三次審査は体力テスト。
会場には一周百メートルのトラックが、ガムテープによるラインで用意されていた。
スタート地点に集められたマリア達はそのまま説明を聞いている。
参加者全員で四百メートル走を行い、最下位が脱落。
その後先頭がゴールしてから五分の間休憩時間を挟み、残ったメンバーで再び四百メートル走。
これを繰り返し、規定数まで減った時点で三次審査は終了。
ずらりと並んだ参加者たちを一瞥し、マリアは思考する。
開始時からかなり減ったとはいえ、まだ参加者は多い。
長期戦になるということは、大切なのは瞬発力よりも持久力。
(ペース配分を考えないと……)
スタートラインに立ったマリアがそう考えていると、合図の音が鳴った。
反射的に足が動き、マリアは悠々と先頭に立つ。
「ふッ……はッ……!」
日ごろから装者としての訓練などで鍛えられているマリアのフィジカルは、一般的なアイドルなどとは比較にならない。
抑え気味に走ったつもりでも、マリアはダントツでゴールをしていた。
「ふぅッ」
スタッフが最下位の子を連行していくのを尻目に、マリアは五分のインターバルを利用して呼吸を整える。
スタート地点脇に置かれていた水と酸素ボンベを手にし、マリアは考えた。
(このペースなら問題はなさそうね……今回は変な妨害もないみたいだ……しッ──!)
水を一口飲み、酸素ボンベを使用したとたんに、マリアの肉体に変化が起きた。
体が熱い。全身から汗がじんわりと滲み出し、呼吸が荒くなる。
周囲を見渡すと、全ての参加者が同じ様子だ。
(しまった……!)
運営の趣味の悪さは重々承知していた。
ただのレースで終わるはずがなかったのに。
そんな後悔も時すでに遅く、会場には無慈悲に二度目の合図が鳴り渡る。
「くッ……!」
相変わらず、先頭を走るのはマリアだ。
だがその足取りは不安定で、先ほどに比べて明らかにペースが落ちている。
(水、いや酸素ボンベの方に……? いえ、両方にでしょうね……)
その予感は的中している。
配布された水と酸素ボンベには即刻性の媚薬が仕込まれていた。
なんとか先頭でゴールしたが、マリアの肉体からは情欲が沸き上がって止まらない。
そして呼吸を整え、乾いた喉を潤すためには再びこの水と酸素を取り込まないといけない。
「う……くぅ……!」
悩んだ末に、マリアは再び水分を摂取し、酸素を取り込んだ。
そして十度目のレース。
マリアの意識は疲労と媚薬の効果で朦朧となり、思考回路はろくにに働いていない。
股は愛液で濡れ、呼吸は艶めかしいものへと変貌している。
もはや歩くよりも遅い足取りで、マリアは何とかゴールした。
倒れながらコースに目をやると、性欲に負け、歩みを止めて自慰に耽る参加者の姿が見えた。
(きもち……よさそう……)
無意識のままに、マリアの右手が己の股間に伸びる。
ビチャビチャに濡れ切った秘部からはいやらしい水音が大きく鳴り、カメラとマイクがマリアの痴態を逃さず捉えている。
「ふッ、ふぅッ……あ、あぁッ……!」
指の動きはどんどん激しさを増し、水音はどんどん激しさを増していく。
一度堰を切った衝動が収まることはなく、マリアは全てを忘却して自慰のみに夢中になった。
「──ッ!」
ビクン、とマリアの体が大きく跳ねる。
絶頂したマリアの肉体は電流が流れたかのように数度痙攣し、秘部からは噴水のように愛液が噴き出した。
「あ……ぅぁ……」
しかしそれでも、マリアの手が止まることはなかった。
口端から涎をたらし、マリアは自慰を繰り返す。
両手の指で膣内をかき回すマリアの耳に第十一レース開始の合図が入ることはなかった。
結局、マリアは失格になるまで自慰を止めることはなく、彼女のオーディションは第三次審査で脱落となった。
意識を失ったマリアは、他の失格者と同様にスタッフに別室へと引きずられていく。
「ぅぅ、んっ……」
意識を取り戻し、マリアはゆっくりと目を開く。
直後、彼女の鼻腔に甘ったるい臭いが充満した。
ぼんやりとする意識を覚醒させ周囲を見渡すと、そこは撮影部屋だった。
マリアの周囲には三次審査失格者たちが身を寄せ合うように集まっており、そんな彼女たちを三百六十度から大小様々なビデオカメラが捉えている。
マリア達三次審査失格者たちへの仕事はアダルトビデオへのノーギャラ出演。
通常であれば出演するはずのない女優やアイドル達を前に、男優達の肉棒は出番を待ちわびるかのように雄々しくそそり立っている。
そんな光景に涙を流す脱落者もいる。
怒りを見せ、歯を食いしばりながら下卑た笑みを浮かべる監督を睨みつける者もいる。
だが皆一様に、己の秘部を濡らし肉棒を受け入れる準備は万端だった。
投与された媚薬の影響もあり、雌の本能に抗うことはできない。
マリアも一切抵抗することなく、今まさに始まろうとしている撮影を受け入れてしまっている。
この日撮影されたキメセク乱交AVは販売元が限定されていたにもかかわらず空前絶後の大ヒットを飛ばし、マリア・カデンツァヴナ・イヴの名は一気にアダルト界隈で有名となったのだった。