※この作品はR-18です。

淫姫絶頂したいフォギアIF   作:拙作製造機

8 / 31
本編で描いた『戦姫絶唱シンフォギアXD』編の続きと言いますかそのIF編です。ややこしい事この上ないですが、本編では整合性を取るために淫姫世界での記憶、思い出を弦十郎以外失ってしまうので、こちらではそうならなかったらという話を展開。ほのぼのオンリーかエロありかは……まだ未定。
活動報告を上げてありますのでそちらへご意見などありましたらお気軽にどうぞ。


原作組淫姫化編その1(響・翼・クリス・マリア・切歌・調・未来・奏)
ようこそ要家へ


「っと、無事到着っ!」

「ああ、こちらは相変わらず平和そうで何よりだ」

 

 静かな公園。その一角に突如として現れるギアを纏った女性が二人。一人はガングニールをまとい、もう一人は天羽々斬をまとっている。そう、彼女達はギャラルホルンを使ってこの在り得てはいけない世界と繋がりを持った、本来あるべき世界の者達であった。

 

「翼さん、早く行きましょう」

「慌てるな。今、こちらの私達に連絡を」

「その必要はないよ」

 

 背後から聞こえた声に二人はギアを纏ったまま振り向く。そこには、立派な成人女性となった未来が立っていた。

 

「未来っ! ……さん」

「小日向、さんか」

「別に好きに呼んでくれていいよ。まぁ、たしかに呼び分けた方がいいかもしれないけどね」

 

 二人の呼び方に小さく苦笑し、未来は手にしたハンドバッグからシャトーへの移動用結晶を取り出した。それに二人が懐かしさを覚えて笑みを浮かべる。この世界にいた際、何度も世話になった錬金術の代物だったためだ。

 

「はい、これ。あの子達もそっちが来るの待ってるんだ」

「じゃあ……」

「使わせてもらいます」

「うん、私は買い物していくから先に行ってて。向こうにはセレナさんが待ってるから」

「「はい」」

 

 こうして二人は地面へ結晶を叩きつけ、その場から消える。それを見送り、未来は頭の中に買い物リストを思い浮かべながら歩き出す。

 

「向こうの響も切歌ちゃんも食べるからなぁ。何気に調ちゃんもだし、総勢七名のお客さん、か。……二万円で収まるかな?」

 

 財布の中身も確認し、彼女はどこか楽しげに歩き出す。その頃、シャトーへ着いた二人をセレナと可愛らしい者達が出迎えていた。

 

「いらっしゃい」

「「「いらっしゃ~い!」」」

「うわぁ、ホントに沢山いる。翼さん、すっごく可愛い子達がいっぱいです!」

「ああ、何とも愛らしい。夢子だけではなく、奏の子やマリアの子もいるのか」

「そう、あの後生まれた子達。みんな、自己紹介」

「はじめまして、さくらい夢子です。今、六歳でもうじき七歳」

「はじめまして! あたし、天羽れみっ! 五さい!」

「はじめまして。アリア・カデンツァヴナ・イヴです。レミと同じで五歳になりました」

「「「守ってくれて、ありがとう!」」」

 

 揃って笑顔で自己紹介をする三人の少女。それに響と翼は確かな時間の流れを感じる。この世界で流れている時間の長さを。そして、あの時自分達が守った命である事も。それは、二人にとって初めての経験。この手で助けた命が成長した姿を見せられるのは、思っていた以上に心へ響くのだと彼女達は感じていた。

 

(あの時、諦めなかったからこの笑顔が、この命達があるんだ。……うん、絶対これからも必要とされる限りやってやろう。これが、私のギアでしか出来ない事の結果なら)

(……何と言えばいいのだろうな。この、胸の奥を温かにしてくれる感覚は。私達の行動は影でなければならない。故に感謝を受ける事などないと、そう思っていた。だからこそ、この感謝が身に沁みる。剣であるこの身が敵を斬り捨てるだけでなく、人を助け活かす事も出来るのだと、そう改めて教えてくれた)

 

 感じ入る二人を見つめ、セレナが小さく微笑んで麗美の肩へ手を置いた。

 

「麗美は、麗に美しいって書いて麗美だよ。ただ、現状は名前負けだけど」

「あたしだって、いつか母さんみたいになるもんっ!」

「カナデママといっしょだと、少しおんならしくないと思うけど?」

「いいんじゃない? お父さんはそんなとこもカワイイって言ってたし」

 

 それぞれに母親の因子を色濃く残して会話する三人の少女達に、響と翼も笑みが零れる。あの時の戦いは、二人にとってはまだ一年も経過していない激戦の記憶。だけど、こちらでは既に五年以上が経過していた。こここそがこの世界と二人の世界が平行世界でさえないという証拠の一つである。

 

 そして、目の前の幼い存在こそ二人が来訪した理由である。パヴァリア光明結社との戦いを終え、再び日常へと戻った彼女達に思わぬ人物が会いに来たのは今から一週間前の事。

 

―――久しぶりね。元気してた?

 

 ガリィが一通の手紙を携えてS.O.N.G本部を訪れたのである。その手紙はシキからであり、内容は要約するとこうだった。あの時守ってもらった子達がある程度大きくなり、自分達を守ってくれたもう一人の母親達に会ってみたいと言っている、と。

 同封されていた写真を見て、響達装者七人が予定を合わせてお泊り会も兼ねた行動に出るのにさしたる時間はかからなかった。そして、第一陣として響と翼がやってきたという訳である。残りの者達もスコア達四人と入れ替わりでやってくる事となっていたのだ。

 

 可愛らしい先導役に案内されるまま、二人は久しぶりのシャトー内を歩く。

 

「ね、響お姉ちゃんもそうしゃなの?」

「そうだよ。こっちの私よりもギアを使ってる時間は多いかも」

「なぁなぁ、あたしにもガングニールつかわせてよ」

「レミ、ダメよ。マムたちもグランマたちもまだ早いって言ったじゃない」

「グランマ? ナスターシャ教授の事か?」

「マムもそうだけど、八紘さんや洸さん達も、だよ」

 

 セレナから放たれた一言は、二人の足を止めさせるのに十分な威力を持っていた。何せ、それは以前と大きく変化した事があると告げていたのだ。

 

「それって、こっちの私と未来の……」

「そう。二人も絶賛妊活中」

「そ、そうか。その、何と言ったらいいか分からないが、良かったな立花」

「いやいやっ! それはこっちの私ですからね翼さん!?」

「ふふっ、さあこの部屋を響は使って。隣を翼でお願い」

「お掃除は帰った後でガリィがしてくれるって」

「だから、えんりょなくよごしてくれていいってさ」

「……何故私を見て言うのだろうか?」

「ツバサママはへやをキレイにつかえないのだけど、ツバサさんは違うの?」

 

 このアリアの一言で翼が膝から崩れ落ち、響が慌ててフォローに入るのをセレナ達四人が笑って見つめた。

 そんな事もあった後、二人は子供達に連れられてシャトーの研究エリアとも呼べる場所へと向かっていた。そこにある一室で三人の姉妹が踊りの練習中と教えられたためである。ちなみにセレナは夕食の準備などがあるためキッチンへ向かった。

 

「ここだよ! ダンススタジオ!」

「……中が透けて見えるんだ。でもどうして?」

「何でも、やり過ぎて誰かたおれてもすぐ分かるようにってコトみたい」

「そんな事あったの?」

「あたしはしらないけど、ここ、あたしらいがいだと、よくつかうのマリア母さんとつばさ母さん」

「……成程、予防策も兼ねているのか」

 

 大きな鏡が姿勢などをチェックするために正面に設置されている部屋。その中で翼似の少女が優雅な動きを懸命にやろうとしていた。それが翼には過ぎし日の己に重なる。だが、明確な違いがあるとすればそこで教える者が母となった自分であり、教わる側はどこか楽しそうである事だろう。

 

(私も、母様が生きていらしたらああだったのだろうか……?)

 

 じわりと胸を締め付ける想いと、目の前の光景の尊さ。それを噛み締めて翼は一度だけ目を閉じた。

 

「ね、これって入ってもいい?」

「ノックすれば大丈夫」

「そっか。ありがと夢子ちゃん」

 

 入口のドアを軽くノックする響。すると中の二人が動きを止めてそちらへ振り向いた。

 

「失礼しまーすっ」

「しまーす」

「しまーすっ!」

「ツバサママ、お客さんをつれてきたわ」

「そう、もう来たのね。お久しぶり、でいいのかしら」

「お久しぶりです、風鳴さん」

「久しぶり、だな。風鳴翼」

「ああ、今から呼び分けてるのか。ふふっ、空、ご挨拶を」

 

 二人の若干呼びにくそうな感じを受け、翼は苦笑して見慣れぬ存在に目をキラキラさせている愛娘を少しだけ前へやる。それに小さく頷いて少女は響と翼へ顔を向けた。

 

「はじめまして。風鳴空といいます。今年で四歳になりました。私や姉様たちをたすけてくれて、ありがとうございます」

「うわ、さすが翼さんの子供だ。しっかりしてる」

「……それは褒められたと取っていいのか?」

「とうぜんです。風鳴翼はほめられるべきそんざいです」

「こらっ。……どうも装者のやっている事を知ってね。私の装者時の振る舞いを真似たいらしくて困ってるの」

「母様は私のほこりです。よのため、人のため、かげとなって戦う。いつか、私もあめのはばきりをうけついで、りっぱなそうしゃになってみせます」

「ね? この調子なのよ。まぁ、ギアを受け継がせるのは確定なんだけどね」

 

 苦笑しながら空の頭を優しく撫でる様は、本当に母親然としている。それが響と翼に彼女の成長を感じさせた。あの頃よりも更に女性らしくなったと。

 

 まだ稽古を続けるという風鳴母娘を残し、二人は夢子達に連れられるまま今度は居住エリアへと戻る。案内されたのは子供部屋。そこではクリス似の少女がセレナ似の少女と鍵盤ハーモニカで遊んでいた。

 

「やっぱりここにいた」

「ん? 夢子ねーちゃん達か」

「うわぁ、小さいクリスちゃんだぁ! かっわいい!」

「な、何だ? ヒビキママ……じゃない?」

「ママたちが話してたもう一人のママたちよ」

「ああ。こちらに来たのはもう五年以上前になるのか」

「ピーッ?」

「カペラ、今はやめときな。アリアがおこるぞ~?」

 

 鍵盤ハーモニカの音で反応を示すカペラに、麗美がおどけ半分本音半分でおどかす。それにアリアが一瞬ムッとした顔をするも、客人の前と思って何とか抑えていた。この辺りにも母親の教育の差が出ていると言えるだろう。響と翼はそれを察して小さく微笑む。実際、平行世界の奏とマリアの関係図も似ているのだ。

 

「とりあえず、じこしょーかいか。あたしは、雪音ソフィーだ。四つになる」

「はじめまして! わたし、カペラ・カデンツァブナ・イブです! 同じく四つ!」

「翼さぁん、この子達も可愛いですっ! カペラちゃんはあのセレナちゃんによく似てるし、ソフィーちゃんはまんま小さいクリスちゃんだしっ!」

「分かった、分かったから落ち着け立花。二人が目を丸くしてるぞ」

 

 ソフィーとカペラを抱き締め、自分へ振り返る響を翼は苦笑しながら落ち着かせる。抱き締められた二人は、キョトンとした顔のまま首を傾げていた。何故ならこちらの響がよくやる事だったのだ。故に慣れていたのだが、まさか別の世界の響も同じ事をするとはと目を丸くしていたのである。

 

「いや、あたしらがこうなってるのは……なぁ」

「うん、ヒビキママもおなじことよくするから」

「……だそうだぞ、立花」

「あ、あはは……やっぱり世界が違っても同じなんですねぇ、私」

 

 そう返しつつ、二人を放そうとはしない辺りが響らしいと言える。そのまま響は子供部屋に残る事にした。麗美やアリアもそこで遊ぶと決めたためである。翼は夢子と共にそこを出た。向かうは再び研究エリア。だが、目的はダンススタジオではない。

 

「ここが母さんの研究室です」

「……広いな」

 

 そう、了子の研究室であった。翼は家であるシャトー内に研究室を設けていると聞き、どのようなものかを見せてもらいたかったのだ。置かれている機器が、彼女が見た事ある物と同じであると気付き、そこからこれがS.O.N.Gからの払い下げ品である事を悟っていた。

 

「何でも、色々出来るようにってスペースは広めにとってあるってキャロル姉さんが言ってました」

「そうか。キャロルやエルフナイン、いやエルは君にとって姉だったな」

「はい。優しくて色んな事を知ってるお姉ちゃん達です」

 

 満面の笑みで返す夢子が翼には眩しく見えた。彼女の世界では、決して生まれる事のない存在。それだけではない。キャロルとエルフナインが姉妹どころか家族となる事さえ、ない。それを知るからこそ、翼は思うのだ。この世界はやはり残酷で優しいと。失ってしまった自分達へ、それらが存在する事で生まれる笑顔や幸せなどを突き付ける。それが心を抉り、温め、切なくするのだから。

 

「……姉妹仲はいいの?」

 

 だからだろう。彼女も久しぶりに本来の口調を使ったのは。それに夢子は驚く事なく頷いた。

 

「はい! お姉ちゃん達や妹達だけじゃなく、父さんや母さん達、お祖母ちゃん達にお祖父ちゃん達も、みんな、みーんな仲良しです!」

「……そう。それは良かった。私達も、ここで戦った甲斐があったというものだから」

 

 自分では八紘に孫を抱かせてやる事は出来ない。養子を取る事も出来ない。女としての幸せは、もう考えられないと翼は思っている。きっとそれをシキやこの世界の彼女が聞けばそんな事はないと言うだろうが。

 

 そのまましばらく研究室を眺め、翼は何かを飲み込むように頷いて夢子へと向き直った。

 

「じゃ、戻りましょうか」

 

 その頃、あの公園にクリス達リディアン組の姿があった。

 

「あんなになったけど、さすがにもう元通りになってるね」

「だな。ま、あたしらは一年も経ってねーが、こっちじゃ五年以上だからな」

「そりゃ赤ちゃんも立って喋れるようになるはずデス」

「写真で見たけど、みんなお母さん似だった」

「マリアさんは、もう少し遅れるんだっけ?」

「はい。何でもお土産を用意するとか」

 

 その時だった、彼女達の背後に気配が生まれたのは。反射的に振り向く四人が見たのは、成長し大人の姿になり始めたエルだった。

 

「お久しぶりです、皆さん」

「……エルちゃん?」

「何と……」

「大人な感じ……」

「ああ、キャロルがファウストローブを使った時みてえだ」

「えへへ、僕も扱いとしては十四歳ですから。体の方も第二次性徴が始まってもう二年近くになりますし」

「うん、その説明の仕方でエルちゃんは変わってないって分かった」

「え?」

 

 未来の苦笑混じりの言葉に小首を傾げるエル。そんな彼女にクリス達も未来と同じ顔で頷いた。普通であればそんな事を言う事はしないのだ。そこに彼女達が知るエルフナインとの類似点を見出し、少女達は笑う。エルはそんな四人に疑問符を浮かべていたが、最後には一緒になって小さく笑った。

 

「じゃ、すぐシャトーに?」

「あ、その、先に未来さんと合流したいんです。何でも夕食のための買い物で買い過ぎたらしくて」

「あー、成程な。んじゃ、案内頼む」

「はい。こちらです」

「多分だけど切ちゃんと響さんの分を考えて増えたんだと思う」

「ううっ、きっとそのはずデス……」

 

 こうして彼女達はエルと共にスーパーへ向かう。そこには、大きな袋四つを前に途方にくれている未来が待っているのだった……。

 

 

 

 忙しなく動くセレナと未来にクリス。それを手伝うのは少女の未来と調にクリスである。その光景を不思議そうに眺めているのは、夢子達少女六人であった。一方、切歌は響と共に二人の幼い命へ夢中になっていた。大人の切歌と調に抱かれているその存在は、彼女達の愛娘である歌鈴と神楽である。

 

「あの頃の夢子ちゃんぐらいだね」

「デスよ。可愛いデス」

「この子達も、貴方達がいなければ生まれてこなかったんだよ?」

「そうデス。感謝してるデスよ」

 

 すっかり母となった二人に響と切歌も返す言葉がなかった。いや、あるにはあったのだろう。それを思い出してまず響が切り出した。

 

「それならこっちも。ここでどんな組み合わせでもユニゾン出来ると強くなるって教えてもらえてたから、私達は自分達の世界で強い相手に負けずに済んだ」

「そうデス。イグナイトが使えない相手にも、怯む事無く立ち向かえる術。それをそっちから教えてもらっていたから」

「……じゃ、そっちだとまた?」

「マジデスか……。アルカ・ノイズが無法状態だと厄介デスね」

 

 無言で頷く二人を見て調と切歌は何とも言えない顔になった。皮肉なものだと感じていたのだ。イグナイトを使う必要などない彼女達が、それに迫るユニゾンを身に着けてしまい、イグナイトに頼る事さえある者達がそれに迫るユニゾンを身に付けぬままでいた事に。

 そして、通常のギアのままで十分な程、この世界は平和であった。懸念されていたパヴァリア光明結社も、キャロルの能力でアルカ・ノイズが無力化される上、下手をすると自分達の位置さえ把握されてしまうと知り、その商品価値は大暴落。逆に売り飛ばした先から目の仇にされ、急速に力を失ったのである。

 

「何と言うか、やっぱりこっちが凄すぎるんデスよ。正直羨ましいデス……」

「切歌ちゃん……」

「それは分からないでもないデスが、そうなるとシキさんのお嫁さんコースしかない事を忘れちゃダメデスよ?」

「はうっ! そうでした! あの人がみんなの旦那さんにならないとこの状況は無理だったデス!」

「そうそう。それでも羨ましい?」

「…………悩みどころデスね」

「私は……さすがに嫌かな。やっぱり旦那さんには、私だけ見て欲しい。未来の旦那さんには未来だけを、クリスちゃんの旦那さんにはクリスちゃんだけを、てね」

「うん、それがいいと思う。ただ……」

「アタシ達は、もうこれじゃないとダメなんデスよ。このあったかい集まりじゃないと、落ち着かないんデス」

 

 苦笑いで言い合う二人を見て、響と切歌は思うのだ。愛にも色々な形があり、どれが正解などは本当は存在しないのではないかと。実際、この要家は一般的に見れば歪であり、とてもではないが受け入れられない形態ではある。それでも、響はこれを気持ち悪いと思わないし否定もしない。何故ならみんな幸せそうだからだ。しかも、周囲の理解も得られるよう、前を向いて生きている。それ故、響は彼らを受け入れていたのだ。ただ、自分がそうなるのは現状では嫌だと言うだけで。

 

「あー……そうかも。だって、夢子ちゃん達、お母さんが違ってるの気にしてないし、それどころか血の繋がりなんて関係ないって感じだった。私と一緒に遊んでる時も、麗美ちゃんとアリアちゃんが実の姉妹みたいにケンカしたり、ソフィーちゃんが鳴らした音に合わせてカペラちゃんが歌ったり、すごく自然な感じで」

「お父さんは一緒だからかな?」

「それだけじゃないデスよ。フィーネが言ってたデスけど、昔は集落ごとで子供を育ててたそうデス。だから、今の我が家は太古の頃に近いんだそうデスよ」

「つまり、この家は人間が昔やってた子育てに近いデスか?」

「複数の女性で子供を育てているとこは、って事らしいデスけどね」

 

 二人の切歌の話に調と響は感心するように頷き、一定の納得を覚えていた。ただ、それは子供達の懐き方や女性達の仲の良さなどに対してであり、一夫多妻へのそれではなかったが。

 

「まぁ、要さんは大変だから許されてるかな? 普通に働くよりもきつい事してるって聞きましたけど……」

「うん、簡単に言えば生きる医薬品原料だからね」

 

 さらりと告げられた言葉に響だけでなく切歌も目を見開いた。そんな二人へ調が説明をしようとした時、抱かれていた神楽が泣き出した。それにつられて歌鈴も泣き出し、響と切歌が慌てる。が、そこはもう慣れたもの。二人の母親は躊躇う事なくその乳房を出して口へとあてがった。

 

「「お~っ……」」

「やっぱりでしたか」

「うん、だと思った」

 

 笑みを向け合う母親達に小さく拍手を送る響と切歌。そこへ空に懐かれたのか、彼女を連れてやや疲れた様子で歩く翼が現れ、それを大人の彼女が笑いながら追うように歩いていた。

 

「おおっ、あれが空デスか! 翼さんそっくりデス!」

「暁、後を頼む。私は少々疲れた。空、暁にも挨拶を頼む」

「はい、姉上。はじめまして、風鳴空です。よろしくお願いします」

「ご丁寧にどうもデス。アタシは暁切歌デス。よろしくデス」

 

 ぺこりと頭を下げ合う二人を横目に、響は椅子へ座る翼へ近寄った。

 

「姉上ってどういう事です?」

「……私は母ではないからという理由だそうだ。血は繋がっているものだから、一番母に近い存在という事で姉なのだろう」

「じゃ、今までずっと?」

「夢子と途中まで一緒だったのだが、そこで空達と出会ってな。夢子はそろそろ帰宅する櫻井女史達を出迎えに行き、私は空からずっと質問攻めだったという訳だ」

「……お疲れ様でした」

「ああ。だが、悪くはなかった。妹がいれば、ああだったのかもしれないな」

 

 最後に小さく笑みを浮かべ、翼は視線を空へと向ける。その眼差しは響から見ても姉や母のように見えた。空との触れ合いは、翼にとって大きな影響を与えていた。やはりというか、母性本能が疼いたのである。夢子が生まれた事で奏達も子を望む気持ちが強くなったように、自分に良く似た幼い命の放つ輝きが翼の中に眠る女を刺激したのだ。

 

(やはり、私も可能ならばお父様に孫を、抱かせてあげたい。風鳴の呪われた血は残すべきではないと思うけれど、こちらの私は残す事を迷わなかった。きっと、それは要さんの子として産んだからだろう。なら、私も風鳴の子ではなく私や夫となる相手の子と意識して……)

 

 柔らかく微笑みながら空を見ていた翼だったが、そこでハッと我に返った。防人であれとの気持ちを忘れていたからである。そんな彼女を母となった翼が小さく苦笑していた。彼女は分かっていたのだ。女を捨て防人となった自分の心の動きが。

 

「空、そろそろ手を洗うように麗美達に言ってくれる? もうじき夕食が出来上がると思うから」

「はい!」

 

 元気よく返事をし、空は姉妹の元へと駆けて行く。その背を二人の翼の視線が追った。そして、それを合図にするかのようにリビングへ姿を現す者達がいる。

 

「みんな~、父さん達が帰って来たよ~っ!」

「「「「「おかえりなさいっ!」」」」」

「「「「「ただいま」」」」」

 

 子供達による出迎えにシキ達五人が返事をする。その彼らの後ろには、そのやり取りに笑みを浮かべる母となっていないマリアと、何と奏の姿があった。

 

「どう? 思ってた以上でしょ?」

「ああ、これは本当に凄いね。うわ、ホントにあたしに似た子までいる」

「「「「「奏(さん)っ!?」」」」」

「何で片翼の先輩がいるんだよ……」

 

 響達の疑問はもっともであったが、その答えを言う前にテーブルへセレナ達が料理を運び出した。それに気付き、配膳を手伝うため動き出す未来達。響や翼もせめてそれぐらいはと動き出した。

 そう、マリアが用意した土産とは奏の事。以前約束したドライディーバを実現するためである。奏の方もシキ達の世界の話を聞き、興味本位で彼女の誘いに応じたという訳だった。

 

 次々と料理がテーブルに並ぶのを眺め、子供達はそれぞれに箸などを用意し始めた。その様子が少女達には愛らしく映り、知らず笑みを浮かべる。そして、全員分の白米とみそ汁が用意されたところで家長であるシキが代表して声を出した。

 

「じゃあ、手を合わせて……」

「「「「「「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「いただきまーすっ!」」」」」」」」」

 

 元気よく声を出すのは二人の響と二人の切歌、そして子供達。それ以外はそんな彼女達を微笑み半分苦笑半分で見つめた。

 

「ナスターシャさんやキャロルとは初対面なんだよな、あたし」

「そうですか。そちらの世界でも私はいると思いますが……」

「私は……どうだろうな。とにかく、短い間だがゆっくりしていってくれ」

 

 奏は初めて会う二人と挨拶を交わし、同時に内心で疑問符も浮かべていた。キャロルとは激しい戦いを繰り広げたと聞いていたからだろう。それがここまで理知的で美人の少女とは思わなかったのだ。

 

「言っておくけど奏、こちらのキャロルは私達の世界の彼女とはかなり違うわ。あの人のおかげで、ね」

「へぇ、にしてもこっちのあたしはすっかり母親なんだね」

「当たり前だよ。麗美を産んで五年ぐらいになるんだ。いやでもらしくなるって」

 

 自分よりも幾分か大きな胸になっている相手を見て、奏は何とも言えない気分であった。彼女も結婚に思う事がない訳ではない。平行世界の翼と出会った事で過去の事もある程度整理は着いた事もあり、前向きな考えになってはいる。それでも、やはり母親というのは遠い世界の話であった。

 

「それにしても、こう見ると本当にそっくりだ。どこでもみんなはみんなって事か」

「そのようね。って、アリア? 刺し箸は行儀が悪いって教えたでしょ?」

「ご、ごめんなさいマム」

「ソフィーもよ。ちゃんと箸を持ちなさい」

「はーい……」

 

 母親となったマリアの振る舞いを見て切歌と調が即座に彼女達の側のマリアを見た。何故ならまったく彼女達二人へ注意するのと変わらないからである。

 

「……何?」

「いえ……」

「何でもない……」

「っ……同じなのは当然でしょ? 彼女は私なの」

「「でも、こっちはもっと言い方が厳しい(デス)」」

「あはははっ! 仕方ないって。そっちのマリアはお姉さんで、こっちのマリアはお母さんなんだからさ。妹と娘じゃ、言い方も違ってくるもんだよ。年齢もあるしね」

「そうですよ。貴方達ももう高校生なのです。であるのなら、マリアの言い方が厳しいのは、貴方達をちゃんと年齢相応に扱っていると言う事です」

 

 奏とナスターシャの言葉に切歌と調は揃って頷き、食事を再開する。マリアは二人へ感謝するように目礼をした。そんな中でも子供達は元気に食事を進めていく。一番上でも六歳であるため、彼女達はそれぞれにまだわんぱくな面が目立っている。アリアやカペラでさえも時折横着な事をしてしまうぐらいだ。

 

「いやぁ、凄いねぇ」

「だね。自分もあれぐらいの頃、ああだった気がする」

「未来も? じゃ、やっぱりそうなのかな?」

「クリスは親近感感じてない?」

「……どうせあたしはちょっと前まであんな感じだったよ」

「ふふっ、でもそんなクリスもカワイイって思ったから大丈夫」

「フォローになってねー!」

「クリスねーちゃん、どーした? ママたちのごはん、おいしくないの?」

 

 声を荒げたクリスへソフィーが小首をこくんと傾げて問いかける。その口の端には回鍋肉のタレが付いていた。

 

「……んな事ねーよ。十分美味い」

「へへっ、それならよかった。ママたちのごはん、せかいでいちばんうまいから!」

「こらソフィー、こっち向け。……ああ、また口の端を汚しちまいやがって……」

 

 すかさず母親クリスが娘の口元を拭う。それを嬉しそうにされるがままなソフィーを見て、クリスは自分の幼い頃を思い出していた。

 

(あたしにも、ああされてた頃があるんだよな。……ママ、か)

 

 切なくも懐かしい思い出。それと、自分がそうなったらの景色。それらにクリスは微かに思うのだ。自分も、子を産んでみたいと。そして、自分が途中で失ったあったかいものをちゃんと注いでやりたいと。

 

「本当ならガリィ達も一緒にいて欲しかったんですが……」

「仕方ない。私達の代わりに動いてもらっているのだ。その、短時間であれば平気なのだがな」

「ああ。だから今度は茶会にでもしよう。それぐらいであれば何とかなるんじゃない?」

「まあ、それぐらいなら」

 

 エルとキャロルと話しながら翼は違和感が拭えなかった。彼女の良く知るエルフナインは少女と幼女の間であり、今の二人のような外見になるのかどうかさえ分からないためだ。それに、今の二人はかつて敵対した際のキャロルの姿に近い事もある。

 

「翼姉様、そちらでは八紘御爺様はお元気ですか?」

「え? あ、ああ。元気、だと思う」

「やつひろじーちゃんか。正月に会ったきりだなぁ」

「また遊びに行きたいわね。ヤツヒログランパのお家、しずかでお庭がステキだし」

「かくれんぼやるにはさいこーなんだよな」

「わたし、ヤツヒログランパにまたえほん読んでもらうんだぁ」

「ね、父さん、母さん、夏休みになったらお泊りで行ってもいい?」

 

 子供達の言葉を聞きながら翼だけでなく奏達も知らず微笑みが浮かんでいた。目の前の無垢な命達には、血縁もしがらみもないのだと感じ取っていたからだ。そして、それを受け入れている周囲の優しさにも。

 

「そうねぇ……どうするアナタ?」

「八紘さん次第かな。一応連絡してみるよ。ダメだったら諦めなさい。いいね?」

「「「「「「は~い」」」」」」

「もし八紘お祖父ちゃんがダメだったら、洸お祖父ちゃん達に頼んであげる」

「「「「「「ホント?」」」」」」

「うん、そうだよ。なんだったら未来お母さんの方にも声かけてあげるね」

「「「「「「わーいっ!」」」」」」

 

 楽しげな子供達を見て、そしてその息の合い方を見て、響達は思うのだ。世間的には間違っているかもしれないこの家族でも、この子供達には間違ってなどないのだと。そんな賑やかで楽しくあったかい夕食はゆるやかに過ぎて行くのだった……。

 

 

 

 夕食の片付けは響や切歌、マリアと奏の料理に参加しなかった者達が引き受けた。客人にそんな事をとシキ達は言ったのだが、彼女達は世話になりっぱなしではと返して現状と相成っていた。

 

「はい、奏」

「あいよ」

「これだけ大きいと拭くだけでも一苦労だね」

「デスね~。だけど、これだけの人数で食べるご飯は美味しいデスっ!」

「うんうん。夢子ちゃん達も可愛かったし、ホント、前よりも賑やかだよね~」

 

 洗い物をマリアと奏が、テーブル拭きを響と切歌がそれぞれ受け持っている中、そんな四人を見つめる者がいた。ソフィーである。彼女は何故かじっと響達の事を見つめていたのだ。ただ、そわそわとして落ち着きがなく、何かを言いかけては留まってと挙動不審であったが。

 

「……切歌ちゃん」

「はいデス。何なんデスかね?」

「分からないけど、可愛くない?」

「……正直クリス先輩に似てるデス」

「だよね。クリスちゃんが照れくさがってる時とかあんなだし」

「デスデス。ホント、クリス先輩の子って感じデスよ」

 

 もじもじとしながら二人の作業が終わるのを待っているソフィーに、終始笑みが零れっぱなしの響と切歌。なので早めにテーブル拭きを終わらせ、台拭きをマリア達へ渡してソフィーの傍へ。

 

「ソフィーちゃん、どーしたの?」

「何かアタシ達に用事デスか?」

「ぁ……えっと……」

「ゆっくりでいいからね」

「……いま、うちで赤ちゃんいないのひびきママとみくママだけなんだ。ちょっと前まであたしがいちばん下のこどもで、かりんとかぐらがうまれてあたしもねーちゃんになった」

「うん」

「だから、かりんとかぐらもねーちゃんにしてあげたいんだ。ねーちゃんになると、すっごくうれしくてたのしいから」

 

 ソフィーの言葉で響と切歌は互いの顔を見合わせる。言っている事は分かるし理解も出来たのだが、何故それを自分達にと思って。その二人の反応でソフィーも気付いたのだろう。その理由をはっきりと告げたのだ。

 

「ママたちが赤ちゃんができるには、パパを元気にするのがいいって言ってた。で、パパはママたちが大好きなんだ。だから、ねーちゃんたちもパパを元気にしてくれねーか?」

「「……そういう事(デス)か」」

 

 母親達が、この場合はクリスだろう。娘からの疑問へ曖昧にぼかした解答をしたため、下の妹二人のためにと不器用な姉らしさを出した結果が今の頼み事になった。そう二人は悟り、どうしたものかと顔を赤らめる。

 リディアンに通っているため、もう切歌も子供の作り方は知っていた。故に、パパを元気にするという意味も察しはつけている。が、いくら妻達にそっくりだからと言ってそういう事をするのは無理であった。

 

「……響さん、これはどうするべきデスか?」

「ええっと……そうだっ! マリアさんと奏さんにお任せしようっ!」

「あたしらがどうかしたかい?」

 

 名案のように告げた言葉へ聞こえてくる声。二人が振り向けば、そこには洗い物を終えたマリアと奏が立っていた。

 

「あら、ソフィーじゃない。どうしたの?」

「あんな、ひびきねーちゃんたちに妹たちのためにパパを元気にしてほしいっておねがいしてた」

「パパを元気に? 十分元気だったと思うけど……」

「あー、マリアさん、実はですね……」

 

 疑問符を浮かべるマリアへ近寄り、耳打ちを始める響。やがてそのマリアの顔が少しだけ赤くなり、額を手で押さえた。彼女もここでもう一人の自分から色々と聞いているため、どうしたものかと思ったのである。一方で奏も切歌から耳打ちされて事態を把握。ただ、彼女もその顔はやや赤くなってはいたが。

 

「成程ねぇ。妹二人をお姉ちゃんにしてやりたいから、か」

「デス」

「えっと、ソフィー? それ、貴方のママ達は何て言ってたの?」

「……むずかしいって。いくらパパが元気でもママたちとだと、赤ちゃんは生まれにくいんだって」

 

 しゅんと肩を下げるソフィーを見て、四人は顔を見合わせる。小さなクリスのようにも見える少女が、無垢に純粋に思って行動した事。それを無下にはしたくない。だが、出来る事などないに等しいとも理解している。四人の困惑を感じ取ったのだろう。ソフィーは項垂れたままで口を開いた。

 

「ごめん。あたし、むり言ったみたい。もうきにしないでいいよ」

「あっ、待ってソフィーちゃん!」

 

 背を向けて去って行こうとする姿を見て、響が反射的に呼び止める。それにマリア達が一瞬驚きを見せるが、心情としては分かるためにすぐ苦笑した。

 

「……何?」

「えっと、どこまで出来るか分からないけど、私達に出来る範囲でソフィーちゃんのお願いに応えてみせるから。だから、笑って欲しいなって」

「……ホント?」

「うん。ただ、絶対大丈夫って約束は出来ないけど……それでもいい?」

「っ! うんっ! じゅーぶん!」

 

 向日葵のような笑顔を返してソフィーは四人で手を元気よく振ってリビングから去って行く。その背中を見送り、響は周囲からの視線を感じて体を丸めた。無言の圧力である。

 

「あ、あのぉ……」

「どうするつもりなのかしらね?」

「それは……あの……」

「出来る限りって言ったけど、このまま何もせずにいるって事じゃないよな?」

「そ、そうなるかなぁ……」

「響さん一人でやるデスか?」

「で、出来ればみんなにもアイディアを出して欲しいかなって……ダメ?」

 

 そこで一斉にため息を吐いた。が、それも彼女らしいと思って笑みを浮かべてはいた。彼女達も可能なら何とかしてやりたいとは思っていたのだから。

 

「とりあえず、風呂に行かない? そこで汗を流しながら考えれば何かいい考えも浮かぶかもしれないし」

「そうね。行きましょう」

「何だったらこっちのアタシ達にアイディアを聞いてみるデスか?」

「それが一番かなぁ……」

 

 こうして四人は大浴場へ向かう。ちなみに、初めて訪れた奏はその内装などに笑い、驚き、気に入った事を記す。




とりあえずどちらにも舵を切れるように終わります。
どちらにするかは……構想中(汗
いっそ両方書いてもいいかもしれませんけどね。IFだし(苦笑
ただ、自分の負担がでかすぎますけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。