時期は、イベントストーリー『サマースローサマー』の辺りです。
プロローグ 旅行に行きたい!
「……」
五人の少女の眼前には白き砂浜、澄んだ青をした海。
「ん〜、清々しい気分ね!」
「うん!」
二人は両手を大きく広げこの世界の空気を思い切り吸い込む。
「あ、あの、こころちゃん……」
一人が弱々しく声を掛ける。
「あら花音。体を隠してどうしたの?」
「だっ……だってこんな……」
「つ、つーかなんで香澄までそんな平気でいられるんだよ……」
二人とは打って変わって三人は顔を紅潮させ、両手で胸と股を隠していた。
現在、彼女らはヌーディストビーチに来ており、全員が青空の下全裸になっていた。
「う〜ん、深呼吸をしたからかな?」
「ハァ? そんな訳……」
「だから有咲も両手を広げて……」
「やるか馬鹿!」
「さぁ、思いっきり遊ぶわよ!」
こころと言う少女はそう言うと、先程声をかけて来た少女の腕を掴んだ。
「えっ?」
「花音も一緒に遊びましょう!」
「ふぇぇぇ〜〜〜〜⁉︎」
「花音!」
澄んだ青へ走り出す三人。そんな光景に少女、有咲は心で叫んだ。
(何でこうなったんだ⁉)
八月、学生なら夏休み真っ只中の時期に宿題も楽器の練習もせず、二人の女子高生が質屋、流星堂の蔵の地下室で寝そべって時間を過ごしていた。
「有咲~、暇だよー……」
「知らねーよ」
「だって、さーやとりみりんは薫先輩の別荘に遊びに行っちゃたし……」
「仕方がないだろ。私らその時用があったわけだし」
「おたえも武者修行って言って、ギター持って何処かに行っちゃうし……」
二人が所属しているバンド、ポッピンパーティは五人いるのだが、二人は他校の先輩と泊りで出かけ、一人はギター修行で姿を消している。
「ねぇ~有咲、私達も……」
「行かねーぞ」
「えぇ⁉ まだ何も言ってないよ⁉」
「おめーの言う事なんて分かるっつーの! 私は嫌だからな! こんな暑い中わざわざ出かけるなんて」
有咲はさらに香澄に追い打ちをかけていく。
「大体、わざわざうちに来てそうやって寝そべってるぐらいなら家で大人しく宿題でもやったらどうなんだ?」
「うぅ……」
正論を言われ香澄は僅かに怯むが負けじと言い返す。
「ま、まだ夏休みは余裕があるし、それに私は有咲とも思い出を作りたいんだよ!」
「おま……!」
香澄の大胆な台詞に動揺した有咲を見た香澄は今度は逆に追い打ちをかけていく。
「だからさ~、これから二人で遊びに行こうよ~」
「そ、そんな事言っても私の考えは変わらないぞ……!」
「宿題だって一人でやるし、また五人がそろったら本格的に練習もするからさ~」
語尾を伸ばしつつ有咲に抱き付く香澄。
「だぁぁ! 暑いから引っ付くなー!」
へばり付いた香澄を無理矢理引きはがし有咲は叫ぶ。
「ああもう分かったよ! 私も今出かける用が出来たしついてくるか?」
「本当⁉ 有咲、ありがとう!」
「出かけるってこういう事だったの⁉」
「嘘は言ってないだろ」
炎天下の道路を香澄は手ぶらで有咲はビニール袋を片手に歩く。
「ほら有咲、もっとこう……色々あるじゃん。親しい人とプールとか~遊園地とか~」
「行かねー」
「でも、コンビニでアイスを買うだけって言うのはないよ!」
「リサさんとモカちゃんに会えたから別にいいだろ」
「だから~、夏休みだから遠くに行くとかさ~」
「うっせーな! 私はゆっくりしたいんだ!」
「あら? そこにいるのは、香澄と有咲?」
突如、第三者の声が響き二人がその方向を向くと、片方は水色の柔らかな長い髪をサイドテール留めている大人しそうな、片やブロンドロングヘアーで煌めく瞳を持つ二人の少女が立っていた。
「あ! こころんに花音先輩、こんにちわ!」
「花音先輩に弦巻さん……?」
走って来た同級生、弦巻こころとその後ろを歩く上級生、松原花音に遭遇し手を振る香澄。そこへこころが声をかける。
「ねえ香澄、さっき遊びに行きたいって言ってたわよね?」
「うん? そうだけど?」
「だったら丁度いいわ! 明日、花音と一緒に秘密の島に泊まりに行くつもりだったの! 皆で行きましょう!」
「本当⁉ 行く行く!」
「お、おい! 香澄!」
勝手に話を進める香澄に有咲が叫ぶとこころ有咲に向いて聞く。
「あら? 有咲も行きたいの? 勿論、大歓迎よ!」
「い、いや……そうじゃなくて……」
視線を逸らしつつ言い訳を考える有咲。そこへ一つの天啓が降りてきた。
「そうだ。奥沢さんや北沢さんは?」
こころもバンドをやっており、同じメンバーの事に触れ話題を逸らそうとする。
「二人共、お家の人と出かけてていないみたい」
「そ、そうですか……」
「有咲も一緒に行こうよ!」
「い、いや私は弦巻さんの事を考えていて……」
「そう? あたしは誰でも大歓迎よ!」
「ほら、こころんもこう言っているからさ~」
「でもな……」
「有咲も私と海に行きたいでしょ?」
「はぁ⁉ そんな訳ねーだろ!」
「この間、イヴちゃんが去年私と海に行きたがってたって言ってたよ」
「なっ……! 知らねーし!」
「今年は二人だけでさ~、行こう?」
「……ああもう! 分かったよ! 行きゃあいいんだろ!!」
「やった! 有咲、ありがとう!」
「おい! 抱き付くな!」
折れた有咲に歓喜し抱き付く有咲に二人が声を掛ける。
「二人も来る事になったのね!」
「それで、他に誰が来るんですか?」
有咲は花音に聞き出す。
「えっと……まだ、香澄ちゃんと有咲ちゃんだけなの……」
「そうですか」
「それじゃあ、私達他の人にも声を掛けに行くから」
「二人共! 明日の八時にサークルの前に来てね! 荷物は特に何もいらないわよ!」
花音とこころはそう言って二人の前から去って行った。
翌日、香澄らが集合場所であるライブハウス、サークルに集結して自分達の行き先について話し合っていた。
しかし、その中には聞いていない人物が一人。
「今日は楽しみだね! 有咲」
「あ……ああ……そうだな」
「どうしたの?」
有咲はチラリと視線を花音の方に向ける。
花音は淡い金髪の少女と話をしていた。
「花音、今日は誘ってくれてありがとね」
「ううん、千聖ちゃんもわざわざ来てくれてありがとう」
「いいのよ、花音からお誘いなら断らない理由が無いわ」
そこへ有咲が恐る恐る聞き出す。
「えーっと……何で白鷺先輩がここに?」
「私も昨日、花音に声を掛けられてね。今日は休みだから参加する事にしたの」
「ああ! そうだったんですか!」
僅かな沈黙、再び有咲が口を開く。
「その、アイドルって大変ですか?」
「そうね、けれどその分素敵な事にも巡り合えたわ」
笑って後輩の質問に答える千聖に対し、有咲は何故か彼女に対し妙に及び腰だった。
「……前から思ってたけど有咲ちゃんって……」
「な、何ですか……?」
そこへ一台の黒塗りの高級車がやって来る。
「皆、集まってるわね!」
「こころん!」
「さあ乗って行きましょう!」
車から飛び降りたこころに誘われるまま一行は車に乗り旅行に出かけた。
今回のメンバー
戸山香澄
市ヶ谷有咲
白鷺千聖
松原花音
弦巻こころ