深夜の繁華街。
サングラスとマスクで顔を隠し、立花響は俯きながら約束の場所へと早足で向かう。
そこには一人の男が下卑た笑みを浮かべて立っており響の来訪を待ちわびていた。
男の手にはビニールに包まれた数錠のラムネが握られている。
比喩表現ではなく、それは本物のラムネ菓子であり原価は十数円程度だ。
しかし認識改変催眠によってラムネ菓子を『依存性のある薬物』だと誤認させられている響にとって、それは数万円を支払ってでも手に入れたい中毒物質と化している。
「お、お金を持ってきました……だから早く、早く下さい……!」
紙幣と硬貨をかき集めた封筒の中身を差し出し、響は涎を垂らして懇願する。
その様子からついに彼女の全財産を最後の一円まで搾り取ったのだと認識した男は、『この金額ではごく少量しか購入できないこと』と『以前から話していた提案』を耳へと囁く。
それは獲物をしっかりと弱らせてから捕らえる狩りの手法であり、獲物である響は逡巡を数度繰り返してゆっくりと男の提案に頷いた。
それが底なし沼へと嵌る第一歩であると認識しないままに。
ラブホテルの一室。
正面に置かれたビデオカメラへ向かって、響は全裸のまま引きつった笑みを浮かべて手を振っている。
「『モザイクはちゃんと入れる』って約束、守ってくれるんですよね……?」
男は頷き、響の肩を抱いて笑みを浮かべた。
“響の顔にモザイクを入れて特定できないようにする”とは言っておらず、男の顔や陰部にだけモザイクを入れられてもそれは嘘ではないのだが余裕の無い響にはそのことを理解できない。
「み、皆さん、こんにちは……今日はこのご、ご主人様と一緒に、キメセクハメ撮りAV撮影、がんばりまーす……! お薬欲しさに学生証も差し出したので、もう逃げることもできないし絶対服従の雌犬になっちゃいました……ドスケベJKが情けなくハメ潰されるところを見て楽しんで下さーい……!」
指示通りの無様な挨拶。
その褒美に差し出されたラムネ菓子に、響は飢えた犬のような勢いで舌を出した。
「お゙、お゙ぉぉっ……!」
一錠を舌に乗せ、嚥下した瞬間響の肉体は電流を流されたかのように痙攣し、秘部からは愛液が噴き出した。
乳首や陰核はぴんと硬く隆起し、性を受け入れる準備が万全に整ったと合図を出している。
普段であれば己の部屋で指や淫具を使用し自慰行為に耽るところだが、今は目の前に男が肉棒を差し出していた。
「すぅぅっ……!」
鼻を膨らませて雄の臭いを嗅ぎ、響は顔を歪ませる。
恥垢をわざと残した汚い肉棒からは悪臭と表現していい臭いが漂っているが、今の彼女にとっては興奮を煽る最高の香りと化していた。
「んっ……」
口を開き、カメラの位置を確認し、響は肉棒を咥える。
舌を這わせ、拙い動きと聞きかじりの知識で行われる口淫奉仕。
それは技術的には満足のいくレベルではないが、男の優越感を煽るには十二分であった。
「ぐぷっ、んぐぅっ、んんっ……!」
響は後頭部を掴まれ、強制的に激しい奉仕を行わさせられる。
喉をオナホールのように扱われながらも、響の股は愛液で濡れ始めていた。
「ぐ、うぇっ、じゅ、じゅぷぅっ……!」
呼吸も満足に行えず目尻には涙が浮かび、しかし響は快楽を感じ始めている。
それは『薬によって発情している』と本人が認識しているからこその錯覚ではあるのだが、響自身は己が変態的性癖に目覚めているのではないかと羞恥を感じつつ興奮していた。
「──ッ!」
男は腕に力を入れ、響の喉に肉棒を深く押し込んだ。
その瞬間、一気に精液が響の喉奥へと放たれる。
ドクドクと音を立てる射精は窒息しかねないほどの勢いで響の体内へと注がれていき、呼吸が不可能になった響の肉体は反射行動で喉を鳴らして精液を嚥下し、肉棒から口を離した。
「げぇっ、こほっ……!」
咳き込みむせ返り、口端に陰毛を付着させながらも響は指示された通りにカメラへ向けてピースサインを送る。
目尻に涙を浮かべながら作った笑顔はアンバランスなもので、男の嗜虐心をより一層引き立てた。
「っ……!」
ベッドへと押し倒され響の肉体が強張るが、視界の端に映る錠剤の魔力には敵わなかった。
「お、お願いします……! わたしのおまんこパンパン犯していやらしい喘ぎ声一杯上げさせてください……!」
確かに感じる羞恥と、それを上回る本能の願望。
お眼鏡に叶ったのか性欲を抑えきれないだけかは不明だが、希望通りに男は己の肉棒を響の秘部へと突き入れる。
濡れ切った秘部は容易く肉棒を受け入れ、一突きごとに淫靡な水音を響かせていた。
本能的に声を抑えようと動かした響の両手は男によって抑え込まれ、動物のような喘ぎ声が部屋中に響き渡る。
「──ッ!」
膣内に精液を注がれ、響は白目を剥いて絶頂する。
涎と愛液と精液でドロドロになった体をしっかりと撮影され、しかし彼女の脳内は性的快楽と錠剤のみを求めてしまっている。
「あ、ぁぁ……?」
ぼんやりとした意識の中、響は男から差し出されたグラスを両手で掴んだ。
グラスには響の膣から漏れ出た精液と愛液の混合物が注がれている。
男は錠剤を数個砕くと、その粉末をグラスの内容物へと振り掛けた。
「っ、ありがとう、ございます……!」
人が口を付ける代物とは思えぬ臭いを放っているそれを、高級ワインを受け取ったような表情を浮かべて響は一息に飲んでいく。
ごきゅ、ごきゅと盛大に喉を鳴らし、連動するように股から愛液を噴き出して、一気に飲み干した。
「ぐ、ぇっ……ぷ……」
襲い来る吐き気を堪え、ふらふらとした足取りで響は男の足元に縋りつく。
違法薬物の多量摂取と脳が認識した結果、ラムネ数錠で彼女の精神は崩壊した。
「もっと……もっと下さいぃ……なんでも言うこと聞きます……」
後日。
深夜の裏路地で、響は目の前の客に向けてスカートをたくし上げていた。
調教され尽くした陰核は一擦りで絶頂するほど敏感に育て上げられ、下着を履くことが出来ないため秘部が丸見えになっている。
「ゴム無し本番どうですか? はい、もちろんお金さえ貰えれば何発でも……あぁ、いや、別に苦学生ってわけじゃ……時間が無いならそこの路地裏でも……」
ラムネ代を稼ぐために体を売り、稼いだ金を男に差し出す日々。
しかし客は手を振って響の前から去っていく。
「あっ……うぅ、早くしないと……」
そんな響の前に男が現れると、響は犬のように目を輝かせながらも気まずそうに俯きだす。
「そ、その……まだ約束の金額が集まってなくて……お薬、また値上がったんですよね……え? 割のいい仕事? あ、ありがとうございます! はい、それでお薬が貰えるなら!」
それから現役J〇の売り込みでハードな内容のAVが多数発売され、新人AV女優の『ひびき』は一躍話題となった。
まるで本当に薬をキメているような迫真の演技や命令されればどんなプレイでも行う姿に売り上げは右肩上がり。
「はーい、皆さん見えてますか~?」
そして今日も響はカメラに向かって手を振っている。
犬耳と尻尾、首輪だけを身に着けた全裸の恰好で公園の男子トイレに入り、四つん這いになって自慰行為をカメラに向けて行っていく。
「さ、三回イッたらおくすり……三回、おくすり……!」
遠からず破滅するであろう人生を考える余裕など存在せず、目の前の餌を貰うために響は今日も己を安売りするのであった。