月読調は深夜にベッドから起き上がり、着替えて外に出る。
隣で寝息を立てる切歌を起こさぬよう慎重に、ゆっくりと。
逃げ込むように路地裏へと入り、周囲に誰も居ないことを確認すると調は来ている服を全て脱ぎ捨てた。
後ろ手に手錠をかけ、鍵も同様に置き捨てたまま路地裏を出て表通りに。
深夜であり人はいないが、誰かが急に通らないという保証は当然無い。
手錠で拘束された調には自身の体を隠すことも許されないだろうに、彼女の口端は悦びに歪んでいた。
初めは露出の多い服を着ていた。
そして見られると恥ずかしい、程度では満足できなくなった。
どんどん露出行為はエスカレートしていき、全裸コートにボンテージ、遂にはここまでしないと興奮できなくなってしまったのだ。
一歩歩くごとに心臓が跳ね上がり、鼓動の音が静かな街中に響く。
呼吸は乱れ、物陰や曲がり角が即死のトラップにも感じられるリスクに震えそうになる。
「はっ、はっ……ふぅッ……」
股を濡らし、自動販売機で飲み物を購入する。
もし今誰かが同じように飲み物を買いに来たら、そう想像するだけで調の興奮は高まる。
仄かな灯りがまるでスポットライトのように眩しい。
ジー、という機械音が耳の中を何度も乱反射している。
ガタン、という飲み物が落ちる音がとてつもない騒音に感じられ。
「──ッ」
ビクン、と調の肉体が跳ねる。
誰かに見られるかもしれないという想像だけで絶頂してしまったことを自覚し、調は逃げるように早足でその場を立ち去った。
いつも通りの、日課のような露出自慰。
普段なら服を回収してそのまま帰宅するのだが、火照ったままの肉体を調は自覚していた。
(また……満足できなくなってる……)
湧き上がる欲求は日増しに増大しており、もう裸で出歩く程度では解消できないほどになってしまっていた。
微かに残った常識や理性が抑えている欲求が、今日はもはや抑えきれないほどに大きくなっているのだと調は理解してしまったのだ。
(見られたい、見せたい、見て欲しい──)
駄目だ、いけない、一歩踏み出せば戻れなくなる。
そう理解しながらも、調は己の行動を止めることが出来なかった。
翌日。
休日の昼間ということもあり多くの人々で賑わう繁華街に調は足を延ばしていた。
無論、全裸ではない。
人混みの中でそんなことをすれば数秒で通報される、ということを理解する程度の理性は残っている。
白い薄手の半袖シャツに、膝が少し見える程度の丈のミニスカート。
温かな陽気を考えれば違和感の無い恰好で、調は顔を赤くして息を荒げていた。
(や、やっちゃった……ついに……!)
調の膣にはローターが挿入されており、スカートに隠れた太股で固定されたスイッチは入った状態だ。
微細な振動音は喧噪に隠れる程度だが、それでも今の彼女がこんなことをしていると露見すればどうなるのかは想像に難くない。
もし、急な風でスカートが捲れ上がったら。
もし、近くを通った人の耳に振動音が届いたら。
もし、汗で透けたシャツ越しに己がノーブラであることが露見したら。
想像するだけで興奮は高まり、リスクが大きいほど性的興奮も大きくなる。
ぎこちない動きで街中を歩く調の行動はどんどんとエスカレートしていく。
周囲に誰もいないことを確認し、調は公園のトイレへと入った。
入った先は女性用ではなく、男性用便所だ。
個室に入り扉を開け放ったまま、シャツとスカートを脱ぎ手持ちのバッグへと入れる。
裸になって便器に座り、調は意を決したようにローターのスイッチを入れた。
「ッ……! ふっ、ふぅっ……!」
自室で行うのとは何もかもが圧倒的に違う自慰行為。
空いた手で乳首を弄ると調の脳には電流が流れたような快楽が流れ込んだ。
「あっ、あぁっ……い、イッちゃうッ……!」
ローターの機械音と己の心音が耳に鳴り響いて、周囲の音がまるで聞こえない。
心の声は喉を通じて音となり、絶頂した調は心が抜けたように十数秒放心してしまった。
「は、はぁっ……」
欲望は止まることが無く、絶頂の余韻で虚ろになった思考のまま調は個室を出る。
裸のまま小便器の前に立ち、ガニ股に足を開くとそのまま放尿を開始した。
(気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……ッ?!)
本能のままに露出行為を楽しむ調の意識が一瞬で正気に戻る。
耳に届いたのはカメラのシャッター音だ。
慌ててトイレの入り口に視線を向けるが、そこにはもう誰も居ない。
音は気のせいだったのか、それとも誰かがもう逃げた後なのか。
(み、みら、見られた……?)
想像は性的興奮に変わり、冷や水をかけられた思考とは別に調の肉体は再び絶頂した。
それと同時に、彼女の中で最後の一線というタガが外れる音がした。
一週間後。
アングラなネットワーク界隈でとある動画が話題となった。
サングラスとマスクで顔を隠したツインテールの少女が裸で街中を歩いている動画だ。
画質が悪く文字は読めないが首には学生証がぶら下がり、己の身分を公開している。
両手を頭の上で組み足を大きく開いて見せつけるように歩いたり、四つん這いで犬のように歩いたりしながら周囲に裸を見せつけ、警察や警備員が現れた瞬間に走り去る五分程度の動画が複数個ネットの海に流された。
一般的なサイトに上がった分は即座に削除されたが、裏の世界の変態たちの間で保存された物が出回っていた。
『発売中止になったAVの撮影映像』『ヤクザに脅されて行わされた被害者』『変態女が自分の意志で公開した』等様々な憶測が飛び交ったが、真相は闇の中。
真実を知る唯一の少女はネットに上がった動画に下品なコメントを残す雄たちを眺めながら己の秘部を弄り、己の裸が変態たちの自慰材料になっているという事実に興奮しながら絶頂するのだった。