「それで沈んだ顔してたんだ」
大浴場で汗を流した響達は、先に湯を浴びていた未来達と合流して一先ず八人でマリアの部屋で集まっていた。それにより、切歌の出した案であるこちらの自分達への意見を伺うのは延期されていたのだが、それがある意味でこの後の彼女達の命運を分けたと誰も気付いていなかった。
「にしても、パパを元気、なぁ……」
「それって、その」
「要約すると子作りに励む事が出来るようにしてって事だね」
奏のまとめに全員が濃淡こそあれ赤面する。ここにいる者達は全員夫婦の営みを理解している。だからこそどうしたものかと思うのだ。何しろ男性経験はおろか、恋愛経験さえない者達なのだから。
「その、精力剤を渡すのはどうだろうか?」
「却下よ。第一、今から買いに行くとして、誰が買うの?」
「そ、それは……」
「なら、マリアは何か意見あるのかい?」
翼が困ったのを見かねたのか、奏がすかさず口を挟む。それに彼女は不意を突かれた顔をして戸惑いを見せた。
「わ、私?」
「そうだな。先輩は意見を出した。それを却下するだけじゃダメだ。ここは対案じゃねーけど、別案を提示するべきじゃねーか?」
「マリア、私もそう思う」
「デスデス」
「あ、貴方達まで……」
学業面で世話になっているせいか、クリス寄りな感じを漂わせる調と切歌にマリアは若干困り顔。それでも一理あると思ったのか考え始める。それを横目に奏は場の進行役を代わる事にした。
「さて、じゃ何か案のある奴いるか?」
「えっと、そもそも何ですけど……」
「あっ、未来か。何だい?」
「その、何で子供が出来にくいんですか? だって、もう八人生まれてますよ? シキさんに問題があるならこんなに子供出来てない気が……」
まさしく盲点であった。誰もが気付かず見落としていた部分。そこへ未来は思い至ったのだ。ただ、残念ながらその答えを知る者は……
「それは、要さんの体質が原因だと思う」
彼女しかいなかった。そう、翼である。彼女だけはシキの体質を知っていた。だから未来の疑問で思い出したのだろう。彼の精液が生命のスープである事を。
「あいつの?」
「どういう事デスか、翼さん」
「生命のスープの事ですよね? それがどうして赤ちゃんの問題に?」
後輩達からの視線で翼がやや顔を赤めたのをマリアと奏は見逃さなかった。そして、そこから二人は同時に同じ推測を立てる。つまり、生命のスープが子種ではないかと。初心な翼が言い淀み赤面する事と、マリアに至ってはあの頃妙に翼がこの世界の響達のからかいへ過剰反応していた事も覚えていたのだ。
「そういう事か……」
「翼、違ってたらいいのだけど、生命のスープってあの要シキの精液?」
「「「「え?」」」」
「……さすがにマリアと奏は分かるか。ああ、そうだ」
「「「「ええっ!?」」」」
「うひゃぁ、聞いてはいたけど実際に言われると凄いね。それでこっちのあたしはリンカー要らずになったんだよね? ……うわ、顔熱くなってきた」
そう言って顔を押さえる奏だったが、それは何も彼女に限った話ではない。翼以外の全員が揃って顔を赤くして頬を両手で押さえたり、あるいは手で顔を扇いだりとしていたのだ。と、そこでクリスがある事を思い出して顔を真っ赤にしながら響を見た。
「ど、どうしたのクリスちゃん?」
「お、お前、昏睡してる時にあ、あいつの……」
「そうだ。要さんが立花に塗ったのはそういうものだ。だが、勘違いしないで欲しい。あの人は最初それを拒否したのだ。私がミカから聞いた目覚めさせられる方法を問い詰めに行った際に。この世界と立花の純潔は自分にとって同価値だから、とな」
翼の言葉で悲鳴を上げようとした響達学生組が止まり、マリア達の顔に理解の色が浮かぶ。だが、当然この疑問が生まれた。ならば何故と。
「……これは推測にすぎない事を念頭に入れて聞いてくれ。要さんは、おそらくあのままでは立花が衰弱死すると思い、苦渋の決断で飲ませるのでも注入するのでもない方法を採ったはずだ。それは、この世界を守るためというよりは立花を死なせたくない一心だったのだろう。でなければ、寝ている立花へいかようにも出来たはずだからな」
「つまり、自分の妻と同じ響を死なせたくなかったから?」
「いや、多分別の世界から来たってのがでかいんじゃねーか? この世界の人間でもない奴を、この世界の都合で死なせたくねえって」
「あたしもクリスの意見に賛成だね。だからせめての延命治療みたいな事をやったんだろうさ。にしても、翼だけが知ってたのか?」
「……先程の話で出た問い詰めに行った時に、な。そこで全てに合点がいったのだ。何故私達の世界では手に入らず、入ったとしても使用を躊躇うと」
顔を赤くしながらもはっきりと告げる翼。その胸中には、シキとの会話で感じた気持ちが渦巻いていた。それは感銘。世界と一人の少女の処女。それを同価値と言い切れる事へ彼女が感じたのはそれであった。そして、翼はこうも考えていた。何故シキが響へ生命のスープを塗ったのか。それは、自分が悪者になっても助けられる命があるのならという、かつてのマリア達の決起と同じ気持ちが根底にあったのではないかと。
「とにかく、これであの男とこの世界の私達が子供を作り難い理由は分かった。その上で、どうするの?」
「ソフィーちゃんに約束した以上、私は何か要さんにするつもりです。その、どんな小さな事でもいいんで」
「エッチな事、デスか?」
「そ、そうなっちゃうよね、やっぱり」
「男の人をその気にさせるだけならやろうと思えば簡単ですけど、あの子のお願いはここの響さんと未来さんがお母さんになれるようにしてって事だから……」
「そうだな。そこが難しいんだよ。極論言やー、この馬鹿があの野郎とす、すればいいんだからな」
「ぁぅ……」
顔を赤くしながらクリスが放った言葉に響が真っ赤になって小さく声を漏らす。それに未来が若干の困り顔をしながらも、視線をマリアや奏へ向ける。
「えっと、二人には何かありませんか? この中で成人してるの二人だけですし」
「そう言われても……」
「あたしらも男と付き合った事はないからね……」
「シキさんとこっちの響さんと未来さんが赤ちゃん出来やすくするのなら、多分デスけどこっちのアタシ達の方が詳しいはずデス。なら、いっそソフィーちゃんの気持ちを本人達へ伝えるのがいい気がしてきました」
切歌の正論にその場の全員が同じような声を漏らす。あまりの内容とそこから派生した話のため、誰もが意識を性行為へと向けていたが、ソフィーがクリスの娘である事からして、あの気持ちを親へは伝えていないと誰もが思ったのである。
こうして彼女達はシキへ会いに行く事に決めた。響一人で行くとしたのだが、奏が自分達も聞いた以上行く義務があると主張。それにマリアと切歌も同意したので、なら全員でとなったのだった。
「えっと、みんなお揃いでどうしたの?」
シキの部屋。そこに異世界の装者が勢揃いしていた。彼は就寝前の日記を書いていたところであり、突然の来訪者に些か驚きを見せていた。
「夜分遅くにごめんなさい。ちょっと貴方に聞いて欲しい事があって」
「俺に?」
「ああ。実はね、ソフィーから頼まれごとをされてさ」
「ソフィーから?」
「ソフィーちゃん、歌鈴ちゃんと神楽ちゃんが生まれるまで末っ子だったんですよね?」
「そうだよ。あの子が一番下の子だった」
「で、あの子達が生まれてお姉ちゃんになったデス」
「うん。すっごく喜んでた。あたしがこの二人を守ってやるんだってね」
そこで全員がその光景を思い浮かべたのだろう。小さく笑みが零れた。小さな体で生まれたばかりの赤子を前に、鼻息荒く宣言する様が見てきたかのように分かったのだ。
「でな、自分と同じ気持ちをその妹達にも味あわせてやりてーんだと」
「歌鈴と神楽に?」
「そのようです。それで、母親達に、おそらくそちらの雪音だと思いますが、聞いたようなのです。どうすれば子が出来るかを」
「……で?」
何となく話が読めてきたのか、苦笑し始めるシキ。クリスがそういう事を話すのが苦手な事を知っているからだ。おそらくそれとなく誤魔化したはず。そう確信しながら彼は話の続きを待った。
「その、パパを元気にさせると出来るみたいにクリスちゃん言ったみたいで」
「あー、成程ね。嘘は言ってないけど真実でもないな。クリスらしい」
「だから、ソフィーちゃんの気持ちを伝える事で、そのお願いを叶える手伝いになるんじゃないかって」
「そう。で、ちなみに誰がお願いされたの? 立花さん? 雪音さん? 暁さん?」
「な、何であたしの名前が……」
「いや、母親そっくりだからね。後は、子供に頼まれたら嫌と言えないだろう二人を」
「「はうっ、当たってる(デス)……」」
図星を刺され、呻く二人。それを横目に未来が少しだけ苦笑して響を指さした。
「引き受けたのは響です。でも、私達も聞いて何とかしてあげたいとは思ったから」
「そうか。その、ありがとう。うちの新米お姉ちゃんが面倒かけたみたいで。でも、そっか。歌鈴と神楽もお姉ちゃんに、か。ソフィーらしいと言えばらしいかな」
そう言って小さく微笑むシキは、紛れもない父親だった。その何気ない表情に八人が意外な印象を受けた。特にあの頃出会っていた響達は。
「うん、本当にありがとう。やっぱり家族だからこそ言い辛い事や言えない事があるんだって、今回の事で分かったよ。そういう事を、何とか察してやれるようになれればいいんだけど、これがかなり難しくてね」
「当然よ。でも、今回のはきっと私達が母親達と同じだから頼んできたのよ」
「ん? 何で?」
「あの子はあんたが奥さん達を大好きだから、似てるあたしらが加わる事でもっと元気に出来るって考えたみたいなんでね」
「…………無知って時に凄い正確なところまで近付くんだなぁ」
感心するように苦笑するシキに彼女達も似たような表情を浮かべる。要するに発想は正しいと彼が認めたからだ。その意味を理解し、彼女達も複雑ではあるが嬉しさがない訳ではない。彼女達が男性のそういう言葉を聞く事はほとんどないからである。マリアや翼、奏はそれぞれで歌手活動をしているためまだ聞く事もあるが、響達は女子校であるためほとんど異性との接点がない。
そのため、やはり多少なりとも異性から女性として意識されるというのは嬉しいものだった。特に響はかつてこの世界の自分が惚れた理由を聞いて理解してしまった事もあって、より一層実感していたのだ。何故ここの自分がシキと夫婦になったのかを。
(要さんって、気持ちを隠さないんだよね。きっとそれが嬉しかったんだ、ここの私。どうしても私って同性からは好意を示される事多いけど、異性からはとんとなかったし……)
それにはあの事件での影響があるのだが、響はそれを意図的に考えないようにしていた。中学時代後半は響にとって思い出すのも辛い時期であるために。
「それで、一つ聞きたいのだけどいいかしら?」
「どうぞ」
「貴方はどうしてあの時響へ生命のスープを与える事を躊躇ったの?」
「……マリアはやっぱりマリア、だな。こっちの君も俺へ踏み込んでくるのを躊躇わなかった。だから俺もその時と同じように本音を言うよ。躊躇ったのは自分のため。そりゃ男としてはしたかったよ。でも人として、夫としてそれは出来ないし、したくないと思った。妻達に嫌われたくなかったし、君達にも嫌われたくなかった。そこに立派な想いはないよ」
「世界と響の初めてが同じ価値って言ったって聞きましたけど?」
「……翼」
「い、言ってはいけなかったのでしょうか?」
やや責めるような眼差しに思わず翼が動揺した。何故そんな目を向けられるのか理解出来ずに。だが、マリアは、いや他の者達は理解した。シキは今照れているのだと。
「そういう事。貴方はあまり自分が凄いと思われたくないのね」
「あ~、やっぱりそうなるか。もう避けられないんだな、こういうの」
「何が言いたいのかわからねーが、そっちの本音は先輩からとうに駄々漏れだ。諦めるんだな」
「……装者に自分の体質が特効で、それを利用して関係を複数持ったのに?」
「だけど、それを受け入れたのはそっちのあたし達だ。なら、別に気にしないよ。あたし達はあたし達で、そっちのあたし達はそっちのあたし達。どこまでいってもそれは変わらないからさ」
そう言い切ってから奏はこう思っていた。それに、そんな男ならそもそも自分が結婚して子まで産んだりしないだろうと。そして、それはここにいる全員がどこかで思っていた事だった。いくら体質があっても、あそこまで誰もが笑い、また幸せそうには出来ない。そうなるには、必ずそれ以外の何かが必要だ。
真心と、呼ばれるものが。故に彼女達もシキの事を拒絶しないでいるのだ。ハーレムなどというものを周囲へ存在させるために腐心していると思って。
「何か変な感じになったね。とにかく、本当にありがとう。ソフィーのためにも、俺も色々響や未来と話すとするよ」
「あ、あはは……なぁんか複雑ですけどお願いします」
「お、お願いします」
顔を赤めて苦笑する響と未来。その脳裏には人に言えない光景が広がっていた。
「櫻井女史などではいけないでしょうか?」
「あー、やっぱり全員に一人ずつは産んでもらいたいし、こういう関係ではあまり分かり易い差を作っちゃいけないんだ」
「成程ね。道理で夢子を産んだ後、櫻井了子はずっと身軽な訳だわ」
「全員に一人ずつ作って、その後はしばらく自由競争?」
「に、なるのかな? 夢は子供達で野球対戦だって」
「九対九、デスか。たしかに装者が全員二人ずつ産めば可能デスよ」
「夢子は? あと、あの人の第二子はどうすんだよ?」
「審判かな。あるいは、監督かも。母親達はチアでもやるって奏が笑ってた」
ポンポンを両手に持ち、よくあるチアガールの格好をして動く奏の姿。それと同じ動きをしながらどこか照れくさそうな他の八人と売り子をしているスコア達。その眼下では、子供達がユニフォーム姿で試合をしている。そんな光景を思い浮かべたのだろう。全員が苦笑しつつも心をあったかくしていた。
「じゃ、シキさんは?」
「俺は、お義父さん達と応援団。お義母さん達と別れてね」
「凄く賑やかで楽しそうですね!」
「うん、そうなれるといいな。幸い、相手チームのメンバー以外は何とかなりそうだし」
「何言ってやがる。そっちも頑張るんだよ。ソフィーが言った事を神楽や歌鈴が言い出さないって誰が言える」
「そうね。頑張りなさい、ダディ」
「……うん、そうだね。頑張るよ。みんなと助け合って」
そこで会話が終わったと、そう誰もが感じた。が、そこでふと響の視線が部屋の隅に置かれた本棚へと動いた。そして、そこにある背表紙に何も書かれていない物が気になったのだ。
「あの、要さん。あの本なんですか? 何も書かれてない奴が……」
「ああ、あれはアルバムだよ。夢子が生まれてからの奴だね」
「なんとっ! アタシ見たいデス! 見せてもらっていいデスか?」
「どうぞ。何ならもう一冊あるからそっちも持ってくるよ。そっちは最新の奴だし」
「お願いしますデスっ!」
こうしてしばらく彼女達は二冊のアルバムを眺めて盛り上がるのだ。そこに写る彼女達が知らない頃の子供達の姿と、もう一人の自分達に心へ色々な波を立たせながら。やがて彼女達は気付くのだ。いつの間にかシキがいなくなっている事に。その意味する事を察して誰もが顔を赤くしながらアルバム鑑賞会はお開きとなる。
翌日、リビングで彼女達が見たのは、とても肌艶が良くなった響と未来と、どこか疲れ果てたようなシキの姿だった。そこから何があったかを悟り、八つの赤い花が咲くのだった……。
「それじゃ、またね」
「うん。今度は、響お姉ちゃん達の夏休みに来て。その頃には、歌鈴や神楽も話せるようになってるかもしれないから」
夢子の言葉に響は心から頷く。彼女としても、この絶対に有り得ない可能性の世界は気に入っているのだ。特に、夢子達子供の姿がそれに加速を付けた。
「姉上、またのご来訪、心よりお待ちしています」
「……ああ、空も息災でな」
自分へ抱き着いて別れを惜しむ空に翼は心が切なくなるのを覚えるも、それを忘れるように笑みを浮かべて彼女の髪を優しく撫でる。
「クリスねーちゃん、こんど来たらいっしょにあそぼーな!」
「ああ、色々と付き合ってやるよ」
にっこりと笑うソフィーに笑顔を返し、クリスは頭をそっと撫でる。妹が出来たようにも思えて、近い内にまた来ようと心に決める程に。
「マリアさん、次に来る時は私とレミとソラでドライディーヴァをやってみせます。楽しみにしてて」
「ええ。アリアも、姉妹や家族を大事にしなさい。練習、頑張って」
朝食を食べ終えた後披露された混成ドライディーバは子供達から万雷の拍手をもらい、シキ達からも見事だと感動された出来であった。マリアは自分を尊敬の眼差しで見つめる少女に微笑みを浮かべ、その別れを惜しむ。
「歌鈴、今度会う時はお話出来るといいデスね。楽しみにしてますデス」
「神楽もね。今度は二人と遊びたいから」
それぞれの母親から預かって幼子を抱き抱えている切歌と調。そんな二人へ無垢な命は無邪気に笑いかけて手を伸ばす。それが再会を約束しているようで、彼女達は嬉しそうに微笑んだ。
「カペラちゃん、今度来る時は一緒にお料理やってみようか。私も結構得意なの」
「ホント? じゃあ、おみそ汁つくりたい。グランマがすきで、マムたちもみ~んなすきだから」
無邪気な天使とも言えるカペラに未来は平行世界のセレナを重ねていた。やはり母に似ているのだと実感しつつ、彼女は少女と指切りをする。
「かなでねーちゃん、こんどきたらあたしにガングニールさわらせてくれよな?」
「そうだねぇ……その時に麗美がもっとお姉さんになってたら考えてやるよ」
かつていた妹とは違うが、その姿を思い出させる少女の存在に、奏は複雑な想いを感じつつも再会を約束する。願わくば、その時にも自分が装者を続けていられるようにと思いながら。
「じゃあ、気を付けて帰って」
「「「「「はい(っ)」」」」」
「「ああ」」
「ええ」
シキ達要家の者達に見送られながら八人は結晶を使ってシャトーを後にした。次の瞬間には、あの公園へと辿り着いてギャラルホルンのゲートを見上げる位置にいたのだ。
それを見つめ、誰もしばらく動かなかった。何も帰りたくない訳ではない。不安があったのだ。この世界と自分達の世界の時間の流れ方が違う故に。今度はもしかするとあの子供達が成人になっているかもしれない。そんな事もないと言い切れないために。
「……出来れば、次来る時はせめて一年後ぐらいで勘弁して欲しいですね」
「ああ、そうだな。今回のように五年以上経過しているなどは少し、な……」
「今度は逆だといいのに」
「逆って言うと?」
「つまり、私達の世界よりもこっちが時間の経過が遅い?」
「おおっ、それなら助かるデスよ。アタシ達が卒業しても、こっちじゃ半年とかなら嬉しいデス」
「それなら最終的に帳尻が合いそうだな」
「ま、あたしとしては今回が初めてだからね。だから是非ともそれでお願いしたいもんだ」
口々に言い合って笑う八人。やがてその場に聖詠が流れる。ギアを纏った彼女達は、ゲートへと入る前に一度だけ視線を前へ向けた。そこに広がる景色へ、再訪を誓うように。
「私達の世界も、いつかここのようにノイズの被害が出ない世界にしてみせるから。それが出来たらどうなるかを、見せてもらったから。だから、また私達は頑張れる」
響の言葉に全員が無言で頷き、ゲートへと入って行く。こうして彼女達の要家でのお泊り会は終わりを告げた。それから彼女達の感覚で一か月後、再び現れたガリィからの手紙で響達は自分達の行動が実を結んだ事を知る。
「これ、近い内に行かなきゃですよ!」
「ああ、奏も誘わねばな」
「会うだけなら、今度はセレナちゃんもどうですか?」
「そうだな。丁度帰ってきた二日後に来て羨ましがってたもんな」
「じゃ、私が行くわ」
「奏さんの方へは私が行きます」
「ならアタシもデス」
手紙には、あの後無事に響と未来が妊娠した事や娘であった事など、様々な事が書かれてあり、ソフィーが是非再度の来訪を待ち望んでいると書かれていたのだ。更に、同封されていた写真には、小さな赤子を抱き抱えて笑う響と未来が写っていた。名前は、和と希望。まさしく、平和な世界に相応しい名と思えた。
それと、この時からエルフナインとキャロルやエルの文通もスタート。既に成長していた二人を、エルフナインはならばと姉として扱う事にし、二人もそれを受諾。世界を異なる姉妹の交流が、やがてアルカ・ノイズに困る彼女達の世界をゆっくりと平和へと近付けていくのだが、それはまた別の話……。
以上でほのぼのストーリー終了。こちらだと響は他の装者のギアを借りて戦う事もなくアダムは敗北しています。
つまり、記憶を消さない=原作(AXZ)ではなくなる。よって、自分としては彼女達はGXまで原作通りの流れを辿り、ギャラルホルンもあったという平行世界扱いです。
……こうすればエロありでもまだ理解出来るかなという保険を利かせておきます(汗