「あっ、ダメだ……っ! もう……イク……っ!」
シキがそう言った後で私の口の中にあったかくて美味しいものが出てくる。やっぱりシキの精液好きだな、私。だけど最近はこれだけじゃ足りない。だから私はオチンチンを綺麗にしてから口を離す。……ちょっと名残惜しくはあるけどね。
「ね、シキ……子作りしよ?」
「っ! 響っ!」
股を開いてそう言うとシキが私を押し倒してくる。お嫁さんにしてくれると言っただけあって、シキは本気の全力で私を愛してくれる。仕事も頑張っていて、日に日に逞しくなっていくのをこうして実感出来るぐらいに。
それと、あいつらとの戦いも今までと違って体の熱が中々感じなくなった。ギアを纏っても今までが嘘みたいに調子が良い。やっぱりシキと毎晩愛し合ってるからかな……なんて、そんな訳ないか。
「響、ちょっといいかな?」
「……何?」
エッチが終わった後のちょっとしたお喋り。今の私の一番好きな時間だ。シキの腕を枕にするようにして少し見上げるようにその横顔を見つめる。本当にどんどん凛々しくなってる。男の顔ってこういうのを言うのかなって、そう思うぐらい。
「その、無理ならいいんだけどさ。一度響の家族に挨拶したいんだけど……」
「……お母さんとお祖母ちゃんに、か」
「ああ。ほら、一応俺も正式に雇ってもらえるようになったし、いい機会だと思うんだ。子供が出来てからじゃ本気度を疑われそうだしさ」
「それは……まぁ、うん」
ねだってる私が強く言える事じゃないけど、その割にはシキも毎晩中出しエッチしてくるじゃん。そう思うけど言えない。それが今の私にはとても大事。シキを一番感じる事の出来る手段だからだ。
「だから、今度の休みに案内してくれないか?」
「……お母さんは毎日仕事してるから日中は家にいないと思う」
「え? そうなのか? じゃ……」
「連絡、してみる。それで家にいる時間を聞いておくから」
「本当? じゃ、お願いするよ。あっと、じゃあスーツとか買った方がいいかな?」
「そこまでする必要ないって。時期もあるし、精々ワイシャツにネクタイでいいんじゃない?」
「そっか。なら早速明日買いに行ってくる」
その言葉で私の中である考えが浮かぶ。
「ね、それって仕事終わりだよね?」
「え? ああ、そうだよ? あっ、だから晩飯は」
「私も一緒に行く。で、明日は外で食べよ? ダメ、かな」
問いかけの返事はおでこへの優しいキス。……そういうのたまにしてくるのがシキの厄介なとこ。不意打ちだと顔を隠すのが間に合わないからだ。む、今もニヤニヤしてるし。
「じゃ、どこで待ち合わせする?」
「駅前のデパート行くんでしょ? じゃ、そこの前」
「了解。で、もう一回いい?」
「……いいけど寝坊しても知らないからね」
こうして始まる二度目のエッチ。最近これが常。シキって、ホント不思議だ。大人かと思ったら子供みたいな時もある。それがまるであの人みたいで、ちょっと心がざわつくけど。
それと、最近シキのを中に出されるとあの熱を強く感じる。だけど、身が焼ける程じゃない。でも、どこか怖い。やっぱりシキに相談した方がいいんだろうか。そう思うけど下手な心配をかけるのは嫌だ。だから、まだ我慢する。ホントのホントに怖いのが我慢出来なくなったら言おう。そう思って私はシキを抱き締めた。その瞬間、感じるあったかさに目を閉じて……。
仕事が終わるや汗だけ軽く流して待ち合わせ場所まで向かう。出来るだけ早く向かいたかったけど、中々思い通りにはいかないもんだ。何せ工事は少しの抜かりも許されない。万全に万全を期してもやり過ぎという事はないんだ。
「響~っ!」
やや退屈そうに時計前で立っている響を見つけ、大声を出して呼びかけた。すると、響は恥ずかしいのか一瞬だけこちらを見るなりデパートへ向かって歩き出した。
「ごめんな。待った?」
「別に……」
「そっか。なら良かった」
「……ていうか、普通このやり取り逆だし」
「いいじゃないか。それも俺達らしさって事で、さ」
「……バカ」
若干呆れるような、でもどこか嬉しそうな声に笑みが浮かぶ。そっと響の手を掴むと、彼女の顔がこちらへ向いた。その表情は小さな驚き。
「嫌、だった?」
「……そうでもない。それで、紳士服売り場に行くんでしょ。早く行くよ」
「ああ」
どうやら喜んでくれたらしい。素っ気無い言葉だけど、微かに声には嬉しさが滲んでいた。それと、握り返された事がそれを肯定してくれているし。そうやって二人で紳士服売り場へ向かう。まずはワイシャツ。季節的に夏服を選び、後はネクタイとタイピンを選ぶ事に。
「……これなんてどう?」
すると、そこで響がネクタイを見繕ってくれたのだ。どうやらそれがしたくて一緒に来てくれたようだ。まさしく奥さんのようで、こちらとしても喜ぶしかない。響に薦められるまま二つのネクタイを購入する。一つは響の家族への挨拶用で、もう一つは念のための予備のようなものだ。その流れでタイピンも響に選んでもらい、俺達はそのまま上のレストラン街へ。
「何を食べたい?」
「……お金、大丈夫なの?」
「ああ。大事な彼女に見栄を張れるぐらいは持ってるよ」
「それ、普通は言わないよ。じゃ……」
そう言ってフロア案内を眺める響。時間が夕食時ともあってか、フロアの通路には家族連れなどが目立つ。ふと響の視線が案内板から動いた。その先には両親と笑顔で話す女の子の姿。それをどこか懐かしむような眼差しで見つめる響が酷く寂しそうに見えた。だから気付いた時には後ろから抱き締めていた。
「……何するの」
「ん。響が寂しそうに見えたからさ」
「そんな事……ないから」
「それなら良かった。で、食べたいものは決まった?」
「……お肉」
「じゃあ、ステーキにしようか。行こう」
差し出した手を響は少し見つめてから指を絡めて握ってきた。
「響?」
「……彼女ならこれぐらい普通でしょ。ほら、早く行くよ」
照れ隠しのように一切顔を向けず歩き出す響へ微笑みながらついていく。さっきよりも強く結びついた温もりを嬉しく思いながら歩いて。
「それで仕事の方はどうなの?」
「大きなミスなく何とかやれてる。順調、と言えるかな?」
「そ」
「うん」
現場監督さんからはとりあえず続けられるだけ続けてみろと言われてる。現場は本当に継続こそ力らしく、現場監督さんも以前は一介の作業員だったそうだ。それが続けている内に今の地位までなってしまったと教えてくれた。
―――頭だけを使う仕事は我武者羅じゃダメだが、体ばかり使うここならそれでも案外何とかなるもんだ。辛くなったら遠慮なく言え。辞める前に何か出来る事が俺にもあるかもしれないからな。
こっそりと彼女と同棲してると教え、結婚を考えていると言った時に言ってもらえた言葉だ。本気で俺は人に恵まれている。響との出会いも、今の職場もだ。
記憶がないのは正直怖い。時々思い出した時を考えて不安にもなる。だけど、いつ起きるか分からない事を心配するより、俺にとっては今の生活を心配する方が切実なんだ。響との暮らしはお世辞にも裕福とは言えない。今は俺が稼げるから多少マシになったけど、それまでは響がもらっている仕送りだけで賄っていたんだ。だからこそ、早く挨拶に行っておかないと。
「シキ、どこ行くの」
「へ?」
「お店、ここだよ。何? トイレ?」
「……ごめん、考え事してた」
強く引っ張られて振り向くと見えたのは無愛想な響の顔。どうやら危うく目的の店を通り過ぎようとしてたらしい。軽く謝り、二人で店内へ。予想通り混雑していたが、二人という事もあって何とか席が空いていた。案内されるまま移動し、響と隣り合ってカウンター席へ座る。目の前では鉄板を使ってシェフが忙しく肉や野菜を焼いていた。
「何頼もうか?」
「……コースにする? 面倒がないし」
「ん、じゃあそれにしよう。すみません」
「はい、お決まりでしょうか?」
丁度良く水を持ってきてくれた店員さんへ注文する事に。コースは三つあったので、一番上―――ではなく下のを選ぶ。響がそれに苦笑していたので安堵する。いや、さすがに一人で一万円や五千円は無理。なので三千で妥協。それでもかなりの贅沢だ。それが分かってるからの響の反応だろうな。
「やっぱり見栄は張りきれなかったや」
「十分じゃない? 少なくても私は思い切ったなって思った」
「そっか。なら良しとする」
「……いつか今日よりも高いの、食べられるようにしてよ」
「分かった。頑張る」
微かな笑みを向けてくれる響に笑みを返す。何というか、本気で夫婦のような会話だ。響の笑顔も少しずつ増えているのも嬉しい。毎晩のように子作りしてるから、なんだろうか。何というか、正直仕事のおかげで体力が付いたせいか性欲も強くなって仕方ないんだよなぁ。響の方もそれを嫌がってないからいいんだけど……。
「……何?」
「いや、やっぱ響は可愛いなって」
「…………バカ」
本気で可愛いです、俺の嫁(予定)は。そうこうしていると始まる俺達のコース料理。その内容は正直三千円とは思えない程美味しくまた豪華だった。そんな晩餐を終えて二人でゆっくり家路を歩く。指を絡めて、隣り合って歩くと本当に夫婦みたいな感じがしてくる。
「なぁ、響」
「何?」
「ネクタイとタイピン、選んでくれてありがとう。大事にする」
「……勝手にすれば?」
「ああ、勝手にする。一生ものだ」
「…………あっそ」
そこから会話はなかった。部屋に戻ってもだ。ただ、俺も響も毎晩している事があるので心配はしていなかった。むしろ、会話などなくても別の意味の会話を行うからだ。先にシャワーを浴びた響と入れ替わりに汗を流しに行く。そして布団のある場所へ向かえば、そこには裸の響がいた。
「……早くいれて」
響は尻を突きだしてそれだけ告げると、後は何も言わなかった。俺も返事を口にする事なく彼女へ近付き、勃起したチンポをマンコへとあてがう。響の熱いぬめりが亀頭を濡らしていく。どうやら俺が来るまでオナニーしていたらしい。それがまた俺の興奮を高める。
「んんっ! ……いつもより熱い気がする。シキ、興奮してる?」
「当たり前だろ。可愛い彼女にこんな誘いされていつもと同じでいられるか」
「……じゃ、もっと興奮させてあげる」
「え?」
こちらの疑問を無視して、響は更に尻を突きだすような体勢へ変わり、枕を頭の下に置いて抱え込むようになった。そこからチラリとこちらへ顔を向ける。その目はこれからの行為を想像して潤んでいた。
「シキのオチンチンミルクでお母さんになりたいな」
「っ!? 響っ!」
「んっ! い、今ビクンって跳ねたぁ!」
本当にエッチの時の響は別人ってぐらい変わる。おそらくだけど、そこだけが響が自分を曝け出せる時間なんだ。俺しかいないし、服も理性も捨てていい時間。そこでしか、今の響は本当の自分になれないんだ。そう思うと、とても愛しくまた切なく思う。いつか響が普段から自分らしくあれるように、俺はずっと支え続けたい。いつでも抱き締めて、強く愛してやりたい。
その想いで腰を動かす。乱暴にも見えるぐらいの勢いで。だけど、響が少しでも嫌がったり、あるいは怖がったら止めるようにしてはいる。響の反応と表情を見ながら、大事に、大切に、その体を抱く。
「響っ……響っ!」
「んああっ! だ、ダメっ! 奥グリグリしながら乳首ダメぇぇぇっ!」
「好きだ! 大好きだっ! 愛してるよっ!」
「ず、ズルいよっ! こんな事しながらそんな事言われたらぁ! 言われちゃったらぁ!」
感じている顔を見せてくれる響の耳元へ顔を寄せる。そして、出来るだけ優しくはっきりと囁いた。
「絶対結婚しよう。幸せにするよ」
「っ!? あっ……ダメ……」
その直後聞こえる水音。見れば響が失禁していた。もしかして、これって俗に言う嬉ション? だとしたら凄く嬉しい。俺はシーツを染めて行く黄金水を眺めながら響を抱き締める。
「響、大好きだ。一生一緒に居ような」
「……じゃないとヤダよ。こんな恥ずかしい事まで見られたんだからぁ」
泣きそうな響の声に胸がときめくのを感じて、俺はそのままエッチを再開する。嫌がるかなとも思ったけど、響もずっとチンポが硬いままなのは分かっていたらしく、受け入れてくれたのだ。そしてしっかり響の中へ射精して、汚れたシーツを片付けた辺りで後ろから響に抱き着かれた。
「えっと、怒ってる?」
「……まったくじゃないけどね。ただ、嬉しかった。やっぱりシキは私から離れる事はないんだって、そう分かったから」
どうやらあの嬉ションは思わぬ結果をもたらしたらしい。あれで引く事なく、むしろ喜んでしまった変態性に響は感激したようだ。そして、それを察して俺は余計興奮してしまったので、ある意味似た者同士なのだろう。この日、二度目の射精は響曰く「子宮まで届いたのが分かった」らしい。これで出来たかもしれないと、嬉しそうにあの日のような笑顔で告げたのだ。お腹を愛おしそうに撫でながら。
「シキ、約束して。何があっても私と居てくれるって」
「勿論だよ。俺の居場所は響の傍だ」
「……私の居場所も、アナタの傍だよ」
その時の響の笑顔を、俺は一生忘れないだろう。それぐらい綺麗で輝いていたのだ。それが彼女が本来持っていた笑顔なんだと、しばらく経ってから知る事になる。
その日、俺は響と共に彼女の実家を訪れた。響のお母さんとお祖母さんは俺の事を聞いて不安を抱いたようだが、響が最後に見た時よりも明るくなっていた事とこちらの仕事内容やそれをどうやって得たのかを知り、結婚を前提にした付き合いを許してくれたのだ。
最後には、響から結婚した時はこの家で同居させて欲しいと切り出した事で、お母さんとお祖母さんが噛み締めるような表情で頷いていたのが印象的だった。
「でも、本当に良かったのか? 泊まっていってもいいって」
「いいの。それは別の機会でいい。今の私は、シキの隣が定位置だから」
「……そっか」
心なしか今日の響はいつも以上に素直だ。多分だけど家族と久しぶりに会った事が影響してるんだと思う。今なんて俺の腕にすり寄ってきそうなぐらい近いし。そんな感じで歩いていると進行方向の方が何やら騒がしい。何かイベントでもあるのだろうか。
「何か騒がしいな」
「うん……」
「響?」
「嫌な予感がする」
そう言うや響は手を離して走り出した。俺は少しその背を見送って、慌てて追いかけた。こちらと反対に駆けてくる大勢の人達。その表情はどこか怯えている。そして俺が追い駆けてた背中が一瞬にして変わった。
「あれは……」
その背の先に見える姿は、奇妙な存在達。ノイズと呼ばれるものだ。それへ向かっていく響の姿は、どこか見覚えがあるものだった。一瞬だけ頭がズキリと痛む。脳裏に浮かぶ響と似たような誰かの姿。それが何故か懐かしく思えた。
「……今のは、何だ……?」
と、そこで聞こえてくる歌声。それも何故か聞き覚えがあるような気がした。時折痛む頭と過ぎる誰かの姿。それが何なのか分からないまま、俺はその場でノイズと戦う響を見つめ続けた。やがて、全てのノイズが駆逐されて俺の傍へ響が戻ってくる。
「響……君は……」
「……これが私の秘密。シンフォギアって言うんだってさ」
「シンフォギア……」
その名称を呟いた時、また軽い痛みが頭を襲う。俺の様子を見て響が心配そうに覗き込んでくる。だから大丈夫と告げてその場を立ち去ろうとした時だった。
「またお前か、立花響」
背後から聞こえた声に振り向くと、そこには響と似たようなものを纏った女性がいた。すると、その相手はこちらを見るなり驚いた顔を見せる。
「要さんっ!? どうして貴方がここに!?」
「俺の事を……知ってるのか?」
「知ってる? 私を忘れてしまったんですか要さん! 私ですっ! 風鳴翼ですっ!」
「風鳴……翼……」
「奏の葬儀が終わった後、貴方は姿をくらませました。まさか立花響と一緒にいるなんて……」
「奏……っ!?」
その瞬間、全てを思い出した。保護されていた俺に気安く話し掛けてくれた女性、天羽奏。だけど、彼女はその体を痛めつけて生きていた。それを知って何か手伝える事はないかと、そう関わり出したのが俺と奏の付き合いの始まりだった。
―――じゃ、あたしの逃げ場所になってよ。
―――逃げ場所?
―――そ。翼はあたしの事を変に尊敬してくるからさ、中々弱音を吐けないんだ。でも、あの子は古風だろ? 男の部屋に何か余程の事がないと来る事はない。
―――成程ね。いいよ。それで少しでも奏の役に立てるなら。
それ以来奏は俺の部屋へよく顔を出すようになった。色んな愚痴や弱音を聞いた。時には彼女のストレス発散相手として外に連れ出された。翼とだとどうしても姉のような顔が出てしまって、馬鹿な事が出来ないからとそう言って。
―――あー、楽しかった。こんなに楽なのは久々。
―――……そりゃそうだろ。荷物は俺が全部持たされてるんだ。
―――いいじゃない。その代わり、こんな美人とデート出来たんだからさ。安いもんだろ?
そんな風に過ごしている内に、俺はどんどん奏に惹かれていった。向こうも俺に好意を寄せてくれていた気が、していた。告白するべきか否かと迷っている内に、その日は来た。
奏と翼のユニット、ツヴァイウイングの大きなライブ。その当日、突如現れた大量のノイズと戦って、奏は絶唱と共に散った。その最期の後ろ姿を俺は見た。どこか満足そうで、だけど悲しそうな横顔の彼女を。
「……思い出した。そうだ。俺は……奏に好きだって言えなかった。伝える事さえ出来なかったんだ……」
「シキ……?」
「……そうなんですね。おそらく、愛する奏を失った事で要さんは全てを忘れたくなったのでしょう。それなのに、まさか奏のギアと同じガングニールの装者と共にいるなんて……」
「ガングニール……? そうか、だからどこか見覚えがあったのか」
無意識に響を見る。その姿はどこか奏に似ていながらもやはり違う。と、そこで気付いた。どうして響は翼と共にいないのかと。ギア装者なら二課の預かりになるはずだ。
「響、どうして君は翼と一緒にいないんだ? たしか装者は」
「彼女はこちらへの協力を拒みました。それだけです」
「そうだよ。だから今更シキがそっちの仲間だろうが関係ない。シキは私の傍にいてくれるんだっ! のこのこ出てきて私からシキを奪おうとしないでっ!」
その声はまるでお気に入りのおもちゃを取られたくないとする子供のような感じがした。翼も響の言葉にどうしてと疑問が浮かんでいる。そうだろうな。俺と響の関係なんて知らないもんな。
「要さん、その……戻ってはこないのですか? 叔父様も、司令も要さんの事を案じています」
「悪い。もう俺は自分のいるべき場所を見つけたんだ。あの頃は伝えられなかった事を伝える事が出来た子がいる。その子の傍で、俺は生きていきたい」
言いながら響を優しく抱き寄せる。その瞬間、響のギアが消えて、より彼女の温もりが近くなった。
「だから、風鳴さんには今までご心配とご迷惑をお掛けましたって伝えてくれるかな? それと、お世話になりましたとも」
「…………気にする必要はない。その男らしい顔を見せてもらっただけで十分だ、との事です」
「そっか。相変わらずカッコイイな、あの人」
苦笑する翼に同じ表情を返してから俺は響を見た。その顔はどこか驚きに染まっている。大丈夫だよ、響。俺は約束を守るから。
「じゃあ、元気でな翼。きっともう会う事はないだろうけど」
「そう、ですね。その方がいいのかもしれません」
「ソロ活動、頑張れよ。微力ながら応援してる」
「……ええ、頑張ります。たった一人でも飛べる……と、奏に見てもらうためにも」
その翼の凛とした笑みに頷いて、俺は響の手を掴む。
「じゃあ帰ろうか、響。俺達の家に」
「……うん」
そこからは一度も翼へ振り返る事はせず、響の温もりだけを噛み締めて歩いた。だけど、会話は無かった。俺がいくら声をかけても響は無言を貫いたのだ。怒っているのか、あるいは何を話せばいいのか分からないのか知らない。でも、その沈黙が俺にはかなり堪えた。
「響、その」
部屋に戻っても無言は続いた。響はこちらを無視するように無言でシャワーを浴びに行き、俺は一人残される形となる。辛い……な、これ。やっぱり奏の事が好きだったのが嫌なのか。もしかして、響を奏の代わりみたいに捉えてるって勘違いされてる? だとしたら、それは是正しないといけない。
「そうとなれば……」
シャワーを浴びてる響へ俺の本気の気持ちを伝えないといけない。そう思ってシャワールームへ近付いた。聞こえてくる水音に負けないように心持ち大きな声を意識する。
「響、聞いてくれ。俺はけして響と奏を重ね合わせたりしてない。記憶があろうとなかろうと、俺は君を好きになってた。助けてもらったから好きになった訳じゃない。君の不器用な優しさや時折見せる寂しさ、そういう響の内面に俺は惹かれたんだ。信じてもらえないかもしれないけど、俺は本気で立花響を愛してる」
それだけ告げるとシャワールームのドアが開いた。そこには当然だけど全裸の響がいた。それも、水を滴らせて。
「……布団で待ってて。すぐ行くから」
「っ! わ、分かった!」
ドアを閉める瞬間、響の頬が赤くなってる事に気付いた。なので少し安堵して布団で待つ事少し。近付いてくる気配があった。そして現れるは全裸の響……なのだが、よく見るとまだ頭が濡れている。
「響、頭が濡れてるよ。風邪引くかもしれない」
「じゃ、シキがあっためてよ。いつもよりも熱いエッチで、さ」
言うなり、こちらへ迫ってくる響。その目はどこか不安気に揺れていた。それで確信が持てた。響は怖いんだ。俺が自分だけの存在じゃなくなるのが。でも戦うべき奏はもういない。勝つ事が出来ない以上、俺の心を自分だけに向けているという確信が出来ないから怖いんだ。
だから、響を強く抱き締めた。そしてそのまま優しく深いキスをする。響の中の恐怖や不安を払拭するように。俺は響が好きなんだと、そう伝えるように。
「響、さっきの言葉だけじゃ足りないならもう一度言うよ。俺は、君が好きだ。立花響が好きなんだ。約束、忘れてないから。俺にはもう響しかいない。本気でそう思ってるんだ」
「……ホント?」
「ホント」
「ホントにホント?」
「ホントにホント」
「ホントのホントにほんっ!?」
しつこく聞いてくるのでもう一度行動で分からせる。今度は長くキスをする。するとやがて響が舌を入れてきた。それに応えるように絡めていくと、今度は響の手がチンポへ伸びてきた。要するにもう抱いて欲しいという事だろう。ならばとこちらも手を響の胸へ伸ばす。
「シキぃ、欲しいよぉ」
「響……」
「私、信じるから。シキの事、信じるからぁ……だからオチンチン入れて。体が熱いんだ」
「体が熱い?」
「そうなの。ギアを纏って戦った後、こうなるんだ。最近だとシキの精子もらった後よくなるんだけど、今日は戦ったノイズのせいかずっと熱いんだ」
「そういえば何か黒いのいたな。結構苦戦してたみたいだけど」
最後の最後まで響と戦ってた黒いノイズ。何度か響もダメージを受けてたけど、最後はしっかり倒していた。だから体が熱くなっているんだろうな。長時間の戦闘による高揚ってやつだ。
「だからさ、早くしよ? 私の中、シキのオチンチンでいっぱいにして、お母さんになるように沢山出して?」
「分かった。じゃ、今日は最高記録に挑戦させてくれ。出せなくなるまで響に出したいんだ」
「……いいよ。好きなだけ出して。私、どこまでも付き合うから」
「ありがとう、響」
優しくキスをして、そっと布団へ響の体を寝かせた。本当に綺麗だと思って笑みを浮かべると、響が微笑みを返してくれる。更にその表情のまま股を開いてくれたのだ。そのギャップに凄く興奮する。可愛い笑みと淫乱な行動。何となくその不安定さが今の響を示している気がした。
「はい、ここだよシキ。私のオマンコ、たっぷり召し上がれ?」
「……エロ過ぎたよ響。本気で寝かせないからな?」
「……意識飛ばしてみてよ。経験してみたい」
「っ! ああ、いいよ。それじゃあ……っ!」
「ああんっ! 一気に奥まで来たぁ……」
いきなり蕩けた顔をする響へ、隙を与えず更なる攻勢をかける。そう、それは響の尻を浮かすような形にして体を密着させる正常位。俗に言う種付けプレスだ。
「ふんっ! ふんっ!」
「な、何これぇ! し、子宮っ! 子宮潰されちゃうぅぅぅぅっ!」
「どうだ! これで今夜は泣き叫ぶまで突いてやるからなぁ! 俺の子、孕んでくれって!」
「ああっ! うんっ! 伝わる、伝わるよぉ! シキの赤ちゃん産むからっ! だからお願い聞いてっ!」
「お願いって何だ!」
「孕ませてぇぇぇぇっ!!」
その一言が切っ掛けだった。そこから俺達は本当に獣のように求め合った。射精しながらピストンなど当たり前で、響など体中の水分を全て出し切るかのように潮やおしっこを出し、凄まじい匂いをさせながら俺達はただ抱き合った。言葉は要らない。互いの性器を触れ合うだけで十分だ。射精する度に、アクメする度に分かるから。
自分にはもう目の前の相手しかいないのだと。俺達の相性は最高だと、そう体が教えてくれるのだ。絶対俺も響にも、お互い以上の異性のパートナーは存在しないと理屈抜きで確信してしまった。
「んっ……っぷは。シキぃ、もっと出してぇ。体の熱、全然消えないんだぁ」
「みたいだな。それどころか、もっとくれって言ってない?」
「言ってる。シキのオチンチンミルク飲みたい。もっと飲ませろって」
「だよな。というか、布団が大惨事……」
精液に愛液、果てには響の潮や黄金水でビタビタだ。残念だけど、これはもう捨てるしかない。視線を響へ向ければ、同じ事を思ってるだろう表情。よし、なら明日布団を買いに行こう。ついでに本格的に引っ越しも考えないといけない。
「響、近い内に引っ越そう。その、将来の事も見据えてさ」
「……家の近くって事?」
「出来れば。あと、布団を買いに行かないといけないだろ? だから一緒に行こう」
「……うんっ!」
とびきりの笑顔で答えてくれる響。それと同時にチンポを締め付ける感覚も強くなる。ああ、もういい。会話はここまでだ。どうせ捨てるならとことんダメにしてやるか。そう思って響と再び布団へ倒れ込む。
「ああ……また出る……出すぞ……っ!」
「んんっ……じわぁって来てるよぉ。シキのオチンチンミルク、私の子宮へ流れてきてる……あっ、出来た、かも」
余談だけど、翌日揃って軽い風邪を引いた。それと、布団の始末が大変だった。それもまた、二人だけの大切な思い出となった……。
それから数か月後、響の妊娠が発覚。折しも引っ越ししたばかりであり、事情を聞いた響の祖母が日中二人のアパートへ様子を見に来る事に。守るべき者が増えたシキは、より精力的に仕事へ打ち込み、それを見た現場の者達からの信頼も厚くなっていく。
そして、第一子が生まれた時、響はある物を失って、ある物を手に入れる事になる。それは、彼女の胸にあった傷跡の消失と、響の中でその体を蝕んでいたガングニールのギア、その待機状態のものだった。誕生した娘がその手に持って生まれてきたのだ。
「……これ、そういう事だよね?」
「多分、そういう事なんだと思うよ」
娘が携えてきた物の意味。消えた傷跡。それらから響は決意する。正式なギア装者として立ち上がる事を。
「お前は……立花響」
「悪いけど、今は要響なんだ。それでお願いがある」
「……何だ?」
「私を、二課に入れて欲しい。家族を、娘を養うにはお金はあるに越した事ないから」
未だ消える事なく不定期に現れるノイズ。その中にいる黒いノイズは翼一人では撃退するのが精一杯であった事もあり、響の参入を二課は歓迎した。だが、体内にあったはずのギアをどうやって正式な形で摘出したのかについては秘密とされた。弦十郎や翼などはその鍵がシキである事を薄々勘付いてはいたが、詮索はしない事にした。一般人として立派に父親と夫を務める彼を、そっとしておこうと決めたのである。
「翼は、結婚しないの?」
「相手がいない。それに、私は剣であろうと決めた」
「ふーん、もったいない。せっかく美人なのに。てか、翼って処女だよね。エッチはしないの? 結構いいもんだよ、男ってさ」
「…………なら要さんを渡してくれるか?」
「お断り。シキは私の旦那。それと、あの子から父親奪う気?」
「冗談だ。っと、出動だ。行くぞ、響っ!」
「はいはい。給料分は働くか……」
余談ではあるが、翼は響に終生いじられ続ける事になる。その馴れ合いは、かつての奏との関係を知る者達にそれを彷彿とさせたとか。こうして響は実に三十まで装者として前線に立ち続ける。その後は、第一線から身を引いて表向きは翼の付き人として生活する事となった。そして、それが思わぬ効果をもたらす。
「……その、すまなかった」
「別に、今更気にしてないから」
テレビでの翼の特集で響の姿も放映された事で、長年行方をくらませていた父親である洸が連絡してきたのである。既にあれから十年以上が経過していた事もあり、シキの口添えもあって洸は無事立花家へと戻った。それからは孫を溺愛するお祖父ちゃんとして、響にも教えたあの口癖を伝授する事となる。
「シキ、私、アナタに会えて良かった」
「俺こそ、響に助けられて良かった」
要夫妻は最終的に二男二女と子宝に恵まれ、しかも長女はガングニール装者としての高い適性を有し、次女などは翼の歌を聞いて生まれたためか、ガングニールだけでなく天羽々斬にも適性を示し、姉妹は揃ってギア装者として母達の跡を継ぐ事となる。
長男と次男は幸か不幸かシキの体質を受け継がず、代わりに日本人離れした体格に恵まれ、それぞれスポーツの世界へ進む事に。そんな子供達を、シキと響はリフォームした立花家から見守り続ける事となる。
一枚の家族写真。立花家をリフォームした際に撮影されたそれは、響の両親と祖母や幼い頃の子供達に囲まれている響とシキが写っている。そのシキの首元には、あの日響に見立ててもらったネクタイとタイピンがあった。きっと、それもあって隣の彼女は笑顔なのだろう。
―――それ、まだ持ってたんだ。
―――言ったろ? 一生ものだって。
―――……バカ。
呪われていたはずの少女は、ひょんな事で出会った青年と結ばれ、気付けば不幸は消えて幸福ばかりが訪れるようになりました。そのおかげで、少女の笑顔から段々翳りが消え、元々のお日様のような輝きが戻りましたとさ。めでたしめでたし。
……気付けばグレビッキーが奏みたいになっていた(汗
でも、もしギアが残ったらゲームの方でもそんな関係になれたと思うんですよね。グレビッキーは口調がややぶっきらぼうな分、奏っぽいとこあるし。
次は……未定(汗