏が何を不安視していたかが分かるというものだ。
響は、八人の中で性欲へ抵抗しそうな四人へしっかりと淫乱の楔を打ち込んだ。それは、何もシキのためではない。むしろ彼女達のためと思っていた。シキがいない世界である八人の世界。そこでは、未だにノイズ被害が続いている。それらを少しでも早く終息に向かわせたい。あるいは、戦いの日々で知らず抱え込んだものを忘れさせてやりたいと。
(まぁ、きっとこれが余計それを増やすと思うけど……)
それでも、捌け口が出来るだけで大分違う。そう思って響は息を吐いた。
「と、言う訳だから、どうなっても大丈夫。へいき、へっちゃらだよ」
「ううっ、何だか上手く丸め込まれてる気がする……」
「だ、だけど……それを期待して来たから……」
「え、エッチだとどれぐらい気持ちいいんデスかね? 本気で気になるデス」
「お腹、熱くなってきちゃった……」
一方性的な興味への抵抗感が薄れてきている四人は、もう頭の中がセックスの事で一杯になり始めていた。彼女達は相部屋である事と元から互いのパートナーへ強い信頼や愛情を抱いていた事もあり、毎晩のように慰め合っている。それはゆっくりと四人の中から性行為への嫌悪感や拒否感を奪っていき、むしろ相手との絆を深める事も出来る事とさえ思い始めていたのだ。
「ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」
「未来、大丈夫だよ。もうある程度は説明しといたからさ」
「……みたい、だね」
マリア達四人の顔を見て、未来は微かに淫魔の笑みを浮かべる。もう仕込みは十分とでも言いたそうな顔だ。響も似た表情を浮かべ、二人は小声で話し合う。
「それで、シキさんの方はどうするの? 意外とシキさん、あの子達は私達とは違うからって理性全開だし」
「だから、シキさんから求めさせるんじゃない方法を使うの。それなら、きっとシキさんも……」
「……あー、さっすが未来。こういう事考えさせたら怖いねぇ」
「あれ? 私を騙す形でスープを飲ませてダメにする手伝いをしたの、誰だっけ?」
「あ、あれは……ごめんなさい」
「クスッ、いいよ。きっと遅かれ早かれ今みたいになってたと思うしね。……それで、聞きたい事って何かな?」
そこでやっと意識を切り替えた調が二人へ意を決して尋ねた。
「えっと、どうしたら今後オナニーだけで落ち着けるんですか?」
「ああ、そういう事か。大丈夫。一度セックスすればもう今みたいにはならないから」
「そうそう。今はね、気持ちいい事への期待がダムみたいになってるんだよ。だから、本当のエッチをして決壊させてあげれば、もう溜まる事はなくなるから」
「ちょっと待ってくれるかい? それって、その、繋がらないと解決出来ないって事?」
奏の疑問へ二人は即座に頷いた。更にきっと出るであろう質問への答えまで言い始めたのだ。
「どうして私達が道具を使わないようにって言ったかは、実はここに関係してる。血の通った男性と繋がる事と、冷たい作り物。これが本当に同じ効果を与えると思う?」
「私達もさ、シキさんとこうなってから時々そういうの使う事はあったけど、やっぱり違うし物足りないんだよ。あったかくないし、何より寂しいから」
「好きだ、愛してる。こういう言葉を言われるだけで嬉しくなるんだよ、女って。それに、道具で初めてを失って、なのに熱が消えなかったらきっと貴方達は嫌だろうなって、そう思ったんだ」
未来の締め括りに誰も言葉がなかった。実際想像すればそう思うだろうからだ。何より、彼女達も気付いている。自分達の体の熱を生み出させている原因は、あの生命のスープの匂いであると。あれを吸収しないと消えるはずはない。そうどこかで察しているのだ。
「……飲むだけでも何とか出来ますか?」
「それは、経験者の響から」
「うぇ!? あー、まぁたしかにそうだったけど……」
未来の使命に驚きの声を上げつつ、響は苦笑しながら頬を掻いた。
「結論から言えば大丈夫。でも、きっと今度は心が満足しないと思うけどね」
「心が?」
「うん。私も、そうだったんだ。初めてオナニーで気持ち良くなる感覚を知った時、体に火が付いちゃった。で、それは元を辿るとスープを飲むようになったからなんだよね。その後、シキさんからスープをもらえるようになって体の方は落ち着いたんだけど、正体を知ったら心が……ね」
懐かしそうに話す響に彼女達は疑問符を浮かべた。それはそうだろう。正体を知ればむしろ嫌がるからだ。何故それで心が求めるようになるのかと、そう思ったのだ。
「えっと、どうして?」
「その頃にはシキさんの事、男の人として好きだったからかな? それにさ、シキさんは私の事を騙そうとする人じゃないって知ってたし。そもそもシキさんは私やクリスちゃんにスープは飲む物じゃない。止めといた方がいいって言ってたんだ」
「そうなの? 悪いけど意外だわ」
「実際、シキさんが自分からスープを飲ませた事は一度もないよ。奏さんは了子さんからリンカー代わりに渡されて、翼さんは正体を知った上で欲しがって、クリスちゃんは気付いたけれど飲みたがって、私もそれと似たような感じ。マリアさん達は……」
「そこまで。とりあえず、喉乾いてない?」
響が言葉に詰まりそうなのを察して未来が話を遮った。彼女は気付いたのだ。このままでは少々面倒な事になると。故に話題を変えた。しかも、それは今夜のための布石その二である。彼女が取り出したのは、あのドリンクだったのだから。
「あっ、それ! 私があの時医務室でもらった奴だ! 美味しいんですよね、それ」
「そうなんだ。じゃ、説明はいらないかな。これはスープが手に入らないマリアさん達が昔飲んでた物なんだ。リンカーと似た効果があるけど、体に害はないっていう物」
「ドクターが作ったの?」
「ううん、これは了子さんが作ったやつ。ただ、どうもウェル博士も独自の改良を加えてたみたいだけど……」
嬉々として受け取る響を見て、ならばと切歌や調も手に取る。ただ、残りの五人はどこか不安そうな顔をしていた。そのドリンクが何から作られているかを察しているのだろう。だからこそ、未来は悪戯めいた笑みを浮かべてこう告げる。
「それを飲んですっきり出来れば、もう何も問題なくなるよ?」
「「「「「っ!?」」」」」
「そうだね。体も心も満足出来るかも」
「あーっ、美味し~!」
「ホントデス! 美味しいデスっ!」
「これは、凄い。飲むリンカー?」
息を呑む五人へ聞こえてくる三人の感想。それに妊婦二人が苦笑して五人へ視線を向ける。それは、怖がっているような物ではないと言っている目。ならばと未来がまずドリンクへ口をつける。
「……美味しい」
「ま、マジかよ。なら、あたしも…………んく……う、うめぇ!?」
「小日向や雪音がそう言うのであれば……ごくっ……っ!? ほ、本当に……?」
「ホント美味いじゃないか。もしかして、あたしらの考え過ぎ?」
「そんな訳…………くぴっ……そ、そんな……」
一口飲んで驚き、二口飲んでうっとりし、そこからは何も反応せず飲み干していく五人。それをニコニコと眺める響と未来。その内心では淫魔として笑っていたが。
(完全にクリスちゃんやマリアさん達コースだ。ドリンクで美味しいって思うなら、オチンポから直接飲んだらもうダメだろうなぁ……)
(ふふっ、こうして考えると、昔の私達って搦め手に弱すぎるね。そういう意味ではいい教訓になるかも。……授業料が高いか安いかは本人達次第だけど……)
二人の眼前では、ドリンクを飲み干して笑みを浮かべる八人の乙女達がいた。ただし、既にその体は見えない蜘蛛の糸で絡め取られているが。その後、二人は彼女達をそこへ残して去って行った。少しそこで休んでいて欲しいと、そう言い残して。そうなると彼女達の話題は当然セックス関係となる。実は、彼女達も気付いていないが、あの夜互いの自慰行為を見せ合ってしまった事で、八人の間に妙な連帯感が生まれていたのだ。
それは、この世界の装者達も通った道。知らず彼女達は同じ道を歩かされていたのだ。
「あの、やっぱり翼さん達は一人でしてるんですよね?」
「……今は違うがな」
「あっ、そういえばクリスと一緒に暮らし出したって」
「じゃ、クリス先輩とデスか?」
「わりぃかよ」
「いいよね、そっちはさ。あたしは寂しく一人で」
「よく言うわ。私を休みの度に呼び出す癖に」
「とかいいながらマリアも来てくれるからいいじゃないか。背丈的にあたしじゃないと気持ち良くなり辛いもんな」
「こう考えると、いつの間にかコンビで分かれてるんだ……」
布団の上に座って円を作るように並ぶ八人。それさえもその組み合わせになっている事に気付き、誰ともなく苦笑い。今、自分達はかなり凄い事を話せるようになっていると気付いたのだ。と、そこでふと響が何かを思い出したように手を挙げた。
「あのっ! 今なら出来るんじゃないでしょうか、三人でのユニゾン」
「……どう、だろうか?」
「可能性はあるわ。あのパヴァリアとの戦いで身に着けたデュオ。それをトリオにする事は」
「そうだな。あたしらもある意味ここの自分達に近くなっちまったし」
「ちょっと待ってよ。あたしには何の話かさっぱりなんだけど?」
盛り上がり始める周囲を見て、奏だけが首を傾げる。そこで教えられた内容に彼女は目を見開き、そして感心するように唸った。たった一人で戦い続けている彼女にとって、ユニゾンもシンクロも遠い話となっていたからだ。
だが、だからこそ奏はその提案に乗った。あの一件で歌う事を楽しんでもいいと思えるようになったからこそ、彼女は翼以外とも歌ってみたかったのだ。
「じゃ、まずは手本を見せてもらおうかね」
「手本になれるか分からないけど、やってみましょう。翼、クリス、いい?」
「ああ、我々の世界でのドライディーヴァだな」
「少しくすぐったいけどやってやらぁ!」
三人してギアを纏う。そして、目を閉じて同時に息を吸った。直後流れ出すメロディ。だが、それはその場にいる誰も聞いた事のないものだった。そう、三人の装者達さえも。
「認める事が怖かった……」
まずは翼が歌い出す。辛そうに、何かを思い出して。
「受け入れる事が怖かった……」
続いてクリスが歌う。寂しそうに、何かを悔やんで。
「自分の弱さが嫌だった……」
最後にマリアが歌う。悲しそうに、何かを噛み締めて。
「「「この世の全てが色褪せて見えていた。あの時まではっ!」」」
一気に歌声が弾けた。彼女達に共通するのはそれぞれに強い喪失の痛みを抱えていた事。だが、それ故に彼女達は一度響と対峙した。認められぬと、受け入れられぬと、その自分の弱さを知り抱き締める事が出来た時、三人は一歩を踏み出す事が出来たと思い出していた。
その歌の名は”華蝶爛舞”。蛹から羽化し華やかな蝶となった歌姫達の絢爛な舞い。その歌声に響達五人は聴き入った。初めての光景だったのもある。ギアを纏いながらも、戦うための歌ではなくただ心のままに歌う歌を聞く事は。
「……う、歌い切ってしまった」
「そう、ね。不思議な感覚だったわ」
「知らねー歌のはずなのに、何度も歌ってきたみたいな感覚は普段と一緒だったけどな」
互いの顔を見やり、やや呆然としている三人。分かっていたのだ。歌っている間、今までにないフォニックゲインの高まりがあった事を。感覚的にそれがイグナイトに近いとこまで上昇していた事も。
「へぇ、大したもんだ。これがみんなでアレを見せ合った結果?」
「っ!? か、奏っ!」
「だけど、そうだわ。この世界の私達がそうだったように、本来見せ合うはずのない姿を見せ合った事で、その絆や結びつきが強くなったのは事実よ」
「ま、実際そうだわな。その、こうして全員で自慰行為について話すとか有り得なかったし……」
クリスのまとめが結論だった。この後、ならばと響と切歌に調の三人が挑戦。こちらも見事新たな歌を歌い上げたのだ。その高揚感は未経験だった事もあり、三人はしばらくその喜びを噛み締めるように笑みを見せ合った程である。
「……あたしも出来るかね?」
「奏も出来るはず。私と、マリアなら」
「……かもしれないわ。こちらでもこの三人でライブをやったみたいだし」
「ああ、あたし達も似た事やったね。うし、やってみるか」
そうして彼女達は期せずしてユニゾン訓練のような時間を過ごす。だが、どんな組み合わせでもとはいかなかった。その辺りはまだまだ互いの関係が深まっていないという事だろうと判断したところで、ドアを遠慮がちにノックする音が響く。
「何かしら?」
マリアの声にドアがゆっくり開き、夢子が顔だけそこから覗かせるように出した。
「えっと、妹達が良かったら一緒に遊びたいって言ってるんです。その、ダンススタジオで」
「ダンススタジオ? 何故だろうか?」
「えっと、私達はみんな母さん達がトップアーティストやってた時を見たことないんです。映像とかではあるけど、実際にはまったく。だから……」
「そういう事ね。今がまさにその頃のあたしらで見て見たいんだろうさ。母親達の全盛期を」
「そういう事か。なら私に拒否するつもりはない。マリアは?」
「聞くまでもないわ。行きましょう」
「あんた達、も聞くまでないか」
「はい! 勿論一緒に行きますっ!」
こうして夢子に先導される形で移動した八人は、そこで待っていった麗美達を観客にしてのライブを始める事となる。そこで奏、翼、マリアはそれぞれの特別な歌を歌う。逆光のリゾルヴ、疾風迅雷、裸になって…夏。
それらは子供達の母達が知らない歌である。よって余計に彼女達に教えたのだ。目の前の者達は似ているが別の生き方をしている存在なのだと。
三人の歌が終わると、ならばとソフィーが真っ先に立ち上がり歌い始めた。それは魔弓・イチイバル。だけど、本来のものと違って楽しそうに歌うそれは、クリスへ大きな衝撃を与えた。
まるでかつての自分がそこにいるような錯覚を覚えたのである。歌う事が好きで、それを聞いてくれる人達が笑ってくれるのが嬉しくて仕方なかった頃の自分が。
「……ソフィー、あたしと一緒に歌ってくれるか? 何だか無性に歌いてーんだ」
「いいぜ。じゃ、クリスねーちゃんがしゅせんりつな? あたし、それにハモる!」
「ああ」
ある意味二人のクリスによる歌唱は、聞く者達に不思議な感覚を与えた。歌っているのはとてもではないが愉快な歌ではない。だけど、歌っている二人が笑顔を見せ合っているからか、そういう歌に思えてくるのだ。この流れに空が黙っているはずもなく、翼に同様の事をせがんだ。
「まったく、この強引さは誰に似たのだ?」
「父様です! そう母様が言っていました」
「……そうか」
両親の仲が良く、それに笑みを見せる空を見て翼も己の幼少期との違いを感じる。それでも、だからこそその笑顔を壊したくないと思って彼女もまた幼子と歌を口ずさむ。歌うは絶刀・天羽々斬。これは若干毛色が違った。楽しそうではあるのだが、どこか真剣勝負の様相を呈していたのだ。
それは、二人で主旋律を歌っているからだろう。斬り結んでいるのだ。彼女達は歌の中で刃を交えていた。それは相手を倒すためではなく、己が全てを相手へ見せるためのもの。その迫力と美しい歌声に麗美とアリアも手を挙げる。
「へへっ、母さんとも中々出来ないからな、こういうの」
「やれやれ。まさかあたしが翼のパートを歌う日が来るとはね」
奏と麗美は二人で逆光のフリューゲルを。
「よ、よろしくお願いします」
「緊張しなくていいわ。私も楽しみたいの。リラックスして?」
マリアとアリアは烈槍・ガングニールを。
そうなれば聞いてるだけで終われないのが響達であった。響と夢子で私ト云ウ音キソノ先ニを歌うと、切歌と調がEdge Works of Goddess ZABABAを、未来はカペラと共に私立リディアン音楽院校歌を歌った。
そして最後には全員での始まりの歌である。子供達がそれを歌える事に驚きながらも、全員での大合唱は見事なハーモニーとなってその場に響き渡った。その子供達とのライブというかギアを使ったカラオケは、八人の中にある欲求を呼び起こす。そう、自分も彼女達のような可愛い子供が欲しいという欲を。
そんな時間を過ごした後は大家族の食卓を再び経験。その賑やかさと楽しさに更に彼女達の憧れは強くなる一方であった。入浴を済ませ大広間へ戻る頃には、八人はどこか言いようのない寂しさを感じ始めていた。
「やっぱり、ここはあったかくて辛いですね」
「ああ、そうだな」
「こんな暮らしはあたしらには無理だ。あたしらのとこじゃ、まだアルカ・ノイズが大きな顔して歩いてやがる」
「あたしのところだってノイズはいなくなってない。そっちよりもある種性質が悪いと言えるよ」
「そもそも要シキのような男がいないでしょ。それに、いたところで……」
「うん、私達が揃って好きになるとは思えない」
「デスね~。シキさんは、ハーレムってものを現実にするために頑張ってるみたいデスし……」
「子供達もそんなお父さんだから慕ってるし支えてる。理解を得るのは難しいみたいだけど、それでも」
未来の言葉の続きはその場の全員が分かっていた。最初ここへ来た当初は先入観があったために客観視は出来ていなかったが、シキは何も不誠実な男ではないと分かったのだ。正確には今のシキは、であろう。かつての彼はそれこそ純粋な性欲からくるもので動いていたのだから。
妻達を得て、ハーレムが現実味を持ってからはその考えと在り方を戒め、夢子を了子が身籠った時からは少しずつではあるが男として成長を始めた。その結果が今の彼である。つまり、彼女達は立派な大人になろうとして奮闘中のシキしか知らないのだ。
「スケベしか考えてねーような奴なら、とっくに愛想尽かされてるわな」
クリスの言葉こそが彼女達の本音であった。シキは全力で妻達を求めており、他の女性へは目もくれていない。そういう意味では、彼は節操なしのようで節操があったと言える。
「……何て言うか、要さんをこっちの私はエッチで情けない人だって言ってたんですけど、あれって惚気ですかね?」
「違うとは思うが、似たようなものだろう。夫婦だからこそ分かる事や言える事だ」
「あの人は、きっとエッチで情けない人なんだと思います。だからこそ、多分正直に向き合ってるんじゃないでしょうか? 普通は隠して複数と付き合うはずですし」
「昔はそうだったのかもしれないよ。こっちのあたしと軽く話をしたら最初は翼と隠れて競わせてたってさ」
その発言に翼以外がやっぱりと思ったのか呆れるような声を漏らす。と、そこへ聞こえるノックの音。
「どうかしましたか?」
「あー、その、今大丈夫かな?」
少しだけドアが開き、聞こえてきた声はシキのものだった。その、ある意味でタイミングが良すぎる事もあって彼女達が若干気まずそうな顔を見せ合うも、追い返す理由はないので受け入れてもいいという意味で小さく頷く。それに翼も頷き返した。
「どうぞ」
「……えっと、何故か響と未来からここへ行って君達と話してこいって言われたんだけど、何か俺しちゃったかい?」
不安そうなその顔と声に彼女達は揃って顔を見合わせ、そして笑った。その笑い声を聞きながらシキだけが理解出来ず首を傾げる。やがて笑い声も落ち着き、全員を代表してマリアが笑った理由を話す。その内容にシキは何とも言えない顔をし、それもまた彼女達を笑わせる。
「で、俺が来た事で笑われた事は分かったけど、どうして俺はここへ行くように言われたのかは?」
「あ、それは……」
「マリア、ここはあたしに任せなって」
「ん? 何? 言い難い事?」
妙に歯切れの悪いマリアと奏の言い方でシキはより理解出来ないという顔をする。そんな彼へ奏は咳払いをし、小さく息を整えるとその目を見据えて告げた。
「あたしら、あの日からずっと妙な熱をお腹の辺りに感じてんの。これ、あんたじゃないとどうしようも出来ないって言われたんだけど、どう?」
「…………え?」
「だから、あんたのスープをもらわないとどうにも出来ないって」
「ああっ、ごめん。そういう事じゃなくてね? とりあえずうちの嫁さん達が何を言ったか聞かせてもらえるかな?」
そこからシキは事情聴取を行い、その結果頭を抱えた。
(どう考えても誘導してるじゃないか、響も未来もぉ……)
たしかに彼女達の熱はスープをもらう事でマシになるだろう。だが、それはそのままなし崩し的に行為へ及ぶと彼は察していたのだ。本当に彼女達の事を思うのならそれぞれの相手を探すように言うべき。そう考え、シキは溜息を吐くと顔を上げた。
「とりあえず、訂正させてくれ」
「訂正?」
「ああ。君達のその熱は男性と求め合えば消える。もしくは、いっそディルドーって言って分かるかな? 男性器を模した道具を使って鎮めればいいよ」
「で、でもそれじゃあダメだって」
「あの二人が言った事はある意味で事実だけど、真実でもない。何も君達まで俺とする必要はないんだよ。スープのせいで熱を持ったとしても、スープじゃないと消せないなんてないから。実際、こっちの響はしばらく何も問題なく過ごしてた。要はね、言いたくないけど君達がオナニーし過ぎなの」
完全に八人が沈黙した。しかも、顔をりんごかトマトかとばかりにして。実際毎日のようにしていたのだ。響達は大好きな相手との行為だった事もあり、余計に癖になってしまい、翼達は日々のストレスが彼女達よりも多いために癖付いてしまったのだ。
「その回数を減らすか、あるいは頻度を減らせば自然と熱は下がっていくよ。それと、道具に関しては好きでもない男とセックスするよりも、いつか現れる好きな男を想ってそれを使った方が俺はマシだと思うし」
まさしく未来と響の逆の意見であった。これこそが二人の狙いである。シキが根底では真面目であり、誠実な面を持つ事を知っているからこそ二人は逆の振る舞いをした。それがどういう結果をもたらすかを予想して。
「……そっか。あんたはそういう人なんだね」
「へ?」
「あたし達は、本気で好きな相手が出来るまで綺麗な身体でいるべきで、それでも耐えられないなら道具を使った方がいい。そういう事だね?」
「あ、うん。そうだけど……?」
「さすがはこの世界と立花の純潔を同価値と断言した人ですね。それと、言い難い事をはっきりと言い切る辺りも男らしい」
「そ、それほどでも?」
ツヴァイウイングからの言葉に何やら妙な空気を感じつつ、シキは疑問符を浮かべながら返事をした。
「では、聞かせて欲しいのだけど、貴方は私達とそういう事が出来るとしたらどう?」
「男としては有難く気持ちだけ受け取っておく。雄としては喜んでしたいかな? で、人としては申し訳ないけど遠慮させて欲しい」
「三つの答えがあるんですか?」
「うん。俺はもう夫で父だ。奥さんが十人いるだけでも問題なのに、そこで更に不倫とかは出来ない。これが俺の人としての意見。男としては嬉しいけど、こっちを良く知らない女性を抱く事は何か抵抗ある。で、雄はただ綺麗な女性相手なら喜んで種付けしたくなるってとこ」
「ぶ、ぶっちゃけたデスね」
「隠しても仕方ないしね。そっちも俺の本音を聞いた方がある意味安心出来るかなってさ」
「ま、それはそうかもしんねーけどよ……」
調の疑問への答えを聞いて彼女達はシキへの認識を改めていた。最悪だけど最低ではない。そういう表現がぴったりくる相手なのだと。
「あの、でもそれってこういう事ですよね?」
「ん?」
「えっと、奥さん達が納得していれば不倫っていうか、他の女性とエッチ出来る」
「…………え~っと、それは違うような気が」
「要さん、ならこう聞いたらどうですか? 私達が要さんとエッチしたいって」
「ええっ!?」
響の発言はシキの予想外のものだった。彼は、彼女達があくまで下腹部の熱をどうにかしたくてセックスをしようとしてると思っていたのだ。それは、ある意味で合っていた。だが、彼との会話を通じて彼女達も分かってしまったのだ。何故もう一人の自分達が彼と関係を持ち、子まで産んでしまったのか。
「いや、あのね立花さん。たしかに君達は装者っていう人に言えない秘密がある。だけど、それも永遠じゃないし、それを受け入れてくれる相手だって」
「じゃ、紹介してください。その男の人」
その返しにシキは息を呑んだ。彼を見つめる響の目は真剣だったのである。そこには、言う程それは簡単な事じゃないと言う声が込められていた。そしてそれは彼女だけでなく装者である他の者達の声でもある。
「……その返しはズルくないかな?」
「でも、本心です。きっとこっちの私達も同じ事言うと思います」
「そうですね。立花の言う通りです。実際、少なからず私や雪音はそういう相手を見つける事を考えてはみました。ですが、やはり無理なんです。装者である事を隠さないでいると、その相手が何に利用され、または狙われるか分からない。かと言って黙っていれば最愛の人へ隠し事をする事となる」
「そういう事ね。私の場合は、装者である事を知られているからこそ余計そういう相手が出来ないのよ。世界を救った女、なんてものにされてしまったから」
「あー、それはこっちのマリアもそうだったから分かる。当時のマリアもそんな事をぼやいてたよ」
懐かしむようなシキにマリアは溜息を吐いた。内心でこう思っていたのである。だからこそ余計シキとの関係にのめり込めたのだろうと。唯一自分が全てを曝け出してもいい相手と場所。それを与えただろうから。
「この流れでもシキさんはエッチしてくれないデスか?」
「いや、あのね?」
「シキさんのオチンポ欲しいです」
「っ?! つ、月読さん!?」
「ああっ! もうまだるっこしいのは抜きだ! スケベしたくねーのか! してーのか! それをはっきりしやがれってんだっ!」
「雪音さんまで……」
真っ赤な顔をして迫るクリスにシキは呆気に取られていた。かつて自分が色々と手を尽くし想いを尽くして至った状況。それよりも凄まじい状況が今、彼の前にある。それにシキは呆然とするしかなかったのだ。
そんな彼に彼女達は安心感を覚えていた。この男ならきっと自分達を優しく扱ってくれると確信して。それに、彼はもう一人の自分が認めた男である。それもまた彼女達には大きかった。
「…………分かった。じゃ、避妊具を取ってくるから」
「必要ないわ」
「そう、必要ない……え?」
「いらないと言ってるの。だって、一度出した程度じゃ妊娠しないのでしょ? なら、一度で終わればいいだけよ」
「そ、それはそうかもしれないけどね?」
「あたし達は一度だけでお願いしたいんだけどなぁ。それ、守れそうにない?」
「いや、それは大丈夫だけどさ」
「では、問題ありませんね。時間も惜しいですので早く始めましょう」
「え、あ、うん……」
この時のその場の全員は同じ気持ちで一致していた。一度だけセックスすればもう終わり。一度限りの夢のようなもの。それがこの場にいた九人の共通見解であった。
話が決まれば行動が速いのは当然シキだ。彼は躊躇う事無く服を脱ぎ、年齢と共に落ちる体力などを解決するために始めたトレーニングで、以前よりも逞しい体となっている。そういう意味では、彼女達は良かったと言える。若かりし頃のシキは、それなりの体であるが故に出来ない事もあったのだから。
「ちょ、ちょっと、あんな事言いながら勃起してるじゃない」
「当然だろ? 理性と体の動きは連動する訳じゃないんだよ。逆言えば、こうなってても頑張って大人の男やろうとしてた俺を褒めてくれ」
「こ、こうやって見るとやっぱりおっきいね」
「え、ええ。逞しくて雄々しい……」
「天羽さん、風鳴さん、顔近い。何? いきなりフェラしてくれるのか?」
「「……いいの?」」
同時に上目遣いでシキを見つめる二人。その瞬間、ペニスが大きく跳ねる。
「わわっ、今ビクンって動いたよ未来!」
「わ、分かったから。一々言わなくていいよ」
胸を隠すようにしている響と未来だが、揃って視線はシキの股間へと向けられている。反り返るペニスに目を奪われているのだ。
「あれが、その内ここに……」
「どんな感じデスかね……?」
「知るか」
ちょこんと布団の上に全裸で座り、調と切歌はまじまじとペニスを見つめていた。クリスは恥ずかしそうに胸を隠しながらも、視線をシキの股間へ向ける。そこでは、ツヴァイウイングによるフェラチオが始まろうとしていた。
「この前の響と未来のを覚えてる? 二人で左右から舐めてくれればいいからね」
「う、うん……」
「わ、分かりました……」
恐る恐る舌をペニスへ這わせる二人だが、その舌が亀頭へ向かうと同時に動きが速くなる。カウパーを舐め取った事で、二人にかつての奏と翼が経験した事が起きたのだ。それは、スープの味を知って思考が蕩け始める事。ドリンクはスープを基に作られているが、その味の濃さは当然ながらカウパーよりも薄い。そのため、既に前もって知っていた事により、二人はその味と匂いへ夢中になり出したのである。
「うん、上手だよ二人共。そのまま一人はしゃぶってくれる? もう一人は袋を揉んだり吸ったりして」
「「ふぁい」」
「嘘でしょ? もう翼達が……」
「今、聞いた事のねー声出してやがった。あんな声、出すのかよ先輩達って……」
蕩けた声。だらしない顔。それは普段の二人を知るからこその違和感。だが、シキからすれば見慣れてもいれば聞き慣れてもいるので、特に驚きもないし感動もない。ただ、愛おしいと伝えるように二人の頭を優しく撫でるのみ。それが余計女扱いされてこなかった二人を蕩けさせ、口から含む味と鼻で吸い込む匂いでどんどん女と、雌となっていく。
(これが男の、この人の味。ああ、もうあたし駄目かも……)
(温かく、それでいて優しい味、匂い。ここの私が言った事が分かる気がする。今、私は要さんに女として打ち直されている……)
恍惚の表情で亀頭へしゃぶりつく奏と、蕩けた顔のままで睾丸へ舌を這わす翼。その痴態に見ている者達が息を呑み、内股を擦り合わせ始める。それに気付いて、シキは優しく笑みを浮かべるとマリアとクリスへ手招きをした。
「イヴさん、雪音さん、こっちおいで。男に触られるとまた違う感じだから」
「……だそうよ?」
「……せっかくのお誘いだ。断るのも何だしな」
揃って期待に胸膨らませてシキへと近付く二人。すると、彼女達を抱き寄せてその大きな乳房へ手を伸ばした。
「「なっ!?」」
「大丈夫。痛くしないから。少しだけ俺に体を委ねて?」
「「あっ……んんっ……はぁん……」」
優しい手つきで乳房を揉むシキ。その刺激に二人の口から快感に喘ぐ声が漏れ出す。それに伴い表情も緩んだものへと変わり、力が抜けたのかそのままシキへともたれかかったのだ。
「す、凄い……マリアとクリス先輩が一瞬で」
「魔法の手デス。だ、だけど触り方が意外とエッチっぽくないデスね」
優しく乳房や乳輪、乳首を愛撫され涎を出しそうなぐらい感じている二人を見て、調と切歌はヴァギナが愛液を流し出したのを感じていた。自分達もああされてみたい。そう思い出したのだ。
一方、そんな羨望の眼差しを向けられている二人はと言えば、与えられる快感に溺れないようにするので精一杯だった。いや、正確にはそれをしてくれる存在へ、だろう。
(優しい手つきと的確な愛撫。これももう一人の私達で経験を積めばこそなのよね。つまり、彼は私が喜ぶ事を知っている。ああっ! ダメよ、ダメ。これは今回だけ。あの熱を無くせば終わりの治療なんだからっ!)
(あったけぇ。それにおっきな胸と頼もしい腕。……やべぇな、これ。あたし、ホント甘えられる年上に弱いみてーだ……)
既に虚ろな目になり出しているクリスと、何とか正気を保とうとしているマリアへ、シキは小さく微笑みかけるとこう問いかけた。
「キスしてもいいかな?」
「わ、私はさすがに……」
「……あたしはいいぜ。好きにしてくれ」
「く、クリス!?」
驚くマリアの目の前で、クリスの可愛らしい唇がシキによって奪われる。だが、それにクリスは嬉しそうに目を細めた。その光景にマリアの胸が騒ぐ。何せクリスはとても幸せそうな顔をしていたのだ。
「……どう?」
「悪くねー。ううん、好きかもしれねー。もっとしてくれ」
「いいよ。じゃ、今度は舌を入れるからね?」
「……んぅ」
先程よりも嬉しそうに微笑み、クリスは腕をシキの首へと回していた。もう完全に恋人のそれである。寂しがり屋で温もりに弱いクリスは、これまでの事であっさりと男の温もりと優しさに堕ちたのだ。そして、それはマリアの意地を溶かす事になる。
「わ、私も……いいわ」
「……本当かい?」
「え、ええ。その、クリスのそんな顔見せられたら」
「嬉しいよ、イヴさん」
「んっ……」
かつて、この世界のマリアは言った。たかが媚薬程度で女が、マリア・カデンツァヴナ・イヴが落とせると思うなと。だが、それはスープへの耐性がある程度あればこそだったのだろう。現に抵抗力のなかったマリアはあっさりシキの唾液の作用で蕩けた顔へと変わっていたのだから。
一方、フェラチオをしていた二人は役割を交代しており、翼が亀頭をしゃぶり奏が睾丸を舐めるとなっていた。
「っぷは、何て濃い味と匂い。これが、男性の、要さんの雄……」
「チュッ、そうだよ。あの白いの出されたらどうなるんだろうね?」
「……飲んでみたい」
「翼、あたしにもおくれよ?」
「覚えていられたら。はむっ」
「ったく……仕方ないね」
我を忘れるように男性器へ意識を向ける二人。同じように奪い合うようにキスをし合うマリアとクリス。そんな光景に遂に彼女達も動いた。
「要さん、私達も可愛がってくださいっ!」
「そうデスよ! 辛くて辛くて仕方ないデス!」
「マリア達ばかり、ズルい」
「私達も相手にしてくれませんか?」
その要求にシキは無言で苦笑すると小さく頷き、手招きをする。そして同時にこう告げたのだ。
「じゃ、フェラを四人でしてもらうね。立花さんと小日向さん、それに暁さんと月読さんで。風鳴さんと天羽さんはキスをしてもいい? で、イヴさんと雪音さんはマンコを愛撫してあげるから」
既に妻達でハーレムプレイに慣れているシキは、慌てる事も焦る事もなく、優しく八人の乙女をゆっくり準備していく。
「レロレロ……調ちゃん、私この味好きだよぉ……」
「ペロペロ、チュッ……私も好きです、響さん。オチンポ、大好き……」
「オチンポ、美味しいデス。レェロォ……」
「こんなの、こんなのダメなのに……レロッ……っ! 舌が止められないよぉ……」
うっとりした顔でペニスへ舌を這わせる四人の少女。その味は想像していたものよりも美味しかったのだろう。もう今にもしゃぶりつくしたいと言わんばかりに舌を這わせていた。
「あっ、そこ……んんっ……ああんっ!」
「指がぁ……あたしの中で動きやがるぅ……んふっ、そこ好きぃ……」
とっくに弱点などを把握しているため、シキの愛撫は的確であった。それを未経験の体で味わうマリアとクリスはもう彼のテクニックに溺れている。蕩けた顔で与えられる快感に震えるだけ。それが今の彼女達であった。
「シキさぁん、もっとキスしてぇ」
「奏ズルいよ。次は私の番……んっ」
そして、ツヴァイウイングも堕ち切っていた。奏などシキを名前にさん付けで呼ぶようになっており、翼も彼に甘えた声をするようになっていたのだ。地味に奏のさん付けがシキ的には興奮材料となっていた。彼の妻である奏は呼び捨てであったからだ。
やがてシキが横になり、彼女達は位置を交換する。切歌と調がキスをされ、響と未来がヴァギナの愛撫を受け、奏達年上組がフェラを受け持ったのだ。そこで遂にシキが一度目の射精を行った。噴出する精液。その熱さと匂い、味にまずペニス付近にいた四人が撃沈。次に顔などに少し付着した響と未来が陥落。最後にキスをしていた切歌と調がシキの体に付着したスープを舐め取り絶頂した。
「……凄いな、これ。何て言うか、やっぱり少しずつ慣らすべきなんだな、最初は」
八人の乙女があられもない姿で気を失っているのを見て、シキはやや困った顔で呟く。それでも彼女達のヴァギナはペニスを求めてひくついており、まだ終わっていない事を物語る。
「みんな、起きて。起きないとセックスはなしで俺は部屋に戻るよ」
その声で彼女達がゆっくりと体を起こした。それは本能による動きだった。目覚め始めた雌の本能。それがこの雄を逃してはいけないと彼女達を突き動かしていたのである。そして、そんな彼女達が最初に見たものは……
「「「「「「「「ぁ……」」」」」」」」
雄々しく反り返り、鈴口からは射精の名残を流す立派なペニスだった。
「じゃ、いよいよセックスだね。誰からこれを入れられたい?」
その問いかけに少女達は股を濡らし、唾を飲み、顔を上気させ、瞳を潤ませる。その思考は最早ペニスの事しかなかった。
((((((((チンポ。チンポっ。チンポ! チンポっ!))))))))
雌を欲して反り返る雄の象徴。それから漂う自分達を誘う匂い。もう、彼女達に理性はなかった。葛藤も躊躇もなかった。気付けば八人はペニスを見上げるように座り、荒い息でシキを見つめていた。それは、さながら服従の証である。雌として雄に媚びるかのようなその行動に、彼も最初は驚きを見せたが、すぐに理解したのか小さく笑みを浮かべるとその腰を突き出す。
「舐めて」
その瞬間、八人が弾かれたように動いた。群がるように舌を伸ばしてペニスへ這わせたのである。全員は無理なので何名かは睾丸へ這わせる程の徹底ぶりだ。まるで発情期の動物を思わせる程のそれに、シキは笑みを見せながら対応していた。彼女達の頭を順番に優しく撫で、こう告げたのである。
「全員布団へ移動したら、股を広げて両手で足を持ち上げてチンポを待つんだよ?」
そんな指示を彼女達は待っていたかのように頷き、素早く行動を開始する。もう、シキにも理性は残っていなかった。彼もまた雌達にあてられて雄へと戻っていたのである。この後、彼女達は約束通り一度だけ雄の種を注がれて終わりを迎えた。そして翌日何事もなかったかのように帰っていったのだが……
「ああっ! お尻、お尻いいっ!」
「ふふっ、でしょ?」
恍惚の表情を受かべながらペニスをアナルで迎え入れているのは、あろう事か少女の響であった。それを横で優しく見守るのはもう一人の響である。そして、そうなれば当然アナルセックスを行っているのは彼であった。
「そろそろ出すよ、響ちゃん! アナルへ意識を集中してっ!」
「はいっ! いっぱいください! 要さんの熱いチンポミルクっ!」
「おおっ!」
「んはあああああっ! お尻焼けるよぉ!」
「でも、美味しいでしょ? アナルで飲むオチンポスープも」
「うん……私もお尻セックス好きになっちゃったぁ」
「響ちゃん、お尻セックスじゃなくて?」
「……アナルセックス、好きぃ」
「うんうん、よく言えました」
涎さえ流しながらの感想にシキと響が笑う。そしてまたある日は……
「ああっ! これ、これやべぇ! 抱き合ってするセックスやべぇよぉ!」
「だから言っただろ? それでキスされると最高だぜ?」
「キス、ダメぇ! んな事されたらんむっ!?」
強引に口を塞がれるも、クリスはすぐに嬉しそうに目を閉じて腰を振り始める。そんな様子を見てもう一人のクリスが小さく笑った。
「そうそう。素直が一番だ。そのまま全身で抱き着いて甘えろ。で、一番奥で出してもらえば……」
「っ!? イクぅぅぅぅぅぅっ!!」
「てなもんだ。どうだ? 最高だったろ?」
「クリスちゃん、どう?」
「……うん、最高だった」
恥ずかしそうにシキへ抱き着いて顔を隠す少女に、彼とその妻は笑みを見せ合う。またある日は……
「ジュプジュプ……」
「そう、そのまま胸で扱きながら吸うの。そして、上目遣いを忘れないように。……そうよ」
大きな乳房を使ってパイズリを行うマリア。その傍で指導をしているのはもう一人のマリアである。逞しいペニスを口いっぱいに頬張り、その表情は既に蕩け切っていた。
「ああ、マリアちゃん、そろそろ出るよ!」
「出すタイミングで強く吸ってあげなさい。そうする事でより美味しいスープが出るわ」
「……ジュゥゥゥゥ」
「おうっ!」
「っ!? ごくっごくっ……ああっ! この味、堪らないわぁ!」
「でしょう? さ、次は分かってるわね?」
「……シキさん、私のオマンコに逞しいペニスを入れてたっぷり種付けてください」
妖艶に微笑み、臀部を突き出すマリア。その艶姿にシキのペニスが瞬時に逞しさを戻し、もう一人のマリアが苦笑した。またある日は……
「いい? 勝手にイクのはダメだよ? いつも男の人を気持ち良くするのを忘れちゃダメ」
「そうデス。目の前の相手を気持ち良くしながら、オマンコで感じるオチンポへも意識を向けるんデス」
「ふわぁい……んぅ」
「んっ……りょーかいデスよ……」
重なり合うように体を密着させ、キスをするは調と切歌。そんな二人へ助言を行うのはもう一人の調と切歌である。そんな少女二人の下半身は、硬く熱いペニスが抜き差しされていた。
「ああ、やっぱりきりしらのサンドイッチは最高だ。このまま二人のお腹へかけてあげるからね?」
「「はい、お兄ちゃん。いっぱい出してください(デス)」」
「おっ……出る……ああっ!」
「「熱い(デス)……」」
腹部に感じる熱さを嬉しく思い微笑む二人だったが、そのまま目の前の相手へ舌を伸ばして絡め合う。それを呆れたように見つめ、もう一人の彼女達は首を横に振った。まだまだ教育が必要だと思ったのである。またある日は……
「も、もうダメっ! イクっ! イっちゃうぅ!」
「いいよ、イっても。その代わり、どうするんだっけ?」
「し、シキさん! 私の陸上で鍛えたオマンコでいっぱい締め付けるから沢山ミルクを飲ませてぇぇぇぇっ!」
「未来ちゃんっ! 未来ちゃん……っ!」
「あああああああっ!!」
仰け反りながら両足をしっかりシキの腰へ巻き付け、未来は絶頂を迎えた。そんな彼女へにっこりと微笑み、もう一人の未来が頭を撫でる。
「ね? エッチな事を言いながらだともっと気持ち良くなれるでしょ?」
「……はい、ありがとうございます」
「どういたしまして。さ、一緒にお掃除しようか?」
「はい……」
同じような淫靡さを漂わせながら二人の未来はペニスへと舌を這わせる。その頭を唯一愛する雄に撫でられながら。そしてまたある日には……
「はあああんっ! た、逞しい男根が、男根が私を貫いてるっ! 鞘にされてしまうぅ!」
「違うでしょ? されてしまうじゃなくて?」
「っ!? ああ……もう私は鞘だ。要さんと交わる時だけは鞘なのぉ! この立派な刀を納める鞘ぁ!」
歓喜に打ち震えるように宣言する翼。捨てたはずの女をしっかり呼び覚まさせ、刻み付けた雄へ服従するかのように、彼へ臀部を突き出して淫らで美しい声を上げていた。そんな彼女をもう一人の翼が微笑みながら見つめる。
「翼ちゃん、いいよ。そのまま意識をマンコに集中して」
「はい! いつでも出してくださいっ! 要さんの子種、全部私の中へぇ!」
「っ! 翼ちゃんっ! ああっ!」
「イクぅぅぅぅぅぅっ!!」
「はぁ、はぁ……良かったよ、翼ちゃん」
「そうね。とても綺麗な女の顔だった。きっと貴方の歌にも活きてくるわ」
「はい、姉様……」
空が自分を姉と呼んだように、少女も大人の己を姉と呼んでいた。女としての尊敬と敬愛を込めて。またある日は……
「い、イってる! もうイってるからぁ! だから抜いてぇ!」
「じゃ、何で足を絡めてんのさ。それがあんたの本音だよ」
「奏ちゃん、可愛いよ。さっ、また出してあげるからね」
「ああっ! ダメっ! ダメぇ! 子宮で飲むスープ、ダメなんだよっ! あたし、あたしがどんどん弱くなるからぁぁぁぁっ!」
しっかりとシキへ両腕両脚を絡めて、涙さえ流して首を横に振る奏。だが、声も顔も歓喜に震えていた。たった一人で戦う彼女は、それを理由に足繁くシキの元へ通っていた。その結果、何とリンカー不要の体となり、今や常時ギアを展開すればセミエクスドライブとなっているのだ。
そのため、すっかりシキとのセックスに溺れている彼女を、もう一人の奏が少し呆れながら眺めていた。
「……どう?」
「うん、しっかり子宮口へ注いだ」
「ん、お疲れ。ほら、もう終わったよ」
「…………あたしをこんな風にしてどうすんのさ。おかげで最近一人寝が辛いんだよ」
「そ。なら、あんたさえ良ければあたしがしばらく代わってあげるよ? で、その間にこっちで子供産むか? 勿論、シキの種で、ね」
その天使のような悪魔の誘いに、少女を脱しつつあった奏がどう答えたか言うまでもない。ただ、もう一度ねだるように臀部を突き出した事だけを記す。
八つの器は、液体を注がれ満たされた。だが、中身はいずれ減っていくもの。しかし、一度満たされる喜びを知った器は再び中身を求める。何も考えず、ありのままの自分を出して受け止めてくれる場所で、唯一の雄に抱かれながら。
((((((((女に生まれて良かった……))))))))
心の底からそう思いながら、今日もまた誰かが雄に抱かれ淫らに歌う。指揮者によってその音色を操られるように……。
これにて終わり。淫姫ヴァージョンだとこうなるしかないんですよ(汗
この続きは……反応が多ければ考えてみます。疲れそうですけどね(苦笑