深夜のビル群に隠れた地下室。
廃墟と見間違うほどの乱雑な階段を下りた先にあるマッサージ店に、小日向未来は入店した。
カウンターに立つ店員に未来は初回体験コースの利用を希望し、待合室で順番を待つ。
友人の紹介でなければ確実に引き返していただろう、どこか怪しげな雰囲気。
部屋中に広がる桃のような甘いアロマの香りを嗅いでいると、順番はすぐに回ってきた。
初回体験コースは三十分程度の全身マッサージだ。
未来は個室で服を脱ぎ、用意されたタオルを巻いてベッドで横になる。
初めは緊張と警戒の色が濃かった未来だが、行われる施術は至極真っ当なマッサージであった。
女性の施術師はアロマオイルを未来の背中に塗り、全身を揉みほぐしていく。
陸上で酷使する下半身、特に太股を入念にほぐし、何の問題も無くマッサージは終了した。
最後に割引券を受け取り、帰宅し就寝。
何のトラブルも無く、その日を終えた。
一週間後。
未来は再びマッサージ店を訪れていた。
体が軽くなった経験をもう一度。
せっかくなら割引券の期限が切れる前に。
色々と理由はあるが、“何故か”桃のようなアロマの香りが忘れられず、気づけば未来は間をおかず再来店し六十分コースを注文していた。
同じように個室へ入り、服を脱ぐ。
タオルを巻いたあたりで、未来の脳裏に軽い疑問が浮かんだ。
「あれ、こんなに強い香りだっけ……?」
以前と同じ、桃に似た甘いアロマの香り。
心地よさと眠気を誘発するようなその香りを嗅いでいると、未来の思考は次第にぼぅっと薄れていく。
施術師の手が、未来の肉体を滑り、アロマオイルを塗り伸ばす。
背中、腕、足、そして妙に丹念に揉みほぐされる胸や尻。
「んっ……」
甘い吐息が未来の喉から漏れ出る。
しかし不思議と抵抗する気にはならず、されるがままに未来は施術を受け入れていた。
「──あっ……」
肩を軽くたたかれ、未来の意識は浮上する。
途中で眠ってしまったのだと気づくと慌てて頭を下げ、マッサージ店を後にした。
三日後。
未来は恥ずかしそうに顔を赤くしてマッサージ店を訪れた。
こんなに短期間で利用するような店ではないだろうが、体が勝手に向かっていた。
何より桃のようなアロマの香りがずっと未来の鼻腔に染み付いて離れない。
貯金を下ろし、九十分コースを予約した未来を、女性施術師は蠱惑的な笑みを浮かべて迎え入れた。
何を言われるでもなく、未来は自主的に服を脱ぎ、タオルを巻いてベッドで横になる。
長時間コース限定の特性アロマの香りを鼻息荒く嗅いでいると、体温が上昇し呼吸が荒くなる感覚に襲われた。
(これってひょっとして……)
何か怪しい成分が含まれているのではないかと疑問に浮かんだが、既に遅い。
もはや自力で抜け出せないほど深く、小日向未来は沼へと沈み込んでいた。
施術師の手つきは明らかに初日のマッサージとは違い、凝りをほぐすためのものではなくなっていた。
相手に快楽を与えるための手つきは未来の乳首を丹念に撫でまわしている。
全身に塗られる特性アロマオイルの成分は回を重ねるごとに濃厚なものへと変更され、今使用されているものに至っては媚薬成分がその大半を占めていた。
「ッ……く、うぅ……!」
湧き上がる快楽を堪えようとして、未来は両手で口元を抑える。
立ち上がり、走って逃げだす程度の力は残っているはずなのに、心の奥底が快楽を求めているせいで抵抗はせずされるがままにマッサージを受け入れていた。
「──ッ!」
塞いだ口から荒く声を漏らしながら、未来は絶頂した。
ビクビクと全身を震わせ、股を濡らして快楽に沈む様を眺めながら、施術師は容赦なく乳首を責めていた指を下半身へと移動させる。
一度目の絶頂を合図にしたかのように、マッサージはより性的なものへと変化していく。
濡れ切った秘部へと指が挿入され、陰核を撫でるように虐められ、それはマッサージという建前を完全に捨てたただの性的愛撫でしかない。
それでも未来は、これはマッサージなのだと自己暗示を行ってその施術を受け入れる。
アロマの香りと与えられる快楽に中毒にも似た依存を覚え、未来は僅か九十分で六度もの絶頂を体験した。
翌日。
息を荒くして未来は開店と同時にマッサージ店へと来店した。
ニヤニヤと笑う店員に、微かに残った羞恥で顔を染めながら予約内容を復唱する。
「と、特別性感帯開発……二百四十分コースフルオプションでお願いします……」
貯金全額を差し出して俯き震える未来を、店員は恋人を迎えるように肩を抱いてVIP専用個室へと案内した。
未来が案内された個室は全面が薄いピンク色の空間だった。
充満しているのはアロマではなく、煙が視認できるほどに濃密な甘い香りの媚薬だ。
施術師は空気を吸い込まぬようガスマスクに似た装置で口元を覆っており、その薬の効果は足を踏み入れた瞬間に未来の股が反応してしまうほどに強い。
吸ってはいけないと理性が訴え、今すぐに引き返せと警鐘を鳴らしている。
しかし未来の肉体は思考に反して部屋の中央に置かれたベッドへと足を進めていた。
今までとは違い、うつ伏せではなく仰向けに。
体を隠すタオルもなく、施術師に全裸を見せつけながら、餌を待つ飼い犬のように呼吸を荒げて“施術”を待つ。
餌の味を覚えた未来の本能は、駄目だと分かっていても逆らえない。
「ぅ、ふぅっ……ッ!」
ウォーミングアップのような軽い愛撫だけで、未来の息は荒く乱れていた。
全身に塗られた特性の媚薬ローションオイルは発情を促し、未来の肉体を雌犬へと作り替えている。
やがて施術師の手は胸や尻を重点的に揉みしだき、未来の喉から嬌声を絞り出していく。
湧き上がる快楽が頂点に達するその直前、施術師は手を離し、未来は呆けたような声を漏らした。
「あ、ぇ……?」
あと少しでイケたのに。
そんな下品な感想が喉の先まで出かかり、未来は頬を染める。
その全てを把握した施術師はそこから三十分、絶頂直前の寸止めを繰り返し未来の快楽を限界まで高め抜いていく。
「あ、あぁ、ぅぁ……」
未来は脳が沸騰しそうなほどに絶頂を求め、施術師の指を求めてだらしなく腰をへこへこと動かす。
無様なまでの雌犬へと褒美を与えるため、施術師は手袋を装着した。
手袋には細かなイボが付いており、その凶悪な見た目だけで未来はこれから自分がどうなるのかを理解してしまう。
ゆっくりと手袋は未来の乳首へと近づき、そして触れた瞬間に未来は盛大な絶頂を晒した。
「──ッ!」
未来は噴水のように愛液を噴き出し、電流が流れたように全身を痙攣させる。
声にならない絶叫が部屋中に響き、そして責めが止まることは無い。
「あ、あぁ、ぁぁぁ!」
イボ付きの手袋で、今度は休む間もなく乳首と陰核を苛め抜かれる。
獣のような喘ぎ声を上げて絶頂することしか許されず、未来は喉が壊れるのではないかと錯覚するほどに絶叫しながら絶頂を繰り返した。
「し、ぬ、しんじゃぅ……」
命乞いにも似た未来の懇願。
しかし施術師の手が止まったのは懇願を聞き入れた訳では無く、より一層凶悪な責めのためである。
呼吸がようやく整った未来が見たものは、施術師がペニスバンドを装着してこちらへと歩み寄ってくる姿だった。
ご丁寧にペニスバンドにも媚薬が塗られ、内と外から未来を壊すのだと言葉も無く宣告されている。
「ひっ……!」
両腕を抑え込まれ、組み伏せられる未来。
拘束の力は弱く、必死で暴れれば余裕で振りほどくことはできる。
しかし絶頂の快楽を繰り返し与えられた未来の肉体は抵抗するという選択肢を選べない。
完全に堕ちた肉体はこの場に留まることを選択し、股を開いて犯されることを望んでいた。
「──ッ!」
挿入の瞬間に絶頂した未来の肉体。
繰り返されるピストン運動は一突きごとに彼女の理性を石臼のように削り、野生へと作り替えていく。
肉体を密着され犯される姿からは場違いなほどに彼女の表情は喜色に歪み、快楽に溺れ墜ちていった。
半分ほどの時間を残し、未来の肉体は完全に破壊された。
乳首と陰核は数倍に肥大化し、日常生活が困難なほどに敏感に調教されてしまっている。
下着を装着すればその摩擦だけで絶頂してしまいそうな肉体に改造されてしまい、しかし彼女は笑顔で次の“マッサージ”を待っていた。
SM用の椅子に座り四肢を拘束され、未来は身動きを取ることも許されなくなった。
己の意思で座り、己の意思で拘束された彼女の理性はすでに一滴も残ってはいない。
用意されたのは媚薬を漬け込んだローションガーゼ。
未来の両乳首に添えられたそれは、たった一擦りで彼女を絶頂させた。
「──ッ!」
しかし終わらない。
三擦りで潮を噴き、なおも止まらない刺激に、未来の脳はこれは駄目なものだと理解してしまった。
「あ、あの、ちょっと止めて……ッ!」
当然、止まるはずはない。
速度に緩急をつけて繰り返される刺激に、未来の肉体は壊れた蛇口のように愛液を拭きだし続けていた。
「む、無理なんです。これ、多分駄目になっちゃう……ッ!」
涙が浮かび、首を振って静止を懇願するが、施術師は悪戯気に微笑んで摩擦を更に強く早く繰り返すだけだ。
「し、しんじゃう、気持ちよくて死んじゃうッ……!」
未来は涙と涎と鼻水で顔を汚し、壊れた玩具のように懇願を繰り返すことしかできない。
拘束された四肢はどれだけ力を入れても微動だにせず、快楽を逃がすことすらできないままに絶頂し続ける。
「ぅぁ……ぁ……」
施術師の手が止まる。
ようやく助かったのかと安堵した未来だったが、ローションガーゼが今度は未来の陰核に添えられ、彼女の喉から蛙が絞められたような短い悲鳴が漏れる。
「や、止め──ッ!」
肥大化した陰核を容赦なく襲う一撃は未来の陰核と脳に電流のような刺激を与え、彼女の意識を刈り取った。
爆発的な快楽の衝撃で意識を失い、失った意識が再び衝撃で復活する。
そしてまた失神し愛液と尿をまき散らしながら、残りの時間を絶頂し続けて過ごす羽目になったのだった。
翌日。
未来の肉体は日常生活をマトモに行うことも出来なくなってしまっていた。
調教され切った乳首と陰核は下着に擦れるだけで達してしまうほど敏感になり、両乳首には絆創膏、下着の代わりにオムツを履いて生活するしかない。
それだけの目にあったというのに、未来はあのマッサージが忘れられずVIPルームの受付に赴いていた。
震える手でコース一覧の最下部に記載されたコースを注文する。
案内された部屋にはバイブやローターから、どう使用するのか見当もつかない淫具がビッシリと並んでいた。
三方向からカメラで撮影される中心で未来は服を脱ぎ、全裸になって足元の首輪を装着し土下座の姿勢で施術師に今回のコース内容を復唱する。
「二十四時間雌犬イキ狂い調教コース、人権払いでお願いしますッ……!」
後日、ダークウェブにて配信販売された有料アダルトビデオは圧倒的な売れ行きを記録したという。