「……」
深夜、日付が変わって僅かに経ったころ、一人の男性が机に向かって黙々と資料にペンを走らせている。
海域で暗躍する人外、セイレーン。奴らと戦う女性、艦船達のリーダー。指揮官である『』は、一人で残りの作業を黙々と進めていた。
「……」
この日は、初夏であるが妙に暑く『』の体にも汗が出ており、その姿を見せていたのは机上のライトと外から挿し込む満月の明かりだけだ。
そして、『』のペンを進める手が止まった。
「……」
作業が終わったのか、ペンを置き、背もたれに大きくもたれ掛かる。
首に手を回してコキコキと鳴らすと、窓の外を見た。
「……?」
窓の外で部下の一人であるイラストリアスがタオルを片手に歩いている所を見た。
それが気になった『』は、早速彼女の後を追う事にしてみる。
手で風を扇ぎつつ彼女がいた場所に向かうが当然イラストリアスは既にいなくなっていた。
「……」
だが、微かに残った足跡と彼女の性格を推理、その場所へと赴く。
着いた先は、拠点である学園近くの海岸には遊泳場所。
真夜中には当然、誰もおらずある意味貸し切りの状態になっていた。
「……?」
『』が見渡すと、浜に白い布類が落ちているのに気づき手に取る。
拾ったのは純白のワンピース、その傍にはハイヒールが脱ぎ捨てられていた。
何故ここに、『』にそんな疑問が浮かぶ。
その時、沖の方から水音が響きその方向を見る。
そこには、背を大きく逸らした人影が海から飛び出していた。
胴についた巨大な双丘が不規則に揺れ、月による逆光でくっきりと体のラインを晒し、そこから裸の女性であると確信できる。
「指揮官様?」
人影が『』に気づくと、ゆっくりとこちらへと向かってくる。
満月を背景に立つ人影は美しいプロポーションをしており、目が慣れ、近づかれるとその人の正体がゆっくり発覚していく。
締まった腰、シミ一つ無い色白の肌、双丘の先にはピンクの乳頭、尻は大きく。
二本のお下げを後ろに回し、白髪をなびかせ、左目の下には泣きぼくろ、サファイア色の瞳をした麗しき淑女、イラストリアスだった。
「……」
月光を浴びている彼女の体は、『』には普段よりも美しく、芸術的で、妖艶に見え、その姿をボンヤリと見惚れていると、イラストリアスから声を掛けてくる。
「指揮官様、何故ここに?」
『』は、たまたま見かけ、好奇心から後を付けた事を話した。
「女性の後をついて来たのですか? ひどい人……」
笑みを浮かべつつ返すと、『』もまたイラストリアスにここで何をしていたか聞き出す。
「私だって、こうやって何もかも捨ててはしゃぎたくなる事があるんですよ?」
「皆さんには秘密にしてくださいね。……所で……」
イラストリアスは『』の襟を掴み、彼の制服の状態を見て心配そうに言う。
「指揮官様、先程まで仕事をしていましたね。私達の為に尽くしてくれるのは嬉しいですが、無理はなさらないで下さいね」
『』の制服に顔を近付けもう一声。
「それに……汗で少しにおいますわ」
その時、イラストリアスは何か思いついたのか微笑みながら『』の制服に手を掛ける。
「よろしければ、こちらで洗い流されてはどうでしょうか?」
『』は必要ない、と手を振ると、イラストリアスは頬を小さく膨らませてボソッと一言。
「……指揮官様にストーカーされたと、言いふらしてもいいですわよ?」
イラストリアスの小悪魔的強請を受け、『』は負けたと言わんばかりの顔をしていると、続けて言う。
「指揮官様、イラストリアスと秘密の共有、しませんか?」
その台詞に押され、『』は海軍制服を脱ぎ捨て、イラストリアスと同じ格好になる。
「ふふっ、ありがとうございます」
イラストリアスは嬉しそうに言うと、『』の手を取り海へと歩みだす。
「さぁ……こちらへ」
彼女に連れられ、沖へ出ると肩まで浸かる場所にまで行く。
「今の気分ですか? ドキドキしています……。貴方の体は見慣れているはずなのに」
イラストリアスは、自身の右手薬指に嵌められた指輪を見つめる。
「指揮官様もですか?」
それに対し『』は首を縦に振る。
「でしたら……胸、触り合ってみませんか?」
そう言われ、イラストリアスは『』の左胸に手を当て、『』もイラストリアスの胸に触れた。
「んっ……」
『』に乳房を掴まれ、小さく喘ぐが聞く。
「指揮官様、イラストリアスの心の音。分かりますか?」
またしても『』は頷く。
「私もです。音だけでも指揮官様の熱を感じます」
僅かに顔が赤くなったイラストリアスは、話題を変える様に笑いながら言う。
「さぁ、まずは潜ってみましょう。今は二人だけの世界ですからね」
二人だけの秘密の夜が始まった。