影護関連はおそらく弦十郎が亡くなった時点で解散したと思ってください。もしくは、シキがいた事で弦十郎は自分の後継者を彼に見た事で組織作りなどをしなかったのかもしれません。
それと今回は過去やった書いた話の設定を流用しています。
あと、今回少し書き方を変えてみたのでそれに関してのアンケートがありますのでよければご意見をお聞かせください。
ふたり、エッチ
ごそりと何が動く。それはそのまま俺へ抱き着くように動いてきた。
おそらくだけど寒いんだろう。たしかに薄い毛布一枚じゃ少々辛いぐらいこの時期は冷える。
「へへっ、やっぱシキは温かいな」
胸元で聞こえる明るい声。ただ、多少大きさが普段よりも抑えられているのはもう一人俺の横で寝てる子に配慮してるんだろう。
「翼、くすぐったい」
「いいじゃん。男の方が体温高いんだから我慢しろ」
何とも酷い言い分だ。でも、まぁ、可愛いので良しとする。
と、背中の辺りに柔らかな感触と共に優しい匂いが香った。
視線を動かせば、そこには予想通りの相手がいる。
「翼、シキが困ってるから」
「困ってないって。オレみたいなのも美少女って呼ぶような奴だぞ?」
「わ、わたしも翼は可愛いと思うよ」
「クリスは優しいからな。シキは男だし、スケベだし」
「おいおい、師匠も言ってただろ。俺みたいな方がむしろ男らしいって」
そう言うと二人が少しだけ苦笑する。どこか懐かしさと悲しさを混ぜたような、笑みを。
俺が師匠と呼ぶ存在。その人の名は風鳴弦十郎。
自分の名前以外全てを失った俺を拾い、翼やクリスと一緒に面倒を見てくれた恩人だ。
そう、俺は気が付いたら師匠達の前にいた。話によると、三人の目の前に突然降ってきたとの事。
何故かぶかぶかの服を身に着けていた俺を、師匠は何かの事情持ちだと判断し助けてくれた。
そして名前以外覚えていなかった俺を一人前の男として育ててくれたんだ。
どこか気弱で物怖じしていた俺だったけど、師匠や翼にクリスと共に過ごす内に段々性格も変わって行った。
でも、どことなく違うと俺は感じている。変わったというより、戻っていくような、そんな感じに。
師匠達との日々は、厳しく辛くでも楽しかった。そんな時間がずっと続くんだと、どこかでそう思っていた。
だけど、それは唐突に失われた。俺達三人の支えであり父や兄でもあった師匠を、失った事で。
その時はさすがの翼も涙し、クリスと一緒に泣きに泣いた。ただ、俺は泣かなかった。二人は女の子だ。俺は男。なら、これからは俺が二人を守らないといけない。
そう心で誓い、師匠の代わりになれるよう俺は涙を流す事はしなかった。
そんな俺を見て、それまでどこかこっちを下に見てた翼が驚いた顔をし、クリスも似たような顔をしたのを今でもよく覚えている。
でも、まだ師匠の強さには追い付いていない。
翼はそんな俺をからかいつつも、いつか追いつけると言ってくれるようになった。
クリスはそんな俺を労わりつつも、あまり無理をしないでと以前よりも優しくしてくれるようになった。
「まぁ、シキが男らしいかどうかは置いといて」
「置いとくな」
「クリスも起きたなら、アレ、するか?」
そう言う翼の顔は、どこか普段ない照れや可愛さがあった。
「俺はいいけど、クリスは?」
「わ、わたしも……別に、いい……よ?」
視線を向けたクリスも顔を赤くしつつ小首を傾げる。そこには、普段はない恥じらいと期待が見える。
「ん。じゃ、クリスも前に来てくれ。翼と一緒に抱き締めるから」
「うん」
「へへっ、そうこなくっちゃ」
翼の言ったアレとは、こうやって俺が二人を抱き締める事――だけじゃない。
そうしてから三人で舌を出し合って舐め合う事だ。
「レロレロ……あはっ、やっぱ美味い」
「チロチロ……うん、ホントに不思議」
これも、切っ掛けは偶然だった。三人で生きていくんだと頑張り出した頃、無鉄砲な翼がいつものように怪我をした。
とはいえ、かすり傷ぐらいなのだが、その時の俺達には当然ながら傷薬なんて気の利いた物はない。
なので俺が舐めてやったのだが、その傷が頬にあったものだったせいか、俺が舐めてる時に翼がこんな事を言い出したのだ。
――何かいい匂いがするな。
で、そんなはずないと俺とクリスは言ったのだが、翼は自分の意見を曲げなかった。
そのため、俺は何故かクリスの頬を舐める事となり、その結果……
――ほ、ホントだ。何だかいい匂いがする……かも。
となり、得意満面な翼と不思議そうに何度も首を傾げるクリスに納得出来ない俺という構図が出来上がったのだった。
その事があってからすぐ後だ。翼が俺へこう迫ってきたのだ。
――な、なぁ、ちょっとだけシキの舌、舐めてみてもいいか?
後は分かるだろう。それでどうも翼は俺の唾液が気に入ってしまい、しかも俺が舐めると傷も早く治るためか翼が俺へベタベタするようになった。
そうなると翼大好きなクリスが黙っているはずもなく、俺へおずおずと聞いてきたのだ。
――ね、ねぇ、最近翼がシキにばっかりくっついてるのは、何で?
翼を王子様のように思っているクリスとしては心中穏やかじゃなかったんだろう。
言い方こそおずおずとしていたが、表情と声はちょっと怖い感じがしたもんなぁ。
で、正直に何をしてるのかを白状するとクリスはしばらく絶句。
たっぷり五分は経った辺りで再起動し、バタバタと翼へ詰め寄ってやっている事のいかがわしさを説いたのだが……
――オレはシキの事もクリスと同じぐらい好きだからなぁ。問題あるか?
このように返してクリスを複雑な気持ちへさせた挙句、一度クリスも体験すれば分かるとごり押し、俺の舌を舐めたクリスはおそらく生まれて初めて見せただろう複雑な表情で小さく呟いたのだ。
――こんな事……認めたくない。
俺を恨むような、でも憎めないような、そんな声で呟いてから、クリスは少し黙り込んだ後で何かに気付いたように顔を上げると翼へこう言い放ったんだ。
――こ、これからシキとペロペロする時は三人一緒でっ!
これに翼はあっさりと了解を返し、俺の意思などそっちのけで現状のような決まりが出来上がってしまったのだ。
「よく言うよ。シキだって喜んでる癖に」
「そうだよ。わたしや翼の事、昔から女の子として扱って、可愛いって言い続けてたじゃない」
「おい、人の心を読むな。てか、もしかしてそんなに分かり易かった?」
「「うん」」
揃って頷く二人。聞けば、どうやら俺の舌の動きが鈍くなってたらしい。
それで俺が何か考えてるなと察し、表情や反応で大体の当たりをつけたそうだ。
何というか、嬉しいような悔しいような複雑なとこだ。
「それにしても、不思議だよなぁ」
「「何が?」」
俺とクリスの声が重なる。翼はそんな俺達へ笑みを見せるとあっけらかんとこう言った。
「シキと舌を舐め合うとさ、何かこう力が湧いてくる感じがするんだ」
「は?」
何言ってるんだ、このオレオレ系ガールは。
「つ、翼も? わたしも実はそんな感じになるの」
「……え?」
「むっ、どうしてオレとクリスで反応が違うんだよ」
フワフワ系女子のクリスとお前を一緒の扱い出来るか。多少違いが出来るのは当然だろ。
にしても、クリスまでそう言うって事は本当なのかもしれない。うーん、傷も早く治るし何かやっぱりあるんだろうか?
とりあえず今は胸元で膨れっ面をしているオレっ子をどうにかしよう。
「仕方ないだろ。翼だって俺とクリスで扱い違うじゃないか」
「それは……そっか」
「な、納得するんだ……」
そう、俺と翼のクリスへの共通見解は守ってあげたい存在で一致しているんだ。
「とにかく、今は難しい事考えるの止めよう。それと、そろそろ寝床を見つけないとなぁ」
「「賛成」」
俺の言葉に二人がそう言って、俺達は一つになって目を閉じる。
草のベッドも悪くないけど、たまにはもう少し包み込むような場所で眠りたいもんだ。
最近オレは変だ。いや、体が女らしく変化してきたのは今更だから別にいいんだけど、先生がいなくなってからシキの奴が一気に、その、頼りがいがあるようになったせいかもしれない。
初めて出会った時は助け出した時のクリス以上に気弱な感じだったくせに、先生が男らしくしてやるって鍛え始めたら見る見る内にオレへ物を言えるぐらいの気の強さを持った。
それだけじゃない。これは出会った頃から変わらないけど、オレの事を女の子だって、可愛いって言い続けてくる。
一度先生へ聞いた事がある。何でシキはオレを女の子扱いしてくるんだって。正直苛立った。オレは女も男も関係なく生きていたいのにって思ってたから。
――あいつはな、きっとお前に女性としての自覚を持って欲しいんだろうさ。
――自覚?
――ああ。お前はどうしても女性として些か恥じらいや慎みという部分が欠けているからな。まぁ、それは俺のせいもあるんだろうが……。
そう言って困った顔で先生が笑ってたのをよく覚えてる。オレはその時シキの事を凄いと思った。オレでも先生をそんな風に困らせる事は出来ないからだ。
それからオレはシキの事を注意して見るようにした。すると、先生もオレやクリスよりも少しだけ、ほんの少しだけシキの事を気にかけてるのが分かった。
きっと同じ男としてシキを強い奴にしたかったんだと思う。シキも泣いたりしながらも先生へしっかり喰らい付いていたし、その期待を感じ取ってたのかもしれない。
そして、あの日……。
オレやクリスが泣いている中、シキだけが泣いてなかった。
今まで泣いてばかりでクリスにさえも呆れられる時があったシキが、あの時一度として涙を流さなかった。
――これからは、俺が頑張って師匠みたいになるよ。翼やクリスを、守れるような強い男に、人になる。俺は、二人の防人だから。
あの言葉を、オレは絶対に忘れない。目に涙を貯めながらも、絶対に零す事無く言い切った、男の顔も。
「……寝顔は、あの頃とそこまで変わらないんだけどなぁ」
小さく呟いてオレはシキの頬を指で突く。最初はオレ達の方が高かった背も、気付けばあっさりと抜かれた。
力も今じゃシキの方が上。それは抱き締められる時にはっきりと感じる。
逞しくなった胸、腕。男らしい体と温もり。でも、変わる事のない笑顔と優しさ。
男が相手だろうと負けるものかと思っていたオレだけど、シキには勝てる気がしなくなってきてる。
「キス、してるようなもんなんだよな、オレ」
ある時から始まったオレとシキの秘密の行為。最初は美味かったから。だけど、いつしかオレはシキに甘えている事に気付いた。
あいつに抱き締められる事、優しく微笑みかけられる事、あいつの温もりと頼もしさを独り占め出来る事に、オレは夢中になってた。
だからこそ、クリスに詰め寄られた時、オレは困った。このままじゃシキに甘えられなくなるし、クリスともぎくしゃくするって。
仕方ないからクリスを巻き込んだ。シキは、それに困った顔をしながらもどっか嬉しそうだったのがイラっときたけど、オレの予想通りクリスもシキとのキスもどきを気に入った。
「……ホントは、オレだけだったのに」
無意識に言葉が出た。そう、これだ。オレが変なのはここなんだ。
最近シキの事を考えるとクリスがいなければいいのにって、そう思い出してる事。
先生がいた頃はそんな事欠片も思った事なかった。こんな事、シキが今みたいになってからだ。
この事を考えると胸が苦しい。だからオレはシキの傍へ接近する事にした。
寒いからきっとシキはオレに文句は言わないはずだ。へへっ、オレだって女の子、なんだよな?
なら、精々甘えさせてもらうとするか。オレを守る防人の男に、さ!
「……またイチャイチャしてる」
二つの気配が動くのを感じてわたしが目を開けると、そこにはシキと翼が密着するようにしているのが映った。
ある時を境に翼がわたしじゃなくシキへ絡むようになった。それに気付いたわたしは最初、てっきり先生みたいになってきたシキへちょっかいをかけてるんだと思った。
だけど、それがどうも違うって気付いたのはシキと二人で時々姿を消す事が増えてきた時だ。
怪しいと思って翼を観察し、何をシキとしてるか知った時は目の前が真っ暗になった。
翼はシキと、き、キスよりもエッチな事をしてたからだ。
それだけじゃない。その時の翼は、わたしにも見せないような顔をしてた。
その、女の子の顔をしてた。幸せそうな、そんな顔を。
わたしはそれを見て愕然とした。だって、このままじゃ翼をシキに取られちゃうって思ったから。
そして、シキを翼に取られちゃうって。わたしが、また一人ぼっちになっちゃうって。
だから翼へ迫った。わたしの王子様へ、ヒーローへ。だけど、そこで翼はやっぱりどこか女の子の顔を見せた。しかも、あろう事かわたしにもシキとキスみたいな事をすれば分かるって言い出した。
――安心、するんだよ。シキとああしてると。
最初はそれが翼がシキを好きだからだって思った。だけど、シキと舌を合わせた時、頭の中に電流みたいなものが流れたのを今でも覚えてる。
「んっ……」
じわりと大事な部分が熱くなる。シキとのエッチなキスを思い出すといつもこうだ。
最近じゃ翼よりもシキの方が王子様みたいに見えてくるし、時々先生みたいな時もあって心がざわつく。
少しだけ手で大事な部分を触ると、そこが熱を持ってるのを感じて恥ずかしくなる。
「……わたし、いけない子になってる」
体つきが女性らしいものへ変わって、翼と差が出来た時、わたしはどこかで嬉しかった。
翼には悪いけど、これで見た目が男女みたいになれるってそう思って。
でも、今じゃ違う意味で喜んでいる自分がいる。
「シキは、わたしの胸、よく見るもん」
最初は泣き虫でわたしよりも弱い印象があったシキ。だけど、どんどん逞しくなっていって、いつの間にかわたしと翼を守る防人になるって言い切る程になってた。
あの時の事は今でもはっきり覚えてる。わたし達が悲しみの底にいる時、一人だけそこへ落ちる事なく足を踏ん張って大地へ根を張って強がっていた男の子を。
あの日、わたしの中で王子様が更新されたんだと思う。
翼がわたしをあんな場所から助け出してくれた王子様なら、シキはわたしと翼をあの悲しみの底から引っ張り上げてくれた王子様だ。
しかも、翼と違ってシキは本当の王子様。今なんて翼さえも助けて守るヒーローになってる。
「……そろそろいいかな」
このままだと翼がこっそりとエッチなキスをねだりそうだと思って、わたしは静かに胸をシキの背中へ押し当てるように抱き着いた。
「翼、シキが困ってるから」
困らせるのは自分もって分かってるけど、悪いのは最初にイチャイチャした翼だからね。
そう思いながらわたしはシキの匂いへ顔を埋めるように抱き着くのだった。
健康的でしかも年頃の男女。そこに生命のスープなどと言う能力と、幼い頃からの付き合いで培った好意に、成長期を迎えて見せつけられる異性らしい肉体。それらが混ざれば待っている結末は一つしかなかった。
それは、三人が久しぶりとなるちゃんとした寝床で眠れる事になった日に起きた……。
「ベッドだっ! 久しぶりのベッドだぁ!」
そう言って翼が嬉しそうにベッドへと飛び込んだ。
「もう、翼ったら……」
「仕方ないって。ここんとこ野宿続きだったしさ」
そんな彼女を苦笑しながら見つめるクリスとシキ。
今日、ある街へ着いた彼らは当座の路銀を稼ぐために仕事を探した。
幼少の頃からの鍛錬もあってか、シキ達は一般人よりも力などが強い事もあり単純作業系ですぐに仕事は見つかり、こうして一夜の宿を手にする事が出来たのである。
「ただ……なぁ」
「仕方ないよ。これが一番安くて便利がいいんだから」
彼らがいるのはモーテルと呼ばれるもの。ただし、日本でのイメージとは異なり、ここで彼らが使っているのは従来のモーテルのため、所謂連れ込み宿ではない。
シキが顔をしかめているのは何もモーテルのイメージが悪いからではなく、男女で同じ部屋を使う事に対するものだった。
「そうそう。それに、路銀は大事に使わないといけないんだ。安いからって二部屋はもったいないし、シキだけ野宿なんてオレ達が心を痛めるって」
「それに普段は一緒に寝てるし」
「あれは仕方ないからだ。野宿はどうしても体が冷えるし、離れて寝てると何かあった時に気付けないかもしれないからな」
腕を組んでやれやれと言った感じで話すシキが、二人には弦十郎の姿を想起させた。
言い方や声の感じさえもどこか似ていたからだろう。そこに二人はシキの中に息づく弦十郎を見たのである。
「第一、二人はもう少し女性である事を意識するべきだ。どれだけ否定しても、二人が愛らしい女性である事に変わりはないんだからな?」
息を呑む二人に気付かず、シキはやや呆れる表情でそう締め括る。
そこで翼とクリスが我に返った。
「わ、分かったって」
「う、うん」
「ならいいけど……」
「シャワー、どうする?」
「オレは後でいいから、クリス先に浴びてきたら?」
「そうだな。俺は最後でいいし」
「そっか。じゃあ先に借りるね」
「「ごゆっくり~」」
「くすっ、もう二人して」
同じ言い方のシキと翼に苦笑しながらクリスはシャワールームへ消えていく。
その背中を見送り、シキは改めてベッドを見つめた。
(ダブル、か。三人で寝られない事もないけど、俺はソファで寝るのが良さそうだ)
広めのベッドは翼とクリスなら十分な余裕があるだろうと思い、シキは一人寝床となるソファへと座る。
「っと。なぁシキ」
「ん?」
そんな彼の隣へ翼が素早く移動し軽く抱き着く。
ふわりと汗の匂いに混じって翼の体臭とも言えるものが香り、シキは何気なく顔を彼女の方へ向けた。
するとそこには、やや紅潮した顔で自分を見上げる翼がいたのだ。それも、どこか意を決した顔で。
「ど、どうした?」
「その、さ……」
翼の心臓が早鐘のように音を鳴らす。生まれて初めての感覚に翼は戸惑いながらも、胸に浮かんだ言葉をシキへぶつけた。
「オレ、最近変なんだ。シキの事考えると、ドキドキしてさ」
「俺の事を?」
「ああ。なぁ、これって病気か? オレ、こんな事になった事ないんだ。先生がいれば聞けたんだけど……」
「クリスには?」
「な、何だか言えなかった。だって、クリスの事を考えてもこうならないから。ほら……」
「つ、翼?!」
胸の高鳴りを教えるようにシキの手を自分の胸へ押し当てる翼。
小ぶりな乳房の柔らかさにシキは思わず息を呑む。
一方の翼もシキに触られていると思う事で余計鼓動の速度が上がっていく。
(や、柔らかい……)
(な、何だこれ?! シキに触られたらもっと胸が苦しいし顔が熱い!?)
互いに相手の目を見つめ続けながら、ゆっくりと顔が近付いていく。
まるでこの後何をするべきか理解しているように。
「つ、翼……」
「シキ……」
名前を呼び合いながら近づいていく顔と顔。
目を閉じる事もせず、そのまま二人は唇を重ねる。
およそ初めてのキスと思えない二人の初体験ではあるが、ある意味で二人らしいと言えた。
何があろうと目の前の相手から目を逸らすなという弦十郎の教えの賜物だったからだ。
静かに離れる唇と唇。その間も眼差しは熱を失せる事無く、むしろその熱量を上げるように燃えていた。
「……舌、絡めてみるか?」
「…………ん」
小さく頷く翼へシキは凛々しい表情のまま口付ける。そのまま彼は舌を伸ばしてみた。
それを察して翼も口を開けて舌を伸ばす。絡み合う二人の舌。今までよりもしっかりと味わう互いの唾液。
(凄い……。これが、翼の味……)
(ああっ! 何だよこれ! 今までなんか目じゃないぐらい濃い味がするっ!)
これまでと違う濃厚な互いの唾液の交換。それに静かに興奮するシキと激しく興奮する翼。
可愛い女の子とのキスという意味で興奮しているシキに対し、シキの味の違いに驚きつつ体が興奮状態へと変わっていく翼という対比ではあるが、共に体の内側からこみ上げてくるものは同じだった。
((もっと、もっと知りたい。もっと翼(シキ)を感じたいっ!))
そう思った瞬間、二人が同時に相手を求めるようにキスをする。
もう二人に自制心などなかった。あるのは好奇心と興奮だけ。これを続けていればどうなるのか。どうなってしまうのか。下手をすればもうそんな思考さえもなくなりそうな程、二人は相手とのキスに夢中だった。
女じゃないと言っていたはずの翼がしっかりと女の顔をするぐらいに。弦十郎のように二人を守れる男でありたいと思ったいたはずのシキがただの雄となるぐらいに。
絡み合う舌と舌。貪るように、啜るように互いの唾液を求め合う。もうその頃には知らず二人は抱き合っていた。
少しでも相手を近くに感じていたいという欲求によるものだった。翼はそこで強く思ってしまうのだ。自分が女であり、シキが男である事を。
もう自分は彼には守られる存在であり、そういられる事が幸せなのだと思い込んでしまいそうになる程、シキの胸の中でキスするのは幸福感に満ち溢れていたのだから。
だが、その幸せは急に終わりを告げる。シキが翼の事をそっと押すようにして離したのだ。
「シキ……?」
(な、なんだ今の声? もしかして……オレ?)
どうしてか分からず、翼は初めて出すような儚い声を出す。内心で驚き戸惑いながらも、既に女としてのスイッチが入った彼女にとって大事なのはそれよりも目の前の相手がどうしてキスを止めたのかだった。
「……そろそろクリスがシャワーから上がる」
単純明快な答えで翼は納得すると同時に嬉しくなった。何故ならそれは、シキがクリスに今の事を知られたくないと思ったからだと気付いたために。
クリスに今のを見られていたら、もう二人で今のようには出来なくなる。それをシキは嫌がってくれたのだと、女性らしい感覚で翼は理解し笑みを浮かべた。
「そ、そっか。分かった。じゃ、ここで」
「翼、次どうぞ」
そこへ丁度良くクリスが現れた。あまり長く顔を合わせていると気付かれると考えたのだろう。翼はいつも以上に機敏な動きで立ち上がると、そそくさとシャワールームへと向かった。
「……翼?」
何も言わず通り過ぎた翼に疑問符を浮かべつつ、クリスはどうしようかと考えて視線をシキがいるソファへ向けた。そこで彼女は見てしまったのだ。ズボンの上からでも分かる程、主張している股間の膨らみを。
何も言わず、目を何度も瞬きさせてクリスは見えている光景を疑った。これまでシキは一度たりとも彼女達の前で欲情しているもしくは興奮している事を見せた事がなかったからだ。
(え? え? ど、どういう事? 何でシキがエッチな気持ちになってるの?)
先程まで男女の交わりの前哨戦をしていたからなのだが、生憎クリスはそういう事に敏感ではない。
なので、こう考えたのだ。今まで自分がシャワーを浴びていた。今夜、一緒に寝る事が決まっている。
そこへきて、これまでは野宿という事もあってどこか緊張感などでそういう風にならなかったものが、久しぶりに落ち着ける事もあって抑えきれなくなったのだろう、と。
(さっきの翼は、きっとあれを見たんだ。だからどこか顔が赤かったんだね)
なまじか頭の回転が速いのも考え物である。クリスは自分が得た数少ない情報と状況から自分に都合のいい解釈を選んだのだ。
とそこでクリスはふと嗅ぎ慣れない匂いがしている事に気付いた。とても胸が高鳴ってしまう、そんな匂いに。
「? ……っ?!」
匂いの出所を探ると、シキである事は間違いなく、しかもおそらくだが股間からとクリスは判断したのだ。しかもそこで彼女はシキと目が合ってしまったのだ。
沈黙が流れる。シキは勃起しているとこを見られたという気まずさで。クリスは股間を見ていた事を気付かれたという気まずさで。
それでもこのままではいけないと思ったのだろう。シキが申し訳なさそうに頭を下げたのだ。
「ごめん。見苦しいものを見せた」
「えっ!? あ、えっと、し、仕方ないよ。もうシキだって男の子じゃなくて男の人、だもん。だから頭上げて。わ、わたしも謝らないといけないし」
「は? どうして?」
「……じっと、見てたから。シキの、おっきくなってるとこ」
その赤面しながらの告白にシキは軽く驚くものの、小さく苦笑すると首を横に振った。
「それなら俺もまた謝らないといけないじゃないか」
「え……?」
理解出来ないとばかりにクリスが顔を上げると、シキはどこか恥ずかしそうに頬を掻いてこう告げたのだ。
「その、気付いてるんだろ? 俺がクリスの胸を見てる事」
「ぁ……」
二つの意味でクリスは顔を赤くする。一つは自分がした事を日常的にシキがしているのだと理解した事。もう一つは、自分が謝罪をしないで済むようにシキが己のしている事を告白した事。
つまり彼の優しさと気遣いから胸を高鳴らせたのだ。クリスからすれば、今日経験した他の男達の下衆な視線や下心しかない眼差しよりはシキの方が何倍もマシだった。
「ホントごめん。嫌だったろ?」
だがシキがそんな事知る由もなく、クリスに嫌な思いをさせていたかもしれないと思いつつ止められなかった自分を恥じていたのだ。
「い、嫌じゃない、よ? シキだったら、ううん、シキになら、見られてもいい」
「え?」
自分の秘めていた想いを告げるなら今だ。そう考えてクリスはシキへと近付いていく。
シキの鼻腔を甘いような匂いがくすぐる。その匂いが湯上りのクリスからしている事を理解しシキの股間の硬度が増す。それに気付く事もなく、クリスは先程まで翼がいた場所へそっと腰掛けるとシキの手を掴んだ。
「く、クリス?」
「わたしね、最近いけない子になったんだ」
「いけない?」
「……シキの事考えると大事なとこが熱くなるの」
「大事なとこ……?」
理解出来ないシキの手をクリスは真っ赤な顔で自分の秘所へと導こうとする。その動きでシキもやっと彼女の言っている意味に気付いて慌てて手を止めようとした。
「止めないでっ」
「っ!?」
大きくではないが懇願するような声にシキは息を呑み、そんな彼へクリスは感謝するように儚げな笑みを浮かべると掴んだ手をそっと自分の秘所へと当てる。
そこはたしかに熱を持っていて、シキの心音を一気に高鳴らせる。クリスがどうしてそうなっているのか。どうしてそれを自分へ教えてくれたのか。それらがシキの中の男を強烈に刺激したのだ。
「どう、かな? 分かる?」
「ああ……とっても熱い」
「この前、シキと翼が二人でイチャイチャしてるの見てこうなったの。今は、シキがわたしの胸を見てるって言ってくれてこうなった。これって、どういう事かな?」
言いながらシキへ迫るクリス。彼女は翼よりは性的な知識がある。だから今の自分がどうなっているのかはおぼろげに理解はしている。だからこそシキへはっきりと言って欲しかったのだ。
この三人の中では一番シキが性的知識がある。故に彼は正しくクリスの状態を理解していた。
「そ、それは……」
「それは?」
「く、クリスが、その……」
「何?」
「ま、まず手を離していいか?」
「ダメ。その、こうされてると気持ちいい、から……」
その消え入るような告白でシキの中の男が吼えた。
「クリスっ!」
「えっ? っ?!」
急に抱き寄せられたかと思うと、クリスの視界にシキの顔がいっぱいに映り込む。それと同時に感じる唇への温かい感触。
(わたし……今、キス、されてる……)
小さい頃から夢見ていた体験。いつか好きな人が出来てするだろうと思っていた行為。まさかそれを本当に好きになった人と、しかも相手からやや強引にされるというクリスの中では想定外の、そして嬉しい流れで。
「……何、してるんだよ」
「「っ?!」」
そこへ聞こえる低く唸るような声。それに弾かれるように二人が顔を動かすと、そこには不機嫌そうな翼が立っていた。
「つ、翼……」
シキの声に翼は目付きを鋭くするとクリスへそれを向ける。
「ズルいぞクリス! オレにはシキとする時は三人でって言っておいて、自分は二人きりで何してんだっ!」
「翼っ! 止めろ! 悪いのは俺だからっ!」
クリスへ今まで絶対に出した事のない怒声をぶつける翼へ、シキは見てられないとばかりに声をかける。クリスは翼の剣幕に怯えるようにシキへ抱き着いていて震えてさえいたのだ。
それさえも翼の怒りを煽っているとシキは気付く事なく、むしろクリスを守るように片腕で抱き締めた。それに余計翼の目がつり上がる。
(ズルいズルいズルいっ! さっきまでオレが、私がそこにいたのにっ!)
長い間使っていなかった一人称が出てくる程、今の翼は女であった。その勢いのまま翼はシキへと詰め寄っていく。その途中で体を隠すようにしていたタオルをきつく握り締めて。
「どうして翼がそこまで怒るの?」
そんな翼へ、クリスは言い返すように目付きを鋭くした。その初めてみる表情にさしもの翼も一瞬鼻白むも、すぐさま再び目を吊り上げる。
「オレが先にシキとキスしたんだぞっ!」
「えっ!? キスしたのっ!?」
「っ?!」
翼の発言にクリスが大きく驚きを見せ、そこで彼女達は気付いたのだ。互いにシキへ異性としての意識を強く持っている事に。
そしてシキもまた己の状況と二人の想いを感じ取り、どうするべきかと考えて黙り込んだ、そんな時だった。まずはクリスに掴まれてる手を引き抜こうと思ってシキがそっと手を動かした際、彼の指が秘部を淡く刺激してしまったのだ。
「ひゃんっ!?」
「クリス?」
突然可愛い声を出したクリスへ翼が首を傾げるものの、その視線がシキの手が秘部近くにある事へ気付いた。
「……シキ、それ」
「あっ! 違うのっ! これはわたしが」
「っ?! ならオレもやるっ!」
「「ええっ!?」」
クリスだけがしている事がある。その事が翼には見過ごせなかった。それがどんな意味を持っていようが関係ないとばかりに翼はシキの隣へ座るや残った手を掴み自分の秘所へと導く。
何も隠す物がない状態であるにも関わらず、だ。そうなれば当然シキの手が直接翼のヴァギナへと触れる事となり、しかも運が悪いのか良いのか分からないが偶然陰核へ触れたのだ。
「にゃっ?!」
「にゃ?」
翼の口から漏れた聞き慣れない声にクリスが小首を傾げる。だが、ここで彼女も似たような声を上げる事になるとは思っていなかった。
「ふにゃっ?!」
シキの指が甘い刺激をクリスの秘部へ与えたのである。しかも、彼の指は止まる事無くクリスと翼の女性器を刺激し始めた。優しく慈しむようにではあるが。
「し、シキっ!? そ、それダメっ!」
「な、何だよこれぇ! お、オレがオレじゃなくなるみたいだっ!」
俯いたまま二人へ甘い声を上げさせるようにシキは指を動かす。やがて二つの水音のようなものが室内に流れ始める。
「んっ……ああっ、そ、そこぉ……」
「き、気持ちいい……っ! し、シキっ、それっ、もっとぉ!」
クリスの声を抑えようとする喘ぎと隠すつもりも抑えるつもりもない翼の喘ぎ。それを聞きながらシキは荒い息で、だけど優しく二人の女性を愛撫していく。
クチュクチュという音を伴奏に可愛く綺麗な喘ぎを奏でる翼とクリス。そして二人は同時に体をシキへもたれさせ気付くのだ。
((良い匂いがする……))
ぼんやりとしてきた意識の中で二人は同時にある場所へ視線を向ける。そこにはズボンが窮屈だと叫んでいるかのように盛り上がるシキの股間があった。
と、そこで二人は気付く。先程からシキが無言である事に。荒い呼吸を繰り返すだけで一言も声を発さないシキへ二人はやや虚ろな眼差しを向ける。
「シキ……?」
「ど、どうしたの?」
二人からの問いかけにシキはゆっくり顔を上げると申し訳なさそうな表情をしていた。
「ごめん。俺、もう我慢出来そうにない」
「「えっ?」」
その次の瞬間だった。翼とクリスが揃って頭の中が真っ白になったのは。
目の前がチカチカとする程の何かが二人の体を襲ったのである。その正体は、シキの股間から放たれた匂いであった。
シキは精通自体はとうにしていた。だが、当然ながら自慰行為を行うような事はなく、日々の鍛練や訓練で疲れ果てて夢精さえも起きず今日まできた。
しかし、性欲がない訳ではないし射精を知らない訳でもない。だからこそ、告げたのだ。もう我慢出来ないと。
そうして放たれたのは、これまで溜まりに溜まっていた生命のスープ。それも濃厚にも程があるものだ。その匂いだけで正規適合者である二人が絶頂してしまう程なのだから。
「あ……あ……」
「にゃ、にゃんだよ……こりぇ……」
がくがくと小刻みに震えるだけのクリスと、同じようになりながらも何とか声を出せる翼。ここに元々の肉体面での素養の差があるようだ。
だが、今回はそれが逆によくなかった。翼は手を伸ばしてズボン越しに沁みだしてきた黄色がかった色の精液を指へ触れさせると、それを自らの鼻近くへ持ってきてしまった。
「ぁ♡」
その瞬間、彼女の意識は完全に飛んだ。今までにない程の強烈な幸福感と共に。
ぐったりとなった翼を見てシキは自分の股間を見つめた。そしてもしやと思って下着越しにクリスのヴァギナを愛撫していた手を引き抜き、自分の精液を触るやそれをクリスの鼻へ突きつけたのだ。
「~~~~~っ♡」
大きく仰け反って深い絶頂を迎えるクリス。更に潮まで吹いたのだ。その様子を見てシキはゆっくりと立ち上がるとズボンを脱ぎ捨て、ついでに履いていた下着までも脱ぎ捨てる。
その途端、室内へむせ返る程の精臭が立ち込め翼とクリスが大きく痙攣し始めた。まるで違法ドラッグを使用されたような二人の反応にシキは原因が自分である事をはっきりと認識した。
「……どう、するべきか」
守るべき二人がケンカする原因となり、しかも例えどちらかを愛そうとしてもその体に良い影響を与えないような体質。そう考えたシキは、このまま自分が二人の傍にいるべきではないと思い始めてしまったのだ。
しかし、このまま黙って二人の前から去れば二人が自分を探し始めるのは間違いないとも気付いているため、彼はまずこの匂いをどうにかするべきだと考えた。
なのでシャワールームへと移動し体を洗い流す事にし、シキはその場から静かに動き出す。翼とクリスの事を見ないようにしながら……。
シキがシャワールームへ向かって数分後、翼とクリスはぼんやりとした頭のままで目を覚ました。
「何だか頭がふわふわする♡」
「うん、わたしもぉ♡」
どこか焦点の定まらない顔で、二人は自分達をそうした相手を探して顔を動かす。だがシキは当然のようにそこにはいない。ただ、今も部屋の中に残る彼の残り香とも言える精臭に二人は頬を緩ませる。
すると、二人がある物に気付いて顔を動かす。それは、シキが脱ぎ捨てた下着だった。当然、それには彼の吐き出した精液がたっぷり付着している。
「「……っ」」
唾を飲んで二人は揃って下着を手に取る。そこから匂う精臭に再び意識が飛びそうになる程の幸福感と絶頂を経験しつつ、翼はだらしない顔のままで精液がこびりついている部分へ舌を這わせたのだ。
「レロッ♡ ~~~~~っ♡♡♡」
(何だよこれっ! こんな美味いもん、食べた事ないぞっ!)
目を閉じて幸せそうな表情で両頬を押さえて微笑む翼。そんな彼女を見て、戸惑っていたクリスがごくりと喉を鳴らして下着を見つめる。
「……ペロッ……~~~~~っ♡♡♡」
(ダメっ! こんなもの美味しいって思っちゃいけないのにっ!)
そう思いながらもクリスは下着の股間部分を舐めるのを止められない。彼女はそれが平行世界で自分がした行為だと知ればどうしただろうか。
そこへ体を洗い流したシキが戻り、室内の異様な光景に言葉を失った。
(何だこれ。翼は幸せそうな恍惚の表情だし、クリスは俺の下着へ舌を這わせてる……)
理解したくない光景だが、シキは分かってしまうのだ。クリスがしている行為を翼もしたのだろう事を。
そして痛感するのだ。もうこの二人から自分は離れられないだろうと。もし離れようとすれば、今の二人は執拗に自分を追い駆けてくるはずだと。
「……腹、括るか」
昔弦十郎から教わった男の在り方を思い出してシキはそう自分へ言い聞かせるように呟くと、前を隠していたタオルを締め直して二人へと近付いていく。
「翼、クリス」
「「っ?!」」
跳ねるように二人が顔を動かす。その視線を受け、シキは弾かれるように動くと二人の体を両腕で力強くも優しく抱き寄せた。
「三人で、家族になるぞ」
問うのではなく願うのでもない。ただ、当たり前の事を当たり前のように言ったような、そんな言い方だった。
その言い方や雰囲気で翼とクリスが息を呑んだ。シキが誰を意識しての発言かを思い出したからだ。
――俺達は、家族みたいなもんだ。
そう言っていた男がいた。血の繋がりがないクリスやシキを受け入れていると分からせるための、もっとも分かり易い表現だった。
実際その言葉通り、男は三人を公平に扱った。家族として、分け隔てなく彼らは育てられた。父であり兄であった男がいなくなり、三人は家族ではなく男女になっていたのだが、それをシキはもう一度戻そうとしたのである。
ただし、それは男が指した家族とは少々意味合いが異なっていた。
「俺は、風鳴翼と雪音クリスを妻にする。俺達は夫婦になるんだ」
「オレと……」
「わたしを……妻?」
「ああ。これからも今までと同じように、いやもっと助け合って生きていくんだ。俺が原因で二人がケンカするならその原因をなくす。俺を男として好いてくれているのなら、俺が二人いっぺんに受け止める。それが嫌なら他の男を探してくれ。俺は、翼だけもクリスだけも選ぶわけにはいかない。選ぶなら二人だ」
その言い方でもう翼もクリスも微笑んでいた。その不器用で誠実な言い方が先生と呼んでいた男を彷彿とさせたからだ。
そして自分達を抱き締めている腕。それもまだ並んではいないが、あの男の腕に近付いてはいると二人に思わせた。
(ははっ、シキが一瞬だけど先生に見えた。でも、うん。クリスとケンカなんてしたくないし、シキを取られるのもやだ)
(ふふっ、本当にシキは先生が大好きだったんだね。生き方や考え方までらしくなってきてる。うん、そうだね。わたしも翼と言い合いや取り合いなんてしたくない)
そっと二人がシキへ抱き着く。それが何よりの答えだった。
「幸せにする。もし俺が君達に相応しくない男だと感じたら、いつでも離れてくれていい」
「分かった。でも、そうならないようにしてくれよ?」
「うん、お願いするね?」
「ああ、分かってる」
そうシキが返した瞬間、彼の両頬へ温かい感触が触れる。そしてすぐに彼の視界の中に照れくさそうに微笑む二人の少女が映った。
「「これからもよろしくっ!」」
「……こちらこそ」
そう言って少年だったはずの彼は、正真正銘の男の顔で笑みを返した。心の底から守りたいと思う相手だけではなく、家族を、妻を得た故の、精神的成長を遂げたのだった。
「くっ……つ、翼、そこをもう少しゆっくり舐めてくれ」
カリ首辺りへ舌を這わす翼の頭を撫でながらシキがそう告げる。すると、翼は舌を一旦引っ込めるように動かした。
「レロッ、ゆっくり、だな? よ~しっ!」
意気込むように言われた通りに奉仕を再開する翼。その快感に耐えながらシキはもう一方の手で撫でているクリスへと目を向けた。
彼女は陰茎の部分を何度も何度も往復するように舐め上げていたのだ。その刺激を与えつつ、手は優しく陰嚢を揉んでいる。それもシキが頼んだのだ。そうされた方が気持ちいいからと体が知っていたのである。
「クリス、もし嫌じゃなかったら袋の部分も舐めてくれないか?」
「レ~……袋、か。うん、いいよ」
にっこりと微笑み、クリスはその可愛い舌で陰嚢を舐め始めた。そんな二人は揃って裸となっている。
シキと翼が全裸だった事を受け、クリスもならばと着ていた服を脱いだためであった。生まれたままの姿となった三人は、体の内側からの叫びと心の声に逆らう事無く互いを求め始めたのだ。
それは、夫婦の契り。翼もクリスも、勿論シキも自分の覚悟と気持ちを相手へ伝えたかったのだ。初夜を過ごしてしまいたいと思っているのだと。
キスはもう既に終えていた二人の新婦は、ならばと処女を捧げる事にした。ただ、ここで問題があった。新郎は一人なのでその初体験はどちらか一方しかもらえないというものだ。
そこで新郎は二人の新婦がそれを気付く前に気分を盛り上げて誤魔化そうと考え、二人へ願いたい事があると持ちかけ現状と相成っていた。
(シキのおちんちん、本当に美味い……。こんなヌルヌルの美味いはずないのに、ずっと舐めていたい……っ)
(男の人のこういう部分って、もっと臭くて汚いって思ってたけど、シキはそんな事ないんだ。それどころか良い匂いがする……)
夢中になって舌を動かす二人の少女。その頭を優しく撫でる男の手に心をときめかせ、子宮を疼かせ、順調に体を準備されていると知らずに。
ペロペロやチロチロという感じだった二人の奉仕も、気付けばジュルジュルやジュパジュパなどの濁った音へ変わって目付きも妖しいものへなるのにそう時間はかからなかった。
そもそもシキの久しぶりの放精の余波で深い絶頂を味わっていた二人だ。その体の熱と本能の叫びはかなりのものがあり、シキとの会話で多少落ち着いたとしても彼の心からの愛情が混ざった先走りを舐めてしまえばどうなるかは火を見るよりも明らかだったのだから。
「んっ……お、おっぱいが熱い♡ や、火傷しちゃいそうだよぉ♡」
顔中にカウパーを付着させながらだらしない顔で大きな乳房を使ってペニスを扱くクリス。
「ジュルルッ! っぷはっ♡ 何でこんな場所まで美味いんだよぉ♡ オレっ、オレぇ、もうシキのおちんちん以上の美味いもんないって気がしてきたぁ♡」
陰嚢を吸いつき、普段の凛々しさや飄々さはどこへやらの恍惚の表情を見せる翼。
「ああっ……そろそろ出そうだ。出してもいいか?」
愛らしく大事な妻二人を相手にこみ上げてくる快感を何とか抑えているシキ。
そんな彼の弱音とも取れるような言葉にクリスだけでなく翼も顔を上げ、天使のような笑顔で頷いてみせる。
「「うんっ♡」」
「っ! あああああっ!」
その笑顔を見て、守りたいと思うのと同時に汚したいという欲求もこみ上げ、シキはその欲望を解き放つように射精する。勢い良く放たれた白濁液がクリスと翼の顔を、髪を汚し、シキのものだと言う様に染め上げていく。
「「ふわぁぁぁあああっ♡♡」」
立ち上る匂い。感じる重さと温もり。それらから感じてしまう愛情に翼とクリスが恍惚としながら絶頂する。ヴァギナからは愛液を垂れ流し、全身を震わせ、両腕は自分を抱き締めるようにしながら。
そうして出来上がった事を男へ知らせる二人の少女。そのむせ返るような雌の匂いを漂わせ、二人の少女は愛する男へ顔を向ける。
「「し、シキぃ……っ♡」」
蕩けた表情、媚びるような声。おおよそ普段の二人からは考えられない痴態に、シキは静かに頷くとゆっくりと立ち上がる。その反り返ったペニスを二人へ見せつけるように。
雄々しい男の象徴。それを見ているだけで二人は下腹部が疼くのを感じる。見上げている視線はずっとペニスへ固定され、熱っぽく絡み付くような眼差しを送り続けていた。
(す、すげぇ……。こうやって見ると、本当にでっけーんだ。これが、男……。オレは、やっぱり女なんだって、そう分からせられちまう……っ♡)
(おっきくて、逞しくて、迫力がある。男の人のおちんちんなんて見た事ないけど、きっとシキのが立派なんだって分かっちゃう。体が、頭がそう教えてくれるみたい。これが、わたしの旦那様、なんだ……っ♡)
はぁはぁと荒い息を吐きながらペニスを見上げる二人へ、シキは雄々しい顔でこう言い放った。
「もし嫌だったら言ってくれ。今から乱暴な言葉を使う」
無言で頷く二人。まさに主人の命令を待つ犬のようだった。そんな二人へシキはどこか満足そうに笑みを見せると、少しだけ凛々しくも雄々しい表情へ戻してこう告げるのだ。
「舐めろ」
「「っ♡」」
ゾクッとした何かが二人の背中を走る。普段であれば嫌悪感を抱いたり苛立ちを覚える命令形。なのに、なのにどうしてか、今だけは、今のシキにはそう言われて喜んでいる自分がいたのだ。
(ああっ、何だよオレ、どうしちまったんだ? あんな言い方、絶対嫌なのに、嫌なはずなのに……)
(誰かに上から言われる事なんて嫌でしかない……はずなのに。嫌、だったはずなのに……)
見上げる視線の先にいる男が見せる表情と存在感に、翼とクリスは揃って同じ答えを出してしまった。
((この人にだったら、言われてもいいっ♡))
ピシッと、何かが二人の中で亀裂を走らせる。壊れてはいけないような、だけど今の二人なら壊してしまっても構わないような、そんな何かへ。
「どうした? 早く舐めるんだ。ゆっくりと、愛情を込めてだぞ?」
「「うんっ♡」」
頭を揃って撫でられた瞬間、媚びるような声が二人の口からは飛び出していた。その時、またピシピシッと音が響く。それに気付く事もなく、翼もクリスもただ目の前のペニスへ舌を伸ばして左右からゆっくりと舐め上げていく。
(ああっ♡ 美味いっ♡ 美味いよぉ♡ シキの、旦那さんのおちんちん、とっても美味くて頭ん中真っ白になるぅ♡)
(おちんちんを舐めるなんてダメな事のはずなのに、どうしてこんなにも美味しくて頭の中が嬉しくなるの? 硬くて、熱くて、太いおちんちん♡ わたしの、大好きで、大切で、大事な旦那様のだからかな♡)
舐め上げた舌が亀頭部分で互いに触れ合った時、狙ったかのように鈴口からトロリと先走りが染み出すように流れ出て二人の脳内を焼き尽くすような幸福感を与えた。
「「~~~~~っ♡♡♡」」
プシャっと言う音と共に二人の全身が大きく仰け反り、何度目か分からない絶頂を迎えたのだ。
「ありがとう二人共。じゃあ、そろそろベッドへ行こうか」
シキがそう呼びかけても二人は反応しない。いや、正確には出来ないのだ。それだけ二人の体力が絶頂によって奪われていたのである。
それを察したのか、仕方ないとばかりにシキは二人の体をその腕で抱え上げるとベッドへ優しく下ろした。
ぐったりとベッドへ横たわる二人だったが、その股を開くようにシキが足を動かすとさすがに彼が何をしようとしているか分かったのだろう。気だるげに顔を動かして彼を見たのだ。
「し、シキ? そのさ、言い辛いんだけど……」
「す、少し休ませて?」
「ダメだ。俺の二人への想いはもう止められない。悪いが諦めてくれ」
あっさりとそう返してシキは二人の体勢をセックス準備完了とも言うべきものへ変え、その反り返るペニスを動かして満足そうに頷く。
そのままシキはクリスへと迫り、そのだらしなく愛液を垂れ流すヴァギナへペニスを何度か擦り付けてローション代わりに粘液をまぶしていく。
クリスはそのもどかしい快感に声を上げ、身をよじり、だけど股を閉じる事だけはしない。もうそれが彼女の本音をシキへ伝えていた。だからだろう。彼は嬉しそうに笑みを浮かべると、一言だけ告げたのだ。
「いくぞ?」
「っ……う、うん」
ズブリと、クリスの膣内へ侵入していくシキのペニス。まさしく肉杭がクリスの膣を貫きその形へと変えていく。
「んんっ♡ っああ♡ お、おちんちんがぁ……入ってぇ、くるぅ……っ♡」
「ゴクリっ……」
クリスの出す声が甘いものである事に気付き、翼はただ横の光景を見つめて喉を鳴らす事しか出来ない。
やがて肉杭の侵攻はクリスの子宮口をノックする形で終わりを迎える。その甘くも強い快感にクリスは声を上げそうになるも、それは出来ずに終わる。
シキの口で塞がれたのだ。熱く強く優しいキスによって、クリスはまた絶頂してしまう。ただし、彼女はその瞬間シキを全身で抱き締めたのだ。
そう、文字通り全身で。腕や足だけでなく膣までも使ってシキを抱き締めたのである。それにシキも呼応するように射精し、クリスの子宮へ愛を伝えた。
ドクドクと注がれる熱にクリスは朦朧とする意識の中で強い幸福感を覚え笑みを浮かべていた。更に口付けを交わしている男の頼もしさと逞しさ。それでクリスの少女と女と雌の全てがシキに降参してしまったのだ。
(ぁ……もう、ダメだ♡ わたし、シキ以外の人と結婚出来なくなっちゃった♡ こんなに強くて、頼もしくて、あったかくて、気持ちいいエッチ、忘れられるはずないもんっ♡♡)
ゆっくりと顔を離すシキ。クリスはその顔を蕩けた表情で見つめる。
「クリス、愛してるよ。俺の全てを捧げて君を守る事を誓う」
「わたしも、シキを愛してる。わたしの全てを捧げて貴方を支える事を誓うね」
誓いの言葉を交わし、シキはもう一度だけ軽くクリスへ口付ける。そこで遂に今まで沈黙を守っていた彼女の想いが爆発した。
「いい加減オレの事も相手しろぉ!」
涙目で翼がそう言うとシキとクリスが揃って苦笑した。目だけでやり取りをし、シキへクリスが小さく頷いて腕や足による拘束を解いたのだ。
「お待たせ翼。覚悟はいいか?」
「覚悟?」
そんなものがいるのか。そんな感じの翼へシキはフッと笑うと彼女の耳元へ顔を寄せるとこう告げたのだ。
「お前が女だってはっきりと分からせてやるからな?」
「っ♡」
(ぁ……今のシキ、すっごく男って感じがする♡ オレ、これからシキに女にされちゃうんだ……っ♡)
低い声の宣言に翼の中の女が悶え、今までならば嫌がったはずの女であると突きつけられる事さえ喜んでしまう。
クリスの処女を奪ったシキのペニスが、今度は翼の処女を奪おうといきり立つ。その亀頭がヴァギナへ擦り付けられるだけで翼の背中に痺れにも似た快感が走る。
不安など欠片もなく、翼は期待に満ちた眼差しで雄々しいペニスを見つめていた。早く挿入して欲しいとばかりに愛液が流れ、それをまぶして鈍く光を放つ亀頭に翼は唾を飲んだ。
「いくぞ?」
「う、うんっ」
どこか確認するような言い方に翼は微かな恐怖を滲ませるような声を返した。その反応にシキは笑みを零すと、クリスとは違い一気に最奥までペニスを突き入れたのだ。
「あああああああっ!!」
頭の中でブチブチと言う音が聞こえた錯覚を感じる程の強引さ。それに叫ぶ翼だったが、どこかで理解もさせられていた。
(お、オレ、女になっちゃった♡ 女にされちゃった♡ シキだけの女の子に変えられちゃった♡)
クリスが優しく女へ変えられたなら、翼は強く女へ変えられたと言える。オレと言う一人称を使う事から彼女の思考が女性ではなく男性寄りだと知っているシキは、このセックスでそれを完全に変えるつもりでいたのだから。
その狙い通り、翼は体で男女の埋めようのない違いを突き付けられていた。更に言えば、自分はどれだけ足掻いても、努力しても、シキには勝てないと思わされてしまったのである。
これまで自分は剣だと思って生きてきたのに、平行世界の自分と同じく男の前では鞘でしかないのだと思って、いや思わされてしまったのだ。
「翼、これで分かったな? これからは俺がお前を守るからな?」
「うん……オレ、ううん私、シキの前だけは女に戻る。シキの横にいる時は私になる」
「翼……っ!」
「んっ……~~~~~っ♡♡♡」
(ああっ! な、何か熱いの来たぁ♡ オレの中をシキが満たしてく♡ オレが私になっちゃったぁ♡)
キスされながらの膣内射精。それが翼の中のボーイッシュを押し流し、根底に眠っていた女の子の顔を出させた。
それが何をもたらしたかというと、シキの体をそっと抱き締めて嬉しそうに微笑むという反応だった。その表情は夢見る女の子と呼んでもいい。
「……翼、愛してる。俺の全てを使ってお前の事を守り抜く」
「わ、私も愛してるっ。私の全てでシキを支えて生きていくっ!」
翼とも交わす誓いの言葉。こうしてシキはクリスと翼の二人を見事に女とし、自分の妻として様々なものを刻み付けた。
この日は、これで終わりとなる。ただ、シキは疲れ果てた二人を抱えてシャワールームへと向かい、それぞれの体を洗う事となるのだが、それも三人にとっての大事な思い出となる。
「ただいま」
俺がドアを開けて声をかけると、奥からバタバタと足音を立てて愛する妻がやってきた。
「おかえりっ!」
「っと」
その勢いのまま飛び込んでくる妻を受け止め、そこでただいまのキス。あの頃よりも少しだけ柔らかさを増した体と大きさを増した胸を堪能するように抱き締める。
すらっとした足はそのままに、所々女性らしさを増した翼はすっかり俺の前では、もしくは家の中では女となった。
「へへっ、やっぱ旦那さんとのキスは心が嬉しくなるよ!」
「そっか」
すりすりと俺の胸へ顔を擦り付ける翼の頭を愛おしく撫でる。そうしていると奥からもう一人の妻が顔を出した。
「あ~、また二人でイチャイチャしてる~」
文句を言いながら俺達へクリスがトタトタと近付いてくる。その胸はあの頃よりも一回りぐらい大きくなって豊かな果実だ。さしづめ小さ目のメロンかスイカだな。
「クリスもすればいいじゃん」
「言われなくてもするもん」
言いながら少しだけ体を横へ動かしてクリス分の隙間を作る翼に笑みが零れる。それにクリスも気付いているんだろう。嬉しそうに微笑んで俺へ抱き着いてきた。
大きな胸が俺の胸で潰れるように形を変える。って、これ……
「クリス、下着は?」
「お、お洗濯中……」
「全部?」
「……全部」
「ちなみに私もだからな」
「そうか。そういう事だな、お前ら」
分かり易いエッチのお誘いだ。まぁ、三日ほど留守にしたから二人して寂しい想いをしてるんだろう。
「えへへ、そろそろ赤ちゃん、いいかなって」
「わ、私も母上になるのもいいかなってさ」
可愛く言ってるけど、意味としては妊娠させてください、だ。こんな直球のお誘いを受けて燃えない奴は男じゃない。
なので二人の体を抱き上げ、そのまま奥へと進む。そこにはクリスが用意したと思われる料理の数々の中に一品だけ翼が作ったと思われる物があった。
「翼、また作ってくれたのか?」
「旦那の好きなものだしな。クリスばかりが食事をやるってのも今後はどうかなってさ」
俺の視線の先にあるのは木の椀に入った茶色のスープ。ここらじゃ珍しい味噌汁だ。母親が外国人だったクリスはあまり味噌汁の記憶がないらしく、俺の希望を叶えるために料理に慣れない翼が頑張って記憶や俺のうろ覚えのレシピを頼りに身に着けた、唯一にして最高の料理だった。
「今日のは人参と玉ねぎの味噌汁だって」
「味見もしたし、味は保障するっ!」
「そっか。じゃ、美味しいデザートは後に回して先に二人の飯を御馳走になるか」
抱き上げてた二人をそっと下ろし、俺は久しぶりの我が家の食卓へ着いた。俺の向かいに翼とクリスが座り、三人揃って手を合わせる。
「「「いただきます」」」
これを聞くと帰ってきた感じがする。今、俺は師匠が命を賭して何とかしようとした聖遺物を探している。そのためにストリートファイトの世界へ足を踏み入れて、稼ぎを得ながら情報を集めている最中だ。
ストリートファイトの世界には様々な経歴持ちがいる。その中には元軍人や特殊部隊出身などがいて、俺はそんな奴らからかつての仕事関連の話を聞いているんだ。
そして、やっと今回少しだけ目的の物へ近付く話が聞けた。それをいつ話すか。そう思いながら俺は目の前の二人を見つめた。
「……ね、何かわたし達に話す事、あるでしょ?」
だが、そんな事はやはり奥さん達にはお見通しらしい。椀をテーブルに置いたクリスが告げた言葉に翼も同じように椀をテーブルへ置いたからだ。
「なぁ、何か情報を掴んだんだろ?」
「……ああ。とはいえ、一番聞きたくなかった手のやつだ」
「じゃあ……」
「アレは、まだ存在してるんだな?」
「それどころか修復が始まっているらしい。あの時にあそこで警備の仕事をしてたって奴に会ったんだが、どうやらあの後アレは回収されたって話だ」
俺がそう告げると二人が悔しそうに表情を歪めた。俺達の恩人であり父や兄だった人が命を賭けて止めようとした、危険な聖遺物とも呼べる存在。それが今もどこかに存在し、しかもその力を振るえる様にされているのだから。
「翼、クリス、アレの現在地が分かり次第動こう。今は、まだここで俺の帰ってくる場所を守ってて欲しい」
「仕方ないな」
「でも、それがいい。わたし達はギアなしじゃシキ程は戦えないもの」
そう、そうなのだ。あの日、二人を抱いた事が原因なのか俺の体はまた一段と強くなった。シンフォギアと呼ばれるものを使わない翼ではもう絶対に勝てないと言い、ギアを纏っても二人して俺には勝てると思えないらしい。
それもあって今の二人は俺の帰れる場所を守ってくれている。でも、この話をしたって事はもうしばらく子供は無理だろうな。
そこから会話はなく俺達は黙って食事を終えた。その後はきっとやっぱり普通に寝る事になるんだろうと思い、俺は汗を流すためにシャワーへと向かった。
俺が帰ってきた日は一番最初にシャワーを使えるのは俺になってる。二人なりに俺への労いの一つだと思う。
「……師匠」
仇とも言える存在。それが未だに現存している事。それが俺を複雑な気持ちにさせる。
仇は討ちたい。だけど今の俺じゃ師匠と同じ結末を辿るのは間違いない。翼とクリスもあの頃よりも強くなっているとはいえあの時の俺達よりもマシと言えるぐらいで、劇的に強くなったわけじゃない。
「それでも……っ」
居所が分かれば俺達は絶対にアレを破壊しに行く。それが俺達の唯一にして最後の師匠からの課題なんだ。
「シ~キっ!」
突然聞こえた声に振り向くと、そこには裸の翼がいた。最初に見た頃よりも肉付きが良くなっているのに脚線美は相変わらずな、モデル体型の理想像みたいな女性だ。
「わ、わたしも、いるよ?」
翼の後ろから顔を出すクリスも当然裸。胸が豊かだからそこばかりに目が行きがちだが、クリスの魅力的な部分はそこだけじゃない。そう、クリスの隠れた魅力的な部分は最近本人は気にしている尻だ。
「二人共、いいのか?」
暗に妊娠したら敵討ち出来ないぞと告げる。それに二人は少しだけ苦笑して頷くと俺へ抱き着いてきた。
「分かってるさ。でも、もうダメなんだ」
「わたし達、先生の敵討ちよりもママに、なりたいの」
「翼……クリス……」
そう言いながら二人して俺のペニスを撫でている。もうその目は蕩けてきていて、女の顔となってきていた。
「シキ、私、母上になりたい。そして、私がして欲しかった事とかやってみたかった事をしてあげたいんだ」
「シキ、わたし、ママになりたい。そして、わたしが無くしたものや教えてもらった事を全部あげたいの」
「「だから、子作りしよ?」」
こう言われたらもうこっちもその気になるしかない。それに、どこかで師匠も敵討ちよりも次代を繋ぐ命を作る事を優先しろって言いそうだ。まぁ、そう考えて俺は二人を抱きたいだけなんだけどな。
「寝れると思うなよ?」
そう低い声で告げると、二人が小さくブルリと震えて小さく頷いた……。
次回はこの続き(の予定)です。
これはゲームシナリオを基にしたIFですので色々と異なる事には目を瞑ってください(汗
今回の書き方といつもの書き方どちらがいいですか?
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今回(台詞と地の文の間に空白がない)
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いつもの(台詞と地の文の間に空白がある)