それと、これはIF編からの分岐話なのでAXZ以降の設定はなかった事になっていますのでご了承ください。
大人への扉を開けてしまった日 前編
「……やっぱり気になるなぁ」
響さんは大人になるべき時になったらって、そう言ってたけど、気になってしまうものは気になる。
マムに聞いてもきっと教えてくれないか、下手をすればここへ来てはダメって言われそう。
何となくだけど、今の響さん達からは嗅ぎ慣れない匂いがするし、それも関係してる気がする。
「こうなったら今度姉さんに聞いてみよう」
グッと拳を握って気合を入れる。そうと決まれば早速帰ってマムへ相談しよう。そう思ってギャラルホルンへと向かって帰ろうとした時だった。そこで私は珍しいものを見た。
「あれって……奏さん?」
ギャラルホルンの中を移動する奏さんを見つけたんだけど、何かがおかしい。
だって、奏さんは姉さん達の世界に来てなかった。なのにギアを纏ってどこかへ行こうとしてる。たしか、そっちには奏さんのいる世界へのゲートはないはず。
「……もしかして」
奏さんは姉さん達が綺麗になった理由を知っているんだ。で、今からそこへ行こうとしてるんじゃないかな。そう思って私は奏さんの後をつけてみる事に。
何だか初めて姉さん達の後を追った時を思い出すなぁ。そんな事を考えながら私は奏さんを追ってギャラルホルンの中を移動する。
やがて奏さんは一つのゲートへ消えた。こんなところにゲートがあるなんて知らなかった。一体どんな世界なんだろう?
「出てみれば分かるかな? うん、よしっ!」
思い切ってゲートへ飛び込むと、そこは初めて見る公園。ううん、何度か見た事がある。姉さん達の世界にもあった公園だ。
「……奏さん、どこ行っちゃったんだろう?」
もうそこに奏さんの姿はない。ならまず行くべきは姉さんが暁さん達と暮らしてるマンション。そう思って歩き出す。
「街並みは……ちょっと違うかも」
見上げれば月は欠けていて、ルナアタックっていう事件があった事を教えてくれる。きっとここは姉さん達の世界に近いんだと思う。
でも、どうして奏さんはここへ来たんだろう? 何が姉さん達の世界と違うのかな?
そう思って街を歩いていると、ふとしたポスターが目に入った。
「え?」
それは少し色褪せていたけど、間違いなく姉さんが写っていた。それだけじゃない。翼さんと奏さんもだ。
何より、ドライディーヴァなんて名称が載っていて、ラストライブDVDなんて書かれている。
「……もしかして、ここだと奏さんは死なずに済んだのかな?」
姉さん達の世界じゃ奏さんは絶唱を使って死んでしまったらしい。じゃ、さっきの奏さんはここの奏さん? でも、その割には私のよく知ってる奏さんだったと思う。
「分からないや。とにかく、今はマンションを目指そう」
気を取り直して進む。やがて見えてきたマンションは私の記憶と変わりはなかった。でも、そこに姉さんはいなかった。ううん、暁さん達もいなかった。
行くあてを無くした私は、とぼとぼと最初の公園へ戻るしかなかった。だけど、そこで私はビックリする人と出会った。
「ま、マム?」
そこにはしっかりと自分の足で歩くマムがいた。しかも、その両側には大きくなった二人のエルフナインがいる。
「セレナ? それにしては幼いですね」
「もしかして、平行世界から来たんですか?」
「え? あ、はい」
「グランマ、どうする?」
「仕方ありませんね。一人で返すのは不安ですし、一度家へ連れて行きましょう」
戸惑う私を見て二人のエルフナインが困った顔をした。マムはそれに苦笑して二人の頭を優しく撫でる。それを見て、ちょっとだけ二人が羨ましいって思った。
私の世界のマムは、そんな風に笑ってくれないし撫でてもくれないのにって。それに、グランマって呼んでた。じゃあ、ここのマムは二人にとってのお祖母ちゃん?
「セレナさん、良かったら僕らの家へ来ませんか?」
「一人で帰るにはここは少々特殊な世界だし、疲れてるみたいだから」
「い、いいんですか?」
「構いませんよ。大方ここへ来る誰かをつけてきたのでしょう。その相手も家にいるはずですから」
こうして私はマム達と一緒にそのお家に行く事になった。綺麗なクリスタルを使って移動した時はビックリしたけど、もっとビックリしたのは二人のエルフナインから自己紹介された時だった。
何と一人はキャロルって言う名前のエルフナインの双子のお姉さんだって言われた時、私はエルフナインに姉さんがいたんだって初めて知った。
だけど、そう言うとエルフナイン、ううんこっちじゃエルって呼ばれてるみたい。エルは、それを姉さん達の世界のエルフナインへ聞かないで上げて欲しいと言われた。
「きっと、辛い思い出を話す事になってしまうので」
どこか悲しそうな顔で言われたので、きっと姉さん達の世界じゃキャロルは死んでしまったんだと気付いた。私の世界での姉さんや姉さんの世界での私と同じだって。
マム達と一緒にシャトーって言うところを歩く。ここがこの世界でのマム達のお家で、姉さん達も一緒に暮らしてるって聞いてまたビックリ。
「「ただいま」」
「ただいま帰りました」
「「「「おかえり(だゾ)」」」」
広いところに出たら、四人の青白い肌の人達がお出迎えしてくれた。でも、その視線が私を見て一斉に驚く。ふふっ、何だかおかしいな。
「せ、セレナ、なのですか?」
「地味に幼い……」
「ビックリしたゾ~」
「これ、そういう事ですよね、マスター」
「そう。で、今日は誰が来てる?」
「「「「奏(だゾ)」」」」
キャロルが尋ねると一斉に四人が奏さんの名前を出した。と、マム達が私を見てくる。これ、確認かな? そう思って頷いておく。
「どうやら彼女がこのセレナを案内してしまったようです。仕方ありません。セレナ、簡単でいいので貴女の世界の事を教えてください」
「は、はい。えっと、私のいる世界は……」
優しく微笑みかけてくれるマムなんて初めて見たから思わず声が上ずっちゃった。でも、とっても綺麗な笑顔だった。マム、笑うとあんな風になるんだ。
そうやって私が説明していると、そこへ予想してなかった人達が顔を見せた。
「あれ? 知らない子がいるって……嘘っ?!」
「お前、セレナかよ?」
「響さん、クリスさん……」
振り向いたら響さんとクリスさんがいた。でも、私の知ってる二人と違う。もっと大人って言うか、どこか落ち着いた感じがする。それに響さんはお腹が大きい。これって、赤ちゃんがいるって事?
「響さん、クリスさん、このセレナさんはどうも平行世界から来たらしいんです」
「そこはあの奏の世界に近いらしくてな。ルナアタックが起きてないそうだ」
「そして、マリアがセレナの代わりに亡くなったそうです」
「「……そっか」」
二人がちょっとだけ悲しそうな顔をして私の頭をそっと撫でてくれる。何だかお母さんみたい。姉さんとは違うけど、どこか近い感じもするな、ここの響さんとクリスさん。
「あっ、じゃあセレナさんは?」
「セレナは丁度買い物へ出ています。そろそろ帰ってくるかと」
「ただいま~っ!」
聞こえた声に私は顔を動かして息を呑んだ。そこには、綺麗な大人になった私がいたからだ。
背は伸びていて、胸も大きくなってる。姉さんには……負けてるかもしれないけど十分大きい。良かった。私も大人の女性らしくなれるんだ。
「セレナさん、丁度良かった。実は今」
「平行世界のお前が来てるんだよ。ほら」
「え? わぁ!」
大人の私はこっちを見ると目を輝かせて駆け寄ってきた。手に持ってるのは、買い物袋なんだろうな。野菜とかが見える。
「いらっしゃい。貴方はいくつ?」
「え、えっと……」
近くで見ると余計お姉さんって感じが凄い。マリア姉さんと違って、何というか、本当に私のお姉さんって思える。
当たり前か。私なんだもん。でも、やっぱり何だか違和感がない。他人じゃないけど他人のはずなのに、私にもう一人姉がいたってそんな気になってくる。
「セレナ、その子は長きに渡りコールドスリープしていたそうです。なので実年齢はあのネフィリムの事故当時とそこまで大差ないですよ」
「そう、なんだ。それなのに装者として頑張ってるの?」
「う、うん」
私を見つめる顔を見て、やっと違和感がない理由に気付いた。お母さんみたいなんだ、この私。
「そっか。そっちに響達はいない?」
「えっと、多分こっちじゃ響さんはいても装者にはなってないと思う」
「……ごめん。貴方の世界もあの奏と同じなんだね」
そう言ってセレナさん、でいいかな? 大人の私が抱き締めてきた。その優しくてあったかいのは、姉さんに似てるようでどこか違った。
「もしかしたらもっと辛い気持ちにさせるかもしれないけど、ここにいる間は貴方はただの子供でいいからね。私の事も姉みたいに思ってくれていいから」
言われた言葉を理解した瞬間、私は思わず目を閉じた。だって、その言葉は私が聞きたくてでも聞けないと思ってた言葉だったから。
ただの子供でいい。それがどれだけ私に大きい意味を持つかをこの私は知ってるんだ。だから今、私の事を抱き締めて顔を見られないようにしてくれている。
泣いてもいいからねって、そう言われてるみたい。ううん、きっと言ってくれてる。今、ここでなら私は何を言っても許されるんだって。
「私は、姉さんや切歌に調がいた。支え合える人がいた。だけど、それがいなかったら、たった一人で装者をしなきゃいけないなんてなったら、きっと私は耐えられない。それが出来ているだけでも、貴方は凄いよ。だから、この世界では頑張らなくていいから。甘えていいからね。ワガママ言っていいからね。ここは、貴方以外の装者もいるし、何よりもうノイズなんか出てこないから」
聞こえた言葉に思わず目を開けた。ノイズが出てこない? どういう事だろうと思って顔を上げると、セレナさんと目が合った。
「詳しい話は長くなるけど、みんなで頑張った結果ノイズが出てくる事はなくなったの」
「そ、そんな事あるんですね」
「うん。でも、これは色々な偶然が重なった結果なの。さてと、じゃあとりあえず貴方にはお姉ちゃんしてもらってもいいかな?」
「え?」
その言葉に首を傾げるとセレナさんは私を連れてその場を離れる。荷物はクリスさん達が預かってキッチンへ運んで行った。
私はセレナさんに手を引かれるまま歩く。やがて一つのドアの前でセレナさんは足を止めてドアを開ける。
「あれ? セレナママ?」
「あっ、マムだ!」
中にいたのはクリスさんにそっくりな女の子と、昔の私みたいな女の子。マムってセレナさんを呼んでるって事はもしかして……?
「ソフィー、カペラ、紹介するね。こっちは別の世界の私。見ての通り、まだ大人じゃないんだ」
「「お~」」
揃って私を見て声を出す二人がとっても可愛い。私よりもカペラって子は無邪気な気がする。ソフィーって子も、クリスさんよりわんぱくそう。
「だから、今から夕飯までセレナお姉さんに家の事教えてあげて。もし夢子達と会ったらセレナお姉さんに紹介してあげてね」
「「はーいっ!」」
「と言う訳だから、姉として二人の事よろしくね」
「ええっ!?」
突然の事で驚きしかないけど、どこかで私は喜んでいた。だって、もう私の傍にカペラとソフィーがいてこっちをキラキラした目で見上げていたから。
妹や弟が欲しかったって、そう思ってるのも私だけあって知ってるんだ。やっぱり私は私なんだって、そう思った。
「セレナおねーさん、あたしたちがいえのなかあんないしてあげるな!」
「まずはどこから?」
「え、えっと、二人の部屋はここなの?」
見れば子供部屋って感じに色んな物が置いてある。遊ぶための玩具や道具がいっぱいだもん。
「ううん、あたしやカペラのへやはべつのとこ」
「マムたちといっしょなの!」
「そうなんだ。じゃ、そこへまず案内してくれる?」
「「うんっ!」」
可愛い妹が出来たみたいで、私は嬉しくなった。両手をカペラとソフィーに引かれて私はその部屋を後にする。
楽しそうに笑う二人を見て私も笑顔になる。でも、一体この子達のお父さんは誰なんだろう? そんな事を考えながら私は二人に案内されるままシャトーの中を歩く。
「セレナおねーさん、こっちこっち!」
「はやくはやくっ!」
「ま、待って。慌てると危ないよ!」
で、でも、小さな子ってこんなにパワフルなの? 私もこのぐらいの頃ってこうだったかな? ただ、たしかにマリア姉さんがよく困っていたような気もする。
けれど、それが嫌じゃない。むしろ嬉しく思える。子供が元気に笑顔で過ごせるって、それだけ私には珍しい事だって思えるから。
セレナが新米お姉ちゃんとして二人に振り回され始めた頃、シキは自室で来訪者である奏の体を愛撫している真っ最中だった。
「んっ、シキさぁん、もっとぉ」
「奏ちゃんはすっかりスケベになったね。どこをどうして欲しいか言ってごらん?」
奏の張りのある乳房を両手で支えるように持ち、シキはどこかからかうようにそう煽る。問いかけから彼の手は止まり、奏はお預けされた犬のように切なそうな声を漏らしてシキへと艶かしい視線を送った。
「やだぁ。お願いだよシキさん。そんなイジワル言わないでさぁ」
「ダメダメ。奏ちゃんは適合率を上げる特別訓練って嘘ついて、男のチンポ欲しがるようなスケベ装者なんだからさ、スケベならスケベらしくエッチな言葉を言うんだよ」
「ひどーい。あたし、シキさんのチンポなしじゃダメな身体にされたんだよ? 責任取ってくれるって、そう言ってくれたのにぃ」
「俺が責任を取るのはスケベだって認めたエロ装者の子達にだよ。今更自分はスケベじゃないなんて言い出すようなウソツキは、知らないなぁ」
そう言ってシキは舌を伸ばして奏へ近付ける。その動きに奏は嬉しそうに目を閉じて舌を絡ませた。
今の奏にとってシキの唾液は蜜も同じ。どこまでも甘く思考を溶かす味なのだ。だが、それはすぐに離れて行く。
寂しそうな眼差しを向ける奏へ、シキは続きが欲しいなら分かるよねとばかりの表情を返した。
「……あ、あたしはシキさんにおっぱいを可愛がって欲しい」
「可愛がる?」
「……揉んだり乳首を弄ったり吸ったりされたいっ」
「意外と殊勝だね、今日の奏ちゃんは。おっぱいだけでいいんだ?」
「っ! キスしながらおっぱいを揉んで、乳首を摘んだりクリクリしたりしながら、チンポでオマンコの中いっぱい掻き回して欲しいのぉっ!」
目を閉じて顔を赤くしての宣言。その初心さにシキは満足そうに頷き、奏の右手を掴むと自分のペニスへと導いた。
その雄々しく反り返る物を触り、奏は思わず喉を鳴らした。更にそのまま扱き始めたのだ。
「奏ちゃん、キスしようか」
「はい……んぅ」
舌を絡めるキスをしながら、奏はシキの片手が自分のヴァギナを愛撫し始めたのを感じ、嬉しそうに目を細める。
互いにキスをしながら相手の性器を刺激するそれは、奏にとって幸せへのカウントダウンにも等しい。
愛液を流せば流す程、シキがペニスを反応させてセックスが近付くのだ。今の奏の頭の中は彼の子を宿して産む事しかない。
(ああっ、シキさんのチンポ、こんなに硬くて熱い。早くこれを入れてもらって、あたしの子宮をシキさんの子種で一杯にして欲しい……)
シキのペニスを扱き、残った左手をシキの右手と繋いでキスをする奏はとても幸せそうな笑みを浮かべていた。
孤独にノイズと戦う日々。リンカーによる体への負担。それらから奏を解放してくれるのがシキとの一時だったからだ。
初めて知った男の味、快楽。寄り掛かれる嬉しさと喜び。女として目覚めた奏は、もうシキから離れる事など出来なくなっていた。
出来る事なら一緒に生きていきたい。傍にいてもらって支えて欲しい。自分だけを愛して欲しい。シキに初めて抱かれてから奏の中に生まれた願望であり欲望だ。
だけど、それは出来ない。シキは別の世界の住人であり、多くの妻と子を持つ父なのだ。奏もさすがに自分そっくりの麗美を始めとする子供達を不幸にしてまで、自分の幸せを求める事は出来なかったのだから。
「奏ちゃん、そろそろ出そうだけど、どうする?」
「あむっ」
迷う事なく奏は体を動かしてシキのペニスを咥え込んだ。そのまま舌を絡めるようにしながら顔を動かしてのディープスロートを始める。
カウパーの味にヴァギナを濡らしながら奏は夢中でペニスをしゃぶり続けた。その脳内はもうそこから出てくる熱い粘液の事でいっぱいである。
(チンポミルク欲しい! 早く出てこいチンポミルクぅ! あたしの大好きで、最高の、シキさんからの愛の塊っ!)
そんな熱心にフェラチオをする奏の頭をシキはそっと撫でる。その愛撫に奏は喜び、より一層フェラチオへ熱を込めて行く。
「いいよ奏ちゃん。そのまま続けて」
言われるまでもないとばかりに奏はペニスをしゃぶり続ける。シキの大きな手で撫でられながら愛液を垂れ流し、彼女はフェラチオする事で絶頂へと近付いていく。
(ああっ! どうしてチンポってこんなに美味しいんだ? シキさんのチンポ、ずっとフェラしていたいっ! ずっと、ずっとあたしを使って欲しい! このチンポをあたしのものにしたいよぉ!)
そんな彼女の内心を知っているシキは、その感情が最高潮に達した瞬間残った片手を奏の秘所へと移動させると、そっと陰核を摘むと同時に射精したのだ。
「~~~~~っ!?」
声にならない声を出しながら、奏は白目を剥く程の快楽と幸福に身を委ねて意識を手放す。それでも出された精液は一滴残さず吸い尽くすのだから大したものであろう。
いや、最早それは体の反射と言える。奏の意思とは関係なく体がそれを摂取しようとしているのだ。それ程生命のスープが持つ効果は奏の体には大きいと言えた。
丁度それを待っていたかのようにシキの部屋のドアがノックされる。一瞬どうしようかと思ったシキだったが、まずは確認するべきかと思って声を出した。
「はい?」
「あっ、シキさん? 奏ちゃん、そこにいますか?」
「セレナ? いるけど、どうかした?」
聞こえてきた声がセレナである事にシキは小さく安堵した。一応子供達はシキの部屋へ来る事はなく、用がある時は必ずノックをするように徹底して教育されているのだが、それでも相手は小さな子供絶対はない。
それ故、鍵をかけて事に及ぶようにはしていたのだ。それでもどこか不安を抱く辺りはシキらしいのかもしれない。
「えっと、実は平行世界の私が来てて」
「平行世界のセレナ?」
奏との行為で思考が性的な方へ傾いていたシキは、その言葉で自身が出会った頃のセレナを思い出してペニスを反り返らせる。十代後半のセレナをもう一度抱けるのだろうかと、そう考えたのだ。
「はい。でも、色々あって子供の姿なんです。ネフィリムを絶唱で何とかしたぐらいだから十三歳ぐらいかな?」
「……そうか」
年齢を聞いた瞬間、シキは即座に父親モードとなった。十三歳となればまだまだ保護者の下で暮らす年齢だ。そんな相手に性的興味を向けられる程、シキはもう若くなかったのである。
「それで、そのセレナちゃんがここへ来たのは奏ちゃん関係って事?」
「みたいです。後をつけてきたみたいで」
そこでシキは大方の事情を理解した。十三歳の女子と言えば多感な年頃に突入している。響達が自分と肉体関係を持った事で女性としての自信や美しさを増したのに気付いて、その秘密を探ろうとしたのだろうと。
(これは奏ちゃんとの本番は少し先延ばしだな)
意識を失いながらも幸せそうな奏へ一度だけ目をやって、シキはその体を優しくベッドへと寝かしてドアの外にいるセレナへと告げた。
「セレナ、少し待っててくれ。すぐに行くから」
「ここがおフロっ!」
「こっちはおんなゆだからパパははいっちゃダメなんだ」
「そうなんだ」
カペラとソフィーによるシャトー案内は、もう既に部屋ではなく今日セレナが使うであろう施設のものへと変わっていた。
「なかもみてみる?」
「みる?」
「いいの?」
「「うんっ!」」
歳が近い上にセレナはカペラとソフィーの大好きなセレナママに似てる事もあり、すっかりお姉ちゃんとして二人は慕い出していた。元々要家の関係性は血縁では語れない部分が多い事もあり、血の繋がらない母や姉が生まれた時からいる二人にとって、セレナの存在は特に違和感などを覚える事もない事であったのだ。
二人に連れられセレナは脱衣所へと足を踏み入れる。その銭湯や旅館の大浴場を模した作りに目を何度も瞬きさせ、少しだけ覗いた浴室には感嘆の声を出すしかない。
「ここでみんなでおフロはいるの!」
「あたしやカペラはよくママたちのせなかながすんだ!」
「そっか」
幸せそうな光景を想像し、セレナは胸が痛くなるのを覚えていた。それはここを最初に訪れた響達が感じたものとは少し違うもの。
(いいな。私も、あったかい家で家族と暮らしたい……)
何もナスターシャ達がいる施設に不満がある訳ではない。だが、大家族で仲睦まじく過ごし、更に血が繋がらないでも姉妹がいて母親がいる暮らしにまだ幼いセレナが憧れを抱かぬはずはなかった。
と、そこへ慌ただしい足音が一つ聞こえてきた。
「っと、いたいた! 父さんっ! カペラ達、ここにいるよ~っ!」
「「レミねえ?」」
「奏さんそっくり……」
脱衣所へ飛び込んできたのは奏の娘の麗美。その姿を見たセレナは改めて実感するのだ。ここの奏は母親であり、カペラやソフィーから聞いた通り響と未来以外の装者は全員子を産んでいるのだと。
セレナ達が麗美の出現に軽く驚きを浮かべていると、それから少し間を置いて脱衣所へ顔を見せる者がいた。
「あ、本当だ。麗美、ありがとう」
「「パパっ!」」
「どういたしまして」
満面の笑顔でシキへと駆け寄るカペラとソフィー。麗美はシキに頭を撫でられご満悦。そんな光景を見つめ、セレナは初めて出会うシキに遠い記憶のかなたにある父の姿を見ていた。
「あれが……二人のパパ……」
三人の娘へ笑みを返して抱っこをねだるカペラとソフィーに困り顔をし、麗美がそれを見て自分もとねだるのを苦笑しながら嗜めるシキを眺め、セレナは知らず笑みを浮かべていた。
そんな彼女に気付き、シキがソフィーとカペラを両腕で抱えながら微笑みかける。その姿に大人の男性らしい頼もしさと力強さを感じて、セレナは少しだけ感嘆するように息を吐いた。
「やぁ、はじめまして。要シキと言います」
「あ、えっと、セレナ・カデンツァヴナ・イヴです」
「じゃ、セレナちゃんって呼ばせてもらうね。うちには同じ名前の奥さんがいるから」
「は、はい。構いません」
そこからシキがセレナへ尋ねたのは今日どうするかだった。泊まるのなら用意をするし、帰るのなら響達の世界まで案内するというその申し出に、セレナは迷ったものの一旦帰ってナスターシャへ報告をしなければと真面目に答えを出した。
これにカペラとソフィーが寂しそうな顔と声を出してセレナを困らせるも、それを麗美とシキが優しく説き伏せ、セレナ自身も今度来る時はちゃんと許可を取ってから来ると二人に約束する事で事なきを得る。
こうしてセレナは大人の自分と共に帰還の途へと就く。ただ大人の自分と別れた後、彼女は響達の誰かからある事を問い質すべく本部内を散策、休憩スペースにいた切歌へと問いかけたのだ。
―――暁さん、シキさんって知ってますか?
この時、セレナに見つかったのがクリスや翼、あるいはマリアであればまだ誤魔化しやセレナの質問の裏にあるものへ気付いたかもしれない。だが、切歌は如何せんそういう事へ思考を巡らせるタイプではなかった。
―――知ってるデスよ。当然デス!
彼女はセレナが誰かにシキを紹介されたのだろうと考え、その質問へあっさりと肯定を示したのだ。
セレナはそんな切歌へ質問を繰り返し、響達が綺麗になった理由はシキにあると確信を持って行く。何しろシキの事を話す切歌はとても嬉しそうで幸せそうで、何より綺麗だったのだ。
「あれ? セレナ?」
「あっ、調」
「月読さん、お久しぶりです」
そこへ現れるのはシャワー上がりの調。切歌は彼女を待っていたのである。そして、セレナはここが潮時と判断、帰るために腰を上げた。
「うん、久しぶり。どうしたの? マリアは仕事でいないけど」
「調、セレナもシキさんと会ったみたいデス」
「……そうなの?」
僅かではあるが調の目に鋭さが宿る。彼女は誰かがセレナをシキ達の世界へ関わらせるはずがないと思っていたのだ。何せ、あの世界は自分達でさえ羨ましいと思う事が多いのだから。
(あの世界でマムと二人、ノイズと戦ってるセレナなんかシキさん達の世界は辛い事だらけだ。絶対セレナは勝手にシキさん達の世界へ行った。それはどうして?)
さすがに理由までは調でも察する事は出来ない。それでも彼女はセレナが何か目的を持ってシキ達の世界へ行った事は分かった。
調の視線を受けてセレナは若干気まずそうに頷き、素直な彼女らしく何故シキ達の世界へ行ったのかを話し出した。
最近響達が綺麗になってきた事。その理由を聞いたら大人への扉を開けてもらったと教えてもらった事。ギャラルホルンを通ると、そこで奏の姿を見つけて後をついて行ってしまった事を。
((響さんもだ(デス)けど奏さん……))
二人は思わず揃って肩を落とした。セレナを性的な事へ近寄らせないようにと配慮した響はまだ分からないでもないが、それを聞いたからこそ彼女は奏の後を追いかけてしまったと二人は分かったのである。
「ごめんなさい。いけない事かなって思ったんですけど……」
「ううん、仕方ないよ。私がセレナの立場なら同じ事してると思う」
「デスデス。でも、そろそろ帰った方がいいんじゃないデスか? マムが心配してるかもしれないデスよ?」
「そ、そうですね。じゃ、帰ります。お二人共、話をしてくれてありがとうございました」
可愛く一礼しセレナはその場を後にする。その背中を見送り、調と切歌はマリアへ報告するべきと即座に判断した。
―――セレナがシキ達の世界へ興味を持ってしまった、と。
マムに許可をもらって、尚且つ私がいない間の戦力としてシキさんの世界からマリア姉さんが来てくれた。あのマリア姉さんよりも大人の姉さんにマムも驚いていたけど、外見だけならそこまで違和感がない事もあって受け入れられた。
「セレナ、まずは一旦ギャラルホルンのある世界へ行きなさい。そこであちらの私が待っているから」
「うん。ありがとう、マリア姉さん」
「ふふっ、別にママでもいいわよ? 実際もう母親だしね」
「も、もうっ! さすがにそこまで甘えん坊じゃないからっ!」
私へ微笑みかけるマリア姉さんは本当に綺麗で幸せそうに見える。マリア姉さんの娘はアリア。前行った時には会えなかったけど、名前だけはカペラやソフィーから聞いてる。今回は会えるから楽しみにしてるけど、何よりも楽しみなのはあの子達と遊ぶ事。
お姉ちゃんとして扱われるの、正直かなり嬉しかった。私にも妹か弟がいたらって、そう思った事は一度や二度じゃない。
特にマリア姉さんがいなくなった今は、頼れる相手じゃなくてもいいから傍にいてくれる人が、家族が欲しいって思う。
ゲートを通ってまずは言われた通り響さん達の世界へ。そこで待っていた姉さんと一緒にシキさん達の世界へ向かう。
「セレナ、シキさんの第一印象はどうだった?」
「えっと、優しくてお父さんって感じだった。姉さんは、シキさんとどうして?」
「ギャラルホルンのアラートよ。その時動けたのが私と翼に響だったの。で、そこでいきなりマムと了子さんにキャロルとエルに出会って、ね。シキさんともその時に」
それだけで私にも分かった。想像もしない光景が広がっていたのだと。何せ姉さんの世界では死んでいる人が三人もいたんだ。しかもそれだけじゃなく、そこへ見も知らない男性がいればその驚きはとても大きかったはずだもん。
そこで姉さんからシキさん達の世界であった事を教えてもらった。その時はまだ了子さんの娘の夢子しか産まれてなくて、だけど響さん達一部の人以外は妊娠していた事。
どうもカルマ・ノイズの狙いはその子供達だった事。そのために姉さん達を呼んだ事も。絶唱を吸収して強くなるカルマ・ノイズだったらしいけど、最後はそれをエクスドライブを超えた状態で倒した事を聞いて、私は驚きを隠せなかった。
「さっ、着いたわ。セレナ、一日だけど普通の女の子として過ごしてきなさい」
「うん、ありがとう姉さん」
ゲートの手前で姉さんと別れて私はシキさん達の世界へと降り立った。すると、そこにはセレナさんが待っていた。
「いらっしゃい。みんなセレナお姉さんを待ってるよ」
「み、みんなですか?」
「うん。あの時は寝てた歌鈴や神楽も今日は起きてるしね」
その言葉に私は嬉しくなった。赤ちゃんがいるのはソフィーから聞いていたから知ってたけど、あの時は寝てたから会う事が出来なかったから。
ワクワクしながらセレナさんとテレポートジェムと呼ばれる物で移動。これ、便利だなぁ。もし私の世界にも錬金術師の人がいるなら作って欲しい。
到着したシャトーでは、いきなりビックリさせられた。
「「「「「「いらっしゃいませっ!」」」」」」
そこには見知った顔にそっくりな子供達と初めて見る顔の女の子がいた。夢子がその子。一番のお姉ちゃんで、姉さん達がここへ初めて来た時にはもう生まれてた子だ。
翼さんの娘の空、姉さんの娘のアリアも本当に似ててビックリ。みんなからセレナさんに似てると言われるけど、すぐに姉さん呼びになって私は最初にカペラやソフィーと会った部屋へ行く事に。
子供部屋に着くと、そこには大人になった暁さんと月読さんが赤ちゃんを抱えてお出迎えしてくれた。
「こっちが神楽だよ」
「こっちが歌鈴デス」
「わぁ……可愛い」
お母さん達の腕の中でこっちを見つめる二人の赤ちゃん。その瞳はクリクリとしてて本当に可愛い。しかも、二人を抱っこさせてもらえる事になって、私は初めて赤ちゃんを抱っこする事が出来た。
思っていた以上に重くて、だけどあったかくて柔らかいそれに、命の不思議さと尊さを私は知った。神楽も歌鈴も私の顔へ手を精一杯伸ばして笑いかけてくれて、とっても心があったかくなれた。
残念ながら二人とは一緒に遊べないけど、代わりに夢子達と沢山遊べた。みんな歌が大好きで、翼さんと姉さんの歌や奏さんと翼さんの歌なんかを歌ってくれた。
それだけじゃなく、私が知らない歌を沢山歌ってくれたんだ。そんな中、みんなが教えてくれた。夢子以外はそれぞれのお母さんのギアを受け継ぐらしく、ここの響さんと未来さんの赤ちゃんもきっとそうなるらしいって。
「そうだ! セレナお姉さんってアガートラーム持ってるんでしょ? 見せて見せて」
「「「「「みせてみせて」」」」」
無邪気なお願いに私は困ってしまった。でも、考えてみたらこの子達はギアを知ってるし、何より見せるだけなら問題ないかなってそう思って見せてあげる事にした。
ギアを纏うと夢子達は揃って口を開けて凄いとか可愛いとか言ってくれた。どうもこっちの私のアガートラームとは違うみたい。
多分だけど私の方が適合率が低いんだと思う。ただ、こっちでは暁さんや月読さんも正規適合者になってるみたい。
夢子達が教えてくれた話だと、シキさんは装者の適合率を上げる事やギアの性能を上げる特殊能力を持ってるらしい。
それで納得が出来た。何で姉さん達がここへ来ているのか。それは、シキさんにギアの能力や適合率を上げてもらってるんだ。なら、私もその能力でギアを強くしてもらえば姉さん達に頼る事も減るし、何よりこれからの事が少しは楽なるはず。
「ねぇ、その能力ってどんなの?」
「えっと、私達もくわしくは知らないの」
「マムたちが私達はダディと血のつながった家族だからつかえないって」
「まっ、あたしらはせいきてきごうしゃってやつらしいし、もうノイズとかも出ないからひつようないんじゃない?」
「ですが翼姉様達は今もまだ装者として現役です。なので父様の能力を必要としているんだとか」
上の子達が口々に教えてくれる情報は納得出来るものだった。だけど、私も姉さん達と一緒で今もまた装者として頑張らないといけない。ならその能力を使ってもらう事は許されるはずだ。
「それ、私も使ってもらえるかな?」
「どうだろ? パパののうりょくって、オトナじゃないとダメみたいだしなぁ」
「セレナねーさん、いちどダディにきいてみたら?」
ソフィーの言葉に若干落ち込みそうになるけど、カペラの言葉に元気をもらった。そうだよね。一回聞くだけ聞いてみよう!
「ありがとうみんな。じゃ、ちょっと私はシキさんに聞いてくるね!」
「「「「「「いってらっしゃ~い」」」」」」
笑顔で見送ってくれる子供達へ手を振り、私は子供部屋を出てシキさんの部屋へと向かった。場所自体はこの前教えてもらったから知ってるけど、この時間にシキさんいるかな?
「えっと、たしか……あっ、あそこだ」
見えてくるドアの位置を確認し、私は少しだけ小走りに部屋へと向かう。シキさん、頷いてくれるといいな。
セレナは知らなかった。今、その部屋ではゲート前で別れたはずのマリアが抱かれている真っ最中だと……。
今回のネックがあるとすれば父親になったシキが果たして十代前半のセレナへ手を出すのかどうか、です。
なので、まぁ、たやマの出番です。しかも一緒に来ればいいのにわざわざ別れて帰ったように見せかけて……ですからね。
後編がいつになるかは分かりませんが、出来る限り早めに書きたいと思います。
……これが終われば同一人物勢揃いも夢じゃないですからね(ぉぃ