目を覚ますと、見覚えのない天井が目に入った。そして、鼻腔をくすぐるのは畳の匂い。『元々の世界』に帰ってきたのかと一瞬思ったが、よく考えると俺の家には畳などないのでおそらく別の世界。しかも、神剣を埋め込まれた時に失ったはずの手足もある。…いや、感覚がないから義肢か。
「目が覚めましたか」
そんなことを考えていたせいか、襖の空いた音に気がつかなかったらしい。そこには、1人の巫女がいた。
「あなたは?」
外の風景などを考えるとおそらくここは『写しの世界』なのだろう。なら、ここは出雲と言ったところか。そして、俺は目の前の少女については知っている。
「私は倉橋時深と言います」
ユーフォリアの両親の出会いに関わったエターナル。これ以上の説明は特に今必要なものではない。俺に関わりがないはずだから。
「今のあなたの状況についての説明をしてあげます」
時深から聞いた話は、俺にとっては信じ難いものだった。
「俺の心臓に『悠久』の欠片が?」
「ええ」
しかも、それだけではなく。永遠神剣の本能に飲まれた俺を引き戻すために、彼女は純潔を捧げてしまったらしい。妹分の純潔を奪ってしまった、と言う事実が俺の中に重くのしかかる。
「まあ、そこに関しては私が口出しすることではありません」
自分のしでかしたことへの罪の重さに潰れそうになる俺に対して、そんな発言をする。まあ、彼女からすれば親友の娘に手を出したクソ野郎なわけだから、別にどうなろうと知ったこっちゃないんだろうし当然といえば当然な反応なのだが。むしろ殺されていないことに感謝するべきだろう。
「今のあなたは『悠久』の、第三位神剣の欠片を埋め込まれたことで準エターナルになっています」
「準エターナル?」
まあ、詳しい説明に関してはよくわからなかったが、とりあえず『ユーフィーがこの世界から出て行っても忘れることはなくなった』ことだけは理解した。
「あとのことは、当人同士で話し合ってください」
「え…?」
俺の疑問を無視して、そのまま部屋を出て行く時深さん。それと入れ替わるようにしてユーフォリアが入ってきたのだが、俯いていてその表情は伺えない。
「おっ、と」
それでも、先ほどまでの会話を聞いて俺が目覚めたことには気づいていたようで突進するかのような勢いで俺に抱きついてきた。腹のあたりにある彼女の頭、その辺りがどんどん湿っていくのを感じたので落ち着くまで撫でることにする。結局、準エターナルになったところで出来ることなど何も変わらないのだから。
けれど、撫でながらも考える。今の俺たちの関係性は何が正しいのだろうか。出来ることは変わっていなくとも、少なくとも今現在の関係性は、俺が攫われる前とは何かが違うはずだ。
そのどれもが正しい。けれどどこかそれだけではないような感じもして、それを解き明かすために疑問をまずは晴らしたい、となぜかそう思った。
「なあ、ユーフォリア」
「……なんですか?」
まだ泣いているようで、少し返事に時間がかかった。
「なんで、お前は俺にあんな方法でマナを渡そうと思ったんだ?」
そう、彼女ならその気になれば俺のことを押さえつけてマナをそのまま送り込んで永遠神剣を自壊させることもできたと思う。それなのに、なぜわざわざあの手段をとったのか。
それを聞くと、腹に顔を押し付けていたユーフォリアは顔をガバッとあげて
「あれしかなかったんです…」
「他にも取れる手段はありそうだけど…」
それに、その手段しかなかったとしても、どうしてユーフォリアがする必要があったのか。それこそ、ミニオンなどを用意して、そのマナを吸収させることだってできただろう。
「他の手段だと兄さんの命は保証されませんでしたし、それにミニオンの用意とか時間がかかりすぎますから」
それもやはり、俺の命が危ないだろう、と。
「私、悪い子なんです」
いきなり、ユーフォリアがそんなことを言い始めた。どういうことだろうか。これまで見てきた限りではいい子にしか思えなかったけど。
「兄さんが苦しんでるのに、兄さんを助けるために
その言葉を聞いて、ようやくユーフォリアの思いを知ることができた。
「そういうことかぁ…」
「はい……私、兄さんのことが好きなんです」
それを聞いて以前言っていたことを思い返す。こんなことを言っていた当時は、そもそも『いつか別れることが確定していた』から恋人に
「俺も、ユーフォリアのことが好きだよ」
俺のその言葉に、最初は、悪い子なんだと宣言した自分が告白されたことを理解できてないような表情に、そして理解したのか満面の笑みになって、俺に抱きついたままだった彼女はより強く俺を抱きしめてきた。
「あの、それだったら一つお願いがあるんです」
「ん?」
「えっと、ユーフィーって呼んでもらってもいいですか?」
それは、彼女の愛称だった。親しい者たちが呼ぶ彼女の愛称。そう呼んでほしいと言われたことがこれまでよりも深い関係性になったような気がして嬉しくて
「
「はい!」
彼女の元気な返事を聞きたくて、何度も名前を呼ぶ。そして、呼んだ回数が二桁に達した頃だろうか。俺とユーフィーの視線がぶつかって、お互いが何を望んでいるのかわかる。どちらからともなく顔が近づき始めて
「目が覚めたのか!?」
入り込んできた望に邪魔された。
Bルートはユーフィーが防衛隊にいなかったせいで、襲われた主人公は攫われることはなかったけれど怪我をする。それを見たユーフィーは一生離れないと言わんばかりにヒシッと抱きついて主人公が死ぬまでそばにいることになる。この場合は主人公は周囲からロリコン呼ばわりされてユーフィー以外と結婚できない。けど、いずれ”渡り”でさようならになるからと手を出すこともなく、ユーフィーが「思い出が欲しい」とか言わない限りは手を出さないままユーフィーに看取ってもらって死んでいく。
ちなみにこのCルートではでユーフィーとチョメチョメしたけど、それを知ってるのは時深さんだけよ。
ユーフィーも人の子(エターナルだけど)ただ良い子なだけよりも、好きな人相手には少しばかり悪い子でも良いよねってこと。理由もなく完全に良い子とか不気味なだけだし。
この世界線は難易度ノーマル。スーパーハードだったらパーマネントウィルとして出てくる永遠神剣の凍結片を埋め込むことでも解決できた。
今の主人公の戦闘能力はミニオンより下。武器もないし、魔法も使えないから素手で殴り殺すかミニオンの武器を奪うかしないと勝てない。契約してなくても神剣さえあれば身体能力的にはミニオン程度は殺せるけど…