※この作品はR-18です。

別に素晴らしくもない時止め屑野郎が来た   作:伏見透

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二十五話

 

 ルナさんに説明された通りに俺達は森を歩いていた。

 

 昼前。

 太陽の光が木の葉に遮られるも、ぽつぽつと道を照らしている。鬱蒼とした森林をなんとか進んでいくと洞窟が見えた。

 

「こんな場所に本当に洞窟なんてあるんですね」

「驚きだよな」

「ルナさんが言うには情報提供があったらしいですが、どんな中身なんでしょうね。もしかしたらまたリッチーが住んでいたりするのでしょうか」

「アクセルの街とその周辺で三人目となると珍しいものでもなくなってくるな。そこら中にいるじゃないか。石投げればリッチーに当たるみたいになっているぞ」

「わかりませんよ。リッチーになれる人は少なくとも、彼らは不死ですからね。死ななければ増えていくのが道理というものです」

「確かにそういう見方もあるか。人間が減ろうとも不死者が増えていく一方なら、ずっと未来には不死の存在ばかりになっているかもしれない」

 

 ホラーとSFの融合である。

 この前のような浄化を希望する不死者が増えればいいのにというのは無茶か。

 

 俺とめぐみんは、俺だけが見覚えがある洞窟にたどり着く。この場所を見ると何故か乳首が痛い。肢体を失ったわけではないが、幻肢痛みたいな感じがする。ないはずの痛み。

 記憶を失う前の俺はこの洞窟で一体どんな目にあったのだろう?

 

「洞窟内に遺跡があるんですよね。私の杖はどうしましょう。ここに置いていった方がいいのでしょうか」

「杖があれば何かに襲われた時に咄嗟に撃退できるかもしれないし、杖がなければ逃げるのは楽になるかもしれない。どっちを取るかだな」

「では、置いておきましょう。いざユウスケが倒れたりでもしたら真っ先に逃げなくてはいけませんからね」

「おいおいお前」

 

 ……まあ俺が負けるなんていうことがあれば、彼女は逃げるのが一番良い方法なのだが。

 彼女が使える魔法は爆裂魔法だけで、遺跡では使える魔法ではないし、なにより今日は朝既に使って反射的に遺跡内で使えない状況にしている。

 

 いつもの格好。とんがり帽子を被って赤い服と黒のマントと茶色のブーツをしているめぐみんは、杖を洞窟の端側に置いた。

 

 ここで盗難に会う心配はしなくていいだろう。

 この場所を知っているのは貴族だが、冒険者ギルドにバレたとあっては来るような貴族はいない。

 

 俺の格好としては、いつもの冴えない服装だ。もうそろそろ温かくなってきたので上は半袖の上着とマント。下は長ズボン。腰には携帯食料と聖水と皆からプレゼントしてもらった剣がある。

 

 俺がこうなるように誘導したわけだが、あまりにも行く気満々のめぐみんに思わず水を差す。

 

「でも、めぐみんは遺跡に付き合うのか? ゆんゆんはまだ旅とやらから帰ってきてないけど、俺一人で行ってもいいんだぞ。お前はここで待っててくれればいい」

「何を。この前の私の大活躍を忘れたのですか。遺跡調査なんて豊富な知識と賢い私にピッタリな仕事ではありませんか。それに退治ではありませんし、危なくなったら逃げればいいのですしね。私はダストみたいに逃げる間際コケるなんていう失敗はしません。華麗な紅魔族逃走術をお見せしましょう」

「わかっていると思うけど、遺跡では勝手にスイッチを押したりすると危険なんだからな」

「子供ですか!? それぐらいわかっていますよ!」

 

 どうしてか俺もこの遺跡には行きたくないのだが、俺が行かないわけにはいかない。

 洞窟内にあるそれらしい遺跡の入口前で立ち止まる。

 

 ごくりと唾を飲み込む。それは獰猛な虎の口みたいにぱっくりと開いている。その遺跡の入り口は明らかに人工物だ。ここから先は誰かしらが意図を持って作った場所に侵入することになる。

 出来れば入りたくないのだが、虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。ここまでして入らないという選択肢はない。なにを怖がっているんだ俺は。勇気を出せ。

 

「なぜボーと突っ立っているのですか。もう私が先に入ってしまいますよ」

「わかっているって。俺も入る。調査されていない遺跡は危ないんだから、先行するなよ」

 

 恐怖などなにもないようにめぐみんは遺跡の中に入っていく。

 遺跡内は階段になっていて、下の方へと続いている。基本的にダンジョンなんていうものは、上に行くか下にいくかだ。かなり急な階段なので、もし踏み外したりでもしたら大変だ。

 手すりでも用意してくれればいいのに。

 

 俺もその後を追って遺跡に入り――ガタンと階段はなくなった。

 

「え?」

 

 めぐみんの驚いた声がする。

 階段の出っ張りが綺麗に引っ込んだ。つまり斜面なだけが地面となる。そして人間は急激な斜面に立っていることはできない。

 

「ええええええええええ!」

 

 めぐみんの叫び声――がする前に俺は鞘から剣を抜いていた。

 体が落ちる。

 不安定すぎる足場では、重力から踏ん張ることができない。

 

「アースソード!」

 

 剣を硬くして、壁にぶっ刺しながらめぐみんの首元の服を後ろから猫みたいに掴む。

 

「ぐえ!?」

 

 首を絞められためぐみんはカエルみたいな鳴き声を発する。

 

 間一髪。

 落ちきる前に俺は彼女を助けた。

 ……助けてしまった。

 

 やってしまった。

 

 絶望感が俺を襲う。咄嗟の判断とはいえ、体が動いた。剣を壁に突き刺して、体を宙に固定させ、めぐみんを助けてしまった。

 なんでこんなことをしてしまったのだ。

 安全性は記憶を失う前の俺が確認している。なにも心配する必要はない。

 

 今までの苦労をここで無駄にしてしまうのか? あんなにも布石をばらまいてきたのに。

 

 まず遺跡を見つけるよう依頼した。見つかれば情報屋を使って冒険者ギルドに報告し、その情報を知っているルナさんに食事を誘って、食事中神器を使用して、明日俺に遺跡の依頼を持ちかけるようにした。キースのダンジョンで成功したからだろう。ルナさんもその成功があったから催眠は成功したし、めぐみんは普通に私も行きますと言ってくれた。自分でも安全性を確かめて、危険性がある記憶消去の薬まで使った。

 

 かかった時間と労力は多く、かけたお金は百万エリスを優に越える。

 これほどやった。ここまでやった。――なのに俺は咄嗟にめぐみんを助けた。

 

 この手を離そうなんて、欠片も考えられない。

 

 ため息を吐く。

 まったく、馬鹿で、本当に俺というやつは大馬鹿だ。自分で仕掛けた罠に、獲物をかからせたくないなんて、自分のことながら意味が分からない。

 

 右手で持つめぐみんに俺は上から声を降らせる。

 

「めぐみん大丈夫か? 引っ張り上げるからジッとしてろよ」

「あ、ああああ。驚きました。階段がにゅっとなくなるのですから。後首が苦しいです」

「ちょっと我慢してくれ。咄嗟のことで流石にここしか掴むところがなかった。先行はするなと言っただろう。引っ張りあげたら一度俺の首に捕まれ」

 

 引っ張り上げためぐみんは俺の首に捕まる。俺はそんな彼女が落ちないように左手は剣の柄を掴みながらも右手は彼女の腰を持っていた。

 

 でも、後悔は不思議としていなかった。

 万が一も危険性はないのだろう。だが、完全に安全とは言えない。万が一がなくても、億が一があるかもしれない。それならやめておいた方がいい。

 命の危険が極少でも存在する限り、めぐみんにこんなところを進ませるわけにはいかない。避けられない危険ならともかく、俺が危険に押し込むというのは嫌だった。

 そんな俺というクズな男の本音に、ここまで来てやっと気づいた。エロに目を奪われていて見えなかったのだ。

 

 要するにこの遺跡は俺の性に合っていなかったのだ。

 

 それなら、仕方がない、か。

 俺の首に捕まっているから、顔のすぐ近くにいるめぐみんにこれから先のことを言う。

 

「めぐみんはやっぱ上で待っていてくれないか。俺が限界までめぐみんを押し上げれば、なんとか入り口のところに手が届くと思う」

「ユウスケはどうするんですか」

「俺はこのまま調査を続けるよ。殺すつもりなら地面は直角になって落としていただろうし、わざわざ斜面にしているということは殺すつもりはないってことだ。……それに落ちながら壁に剣を刺したからな。めぐみんを押し上げる時の反動で多分剣が外れてしまうと思う。まあお前は上でゆっくり待って、いつまで経っても帰ってこないなら冒険者ギルドに知らせてくれ」

 

 今度はめぐみんがため息を吐く。

 こんなに顔を近づけているから、もろにその吐息が俺の顎にかかる。

 

「はぁ、ユウスケというやつはいつもの悪い癖が出ましたか」

「悪い癖ってなんだよ」

「そうやって良い格好をしようとする癖ですよ。自分一人で格好をつけるのもほどほどにしてくださいね。きゃーきゃーとでも言ってほしいのですか。ゆんゆんは気にしていましたし、私も気にします。そんなことするやつにはこうです。……かぷっ」

 

 めぐみんは腕の力を使って、顔を俺の耳まで持って行って――口に含んだ。

 俺の耳を彼女はその小さな口で食べてしまったのだ。

 

「あむあむ」

 

 それどころか甘噛みする。

 唾液を纏った歯が耳に軽く当たる。子犬が主人にじゃれ付くように俺の耳を優しく甘噛みする。

 

「はああああああ何をしてめぐみん!? ちょめぐめぐみん!? めぐみんさん!?」

 

 言葉にならない激しい動揺。

 そこから先は言語化できない言葉が口から漏れまくる。

 動揺するなっていう方が無理だ。こんなことをされて動揺されないやつがいたらそいつは悟りでも開いている。

 

 俺がこれだけ動揺しているにも関わらずめぐみんは俺の耳から口を離さないものだから、益々俺は動揺する。

 

 左手にも変な風に力が入って、元々不安定に突き刺さっていた剣はというとぽろっと抜ける。

 

「あっ」

 

 剣が壁から抜けるということは、剣が抜けるということで、剣が抜ければつまりはそう――落ちる。

 

「うおおおおおおおおお!?」

 

 ずざざざざと斜面を滑る。

 めぐみんを守るように俺は右手で彼女の体を強く抱きしめる。

 

 滑り台で滑ったのは何年振りだろうか。

 昨今公園で滑り台は危険だからと撤去され、俺の近くの公園でも撤去されているのを見て、なんとなく悲しい思いをしたな、みたいなどうでもいいことが頭に浮かぶ。

 

 長い滑り台が終わると、地面に俺の体は突っ込むわけだが、たどり着いた先の地面は柔らかかった。

 クッションみたいなものが敷かれており、俺達はそこに突っ込んだ。

 痛い目にはあわずにすんだ。さすがは記憶のない俺が安全性は確認した場所というわけか。

 

「ふかふかでこれ気持ちいいですね。しかしこんなものを敷いているということは製作者達は侵入者を殺す気はないというわけですか。……ということは今のはなんなんでしょう。侵入者を逃がさないためにしては階段下りきってからでもいいですし、悪戯みたいなものですかね」

 

 先ほどまで俺の耳を噛んでいためぐみんは、すっと立ち上がっており、この状況を解析していた。

 耳を噛まれていた俺はというと、噛まれていた方の耳を押さえながら彼女に指を差す。

 

「お、お前! お前な!?」

「なんですか。人を指差すのはあまり行儀のいいものではありませんよ」

「耳、耳ー!」

 

 動揺によってまともに言葉にならない。

 

「はい。耳を噛みましたが。どうしました?」

「か、噛んだのはあっさりすませていいものではないだろう!」

「ふん。ユウスケがつまらないこというのが悪いんですよ。それに男がたかが耳噛まれたぐらいであたふたしてみっともないですよ」

「たかがって……そんな……」

 

 めぐみんも軽いことのように言っているが、耳まで赤くなっているし、本人も滅茶苦茶恥ずかしかったのではなかろうか。

 

 しかし、これ以上言っても意味がない。

 滑ってきた道を見ると、ここから戻るのは無理だ。地面に張り付いて移動できるようにでもならないと上がることはできない。

 

「先を進みましょう。どこかに出口があるかもしれませんよ」

 

 明るい口調で言うめぐみんに、俺は今日二度目のため息を吐いてそうすることにする。

 

「それしかないか」

 

 まあ、記憶がなくなったときの俺が洞窟の外にいたから、必ずどこかには出口はあるのだろう。

 それにこの調査に来ていることはルナさんは知っているし、報告がなければ二日ぐらいでまた冒険者を派遣してくれるに違いない。

 

 こうなってしまったらめぐみんと一緒に遺跡を攻略する以外は道はなかった。

 彼女を危険な目に合わせないように俺が必死になるしかない。こんなことなら記憶消去の薬なんて飲むのではなかった。

 結局、最初に考えていたことを実現させたわけだが、このどうとも言えない気持ちは何なのだろう。

 

「もう遺跡内だからな。勝手な行動はするなよ。ってめぐみん」

「この扉に文字が書いてますね。若干文字は薄れていますけど」

「だから先に行くなって。本当だ。文字が書いてあるな。初級……かな?」

「なんの初級なんでしょう」

「さあ? 何かしらの初級なんだろう」

 

 降りた先には扉があって、その扉には初級という文字が書いてある。

 扉の隣にはスイッチらしきものとそこに開閉ボタンと文字が刻まれている。

 

 そういえば、エロ遺跡には難易度。俗に言われているエロ難易度があるらしく、初級というからにはまだ優しい方なのか。

 

「では、スイッチを押しますね」

「待て待て待て!」

 

 躊躇なくボタンを押しかけるめぐみんを俺は引き留める。

 

「なんですか?」

「言われるままボタンを押すやつがあるか!」

「といっても、他になにもありませんし、押す以外の選択肢はありませんよ」

「そうなんだけど。もう少し警戒しろ。めぐみん、ちょっと来い。俺が剣の先を使って開ける」

 

 確かにここには扉とスイッチ以外にはなにもない。

 しかし、スイッチを押したら罠だったなんてことは容易に想像できることだ。定番中の定番。それに引っかかるほど俺も馬鹿ではない。

 面倒臭そうにしながらもめぐみんは言う通りに下がってくれる。

 

 俺は心臓の鼓動を早めながら、周囲や地面を警戒しながらも、おそるおそる剣を伸ばして、スイッチを押す。

 

 扉が開いた。

 ただすいーと扉が開く。お客を歓迎しているみたいな開き方だった。なにも罠が飛び出すことはなかった。

 

「ぷっ」

 

 めぐみんは耐え切れないように噴き出した。

 

「…………」

 

 ……かなり恥ずかしい。

 遺跡なら罠の一つぐらい用意していろよ!

 そんな無茶振りを俺は激しく思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は開いた扉の先を見る。

 開かれた先は、通路みたいだった。そこまで幅は広くないし、奥行きもこちらから視認できる程度のものだ。そこそこの距離の先にまた扉とボタンが確認できる。

 

「とにかく向こうの扉も越えてどんどん進んでみるか」

「見た感じではモンスターもいませんね。初級というのはこの遺跡の難易度なんでしょうか。初級程度の簡単さということなら、張り合いがありませんが」

「何が起こるかわからないから慎重にだぞ」

 

 俺はそう言いながら剣で軽く地面を撫でて、なにもないことを確認してからそこを進む。そしてまた剣で地面を撫でて確認する。

 

「なにしているんです?」

「クリスに教えてもらった盗賊がいないときのダンジョンの進み方だよ。ダンジョンというのは地面の一部分をスイッチにしていることが多いらしくてな。こうやって確認しながら歩けば、そういう罠は回避できるだろ」

「日が暮れますよ。どんな気長にやるつもりですか。そんなのを一々していたら老人になってしまいます」

「罠にかかるよりかマシだろう。お前も隣を歩いているけど、地面をしっかり確認しろよ。というか、俺の背後を歩いてくれ。それなら安心だし、お前が横や上を見回してくれたら上下横と完ぺきになるだろう?」

 

 俺はそう言って、隣を見ると、めぐみんはいなかった。

 

 あれっ? どこいったあいつ。

 

 もしやもう後ろに回り込んだのかと思ったが、後ろにもいない。あれ!? 本気でどこいったんだ!?

 

「めぐみん! お前どこ行ったんだ!」

「下! 下です!」

 

 めぐみんの声がすることに安心しながらも、俺は言葉と声がする地面の方にへと視線を向ける。

 

「ここです! 落とし穴にはまりました!」

 

 そこにはめぐみんのとんがり帽子と両腕だけが見える。

 愕然とする。今地面に気を付けろと言ったばかりなのにと思うも、そんなのどうでもいいから早く助けなくてはならない。

 

「今、引っ張り出すからな!」

 

 俺は慌てて駆け寄って彼女の両腕を掴む。

 めぐみんぐらいの重さなら俺が全力を出せば、一瞬で持ち上げることができるはずだ。

 

「待ってくだ――いたたたたたた!? 痛いです! ユウスケ止まってください! もげます! 私の体が引きちぎれます!」

 

 力を込めて引っ張るも、俺はめぐみんを落とし穴から引っ張り出すことはできなかった。

 それどころかめぐみんが痛がっているようなので、俺は慌てて彼女の腕を離す。

 

「何かに下で掴まれているのか!?」

「スライムです! 粘着質なものが下半身に引っ付いて、このままでは脱出できません。何でも食べてしまう恐ろしいモンスターです。でも痛くは――」

 

 彼女は穴にすっぽりと入っている自分の下半身の様子を確かめる。

 

「この緑色のスライムはまさかっ!? ――やっぱりこれ服食べスライムですよ! どんどん繊維製品を食べています。ああ、靴が消化されています! 結構高いのに! あっ、そこは、ダメです! 本当ダメですって。やっ!? し、下着が!」

 

 ……そういえば、エロ遺跡なんだからそういうモンスターもいるか。

 エロ遺跡を作った人間の一人が通称エロモンスターの一種である改造スライムも作ったんだしな。

 

「やめろー! ぐちょぐちょした液体で下半身に纏わりつかないでください! ゆ、ユウスケ助けてください!」

 

 めぐみんの必死の叫びに一時的に止まっていた意識がまた動き出す。

 

「わかってる! わかっている! しかしどうすればいいんだ。えっーと、スライムの特性は……分裂や合体。他に体温の感知。後はなにかあったか」

「早く! 早くしてください! あわわわ。もう下着を溶かされてしまいましたよ! お腹を越えて、胸にまで!? このブラジャーは高かったんですからね! スライム如きがなにをしているのですか!」

 

 考えろ考えろ!

 スライムはその身を別けることも集まることもできる。

 集合して大きくなったスライムは厄介だ。人を殺すことは容易にある。しかし、このスライムは人を殺すために作られたのではない。

 

 エロいことをするために作られたのだ。

 

 服は溶かすが、人を溶かすわけがない。それでも、呼吸器をこのスライムが塞いでしまっては、人を殺してしまう。

 

 逆説的に考えるなら――このスライムは絶対に呼吸器を長い間塞がない作りになっている。

 

「息だ!」

「は? ど、どこにユウスケは顔を突っ込もうとしているのですか!? こんな時に錯乱でもしたのですか!」

 

 俺はめぐみんの顔近くに自分の頭を持って行き、その落とし穴に顔を近づける。中を見ると、めぐみんの肢体は緑色のグミみたいなものに覆われている。

 俺はその緑色のスライムに向かって息を吹きかける。

 

「ふぅー」

「ひゃ! 本気でなにをして!? ……ん? このスライム止まりましたね」

 

 緑色のスライムはめぐみんの上半身を進行していたが、その動きがようやく止まった。しかし、止まったのはちょっとした間だけで、また登ろうとしてくる。

 めぐみんのおっぱいのおそらく乳首部分を越えて、繊維を溶かしながら更に登ってくる。

 

「ふー! ふー! めぐみん! ふー! おそらくこのスライムはふー! 息かなにかに反応しているっぽいふー。こうやって息を吹きかけていけば、ふー。どこかに行くはずだ。ふぅー」

「んんんん!? こ、こそばいですよ! そこら辺は敏感なところなんです! そう息を吹きかけないでください! あっ、でも確かに少し下がって……って、おっぱいが見えます! 下着も溶かされた今だと胸が全部はだけてしまいます! ……ゆ、ユウスケは後ろからにしてください! 私が前から息を吹き込むので!」

 

 確かに二人分ならもっとスライムは後退するだろう。

 俺は背後に回り込み、めぐみんのうなじの辺りから息をおもいっきり吹きかける。

 

「んー!? そ、そこも敏感な部分ですよユウスケ!」

「我慢しろ。お前も息を吹きかけろ! ふー!」

「あっ!? んんぅ! こ、こんなにされてどうやって息を吹きかけろと!? 無茶苦茶言ってますよ!」

「その無茶をなんとかしろ。頑張ってくれ。ふー!」

「んひぃ!? やっている本人がそれを言いますか。わかりましたよ。もう気にしません! このスライムが! 勝負してひゃん!?」

 

 とにかく俺とめぐみんはスライムに向かって息を吹きかけ続ける。

 息が吹きかけるにつれてそのスライムはどんどん下にへといく。衣服はもう溶かされたのか、腰辺りの彼女の綺麗な肌が見える。どこも溶かされたり傷つけられたような箇所は見られない。

 

 めぐみんの背中にへと俺は息を吹きかけ続けるも、そこからスライムは後退していくことはない。登ってくることはないが、下ることもしなくなった。

 

「もしやお尻見えてます!? そこは見てはダメなやつがあるので、絶対に見ないでくださいよ!」

「まだ後少しでお尻が見えるぐらいだけど――これ無理だな」

「諦めないでくださいよ! 私のお尻に向かってあなたのを存分にかけてください! ……私すごいことを言ってますね!? でももう余裕がありません。後ちょっとなのだからお尻に来てください。はやく!」

 

 息を吐きすぎたのだろう。

 脳に酸素が足らなくてふらつく。必死に息を吸いながら俺は状況を説明する。

 

「下の方には息が届かない。このままだと、いくらやっても無駄になってしまうぞ」

「そうはいっても、これ以外はどうしようもないじゃないですか。あー! またスライムが私の肌を這いずって上がってこようとしています! あっち行ってくださいふーふー!」

 

 こんな一時的な手段ではなくて、一発で解決する方法はないのか!

 

 あるはずだ。ソードマンのスキルを使う? 無理だ。凍らせるのも電気を走らせるのも、めぐみんにダメージが行く。

 

 慌てていたが、おそらくこのスライムは一度彼女の口を塞げば、どこかに去っていくのだろう。二酸化炭素かなにかの量で判断しているのだろうか?

 そもそもスライムの弱点ってなんだったか。

 

「あっ」

「どうしました!? ユウスケも呼吸を整えたら加勢を――んんんんんんっ!?」

 

 聖水を俺はめぐみんの首元から流す。

 背後だけでなく彼女の前部分にも聖水を体を伝って流れるようにする。

 

 馬鹿だ。

 こんなことも忘れていた。基本的にモンスターは聖水に弱い。特に不浄なものや毒を持つモンスターや固定の体を持っていないモンスターにはよく効く。

 

「いきなりで驚きましたが、これ聖水ですか! その手がありましたか。というか私の体にかける前に一言前置きをしてください! ……スライムが離れました! 今引っ張り上げてください!」

 

 俺は背後から彼女の両腋をガシリと掴んで、叫びながら引き抜く。

 

「ごめんな! 一言告げておくべきだったあああああああああ!」

 

 先ほどのように力を入れてしまったが、めぐみんの体は軽い。

 それを力のある俺がおもいっきり力を込めてあげたものだから、勢いよく彼女の体は落とし穴から出てくる。

 

 その勢いに押されて俺は背後にへと倒れ込む。

 

「きゃ!」

「うわっ!?」

 

 ちょっと強めに肩を地面に打ち付けたものだから、結構痛かった。

 

「いたたたたた」

 

 その衝撃に目をつむっていたが、目を開けながら体をわずかに起こすと、ある光景が広がっていた。

 

「び、びっくりしました。加減をしてくださいよ。……ん。あなたはどこを見て――」

 

 そこには彼女の裸体が惜しげもなくさらされていた。

 

 めぐみんの小ぶりな胸も、そこにある桜色の乳首も、彼女の細い肢体が全てあられもなくさらしている。それだけでおさまらなく、彼女の秘すべし無毛の土手も、一本の薄いスジまで見えている。

 聖水を彼女の体にかけたせいで、その隠すべきものがない白くて可憐な細い体には液体が流れていて、なんともいえない色気を醸し出していた。

 

 彼女のスジまで聖水が届いていて、薄紅色の膣壁が中にあるスジにへと聖水が染み込む。めぐみんのワレメが聖水で濡れる。

 

「ユウスケ! め、目を閉じてください!」

 

 めぐみんはキュッと足を内股に閉じて、ピンクの乳首まで露出している胸をその腕で必死に隠す。

 足を強く閉じたときにスジに染み込んだ聖水の水滴が、ぴちょりと弾ける。

 

「わ、悪い!」

 

 隠す仕草があまりにもエロくて、そのまま目が引き寄せられそうになるが、俺は目をつむりながら手で自分の目を塞ぐ。

 

「…………」

 

 先ほどあんな目にあったせいだろうか、とんがり帽子と肩辺りだけの服を残して全裸のめぐみんは、それでも他の場所に行くのは躊躇われるようで、俺の体から離れようとしない。

 俺の体に体重を預けながら、彼女は小さな体を縮こませようとしている。

 

 温かくなってきたことで、俺も薄着だからかもろに彼女の体の感触がわかる。

 どうにかして体を隠そうと、もぞもぞとめぐみんは動いているせいで、シャツやズボン越しに彼女の体を味わえてしまう。

 その細くて柔らかい少女の肉体が、動く度に俺の体へと押し付けられる。

 

 俺の股間が元気になろうとしていた。

 

 だって、反則すぎた。あのめぐみんが自分のスジを隠そうと内股になるところや胸を隠す仕草があまりにもエロすぎた。卑猥の一言。あれだけで絶頂できるような淫猥さに溢れた、清らかな体を持つ少女の隠し方。

 

 時間停止で彼女の体は見たことがある。

 それなのに、めぐみんの動きが加わったことでまったく別物へと化していた。

 

 くそ、耐えろ、俺の股間。今大きくなるわけにはいかない。この密着度。彼女は全裸。絶対にバレる。耐えろ。耐えろ。

 儚い抵抗を繰り返すも、彼女自身の意思で擦りつけられるその幼さ特有のぷにぷにとした肢体の魅力に、呆気なく屈しそうになる。

 

 地獄だ。最初は俺が望んでここまでセッティングしたとはいえ、まさに地獄だった。

 俺が想像していたのと大きく違っていた。こんな苦しい戦いになるとは思ってもみなかった。理想と現実との差は大きい。エロいことだけを思って動いた男の馬鹿な末路だった。

 

 これで初級。

 これで入ったばかりの地下一階。

 

 今後襲い掛かる罠を想像して、俺は身震いする。

 

「んぅ! ゆ、ユウスケ……。今は動かないでください」

 

 ……やべ、大きくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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