「兄さん…どうしてですか…」
「面目無い…」
時間樹の神を滅ぼして、俺のお迎えもあったために旅団メンバーとともに戻ってきたユーフィーなのだが、戻ってくると同時に俺を正座させてきた。泣きそうな表情でそんなことを言われてしまっては、わけがわからないながらも俺もそれに従って、怒られながらも謝るしかない。
「どうして…」
一体、何を言われてしまうのか。判決の時を待つ被告人のような心持ちで、ユーフィーの次の言葉を待つ。…いや、別に被告人になったことなんてないけど。
「どうして、赤ちゃんくれなかったんですかぁ!!」
「…え?」
いや、そこ? 子供に関してはできるかできないかは俺たちには決められないから、何も言えないんだけど…
「こうなったらしょうがないです…!」
「え…ちょ…ユーフィー?」
正座している俺の膝の上に、向かい合うようにして乗ってくるユーフィー。今から何をされるのか。全く予想がつかないのだが…
「これから毎日子作りしましょうね」
「うん、一旦落ち着け」
幾ら何でも暴走しすぎではないだろうか。一応、この時間樹にはナルカナを解放する目的できていたはずなんだから、そこをどうにかしてからでないとダメだろう。
「ユーフィー、仕事があるんじゃないのか?」
「ナルカナさんはもう時間樹の外に出て行ったので問題ないですよ」
仕事は終わったので、あとは帰宅前の寄り道です、と。そのまま顔を近づけてきて、互いの吐息が顔にかかるほどの距離で話しかけてくる。
「兄さんの家族にもご挨拶したいですし」
色々とやりたいことが目白押しですね、とニコニコしている。
「いや、でも…」
俺の家族は結局俺のことを忘れるんだから意味がないんじゃないだろうか。
「忘れちゃうからって、一度も会わないのはどうかと思います。一回出てしまってからじゃ遅いですよ?」
「それはそうだけど…」
それに、挨拶にユーフィーを連れて行くって。どんな結果になるのかわからずとも『息子がロリコンだった』と嘆かれて、まともなことにはならないということだけはわかる。できれば両親との思い出はそんなギャグ調で終わらせたくはない。
「大丈夫です。『息子さんを貰っていきます』って言うだけなので!」
「あ、『ください』じゃないんだ…」
まさかのお願いですらなく、宣言だった。
「大丈夫ですよ」
こう、行った後のことが不安になっていた俺だが、そんな俺の不安を無くそうとしてくれたのか、至近距離にあった顔をさらに近づけてキスしてくる。
「それじゃ、行きましょうか!」
「え…!?」
俺の膝の上から降りて、笑顔で処刑宣告してくる。ユーフィーを連れて自分の両親と会うとかいう拷問、精神的には改造された時よりもきついかもしれない。
そして──
そして──
そして──
「懐かしいなぁ」
「懐かしいですねぇ」
ふと、引っ張り出してきたアルバム。もうすでに
「確か、父さんと母さんに会いに行った時には宴会状態になったんだよな…」
「はい、まさかあそこまで歓迎してもらえるなんて…」
俺は、ユーフィーを連れて帰れば『息子がロリコンだ』と嘆かれると思っていたのだが、特にそんなこともなかった。むしろ嫁さんを連れてきたと宴会状態になってしまったために、すぐに順応したユーフィーと違って、俺は再起動に時間がかかったものだった。
で、話を聞くと、年の差10歳な両親の出会いは母が中学生の時だったらしい。これで納得した。父親がロリコんだった
そして今開いているアルバムには、家族+ユーフィーで撮った写真も残っている。この時にはこんなことがあった。こんな事件もあった。そういった内容を一つ一つ、2人で振り返って行く。
とはいえ、このアルバムは俺がエターナルになる前の写真ばかりなのでユーフィーもいる写真なんて最後の数ページ程度。母さんが『こんなに可愛い養娘の写真を撮らないわけにはいかないでしょ!!』なんて言い出したことでユーフィーの写真も残っているが、それでも元々は俺の成長記録だったために全体に比べると量は少ない。
「ここまで来るのは本当に長かったなぁ」
俺たちがあの時間樹を出てから約数万年。だが、2人で平穏な日常を過ごせるようになったのは本当に最近だ。…そのほとんどがお義父さんに認めてもらうまでの時間として費やされていたのだが。
認めてもらうまでのことを思い返すと、今こうして一緒に居られることがとても尊い時間のように思える。未だにユーフィーはロウへと移動することもなく、これからそちらに入ることになるんだろうけど今はまだそんな兆しを見せてはいない。
なぜなら
「どうかしたんですか?」
視線をアルバムからユーフィーの方に向けると、結ばれた時に比べて成長した…だいたい高校生ぐらいの見た目になったユーフィーが、俺の視線に気づき聞いて来る。
「いや、まさかあの当時言ってたことを叶えるまでにこんなに時間がかかるなんて思わなくてな」
俺の言う『当時言っていたこと』が何かにすぐに気づき、ユーフィーも笑顔になる。
「確かに時間はかかりましたけど、ちゃんとお願い叶えてくれて嬉しいですよ」
そう言って、新しい命の宿るお腹を愛おしそうに撫でるユーフィー。
そう、ユーフィーが未だにロウに行っていない理由はいくつかあるが、その中でも大きなものの一つがこれである。
『妊娠している』
一言で言えばそれで済む。これが発覚した当初は、お義父さんからよくわからない奇声が発さられたりしたが、それでも皆して喜んでいた。
他にもロウに行っていない理由には、両親に認めてもらうまでミューギィを探すことができなかったりしたなどもあるのだが、今現在は妊娠したので下手に動くことができないということで2人でのんびりと暮らしている。
「さあ、今日はどう過ごそうか」
ユーフィーを下手にどこかに連れて歩くことができないのが辛い。お義父さんとお養母さんは、自分たちの時のことを思い出して、ユーフィーを狙って来るのではないかと警戒心MAXなのだが、俺は力になれないので、こうしてユーフィーと一緒にいることしかできない。
「兄さんと一緒に居られれば、どんな過ごし方でも楽しいです」
「それなら、今日も2人で一緒に…だな」
特に何かを決めるわけでもなく、それでも最低限2人で一緒にいることだけは決めて。そうして日常を過ごしていくのだった。
というわけで主人公が加わったせいで第3章”悠久のユーフォリア”の発生が大幅に遅延する事態。ユーフィーがロウに入った後とか主人公に依存してドロドロした感じになる未来しか見えないのでこんな最後になった。
ちなみに認めてもらうまでの間に、そこらへんの永遠神剣が(主人公を乗っ取ろうと)契約を持ちかけてきたりもしたけれど、「そのためだけに力借りるのも違うだろ」と契約することなくさようなら。
お父さんがなかなか認めてくれなかった理由には親バカ以外にも「準エターナルと結ばれたら、殺された時に復活できない奴なわけだし、先立たれる可能性が高い」と考えたから。こう、ノヴァだのコネクティドウィルだのを受けながらも、ゴキブリのようにしぶとく向かって来るような輩だったので認めることになりました。
そんな経験もあって、今では武人気質なタキオスみたいな連中以外なら一対一でもしぶとく逃げきれます。
妊娠したことを知った時の聖賢(神剣の方)は、「まーたエターナルが妊娠しちゃったよ(遠い目)」な状態だったらしい。これまでにない事例が2件も自分の近くで起きちゃったからね。